急性涙嚢炎?

前回、急性涙嚢炎のブログを書いたところ、記載翌日に同じような患者様が受診されました。
(前回の患者様は、入院で特殊な抗生物質を点滴し、良好に回復中です。)
急性涙嚢炎?
今回の患者様は、涙嚢の袋の中に繰り返し膿がたまってしまう患者様です。

目頭の下方に、膿がたまって膨らんでいます。炎症が起こって、少し赤くハレてしまい、痛みが強いようですが、感染症としての炎症はそれほど強くは内容です。
感染症としては、まずは飲み薬や点滴で抗生物質を使用するのですが、内部に膿が溜まっている場合(膿瘍)には、メスで切開して膿を出したり、針で膿を吸引したほうが早く良くなります。内部のバイ菌の種類を調べることも可能です。

左写真:腫れている中心部をめがけて、注射針を刺します。
右写真:注射シリンジを引くと、膿が出てきて、涙嚢炎のふくらみペッタンコに。シリンジの中(写真右下)に、あおっぱなのような膿が引き出されたのが分かりますか?

この患者様は時々同じような炎症を繰り返しており、そのたび当院で膿を抜く処置を希望されます。
本来は膿がたまるスペース(涙嚢)を手術で摘出してしまって、もう膿がたまらないようにしてあげれば、もう涙嚢炎が起こらなくていいのですが、この患者様は手術希望がないのですよね・・・。
しばらく炎症が起こらないといいのですが。

もうすぐゴールデンウィークですね。何をしようかな。楽しみです[:GO!:]

急性涙嚢炎(きゅうせいるいのうえん)

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 10件
・網膜硝子体手術(茎離断)1件(糖尿病網膜症による硝子体出血)
手術は無事に終わりました。
今日は外来が混み(110名)、予約外の新患の患者様が沢山いらして、お待ち頂く患者様が多くなってしまいました。申し訳ありませんでした。

最近は外眼部疾患(眼球内のことでない病気)のブログが多くなっていますが、昨日、入院して頂いた患者様も外眼(がいがん)の病気でした。
急性涙嚢炎(きゅうせいるいのうえん)
涙は目の外側(左下の図で赤矢印の先)、涙腺という器官で産生されます。

まばたきによって、涙腺から目の表面で流れてきた涙液(るいえき)は、目の表面を潤したり、目の中に入ったホコリや花粉、バイ菌を洗浄したりしたあとに、
目頭にある涙点(るいてん)(緑矢印)から、涙嚢(るいのう)と呼ばれる袋状の管を通って、最終的には鼻の奥へと流れていきます。(右上の赤丸で囲んだあたりが涙嚢)
主に加齢を原因として、この涙の流れ道(出口)がふさがってしまう病気で、鼻涙管閉塞症(びるいかんへいしょくしょう)と呼ばれるものがあることを以前に記載しました。

涙には目の表面のホコリやバイ菌を洗い流す役割がありますが、鼻涙管閉塞症が起こると、涙の流れがせき止められてしまい、涙嚢のあたりにホコリが溜まったり、バイ菌が繁殖しやすくなるため、メヤニが出やすくなったり、炎症が起こりやすくなったりします。軽度の炎症は絶えず起こっており、慢性涙嚢炎と呼ばれ、繰り返すメヤニなどに対して適宜点眼薬を使用したりするのですが、
稀ですが、バイ菌による感染症が急激に悪化した場合などに、目頭のあたりから、ヒドイ場合には顔の半分近くまで腫れあがってしまう場合があり、これを急性涙嚢炎と呼びます。


目頭を中心にバイ菌感染による炎症が起こり、赤く腫れあがります。痛みが強く、炎症が強い場合には発熱することも。もちろん感染症なのでメヤニもでます。

治療は抗生物質による治療が基本となります。結膜や角膜の病気では目薬や塗り薬だけで治療が可能ですが、涙嚢炎では内服薬や点滴など全身的な投薬が必要になります。
左は内服薬(飲み薬)だけで外来で治ってしまった症例です。
今回の患者様は右の写真ですが、先週に目頭付近の痛みとメヤニ、腫れを訴えて受診となりました。
まず、メヤニを培養検査に回して、どのようなバイ菌がいるのか、どんな薬が良く効いて、どんな薬が効きにくいのか?などを調べるのですが、培養検査はすぐに結果がでるものではなく、数日?1週間程度の時間がかかります。その間、何もしないで待っているわけにはいかないので、一般的に使用される抗生物質の目薬、塗り薬、飲み薬を処方してお帰り頂きました。
薬との相性が良ければ(菌が弱くて薬が良く効けば)、外来で数日程度で治っていく病気ですが、今回は3日後の検査ではあまり改善がなく、金曜日に別の種類の抗生物質を処方して、週明けに再診して頂くことになっていました。
どうにも心配な症例だったので、一応、日曜日の朝に電話をしてみると、残念ながら腫れはひどくなって、痛みもツライようです。
培養の結果もちょうど判明してきて、やはり薬が効きにくい変わったバイ菌が原因のようです。すぐに受診して頂きそのまま緊急入院して頂きました。強力な抗生物質を昨日から朝晩の1日2回点滴していますが、先ほど診察してみると、だいぶ腫れが引いて、痛みは全くなくなったとのことです。よかった[:グッド:]
もう数日、入院での点滴を頑張ってから退院して頂く予定です。

