第38回 日本眼科手術学会

1月30日(金)から2月1日(日)まで、京都で学会が行われました。
30日の夕方に眼球破裂の緊急手術があり、日曜日も緊急手術だったので、
31日の始発で京都入り。お昼に自分の発表。夜は他大学の先輩たちと京都料理を堪能して、ほろ酔い?泥酔?で終電帰宅という、ハードスケジュールでした・・・。

第38回 日本眼科手術学会

眼科では比較的大きな学会で、その名の通り手術に関する発表が多い学会です。
僕は、当院で開発した眼科手術に使用する麻酔針について講演しました。

眼瞼下垂や、逆さまつ毛の手術では、まぶたに注射針をさして麻酔をする必要がありますが、顔の麻酔って結構痛いものです。通常、注射の針というと先が尖っているものですが、当院では先端をわざと丸くしたものを開発し、皮膚の下に滑り込ませることで、痛みや、内出血の発生を軽減することができています。

左が通常の27G針、右が開発した麻酔針で麻酔薬は側面の穴から出てきます。
以前にUPした眼瞼下垂の動画でも、開発途中の麻酔針が出ており、ご興味のあるかたは参考にどうぞ。
眼瞼下垂手術(鈍針麻酔)

手術は患者さんにとって不安なものですが、なかでも痛みに関する恐怖心は大きなストレスです。麻酔の痛みを軽減する方法には、他にも
・針の太さ
・麻酔の前に冷やす
・予備麻酔(麻酔薬の塗布、極細の針で少量麻酔)
・麻酔薬の温度
・麻酔薬の注入速度
などがあります。少しでも痛みを少なくしてあげたい。そして何より楽しい雰囲気で手術を提供したいと日々試行錯誤をしている毎日です。

これに満足せずに、どの手術においても、もっと痛みを少なくできないか。
もっと安心して手術を受けて頂くことができないか。研鑽していきます!

第68回 日本臨床眼科学会

今晩は土浦市、牛久市の眼科の先生と勉強会・食事会をしました。3人とも同世代でいろいろ刺激になりました。

さて、先週11月13日?16日は神戸で大きな眼科の学会がありました。僕も宮井副院長も発表があり、期間中の外来を制限させて頂くなど、患者様にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
第68回 日本臨床眼科学会


宮井先生は「糖尿病患者の網膜光凝固で誘発される黄斑浮腫の予防についての検討」という演題での発表となりました。
糖尿病網膜症に対して、失明を防ぐための最もベースとなる治療法は、網膜光凝固術(レーザー治療)です。(⇒病気の詳細は以前のブログを参照
失明を防ぐために行う必須の治療ですが、残念ながら治療のせいで逆に中心視力が治療前よりも下がってしまうケースもあり得るのです。当院ではケナコルトというステロイド剤と、アバスチンという抗VEGF薬の注射を予防的に併用する治療を積極的に行っていますが、治療した52例の全員が誰一人、視力低下が起こらず、黄斑浮腫の悪化を認めなかったことを発表しました。
日本でも、最近はアバスチン以外の抗VEGF薬が2種類、正規に販売されましたが、当院では数年前から未認可の状態でも先進的な治療を行ってきた結果の成績です。
昨日、抗VEGF薬の製薬メーカーの方から連絡があり、年明けに勉強会の講師を依頼して頂けました。こちらも頑張ります。


僕は「強制的に視野の欠損を認識させた緑内障患者における通院継続率の検討」
という演題で発表しました。
(⇒緑内障に関するブログはこちらを参照
緑内障は末期になるまで自覚症状が乏しいことで有名な病気です。痛くもかゆくもなく、自分自身では見えていないことに気が付きません。このため人間ドックなどをもとに早期発見・早期治療ができても、途中で通院や点眼を辞めてしまうことが多いことで問題になります(治療中断)。ある発表では治療開始後の1年間で40%の人が治療から脱落してしまったというものもあります。
本人は見えていると思っても、マリオット盲点と呼ばれる誰にでもある「見えない場所」や、緑内障の病気で「見えない場所」を自覚させることで通院の継続率が改善したことを報告しました。
僕はかなりしつこい性格なので??、予約日に受診していない人には数ヶ月後に電話をしたりします。2011年に当院で緑内障と診断された患者様はなんと3年間の経過で97%の患者様に通院を継続して頂いております。当院の成績は良好であったことも発表しましたが、学会発表ができたのは、当院の患者さんが非常に優秀だからです。本当にありがとうございました。

