第72回 日本臨床眼科学会

10月11日から14日まで、東京国際フォーラムにて、
第72回 日本臨床眼科学会が開催されます。

臨床眼科学会は日本で一番規模の大きい眼科の学会で、口頭演題・ポスターともに約300の発表されます。(この学会の開催期間は日本中の眼科が、少し手薄な状態になります。当院は宮井副院長がいるので安心ですが。)

僕は渡部副院長は、そのうちの2演題(口頭)を担当しました。
「半導体レーザー装置CYCLO G6によるマイクロパルス毛様体光凝固術の短期成績」栗原
「低眼圧症例に対して施行した半導体レーザー装置CYCLO G6マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術の短期成績」渡部副院長
最新の緑内障治療器機である、CYCLO G6の治療経験を観察期間を6ヶ月に延長して発表しました。CYCLO G6の発表は関西の先生でもう一演題あり、3つの演題のみでしたが、現在は導入施設が30以上に増えたようなので、来年は沢山の発表が行われると思います。
発表内容は、栗原が重度の高眼圧緑内障に対する治療として、-50%の眼圧下降が得られたこと。渡部先生は比較的眼圧の低い症例に対して-37%の眼圧下降が得られたこと。
両研究共に、重篤な合併症はないものの強い炎症を生じたケースがあり、照射方法や、治療後にしっかりとした消炎が必要であることを発表しました。

緑内障の権威の先生方と、活発な討論があり、以前の治療器での経験も教えて頂くことができ大変勉強になりました。また、開発者の方(写真2枚目)とも面談ができ(通訳を通してですが・・・。)、難治症例に関する照射法にアドバイスを頂けたので、今後の治療に役立てたいと思います。
あ

明日は朝7時半から、同学会でモーニングセミナーの講演を依頼されています。頑張ります。

緑内障36 患者さん⇔薬局・内科主治医 緑内障連絡票

今週の当院の手術は、主だったものだけでも
白内障手術 32件、網膜硝子体 12件、緑内障手術 3件、眼瞼下垂 6件。緊急手術としても眼球破裂1件、網膜剥離3件。ひどいものは網膜が150°避けているものまで。。。

さぞ忙しい1週間かと思ったら、僕は今週は学校医の仕事が多く、自院での手術は5例のみ。(他院での非常勤手術は30件強ありましたが軽症例です。)
上記手術のほとんどを宮井・渡部副院長に頼っています。
そんな忙しい副院長たちですが、今週は渡部副院長が素敵なものを作ってくれました。
患者さん⇔薬局・内科主治医 緑内障連絡票
緑内障の一部の患者さん(閉塞隅角緑内障)は、風邪薬や睡眠薬、前立腺薬、胃カメラを受ける時の注射薬などで、急激に緑内障が悪化することがあり注意が必要です。とはいっても、実は緑内障の患者さんのうち、本当に投薬に制限が必要な人は1割もいません。
しかし、なかなか自分の緑内障がどんなタイプなのかを分かっている人は少ないものです。当院では以前からできる限り説明書を渡したり、服薬制限や点眼指導などについての説明も行っていたつもりでしたが、時間がたつと多くの方がうやむやになって、「そんなこと言われたっけ??」というケースも少なくありません。度々、調剤薬局から「緑内障の患者さんですが、睡眠薬を処方してもいいですか?」と問い合わせを頂きます。

連絡票には、緑内障のタイプ、投薬制限以外に、眼圧や眼圧の測定値に影響する角膜厚を記載して、1枚を患者さんに。複写の1枚をカルテに保存することになりました。今後の外来で随時お渡ししていく予定です。
患者さんの安全性の向上と、薬局からの問い合わせ、「言われてない。もらってない。」が少なくなるはず??

