義眼

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 9件
・網膜硝子体手術(茎離断)1件 (裂孔原生網膜剥離)
無事に終わりました。
網膜剥離の方は県南のクリニック様からの紹介ですが、既に黄斑部(中心部)まで剥がれており、午前中に受診。昼休みを利用して、すぐに手術をする事が出来ました。早急に紹介をして頂いた先生、さっと手術の準備をしてくれるスタッフに感謝です。

網膜が少しシワシワで、剥がれてから数日程度は経っていそうです。手術は問題なく出来たので、うつ伏せを頑張って頂ければ、きっと大丈夫かと。

今日はちょっと珍しい話題で。
義眼(ぎがん)
義という感じにはいろいろな意味がありますが、義足や義歯とかと一緒で、ここでは仮のとか、そういう意味です。
義眼は、残念ながら疾病や外傷で、眼球を失ったり、萎縮して小さくなってしまったりした人が、主に見た目の問題(整容的な問題)などから、装用するものです。
眼球を摘出して失ってしまった場合や、眼球は残っても萎縮して小さくなってしまった場合などは、失った側の顔立ちに変化が起こり、まぶたなど、お顔がくぼんで見えたり、まぶたが開かなくなってしまう事があります。また、ケガや病気の内容によっては、角膜(黒目)が白く濁ってしまう事も。

眼球を失ってしまう事は非常に残念ですが、その後の見た目に苦しむのも、患者様にとっては重大な問題です。義眼はなくなった眼窩(眼球が入るべき目のくぼみ)に入れたり、萎縮した眼球の上に乗せるような形で、使用することで、まぶたの凹みを軽減したり、黒目の見た目を良くしたりと役立ちます。

また、生まれつきや、小児期(成長期)の病気やケガで眼球を失った場合や、眼球が小さく生まれてしまった場合(小眼球)は、眼球周囲の骨格の成長が障害されて、目のあたりがくぼんだ顔立ちになってしまうことがあります。幼少時から義眼をいれることで、正常な顔立ちへの発達を促すために使われることもあります。


義眼というと、「丸い球体」をイメージする人が多いようですが、そんなことはありません。
実際には、上のような、それほど厚みの無い、かぶせ物。のような形です。目の癌などで眼球を完全に取り去った場合などの、極一部の症例では少し厚みのある半球状の義眼を入れる場合もありますが、僕はそのような患者様は、これまで担当したことがないくらいで、非常に稀かと思います。
(眼球だけでなく、周囲の皮膚・筋肉なども失った人が使用する外装義眼というものもあります。)

義眼は、反対目の黒目の大きさや、白目の充血具合、色合いなどをあわせて作られ、多くはオーダーメイドで、最近の義眼は一般人が肉眼でみたら、一見義眼だと分からないくらい、とてもよくできているものが多いです。
(既製品のものもあります。)

ただし、義眼はとっても高価です。
・義眼を作る原因が、労災や戦争被害だったり、また障害者や生活保護の患者様では、公費で作成が可能です。眼科医や義眼作成会社様に相談してください。
・他に、健康保険や社会保険などで一部の費用が負担されることもありますが、それでもある程度の費用はかかるようです。義眼の種類によっても、価格がかなり異なるので、相談するとよいでしょう。
(小児の小眼球などでは、片方の目が正常だと、視覚障害には該当しません。補助がない。または少額になってしまうのが現状です。当院で義眼による眼窩の形成を観察させて頂いているお子さんが数名いますが、1人は費用の問題で作成が遅れて困っています。子供の成長は重大な問題なので、法律の改正とか、どうにかいい方法がないかと思うのですが・・・。)

見た目はすごくよくなる事が多い義眼ですが、義眼をしようしている患者様にお願いが一つ。
義眼は1日1回、とりはずしての洗浄が必要です。
やはり、通常の目と違って、内部(義眼の裏側など)にホコリやバイ菌が溜まったり、メヤニが出やすくなるようです。
(正確には、寝るときは外すことが必要と言われていますが、これは最近は、1日1回洗えば、あとは入れっぱなしでもOKという考え方も出てきているようです。)