盲点や暗点などを自覚してもらうために、以前に自作した道具「栗棒」を使ったのですが、発表後に問い合わせがあり、なんと2本を販売することになりました。
(⇒マリオット盲点・栗棒については以前のブログを

そして今日は、都内の眼科の先生というか、日本を代表する緑内障の名医の先生からポスターを見たとお電話を頂き、緑内障の啓蒙についてお力を貸して頂けることになりました。今回の発表で参考文献にさせて頂いた重鎮の先生から、直接お電話を頂けるなんて思ってもいなかったので、本当にうれしかったです。

今後も大きな学会での発表がいくつも予定されていますが、情報発信に向けて頑張っていきます。

充血の話 ・ 白目の美しさ??

今日の午後は近隣の眼科様で手術のお手伝いがありましたが、
他に、4人の眼科の先生方から、患者さんの相談のメールを頂きました。
今はインターネットで患者さんの眼底写真やOCT検査の結果などを簡単に見せてもらえるので、遠くの患者様について沢山の先生と一緒に考えることができるようになりました。本当に便利な時代ですね。

充血の話 ・ 白目の美しさ??
先日、ブログで以下を記載しました。
・白目の充血のすべてが悪ものではないこと。
・市販の充血用の目薬はお勧めできないこと。

でも、実際には多くの方が、白い目が好きなのですよね。
こんなの。
外来をやっていると、週に数人は充血の相談に来られる患者様がいます。
今日は白い目を取り戻すために気を付けることを書いてみます。

1.病気の治療
充血が悪いことばかりではないと言っても、ドライアイや、アレルギー性結膜炎などが合併していることも多々あります。メヤニなどがなくても、1回は眼科で検査をして、もし病状に見合った点眼薬などの処方があれば、使用するべきです。
*ドライアイなどの点眼薬は即効性があるものばかりではありません。ゆっくりと体質改善などを促すものもあるので、使用回数を守って数ヶ月単位で気長に付き合いましょう。

2.紫外線を予防・禁煙
紫外線は熱傷やアレルギーなどによって充血を引き起こす原因になります。また、黒目の両眼に瞼裂斑(けんれつはん)と呼ばれる、黄ばんだ?茶色い膨らみ・出来物を作ってしまうリスクの原因ともなります。

矢印が瞼裂斑です。加齢に伴って、ある程度の瞼裂斑は誰もが持っています。
サングラスをかけたり、帽子をかぶったりすることで、充血だけでなく、瞼裂斑のような黄ばみや茶色の膨らみを抑えることができます。
また、喫煙(タバコの煙)も瞼裂斑が生じるリスクの一つとなったり、血管収縮から血流動態に影響することがありえます。見た目を重視する人は禁煙が望ましいでしょう。

3.眼精疲労を減らす
疲れた目は、栄養分を多く必要とするため、充血して血流を増やし回復に努めます(充血は回復にとって有利!)。なので、充血自体が悪いわけではないのですが、充血の見た目が気になる人は、睡眠時間をしっかりとったり、細かい作業やパソコン業務では適宜休憩をとったり、老眼鏡など適切な眼鏡を使用しましょう。
目を疲れさせない生活をおくることで充血を減らすことができます。

4.結膜弛緩症
ある程度以上の年齢では、結膜弛緩症による充血がよくみられます。
加齢やその他の原因によって、結膜の緩みが大きくなると、まばたきをする時の摩擦が大きくなります。結膜の摩擦が大きくなると、コイル状・コークスクリュー状の異常な血管が形成されることが知られています。

結膜弛緩症が充血や、結膜下出血の原因となる場合には、手術にて緩んでしまった結膜を切除したり、結膜の皺を延ばすことで、白い目に戻ることもできます。(保険適応)

ほとんどの充血は上記のようなことを守って、気長に付き合うことで、ゆっくりと薄らいでいくものです。即効性で短期間で治るものではないですが、白い目を強く希望する人なら、多少時間がかかっても頑張っていただけるのかな?と思います。