 

第122回 日本眼科学会総会

4月19日から22日まで大阪で、
第122回 日本眼科学会総会が開かれました。

今回は「iStent®手術の術後早期成績(白内障手術併用眼内ドレーン手術)」 という演題で、オーラル発表をしました。 簡単にまとめると、白内障手術時にiStentを併用した。 31眼を術後3ヶ月までfollowしたデータは、全例で眼圧下降が得られ、 平均眼圧下降率は約20%、合併症は皆無であった。という内容です。

学会全体としては、緑内障のセッションで、MIGS(低侵襲緑内障手術)に関する演題が全く出ていないことに非常に驚きました。世界中ではかなりの注目を浴びているのですが・・・。僕の印象ではMIGSは日本でも、5年後に現在の10倍以上の手術が施行されるようになり、将来的に緑内障治療を激変させる可能性が高い分野と思っています。(点眼薬をさぼってしまう人が、続々希望するようになるのではないかと。) 発表後も医師からの質問は少なく、学会終了後に器械メーカー3社から意見交換のアポイント依頼がありました。メーカーさんの方が先見の目があるのかな ??
それにしても大阪駅周辺はどんどん都会になりますね。そして外国の方の多いこと多いこと。

緑内障35 CYCLO G6 レーザー② 治療方法

当院は明日30日の午前まで通常外来を開いています。(渡部副院長担当)
定時手術は27日までの予定でしたが、本日も県外から網膜剥離の紹介手術があり、結局年末ギリギリまで手術で例年通りの年の瀬です。
みなさん、絶対元日には目の怪我をしないで下さいね。

今日は国内発導入された新しい緑内障治療機器について記載を。(現状で日本で3台稼働のよう)
CYCLO G6 レーザー② 治療方法

新しい器械なので、今後適宜アレンジが進みますが、現在の治療法に関して記載します。
①局所麻酔が必要です。
ある程度は痛みがある治療です。球後麻酔という、下まぶたの皮膚から針を進めて眼球の後方に麻酔薬を注入する方法が行われたり、当院ではもう少し痛みの少ない、テノン嚢下麻酔という結膜を切開して眼球の後方に麻酔薬を注入する方法で行っています。(テノン嚢下麻酔の場合、結膜の出血が起こると治療が困難になるため、ある程度の技術と止血機材の準備が必要です。)
麻酔が良く効くまで15分程度待ってから治療に進みます。

②まぶたを開く器械を付けて、レ―ザーを照射。
開瞼器という器械を取り付けて強制的にまぶたを開きます。
当院では現在はエネルギー2000mWで、角膜輪部から4mm程度、毛様体を目標にレーザープローブを軽く押し当てて、上下に各40~80秒、合計80~160秒の照射を行っています。この治療エネルギーや治療時間は、今後の治療データの調査によって、重症例ではより長時間、眼圧が低い症例では短時間になるなど、適宜調整が行われる見込みです。
その後、数時間、麻酔がきれるまで眼帯をします。
治療自体はこれで終了し、非常に簡単な治療です。

③消炎治療・投薬
ある程度の炎症は起こるため、ステロイド薬が必要で、ステロイド点眼薬と、現在のところ当院では全身状態に問題がなければ内服薬も処方しています。

④評価、再治療
稀ですが炎症による一過性眼圧上昇が起こることがあるとされ、治療翌日(入院の場合は当日夜間など)に検査が必要です。半数以上は治療翌日には目立った眼圧下降を得られます。数日~1ヶ月かけて徐々に低下する症例もあるようですが、1,2ヶ月後にさらに眼圧下降を目指す必要があれば追加で再治療が可能です。

④費用
実は現時点では昔からある半導体レーザーでの毛様体光凝固術と同じ点数で算定されます。K271、4670点(46700円)
3割負担の方は14010円、1割負担の方は4670円。手術に比べると、現状では非常にリーズナブルな治療です。

追記(2月8日)
*2018年4月の診療報酬改定で5600点に増額されることになりました。患者さんの負担増は申し訳ありませんが、費用 対 効果で考えると、過剰な点眼薬の増量ややSLT等と比べて、かなりよい治療と考えられます。