当院は外傷などの手術が多い割に、開院後の2年ちょっとでは、当院での術後に義眼を処方した人はまだいないのですが、昔からいれている人は、ちょこちょこいらっしゃいます。
高齢の方になるほど、「洗うんだっけ?忘れちゃった。もう5年くらい、1回も取ったことない。」なんていう人がいたり、
「メヤニが出る。」と言いながら、義眼は洗わない人がいたり・・・。
困ったなぁ。と思う事がしばしば。

義眼は数年で形が合わなったり、キズがついたりと、2年?4年とか、ある程度では交換が必要です。(顔立ちの生長する、幼児などではもっとこまめな交換が必要です。)


これは先週の外来で、義眼を作成したと、拝見させて頂いた患者様です。
3年ほど前に、外傷で眼球破裂。大学病院様で手術をしたそうですが、残念ながら視力を失い、黒目が濁ってしまったようです。
当院に転院となり、義眼を勧めさせていただいたのですが、一緒に訪れた奥様も「義眼って分かりませんよね?」と喜んで頂いているようでした。

黒目が白く濁ってしまうようなケースで、眼球の上から装用出来るタイプの、薄い義眼があることを知らない先生も多いようなのですが、知ったら、作成を希望する人が世の中には沢山いるのでは??と思って、ブログを書いてみました。
希望がある人がいれば、担当の先生に義眼について質問をしてみてくださいね。

明日も出張で硝子体手術です。
今週は個人的にとっても忙しそうですが、頑張ります!

失明

今日は小美玉市医療センターで井上先生と手術です。
午後に白内障手術が7件でした。無事に終わっています。

今日は、ちょっと嫌な話ですが、失明について書いてみます。
失明(しつめい)
失明とは、明かりを失うこと、目が見えなくなることです
一般的には人生の途中で見えなくなることで、生まれつき見えない場合は盲(もう)と呼びます。

日本中で1年間に失明されるかたが、どれくらいいるのでしょう?
実は、これが非常に難しいのです。

例えば、失明を、まったくの光が分からない(生物学的な失明)とするか、視機能の低下により日常の生活ができない(社会的失明)とするか、などで、数がかなり変わってきます。
また、失明した人を把握するという事自体が、とても難しく、死亡届のように届け出の義務がないため、片目が見えなくなっても誰にも言わない人もいますし、医師も片目失明した人に、なにかの登録などを勧めるわけでもありません。両目の視力が悪くなり、視覚障害というのに該当する場合には、医師から患者様に登録を勧めるのですが(残念ながら、そうしない医師もいますし・・・。)、視覚障害(身体障害者)の申請を好まない患者様もいるので、実際に失明していても、国として全てを把握することはとても難しいのです。

一般的な値として、僕たちが診察中に失明の原因として説明する時は、厚生労働省などが発表する統計を参考にするわけですが、基本的には視覚障害者の申請の数から決められているようです。これが、新聞や医療の講演会などでも引用されます。

では、一般的に言われているランキングです。
失明の原因
?緑内障
?糖尿病網膜症
?網膜色素変性症
?黄斑変性症
?強度近視(変性近視)

などとなっています。

上記の全てに関して言えるのが、網膜・神経が駄目になるという事です。

眼球の断面図ですが、左側(黒目側)から入ってきた光が、右奥(眼底)に届くと物が見えます。青矢印(角膜)や、赤矢印(水晶体)は、光を通してピントを合わせるという、カメラで言うとレンズの役割をします。右側の緑の部分が光を感じ取るフィルムの役割で、網膜と呼ばれます。
赤矢印の水晶体が濁った場合を白内障と言いますが、この場合は、見えなくなってから病院に来ても、人工のキレイなレンズと交換すれば、簡単によく見えるように回復します。青矢印の角膜が駄目になっても、簡単ではないですが、角膜移植といって交換をすれば、ある程度は回復します。
こんな感じで、目の前の方の病気は、悪くなってから交換しよう。で、すむのですが、
目の後ろの方(眼底)に問題が起こると大変なのです。
現在の医学では、上の図の緑の部分、網膜や神経を回復させたり、交換するといった医療は存在しませんので、網膜や神経が駄目になって見えにくくなったら、あきらめましょう。という事になります。
・圧力が原因で、神経が押しつぶされる⇒緑内障
・糖尿病で血管が詰まり出血⇒糖尿病網膜症
・遺伝子レベルの以上で網膜が死んでしまう⇒網膜色素変性症
・加齢などが原因で、網膜・フィルムで出血⇒黄斑変性症
・眼球が以上に大きくなり、網膜が薄くなる⇒変性近視