*いろいろ頑張ってやっても、どうしても充血が気になる人は、一応手術にて充血を消失することもできます。他の病気や、結膜弛緩症もないような場合、手術加療は美容的な問題に対するものであり、基本的には保険適応ではありません。
山王台病院での手術は、失明のリスクのある重症患者様の手術でも数ヶ月?半年待ちとなっている状態ですので、現在は美容目的の手術などはご遠慮頂いております。どうしてもという場合には、私が非常勤で手術を担当している医院のうち3施設で、自由診療にて対応しますので、ご相談ください。

充血の話 ・ 白目の美しさ??

今月は他院の眼科様からの見学が多く、外来の見学に3回、手術の見学に2回来て頂きました。みなさん男性の先生ですが、一応、「見学者あり」といった張り紙をしていますが、診察室に新しい先生がいたり、手術中にぶつぶつと説明をする声が聞こえたり、患者様にとっては良い気持ちではないのかもしれません。すみませんがご了承頂ければと思います。カルテないようなども見学頂いておりますが、もちろん、守秘義務などはきちんと守って頂いています。

さて、今日は病気ではないのに、比較的問い合わせの多い事柄を書いてみます。
充血について(白目の美しさ)?
多くは女性の患者様ですが、外来をやっていると、白目の充血(赤み)をきにされて来院される方がいらっしゃいます。

メヤニや、痛み、かゆみ、視力低下などを伴って、結膜炎やぶどう膜炎と診断される場合は病気として扱うべき充血ですが、実は充血のすべてが悪者で病気というわけではありません。
(結膜炎は、結膜に炎症がある場合の総称です。原因によって、バイ菌による感染性結膜炎では細菌性結膜炎・ウィルス性炎や、花粉症はアレルギー性結膜炎、ドライアイは乾燥性角結膜炎、紫外線による結膜炎や、擦ったあとなど外傷性の結膜炎もあります。)


これは10代。ピチピチのきれいな白目です。


これは、ぶどう膜炎という病気になってしまった患者様の白目です。
赤み、充血が確かに強く、眼科医がみれば病気なのはすぐわかります。


これは最近、「充血がとれない」「白目がきれいでない」と訴えて来院された患者様の写真ですが実は病気らしい病気はありません。

充血とは血が充ちる(ちがみちる)と書きます。血管の中を流れる血液(酸素を運ぶ赤血球)の流れが増えて、血管が太くなり、見た目として赤みが増すわけです。
「充血」というと悪者のように聞こえますが、「血のめぐりがよい」というと、むしろ、高印象ですよね?
問題は血流の増加・血管の拡張がなぜ起こっているかによります。
例えば、肉体労働の方の腕には太い血管が目立ちます。筋肉をたくさん使ったら、血流を良くして、栄養分や酸素をたくさん運び、老廃物を持ち帰る必要があります。目をたくさん使った場合に、充血するのは疲労を取るためには必要な正常な現象です。お風呂に入ったり、お酒を飲んだりして、顔が赤くなったり、目が充血するもの、血液の流れが良くなっていると考えられます。
寝不足とか、仕事で忙しかったあとは、目だって栄養が酸素が血液がほしいです。疲労回復のためには、血流が増えて充血、赤みが増すのは良いことなので
す。
充血は必ずしも悪いものではありません。

では、悪い充血とはなんでしょう?充血自体が悪いのではないですが、例えば、結膜炎などでバイ菌が感染した場合には、血液の中の白血球という細胞がバイ菌をやっつけるために頑張ります。そのため血流を増やして(充血させて)、白血球を沢山送り込もうとするのです。この場合の充血は、一応悪い充血と考えてよいですが、充血自体は自分の体をまもるために起こる正常な反応ともいえます。
つまり、充血=悪者、とは一概には言えないのです。
また、腕の血管も目立つ人、目立たない人がいますが、目の血管もやはり個人差があって、もともと血管が多く、赤みが目立つ人もいるのです。