費用に関しては、どちらかというと医療機関側の経済的な問題が大きいようです。治療用プローブ1本の値段が3万円(発売直後、先月は4万円)で、プローブは1回1回使い捨て。(デジタル管理で再滅菌不可能)消毒や麻酔など、いろいろ考えると1症例で1万円ちょっとの利益。これでは高額な機械の本体代を考えると経営的な問題で導入できない施設がありそうです。
istent手術も白内障手術と比べて、治療点数の増加分がistentの本体代と同等なので、病院の純利益がほぼない治療です。(時間がかかる分、赤字ととらえる医院も多いようです。)
当院は失明を防ぐ地域の中核的な病院としての役割が大きく、経営面は二の次と考えていますが、どちらもよい治療法なので、ある程度は眼科の医院にもメリットがある点数がついて、日本中の眼科で施行できるようになるといいのですが。。。

緑内障手術 網膜硝子手術 白内障手術 茨城県 眼科 山王台病院附属眼科・内科クリニック

緑内障34 日本初導入 CYCLO G6 レーザー①(新型毛様体凝固術)

今日は緑内障治療の歴史の分岐点になるかもしれない新しい話題を。

日本初導入!!
CYCLO G6 レーザー①
新型毛様体凝固術
先日、房水の産生量を減少させることで眼圧を下げるという、毛様体凝固術についてのブログを記載しましたが、これは合併症として炎症が強くでたり、最悪の場合、房水を作る機能が消失し眼球が小さくなってしまう眼球勞という状態になるというリスクと隣り合わせの治療でした。
CYCLO G6は、iridex社が開発した新型のレーザー緑内障治療機器で、房水の産生を抑制したり、明確な原因は分かっていませんが、ぶどう膜流出路から房水の排出を亢進させることで眼圧を低下させることができると考えられています。緑内障手術に抵抗する(手術後経過も高眼圧)症例に対した成績として、主だったいくつかの論文を要約すると、眼圧30%以上の低下、または眼圧の正常化(20mmHg以下)を得られる可能性が70~80%で得られるという、とんでもない成績を誇る画期的な治療機器です。(30%以下の眼圧下降も含めると、基本的には治療によってほぼ100%で少なからず眼圧が低下します。)
しかも欧米では最長7年間の観察をしたも研究もありますが、眼球勞などの重篤な合併症の発生が世界中で未だかつて1例もないという、安全性に関しても非常の安心できる機器です。(低眼圧になりにくいという安全性の高さから、現在、世界中で眼圧が低めの症例に関しても治療の適応が広がってきています。)
日本での国内使用の承認直後に当院でもデモ使用(レンタルして試す)を行いましたが、8眼の治療を行い、大きな合併症はゼロ、眼圧下降は平均で28mmHgから19mmHgと32%以上の眼圧下降を得ることができました。
そして昨日12月7日、CYCLO G6が当院に日本で初導入されました!!
導入直後に新生血管緑内障で紹介、緊急入院した患者様がいらっしゃり、さっそく夜間に治療を行いましたが、術前眼圧55mmHgから治療翌日には25mmHgと、我々もビックリするほどの治療効果を得られています。
正規導入後、国内第一例目に治療を受けた患者様から治療動画のUPを許可頂きましたので掲載してみます。(僕の音声付きで恥ずかしいですが・・・。)

CLCLO G6 治療動画 (クリック

もちろん治療効果には個人差がありますし、日本人での長期安全性の評価、治療条件の調整(レーザーの照射方法、エネルギー量や治療時間、麻酔方法)などが必要ですが、それも含めて、もし将来的に低眼圧の症例にも適応が広がっていくのであれば、これは緑内障治療の世界が激変してしまう可能性がある治療です!!
まずは高眼圧での治療から開始しています。緑内障治療を数多くこなす大学病院では間違いなく必要とされ、数年で国内の多数施設に導入されると予想されますが、現状では治療施設が限られます。 本来、当院は遠方からの患者様の治療を極力お断りしていますが、失明リスクの高い高眼圧緑内障の患者様は、安全性の高い、この治療に限り緊急レスキューの意味で全国からの治療を引き受けます。
眼科の先生方も難治例、術後高眼圧例、仕方ないとあきらめる前にご紹介下さい。