他には、
・外傷などで網膜が破れる⇒網膜剥離 なども失明につながります。

よく外来で、1ヶ月前から見えなくなった。もしくは、1年前から見えにくかった。という患者様がこられます。
眼科では、加齢を原因に人類の全員がなる、白内障という病気の患者様が多いため、手術をすれば治る。というイメージが強いのですが、上記のような網膜や神経の病気は、基本的には治りません。それ以上進まないように治療をすることになります。

上記のような重大な病気を含めて、基本的に目の病気というものは、初期段階では自覚症状がなく、気がついた時にはかなり症状が進行しているというものが圧倒的に多いのです。このため、自己判断により病院に行かなかったり、治療を怠ったりすると失明という最悪の結果を生み出します。
初期の段階で、きちんと発見し、その後もきちんとした治療を受ければ、医学が進歩した現代では、実は?緑内障も、?糖尿病網膜症も、?黄斑変性症もほとんど失明することがない時代なのです。
どれも年間数千人の失明者がでる病気ですから、みなさんが、出来れば、年に1回程度の定期検査をしたり、異常を感じた時にすぐに病院に来たり、きちんと治療を受けてくれれば、年に一万人の失明者を減らせるのです。

昨日のブログで書いた、網膜中心動脈閉塞症の患者様は、小美玉市医療センターで、現在の医学で出来うる限りの治療を行いましたが、残念ながら、手動弁(しゅどうべん)といって、光の影が動くのが分かるか分からないか。といった程度です。片目ですが、社会的失明に当たる視力です。
この病気は、血管が詰まって、見えにくくなってから1時間?2時間での治療が必要です。この患者様は丸々1日たってからの受診のため、治療前から予想は出来ていましたが、やはり駄目か。といった具合です。急に見えにくくなったら、すぐに眼科に電話をするか、救急車を呼ばなければいけないのです。明日でいいやでは、遅いのです。
(網膜中心動脈閉塞症に関しては、以前のブログを参照下さい。)
2011.04.23 Saturday
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4925

健康な人であればものを見るのは無意識で、特になにも考えなくてもあたり前のようできるのです。ですから少しでも異常、異変、違和感を感じたら、早めに眼科での診察を受けてください。

当たり前ですが、眼科医は患者さんに失明されるのが、とっても嫌なのです。僕も外来で、たまには、厳しいことをいうことがありますが、許して下さいね。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

視覚障害者

午前の外来が終わりました。約50名の患者様がいらっしゃいました。
(最近は予約制が上手く機能し、午前中は、ほとんど毎日50名程度と安定しています。)
火曜日の午後は出張で、他院にて手術の予定です。緊急の患者様はまずお電話にて相談下さい。

昨日の関連で、視覚障害者に関しての分類を載せます。
該当する患者様はお知らせ頂ければと思います。

視覚障害者

1級:
両眼の視力の和が0.01以下のもの。

2級:
(1)両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの。
(2)両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの。

3級:
(1)両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの。
(2)両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90%以上のもの。

4級:
(1)両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの。
(2)両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの 。

5級:
(1)両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの。
(2)両眼による視野の2分の1以上がかけているもの。

6級:
一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を超えるもの

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)

ロービジョンケア

ゴールデンウィークはとてもゆっくりできました!
連休中に緊急の患者様を7名程度お引き受けしましたが、1名、留守でお引き受けできませんでした(何かを燃やしていて、目に入ったかた?)。すみませんでした。