基本的な考え方としては、痛み、かゆみ、メヤニ、視力低下などの他の症状がなく、ただ見た目として白目が赤いだけという場合は、ほとんどの場合が病気ではないようです。
(眼精疲労を病気というなら病気ですが、それなら運動をしたあとの筋肉痛も病気ということですよね・・・。)

逆に赤みを伴う時に、痛み、かゆみ、メヤニ、視力低下を伴う時は、少なからず病気の可能性がありますので、心配なら眼科を受診するべきでしょう。

ただ、他の症状がない充血でも、花粉やホコリなどに対するアレルギー性のもの、または軽いドライアイ、他には紫外線などが影響し、その免疫反応として充血が起こっている場合には点眼薬で軽快できることもあります。症状がなくても、赤みが気になって解決を望む場合には一度眼科で相談するとよいかと思います。僕は病気とは考えていませんが、眼精疲労による充血も、老眼鏡などのメガネの調整を相談することで、長期的に充血を改善することができるかもしれません。

ここからが問題なのですが、充血を主訴に来院される患者様の中に、「市販の点眼薬を1日10回以上つけている」とおっしゃる方がいらっしゃいます。
実は、市販でも充血をとる(取り繕う)目薬があり、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリンなどが含まれます。これらは血管収縮剤と呼ばれる成分で、血管を締め付けて、血液の流れを一過性に制限するものです。パッとみでは、一過性に赤みが抑えられます。
疲れて、目が必要な栄養分・血液を欲しがっている場合に、血管を収縮させれば、目は新しい血管を生やすようになります。すると、長い目でみればより血管が増えて、通常の状態でも赤みが強くなります(リバウンド)。目薬メーカー本当はリバウンドのことを知っているのに、売り上げのことや、「パッと見は、すぐに白くなる」という即効性の患者さんの満足度のためには、悪と分かっても血管収縮薬を入れちゃうのでしょうね・・・。
個人的には血管収縮薬は、初デートや、結婚式、重要な頑張りどころなど、どうしてもという場合以外では使うべきではないと思っています。
血管収縮薬の常用はお勧めしません!

ちなみに、外来で「赤くなった。充血した。」という方が来院された場合、
最も多いのは結膜下出血という内出血で、充血ではありません。

これが結膜下出血ですが、これも病的な意義は乏しく、大きさによりますが数日?3週間程度放っておけば自然に消えるという状態です。
結膜下出血については以前のブログを参照←クリック
充血との違いは、
・血管の走行と関係なく、ベタッと赤い。
・強い赤みの割にメヤニなどの症状がない。
・内側は赤く、外側は正常など、赤い場所が局所的

学校医

今日から、日曜日まで東京の国際フォーラムで、
日本眼科学会総会と、WOC(世界眼科学会)総会の合同学会があります。
学会参加のため、完全な休診にはなりませんが、
平日は、午前中が宮井副院長が休診、午後は栗原が休診となる予定です。
(緊急手術などなければ。)
予約外の来院は、お電話にご確認頂いてからの受診をお願い致します。

さて、先ほど、教育委員会より学校医の委嘱状が届きました。
学校医
学校保健安全法というものに、「学校には、学校医を置くものとする。」というのが存在します。
市町村(地域)によるのですが、眼科の学校医が必要とされる場合があります。
他の先生からの引継ぎで、この4月より石岡市内の以下の学校で学校医を担当させて頂くことになりました。
・府中中学校
・城南中学校
・石岡小学校
・三村小学校


学校医の仕事は、学生の目病の早期発見に努めることで、4月?6月に、直接学校に伺って検診を行う予定です。もしも異常が見つかった場合には、お手紙で保護者様にご連絡を差し上げますので、きちんと来院するようにお願い致します。

数時間の診察で500名を超えたりするのですが、できる限り見落としがないようにしっかりと診療したいと思います。
毎週、火曜日の午後は、他院様での手術のお手伝いをさせて頂いておりますが、そちらの時間で伺いますので、当院の外来診療スケジュールには影響はでない予定です。
おやすみなさい。

瞳孔?  瞳孔の異常 その2

今日は以下の手術を行いました。見学の先生にもいらっしゃって頂きました。
・眼瞼下垂症手術(眉毛下皮膚切除術)1件
・眼窩腫瘍切除 2件
・白内障手術 9件
・網膜硝子体手術(茎離断)4件
 (黄斑円孔1件、黄斑前膜2件、糖尿病網膜症2件)
みなさん無事に終わりました。