毛様体凝固術

今日の午前は初めての医院様に出張し特殊な手術を担当しました。数名の眼科の先生にも見学頂き、久しぶりに緊張感のある手術でした。来週からは企業と機械の開発の相談があったり、いろいろと新しいことにチャレンジが続いて新鮮な気持ちです。

今晩は逆に、少し古い治療なのですが変わった緑内障治療の話を。
毛様体凝固術(もうようたいぎょうこじゅつ)
緑内障の治療は眼圧を下げて進行を遅らせることですが、眼圧を下げる方法(治療法)として、一般的に点眼薬、レーザー治療、内服薬、そして手術治療があります。
・点眼薬の一部や内服薬は、眼内を循環する房水の産生を抑制し眼圧を下げます。
・レーザー治療(SLT,虹彩切除)や、多くの緑内障手術では、房水の排出を促進させたり、新たな排出路を作成して眼圧を下げます。

重症例では手術で房水の排出路を作成する機会が多くなるのですが、せっかく作った排出路が癒着によって閉じてしまうと再度眼圧が上昇します。近年の医学の進歩はすさまじく、術後成績も上がってきていますし、複数回ダメになった術後に行う新しい術式が開発されてきていますが、どうにもならない難治症例というのも世の中には存在するのです。
毛様体は眼内で房水を産生する器官ですが、毛様体凝固術はその毛様体を冷凍凝固(クライオ)や半導体レーザーで冷凍または熱凝固し、毛様体を弱らせて房水の産生を低下させることで眼圧を下げる治療です。
実はこの治療、冷凍凝固で20年以上、半導体レーザーで10年以上の歴史を持つ、かなり古い術式なのですが、現在も緑内障が失明原因の1位であるように、今の医学でも標準的な緑内障手術では眼圧がコントロールできない症例が存在し、そのような症例に限って現在でも行われているのです。

術式ですが、まず注射による局所麻酔を行い、その後、クライオ(-80°の冷凍凝固)や、半導体レーザー(熱凝固)という器械の先を黒目の周り4mm程度の部位に押し当てて、十秒から2分程度(症例によって異なる)凝固する。という技術としては非常に簡単なものです。しかし、効果の差が非常に大きかったり、合併症が多いことが問題となり一般的な患者さんに行われることはなく、他の治療でどうにもならない超重症例・難治症例のみが適応となっています。

合併症
痛みが強いです。局所麻酔を使用してもある程度の痛みがあります。(痛みで治療続行が不可能になった例は経験がありませんが、全く痛くないという人は少なくて、それなりに痛みがあるという人が大多数です。)
強い炎症が起こります。眼球前方の炎症(虹彩毛様体炎)は必発で、一過性には逆に眼圧が大きく上昇することがあります。炎症が眼球後方に及ぶと脈絡膜剥離や黄斑浮腫などを生じたり、炎症により白内障が進行する症例もあるため視力が低下することもあります。
網膜剥離が非常に稀ですが起こりえます。眼内の組織が炎症によってひきつれる(収縮する)ことで生じますが、通常の網膜剥離が手術でまず治せる時代になってきたのと異なり、緑内障の末期の方は網膜剥離の手術に耐えられない場合もあり対応に苦慮します。
眼球勞(がんきゅうろう)これが毛様体光凝固で一番の問題となる合併症です。治療によって毛様体の機能を落として房水の産生量を低下させる治療ですが、効果が強く出すぎると眼球内部の最低限の圧を保つための房水も産生されなくなり、眼圧がゼロ、眼球が小さくしぼんでしまい失明に至る状態です。
特に③や④が生じた場合は治療によって失明してしまう場合がある治療ですので、基本的には眼圧が高く、他の手術が不可能で、毛様体凝固を行わなければ短期間で必ず失明。というケースのみ適応となっている術式です。

第17回 眼科臨床機器研究会

昨日は、横浜で開催された第17回 眼科臨床機器研究会で招待講演を担当しました。午前外来後、急いで特急に乗り込み、車内で資料を作ってどうにか講演に間に合いました。懇親会の後、大学の同級生(横浜で緑内障の専門医として有名)と2年ぶりに二人で乾杯。今朝は台風もあって始発で帰りつつ、この原稿を書いています。今月から渡部先生が着任し、宮井先生と一緒に沢山の患者さんを治してくれるので、僕は少しづつゆとりができるのかな?と淡い期待を。