今日は4名の手術を行いました。無事終わりました。
・白内障手術 6件(2名は両眼)

ロービジョンケア

当院では、かなり多くの患者様の手術等を引き受けさせて頂いております。
ただし、残念ながら、糖尿病や黄斑変性、緑内障などで、末期になられてから初診となる患者様も多数おられ、そのような病気では手術によって失明は防げるものの、元通り見えるなど、回復して頂くことは現在の医学ではできません。

私たちは「いかに多くの患者様を見えるように出来るか」だけではなく、「見えない患者様にどう向きあい、お付き合いしていくか」ということを常に考え、最善の医療を行っています。

ロービジョンケアとは様々な眼病で、視力が低い、または視野が狭いなど、視機能が十分でない患者様で、回復することが困難な場合に、どのようにしたら、よりよい生活を送って頂けるかに対応することをいいます。

?視機能の評価
まず、視力や視野、コントラストなど、患者様の見え方、不自由となる点を詳細に把握し、どのようなケアが必要かを検討します。

?生活環境のアドバイス
・例えば下方の視野が狭いようであれば、歩行時につまずいて転倒する事がないよう、気をつけるようお伝えします。
・脳梗塞後などで左側、右側などの視野が消失している場合には、歩行時の注意などに加えて、ご家族と歩行する時には、不自由な側にご家族の方がいて頂いた方がよいでしょう。歩行の介助法なども指導します。左側が見えない場合は、食卓での椅子の配置として、ご本人の左側に壁がくるように(右側にご家族)、席の配置を考えるとよいでしょう。
・視力の弱い人は、物が白っぽく見えたり、眩しさを感じやすい傾向があります。近年は欧米風の住宅が増え、室内のクロス・壁紙などは白くて、明るい住宅が増えていますが、カーテンやベットカバー等の色調を、灰色や茶色などの、少しトーンを落とした色にすることで、かなり改善します。白い食器に白いご飯では、コントラストが低くて見えにくいため、ご飯の食器も黒などにした方が見えやすくなります。眼科では真っ白な壁紙などは少なく、見栄えが悪くても黒などを取り入れている医院が多いと思います。視力の弱い方に配慮しているためです。

?ロービジョンエイド
ロービジョンエイドは、視力や視野の弱い方が、特殊な器械を使うことで、残っている機能を発揮しやすくする器械のことです。
・遮光眼鏡;眩しくて物が見えずらい場合には、眩しさを軽減する眼鏡を作成します。
・ルーペ(むしめがね)も、その視力や病状によって、多種多様のものが販売されております。
・拡大読書機;新聞などを、テレビ用の大きなモニターに映し出し、文字を読むことが可能になります。眩しさを抑えるために、白黒反転の機能もついています。(背景が黒、文字が白に逆転します。)

その他、白杖(安全用の白い杖)、単眼鏡、点字ディスプレイ、点字タイプライター、文字読み明け装置などの、数多くの機材があります。

?身体障害者、視覚障害の申請
国の基準を満たす、視力障害や視野異常がある場合に申請が可能です。
等級を取得することで、重症度によりますが、医療費の扶助や、通院の介助、上記のロービジョンエイドの扶助(多くの場合は患者様は1割負担)など様々なサービスが受けられるようになります。
視覚障害者の認定は、市役所の福祉科を通じて、都道府県知事の指定する医師の診断書を提出する必要があります。

残念ながら日本の眼科医療は、回復の見込めない患者様に十分なケアが行き届いてはいないと言われています。視覚障害に該当することを知らない患者様や、ロービジョンエイドのことをご存じでない患者様が多くいられます。

当院では、????の全てのケアを行っています。
ロービジョンエイドとしても遮光眼鏡、ルーペ、拡大読書器などを常備しており、専門的なアドバイスが可能です。治療が不可能と言われているが、どうにか頑張って文字を読みたい。そんな患者様がお近くにおられましたら、ぜひ当院を勧めて下さい。
(視野検査や、ロービジョンエイドなどは、非常に時間がかかることがあります。基本的に予約制で行っておりますので、まずは電話にて予約をしてください。)

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)