今日も瞳孔の続きを書いてみます。
前回は、瞳孔・虹彩の形態的な異常に関して書きましたが、今日は、瞳孔の機能としての異常について書いてみます。

?瞳孔の機能的な異常
瞳孔の大きさは、脳の活動によりコントロールされているのですが、
・交感神経という神経から刺激が伝わると、瞳孔が大きく(散瞳)なり、
・副交感神経という神経から刺激が伝わると、瞳孔が小さく(縮瞳)なります。

寝ているか起きているかなど、脳の興奮状態により、瞳孔の大きさが変わったり、他にも、睡眠薬や安定剤の内服も瞳孔の大きさに影響します。麻薬やコカインなどで脳がおかしな状態になっている時も、瞳孔をみるとバレちゃうのですよ!

他に、明るい・暗いでも、瞳孔の大きさは変動します。
・明るい所で、目に光が入り、脳に眩しさが伝わると、副交感神経が働き、瞳孔が小さくなります(縮瞳)。
・暗い所で、目に入る光が足りないと脳が判断すると、交感神経が働き、瞳孔が大きくなります(散瞳)。

このような、明るさによる瞳孔の大きさの反応を、対光反応と呼びます。

面白いのは、例えば、右目にライトで光をあてると、もちろん右目の瞳孔は小さくなるのですが(直接対光反射)、同時に左目の瞳孔も小さくなるのです(間接対光反射)。
右目に眩しい光をあてると、正常な脳であれば、脳の反応は両眼に等しく起こるように出来ているのです。

なので、正常な人間であれば瞳孔の大きさは、右と左で同じになります。
瞳孔の診察では、左右差をみることが重要で、左右の瞳孔の大きさが、直径1mm以上差がある場合には、なんらかの異常がある可能性があると考えて精密検査を考える必要があります。


これは先日治療した視神経炎という病気の患者様の写真です。
上が暗い状態、下が明るい状態での写真ですが、向かって左側の方が、右に比べて瞳孔が大きくなっているのが分かりますか?視神経炎では瞳孔が大きくなっている方が悪い状態になります。光を当てても、光が脳にしっかりと届かないので「瞳孔を小さくしよう。」という副交感神経が働かないのです。

対光反応は、
・目が光を感じ取る
・光を感じ取った脳が、活動する
・脳からの刺激が、交感神経や副交感神経から虹彩に伝わる
などが、全て問題なく働くことで起こる反応です。

右目・左目・右脳・左脳、どこが悪くても反応に異常が起こったり、瞳孔の大きさに左右差が出たりします。

診察室で、僕が患者さんの両目に交互に光をあて、目をじっと覗き込んでいる場合があります。右・左・右・左と、ライトを交互に当て続けるため、とっても眩しくて患者様には不評だと思いますが、視力が悪いのは、右の眼が悪いのか?目のどこが悪いのか?それとも、左の脳が悪いのか?などを推測するために重要な検査なのです。やられる人は頑張ってくださいね。

少し専門的になってしまいましたが、瞳孔の話はこれでお終いです。
今日もお読みいただきありがとうございました。

瞳孔? 瞳孔の異常 その1

お昼に網膜硝子体や緑内障の緊急手術がありました。
午後の診療も遅れずに開始ができ、スタッフの協力・優秀さに感謝です。
夜は近隣の先生方に糖尿病網膜症について、1時間の講演をさせて頂いたのですが、数日前から、のどがイガイガして、声が枯れていて大変でした[:悲しい:]

瞳孔? 瞳孔の異常
瞳孔は目の中に入る光の量を調節したり、ピントの調節などにも役立ち、状況によって、大きくなったり小さくなったりと、変動を繰り返しています。(明るいところ⇒散瞳、暗いところ⇒縮瞳)