講演の内容は、iStentに関してです。 今年発売されたばかりの緑内障手術デバイスですので、術後2ヶ月間の短期成績ですが、手術手技のコツや、注意点を踏まえて説明しました。 簡単な治療成績としては、 20例31眼 (男9、女11)(右14眼、左17眼) 緑内障内訳(NTG 5眼,POAG 21眼,PE 5眼) 術前眼圧、平均17.1±3.7mmHgから、術翌日15.1±3.8(12%低下)、1ヶ月後13.5±3.1(21%低下)、2ヶ月後13.3±2.1(22%低下)と、有意な眼圧下降を得られました。 また、点眼薬の使用数が術前1.7±0.7から、0.2±0.9と大幅に減少し、術後は多くの方が緑内障点眼薬から解放されました。

清水公也先生と。今では僕の診療の重要な部分である、「脳で物をみる!」という概念は清水先生の著書から学びました。

小林先生。大学時代からの親友です。緑内障のエキスパート。夜景がきれいなお洒落なお店を予約してくれましたが、周りはカップルだらけの中におじさん二人というのは・・・。

緑内障31 istent? (アイステント) 最新の白内障併用緑内障手術

今晩は、ある先生が発起人になって開催された「茨城県 若手術者の会」というクローズドな第1回勉強会に参加しました。
県内の40才前後、初回は6名の医師で全員が年間数百件の執刀をするメンバーでしたが、僕の出身大学の方は1名のみで、新鮮な話題も多く刺激になりました。
本日も少しistentのことを話しましたが、
10月21日に北里大学主催で開催される第17回眼科臨床機器研究会でもistentの講演依頼がありました。⇒http://www.soci.jp/

緑内障30 istent? (アイステント)
istentの手術動画

まだまだ研鑽中ですが、10症例目の患者さんに手術動画のネット掲載を快諾して頂けたのでupしてみます。
istent手術動画 ← クリック

実際の手術手技については、
・白内障のみの手術(点眼麻酔)と異なり、眼球後方への注射による麻酔を行います。
・標準的な白内障手術を施行。最後に洗浄する目の中の粘弾性物質という薬は、まだ残しておきます。
・白内障手術のために開いておいた瞳孔(散瞳)を、閉じる(縮瞳させる)薬を投与。
・患者さんのお顔を手術をする目と反対側に傾けます。(左目なら右側)
・少し頭を上げ、顎を引く位置にも傾けます。
・目の中を観察する顕微鏡を傾け、目の中を斜め上から観察できるようにセットアップをします。
・特殊なレンズを角膜(黒目)にのせると、隅角が観察できます。
・鼻側下方の隅角に、istentを差し込みます。
⇒隅角にistentを刺すと、基本的には必ず出血します、
・顔の位置、顕微鏡の位置をまっすぐに戻します。
(実はここが、医者の筋力・疲労として一番大変な作業です。)
・白内障手術で使用した粘弾性物質と出血を洗浄して終了です。

現在は20例程度施行し、istentのみでは約2分程度の手術となっています。

istentの一番の利点は、結膜などに全く侵襲がない手術であり、
手術時にきちんと挿入できない。感染。大出血など、まず起こらないような合併症がなければ、最悪のケースでも眼圧があまり下がらなかった。という程度で、将来にマイナスとなる後遺症が全くないことです。
(トラベクレクトミーは将来的な結膜の瘢痕、虚血性変化など、手術をすれば絶対に後遺症が残る手術です。)

緑内障30 istent? (アイステント) 最新の白内障併用緑内障手術

3月25日に国内承認された新しい緑内障手術、iStent(アイステント)ですが、
当院では開始後3ヶ月で13例を執刀しました。(出張の非常勤手術は除く)
まだ術後短期の成績ですが、今のところ13例全例が手術前と比べて眼圧が下がっていて、約半数は緑内障点眼薬を全く中止した状態でしばらく様子をみられる状態になっています。
初回の患者様ではistentの挿入手技に5分程かかっていましたが、10例くらい経験すると2分もあれば挿入可能になります。非常に低侵襲で将来性のある有望な手術です。
今日はアメリカの会社から取材があり、英語が苦手な僕はドキドキしていましたが日本語の対応で大丈夫でした。
今日はistentの一般的な説明を記載してみます。