全身的に抗生物質を使用したい時に、飲み薬で治療がうまくいかない時には、点滴での治療が必要になることがあります(飲み薬よりも点滴の方が早く協力に効きます)。薬の種類にもよりますが、入院が必要になる場合もあるので、ご協力を頂きたいと思います。

他の治療としては、
・袋に包まれるように膿がたまってしまう場合には(膿瘍形成)、皮膚を切開したり、針を刺したりして、膿を出した方が、治りが早くなります。
・再発のリスクを消失させたい場合には、急性期の感染症が落ち着いた後に、涙嚢を摘出してしまったり、涙の流れ路を作りなおす手術を行います。

今日もお読み頂きありがとうございました。

鼻涙管閉塞症(なみだ目)

金曜日は午前が通常の外来、午後が特殊外来です。
午後の特殊外来では、一部、簡単な手術を行っています。

今日は、2名の患者様に涙管チューブ挿入術(NS-チューブ)を行いました。

「なにもしないのに涙が溢れてくる」という訴えで、受診される患者様は大勢おります。涙目(流類)の原因にはドライアイや、結膜弛緩症など、多くの原因がありますが、中高年?高齢者の涙目の原因として、鼻涙管閉塞症というものがあります。

鼻涙管閉塞症・涙道閉塞症(びるいかんへいそくしょう・るいどうへいそくしょう)

涙は本来、眼球の外側上方にある涙腺(るいせん)という組織で産生されます。その後、目の表面を潤したり、ホコリを掃除したりしながら、最終的には目がしら付近の涙点(るいてん)と呼ばれる穴から、鼻の奥⇒喉のほうへと流れていきます。この涙の通り道を鼻涙管や涙道と呼びます。
子供の時はこの流れがとてもいいので、目薬を付けて数秒で「苦い」と感じます。大人になると、この涙の流れ道が狭くなってくるために、目薬が苦いという感覚がなくなってきます。(すでに、僕にもありませんが、残念です・・・。)

鼻涙管閉塞症(涙道閉塞症)は、この涙の流れ道が詰まってしまった病態です。原因は、稀には鼻腔の腫瘍や外傷であることもありますが、ほとんどの場合は加齢です。(赤ちゃんにも、先天性鼻涙管閉塞症という病気がありますが、今回は触れません。)

涙の出口がないため、何もしていないのに、涙が潤んでしまったり、涙がこぼれて(流涙)、目じりがただれたりします。また、ホコリやバイ菌を流す作用がなくなり、メヤニが出やすくなったり、花粉もたまってしまうためにアレルギーが強く出るなどします。

目薬には、メヤニや涙の症状を和らげる効果はありますが、詰まってしまった道を開通させる効果はありません。(治すことはできません。)

以前はブジーと呼ばれる、針金を突き刺して穴を開けようといった治療が行われましたが、すぐにまた詰まってしまうことが多く、最近は行われなくなりました。

近年もっとも行われている治療にNS-チューブというものがあります。針金のブジーを通した後に、シリコン製のチューブを通し、1?2ヶ月のあいだ、チューブを留置します。チューブが長期的にいることで、再閉塞が起こりにくくなる治療です。局所麻酔で10分程度で終わり、発症後1年以内であれば良好な成績が期待できます。
ただし、発症後数年など、時間がたっている場合には治療ができなくなってしまったり、再閉塞の確立が高くなってしまうために、涙目になった場合は出来るだけ早く受診するようにしましょう。当院でのNS-チューブは、現在、1ヶ月程度の待ち時間で施行可能です。

残念ながら、長期間過ぎてしまった症例など、NS-チューブが施行できなくなってしまった方は、やや大きな手術となりますが、涙嚢鼻腔吻合術といった手術があります。以前は、全身麻酔で骨を削って、道を作成して・・・という、大掛かりで負担の大きな手術が主流でしたが、最近は鼻側から内視鏡を使って行う、鼻内法と呼ばれる、局所麻酔で、負担の少ない手術が増えてきています。
鼻内法の涙嚢鼻腔吻合術を現在勉強中です。1年程度で当院にも設備を整えて治療を開始したいと考えています。
頑張りますので、もうしばらくお待ちください。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)