瞳孔の異常は大きく2つに分けられます。
?虹彩の構造上の異常
?神経学的な機能上の異常

?虹彩の構造上の異常
・瞳孔が大きすぎる場合
外傷などによって虹彩が断裂したり、瞳孔を小さくするための筋肉が麻痺してしまう場合があったり(麻痺性散瞳)、手術手技の問題で虹彩が切除されていたり、稀ですが生まれつき虹彩が全くない。または一部がない。なんていう人もいます。
⇒虹彩がない・瞳孔が大きすぎると、光が入り過ぎてしまうので、眩しくなってしまいます。手術で虹彩を縫合したり、人工の虹彩を縫いつけたり、虹彩の模様の入ったコンタクトレンズを使って頂く場合などもあります。

眼球破裂後の虹彩損失

・瞳孔が小さすぎる・偏位している場合
ぶどう膜炎などの目に炎症が起こる病気や、手術後、外傷後などでは、目の中に炎症が起こり、虹彩が小さくなったまま癒着をしてしまう場合があります。瞳孔が中心部から外れて、端っこにズレた状態で癒着をしたりしてしまう場合も。サンピロという目薬の副作用で瞳孔が小さいまま癒着をしてしまうことも。
⇒瞳孔が開かないと、目の中に入る光が少ないために、視界が暗く感じます。
瞳孔が偏位してズレていたりすると、光の通り道が遮られ、視力が下がってしまう場合もあります。また、目の中を循環する房水の流れに影響して、緑内障という病態を起こすこともあります。
炎症による癒着が軽度・早期の場合には、瞳孔を広げる目薬(散瞳薬)のみで解決してしまう場合もありますが、ある程度、癒着のひどくなったものや、偏位しているものでは、瞳孔を切ったり縫ったりする手術を行う事もあります。

瞳孔偏位による視力低下⇒手術で中心部を切開

?神経学的な機能上の異常

こちらの?をメインで書こうと思ったのですが、
ちょっと眠くなってしまったので、今日はこれでお終いに。

実は、視神経炎という病気の患者様がいらっしゃり、それに関連して瞳孔について書き始めたのですが、前置きばかり長くなってきています・・・。

瞳孔?

今日からブログを再開します。
昨日は僕の知っている中では最も手術数が多い、著名な硝子体サージャンの先生とお食事をさせて頂くことができました。いろいろ勉強になり、モチベーションも上昇です[:up:][:up:][:up:]
もっともっと頑張るぞ!(と、別に怠けていたわけではないのですが。)

今日の午後は、
・瞳孔形成手術(他院様術後) 1件
・白内障手術 11件
・網膜硝子体手術 3件(増殖1、茎離断2)
(増殖糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫・BRVO後の増殖網膜症)
みなさん無事に終わりましたが、最後の症例は久々の1時間越え(80分
)で、カサブタをとるのが大変でした。

今日の話題から、少し一般的なことを書いてみます。

瞳孔
瞳孔(どうこう)とは、下の図で矢印の先、

虹彩(茶目)の中心で作られる光の通り道、穴の事を言います。
瞳孔は、常に一定の大きさではなく、必要に応じて、大きくなったり(散瞳・さんどう)、小さくなったり(縮瞳・しゅくどう)しています。

例えば、
・明るいところでは、目の中に入る光の量を減少させ、眩しくならないようにするために、瞳孔は小さくなります(縮瞳)。
・暗いところでは、目の中に入る光の量を増加させ、明りを少しでも取り入れようと、瞳孔は大きくなります(散瞳)。
このような、明るさ・光によって、瞳孔が動くことを対光反射(たいこうはんしゃ)と呼びます。
お亡くなりになった人は、目に光を当てても瞳孔が動きません(対光反射なし)。テレビドラマなどでよく見るかと思いますが、医師が目にライトをあてて、「ご臨終です。」というのは、瞳孔・対光反射を観察しているのですね。

他にも瞳孔が大きくなったり、小さくなったりする要因として、自立神経に関連するものがあります。
興奮すると瞳孔が大きく散瞳します
「興奮して、目を見開く。」なんていう言葉を聞いたことがあるでしょうか?まぶたを大きく開ける。という意味もあるかと思いますが、瞳孔にも当てはまるのですね。
・寝ている時やリラックスしている時には、瞳孔は小さく縮瞳します。