緑内障30 istent? (アイステント)
最新の白内障併用緑内障手術

istentを簡単にまとめると、
軽症の緑内障の人が、白内障手術を受ける時に、同時にistentを隅角に挿入すると、術後に眼圧が少し下がることが多く、点眼薬が減ったり不要になるケースがある。数分の治療で費用も保険診療に含まれる(多くの人は両眼の白内障手術と自己負担が変わらない)。
という手術です。
*緑内障の末期の患者さんが、失明するかしないかという時に検討をする手術ではありません。(そういうケースは多くはトラベクレクトミーという術式が選択されます。)

専門的ですが、手術を受けられる人の適応を記載します。
?早期中期の開放隅角緑内障患者で白内障を合併している人
 (現時点では白内障手術を受ける時の同時手術しか、保険が通りません。緑内障が進行期・末期の人は適応外です。)
?20歳以上の成人 (小児は受けられません)
?以前に目の中の手術を受けた人は適応外。
?開放隅角のみ適応。
 (隅角に癒着など、特殊な病態があると受けられません。)
?その他、角膜や水晶体の状態により受けられない人がいます。

こちらは眼科医側の問題ですが、資格申請に最低以下が必要です。
A. 白内障手術の経験が100件以上(僕は約20000件)
B. 緑内障手術(レーザー治療除く)の経験が10 件以上(僕は約1000件)

具体的な手術手技は次回記載します。

緑内障29 緑内障のセカンドオピニオンと手術適応

今晩は宮井副院長に勉強会の講師の予定があり(これも緑内障)、手術数を制限したため、僕は夕方から暇でゆっくりとした夜です。

外来が慢性的に混んでいて、予約の患者様でも待ち時間が長くなり申し訳なく思っていますが、傾向としては第5週の数日は殆どの場合で空いているようです。
そして、僕が担当の土曜日の外来は殆どの場合で待ち時間が長くなってしまいます。土曜日は初診の方、普段仕事の若い方、そして遠方からのセカンドオピニオンの方が多くいらっしゃるためです。
以前にも記載したことがありますが、基本的には僕は遠方の患者さんの手術を引き受けるのをためらいます(術後管理まで含めて責任を持ちたいので)。
が、せっかく何時間もかけていらして頂いた方に、何のメリットもなくお帰り頂くことになるもの心苦しく感じています。
今日はせっかくいらっしゃる患者さんが無駄足にならないよう、緑内障のセカンドオピニオンに関して記載してみます。

緑内障29
緑内障のセカンドピニオンと手術適応


①紹介状が必要です。
まず、緑内障のセカンドオピニオンについてですが、ある程度の説明をするにも、絶対に紹介状(診療情報)が必要です。
緑内障の治療方針は、「眼圧がいくつであるか?」よりも、「今の治療法と眼圧で悪化傾向があるか?」「悪化するスピードはどの程度なのか?」によって、より強い治療に進むべきかを検討するからです。
数年分の視野や眼底写真、OCTの結果をみて、はじめて正確な経過が把握できるのです。
患者様によりますが「以前よりも見えなくなっているから手術をしてほしい」「主治医から視野が悪くなっていると言われているから手術をしてほしい」と訴える方が数多くいらっしゃいます。
僕は緑内障手術(特にトラベクレクトミー)はリスクも高く、できる限り受けないほうがよく、「他の方法では失明が防げない時に仕方なく受けるもの」と考えています。
「悪くなっている」と仰る患者さんの話を疑うわけではありませんが、明確に悪化傾向があると判断できる根拠なしには、リスクのある手術を検討することはできないのです。