また、近見反射といって、本を読んだり、近くのものを集中して見る時には、瞳孔が小さくなる反応もあります。
瞳孔が小さい方が、ピンホールカメラの原理のようにピントが合いやすくなるようです。ピントが合わない時に、目を細めると見やすくなるのも似た理由です。

正常な瞳孔は、キレイな円形をしていますが、ケガなどの外傷や、手術で痛んだ場合や癒着、何らかの病気などによっては、キレイな円形では無くなったりします。瞳孔が茶目の中心部ではなくなってヒキツレを起こし、視野が欠けたり、視力が下がったりする場合には、状況によって、手術で瞳孔を形成する場合もあります。

(全く関係ありませんが、ネコやキツネの瞳孔は縦長ですね。縦長の瞳孔は夜行性の動物の一部に見られるようです。)

また、目や脳、神経の様々な病気によって、瞳孔の大きさが変化してしまったり、光を当てた時の対光反射が無くなってしまったりすることがあります。

お酒の力を借りないと、なかなか人の目を見られないシャイな僕ですが??、
仕事のため「何か瞳孔に異常はないかな?」と、まじまじと患者さんのお顔や目を覗き込んでしまう事が多々あります。
変な奴だと思うかもしれませんが、診察のためにやっているのですよ。

次は、瞳孔の異常について書いてみます。

プラセボ効果

今日の午後は以下の手術を行いました。
・白内障手術 10件
・緑内障手術(エクスプレスシャント)1件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件 (黄斑前膜)
みなさん無事に終えました。
今日はとてもスムーズで4時ちょっとには終わり、夜はのんびりです。
お盆で外来も空いていますし。こんな感じは送り盆の明日までかな?

今日はちょっと変わった話を。
プラセボ効果
「ブルーベリーを飲んだら視力が回復しますか?」
「ブルーベリーを飲んだら、飛蚊症が治ったけど効果があったのですか?」
外来をしていると、週に1回はこんな質問を受けます。

僕は「うーん。化学的にはあまり証明されていないです。」と答えるのですが、
薬を飲んだ場合に、実際には薬に効果がなくても、自覚的には効果があるように実感してしまう場合があります。
「病は気から。」という言葉の通り、心持ち次第で、症状を軽く感じたり、重く感じたりする
とは誰でも経験があると思います。

「ブルーベリーに視力を改善する効果があるのか?」
という問題を検討する場合には、ブルベリーを飲む前と飲んだ後とで、視力を測定が必要になります。ただし、視力測定をする場合に、よく見ようと頑張って測定するか、やる気のない状態で測定するかで、かなり差がでます。
なんとなくでも「ブルベリーが目にいい。」なんていう話を聞いたことがあると、ブルーベリーのサプリメントを飲んだ後には、「目が良くなった気」がして、視力測定を頑張ってしまう方が多くなるようです。

こういった、気持ちの問題を除去するために、
ブルーベリーのサプリメントを飲む前と、飲んだ後に視力を測定するだけではなく、
ブルベリーの成分の入っていない、ただの紫のラムネのような、偽物の薬(偽薬・プラセボ)を、飲む前と飲んだ後の視力をして、
本物のブルベリーを飲んだグループと、偽物(プラセボ)を飲んだグループの、視力の改善度を比較することが必要になります。
(偽薬:プラセボを飲まされるグループは、偽物だとは知らされずに、本物のブルーベリーだと思って内服することになります。)

プラセボ効果とは、偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられる事です。
なんだか、詐欺みたいな話ですが、決して悪い意味合いだけではなく、例えば僕が患者さんに薬を処方する場合に(偽物は処方しませんが)、「もしかしたら、この薬でもちょっとは効くかもしれません。」というよりは、「これはとてもいい薬だから、期待して使ってみましょう。」のほうが、効果を高く感じることも多いようです。
言葉使いや、心の問題で、病気との付き合い方も変わりますよね。

アルビノ 眼白皮症

今日の午後は小美玉市医療センターで、井上先生と一緒に手術でした。
・白内障手術 9件
・老人性下眼瞼内反症(逆さまつ毛)1件(眼輪筋縫着)
無事に終わりました。
いつもは、そのあと夕方から、開業医様のお手伝いに行くことが多いのですが、今日はお休みだったので早めに帰宅ができ、久しぶりに子供の寝かしつけを頑張ってみました[:子供:]

たまには、眼科の珍しい病気を書いてみますね。眼科医って、目のことしか診療できない医師が多く、医師の中ではちょっと情けない?ように思えますが、でも目の病気も数えられないほどあるのですよ!なんて。

アルビノ(先天性眼皮膚白皮症・眼白皮症)
メラニン色素って、聞いたことがありますか?体を紫外線などから守るために、メラノサイトという細胞が作る色素ですが、どちらかというと女性の天敵??というイメージを持つ方もいるかもしれません。茶色や黒の色素は、体の皮膚、頭髪、そして眼科では茶目(瞳孔・虹彩)に多く見られます。
アルビノは、このメラニン色素の合成に何らかの問題があり、色素が上手く作ることができない病気です。全身的、皮膚や頭髪などにも変化を認める物を先天性眼皮膚白皮症、全身的には目立った異常はなく、眼球内だけに異常を認めるものを眼白皮症と呼びます。

原因は遺伝子による異常で、先天性(生まれつき)の問題になります。様々な病形がありますが、男女を決定する遺伝子に問題があることが多く、患者様の多くが男性になります。(後天性;生まれてから病気でメラニン色素の障害がおこる病気もあり、ぶどう膜炎という病気の中の原田病というものが有名です。)
残念ながら、今の医学では完治を目的とする治療法がなく、色素を正常に戻すことはできません。各症状を和らげるための対症療法が中心になります。

先日、当院にいらした片目の眼白皮症、アルビノの男性です。

明らかに、茶目(瞳孔・虹彩)の色の違いが分かると思います。
眼底も、

同じフラッシュの量で、同じ撮影法ですが、色素の違いが分かるかと思います。
写真左の右目がアルビノですが、左目は正常です。
この方は、片眼性ですが、軽度のものでは、茶目(虹彩)のごく一部だけのものや、両眼性、全身性など、軽症?重症のものまで様々です。

当院の別の患者様ですが、より色素が薄く、黄斑の形成不全があり、残念ながら0.1以下の弱視の症例です。

メラニンは、お母さんのおなかのなか(胎生期)でも、黄斑などの目の形成に役割があるようで、軽症の一部のアルビノの患者様を除いて、多くの場合に黄斑の形成不全などが起こります。
また、眼科では、メラニンはぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜)に存在するのですが、虹彩(茶目・瞳孔)や脈絡膜は、目の中に入る光の量を調節したり、暗室効果に役割があり、メラニンが少ないと、羞明(しゅうめい)と言って「まぶしさ」を感じやすかったり、羞明を避ける目的などから、眼振(がんしん)と言って「目がゆらゆら揺れたり」が起こり、視力や見え方を阻害するようになります。
これらにより、多くのアルビノでは、弱視といって眼鏡をかけても視力が1.0未満、重症例では0.1以下となってしまう事があります。

羞明・眩しさには、サングラスや、虹彩付きコンタクトレンズなどを処方して、症状を軽減したり、
弱視が原因で斜視が起これば、手術をしたりしますが、そのような対症療法を行うのは、ある程度の年齢になってから行います。
本当は赤ちゃんの時から、虹彩付きコンタクトレンズなどの装用が出来れば、障害の軽減や、よりよい発達につながるのかもしれませんが、赤ちゃんにそのような治療を行うのって、現実的にはできないのですよね・・・。
軽症例で、「ちょっと眩しい」なんていう患者様にサングラスの話をするくらいならいいのですが、重症例で、弱視・眼振・斜視などがある場合には、残念ながら、僕ら眼科医が役立つことは殆どできません。
無力・・・。先天性の病気って嫌だなぁ。

では、何もできないなら、診療はいらないのか?というと、そうではなく、重症・軽症によりますが、ある程度の定期検査は必要です。

上記の片眼のアルビノの患者様の隅角(目の中を循環する房水の出口)の写真ですが、こういった部位もやはり正常とは言えません。将来的に緑内障などの病気を発症する可能性も通常よりは高くなります。この症例でも1年に1回の定期検査をお勧めしています。

今日も最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。