②眼圧が10以下の患者さん
比較的多いセカンドオピニオンに、「緑内障できちんと通院して、点眼薬もさぼっていないのに、どんどん見えなくなっている。」という可哀想なケースもあります。
現状で眼圧が30とか40と高い状態が続き、視野も悪化傾向であれば、もちろん手術を検討すべきですが、もし眼圧が安定して10以下でいるのに悪化傾向であれば、残念ながらそれは現在の医学の限界であり、セカンドオピニオンで病院や主治医を変えても意味がありません。
緑内障の治療で絶対的な効果が証明されているのは、唯一「眼圧をさげること」ですが、実は眼圧が低くても進行を止められない症例もあるのです。眼圧を下げることで進行を遅らせることはできますが、イコール全く進行しない。という意味ではないのです。
悪化傾向であっても眼圧が10以下でコントロールされているのであれば、主治医の先生は決して無力ではなく、できる限りの治療を頑張っていると思ってあげてください。

③手術適応と考える眼圧
緑内障の手術方法は数種類ありますが、最も重要なトラベクレクトミーに関していうと、僕は15未満で変動が少ない人の手術はまず行いません
(日内変動が大きい人や、毎回測定のたびに眼圧が上下する場合ば別)
先日のセカンドオピニオンで、「キサラタンのみ使用していつも眼圧が11だけど、手術を勧められた。受けていいか?受けるなら山王台で。」というのがあり、当院での手術はお断りしました。
緑内障手術を受けるからには、手術前よりも眼圧が下がらなければ成功とは言えません。かといって、眼圧が5未満では低眼圧という状態で様々な合併症を生じますので、術前眼圧が11の人が手術を受ける場合、術後の眼圧が安定して6~10になる場合のみ成功といえます。眼圧を一桁にする目標を立てることはいいことですが、これを100%の患者さんに達成できるかというと、今の医学では絶対に不可能です。理想と現実は異なります。
術前眼圧が40であれば、6~正常上限の20が通常の目標ですが、最悪30だとしても一応はやってよかったと言えます(もとよりは下がって進行が遅れるので)。つまり眼圧が高い人ほど手術の成功率も高く、適応は広くなります。
世の中には眼圧が10でも手術を勧める先生がいるようですが、僕はその手術を高確率で成功させる自信はありません。
そして、トラベクレクトミーは一度受けてしまうと、後戻りはできません。濾過胞への房水の抜け道(レクトミーホール)を作ってしまうと、抜け道・レクトミーホールからの流出がメインとなってしまい、もともと備わっている隅角からの房水の排出路は機能しなくなってしまうのです。将来的に濾過胞がダメになってしまった時には、本来の隅角からの流出も期待できないため、トラベクレクトミーを受ける前よりも眼圧が高くなってしまうリスクがあるのです。
もし眼圧が10で手術を勧められた場合は、その先生は「術後の眼圧の目標をいくつと設定しているのか?」「術後の眼圧がどの程度の期間に渡って安定する見込みがあるのか?(特に若い人の手術は長期を検討)」「成功率を何パーセントと考えているのか?」を相談して、ご自身が納得いけば手術を受けてもいいでしょう。
ただし、僕が思うにそれはものすごく難しいことで、そして眼圧が15以下で手術を勧めるということは多くの眼科医にとって一般的ではありません。

④まずは主治医の先生と相談を
当院は基本的に全ての患者さんで、「付き添いの方は一緒に診察室に入って下さい」とお願いしています。病気の説明も複数で聞いた方が漏れがありません。点眼薬や食生活の管理がうまくいっているか、送迎が可能かなども確認できますし、緑内障など遺伝傾向がある疾患では簡単に診察をしたりもします。
セカンドオピニオンの場合もご家族一緒に説明しているのですが、「かかりつけの先生には一緒の説明を聞いていますか?」と質問すると、面白いことに多くの場合で「NO」というお返事をもらいます。
マンツーマンのやり取りはどうしても偏りがあったり、理解不良になる原因となります。わざわざ何時間もかけて当院にセカンドオピニオンに来る前に、まずは家族全員でかかりつけの先生に「治療は上手くいっているのか?悪化傾向なら他の方法が考えられるのか?」、相談をしてみては如何でしょうか?