H24年3月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

今日は風がビックリするくらい強かったです[:曇り:]
夕方に雨が降りだすまでは、土やホコリが待って、空が茶色になっていました[:びっくり:]
久しぶりのお休みで、ちょっと出かけようかな?なんて思っていましたが、再び子供の体調が優れず・・・、家でのんびり過ごしました。急に思い立って、初めてスパイスからカレーを作ってみましたが、結構おいしく出来ました!今後、研究してみたい。
3月は子供たちが交互に風邪を引き続けて、妻も看病で大変だったようです。早く春がきて、暖かくといいな[:桜:]

さて、3月分の手術数を集計しましたので、掲載します。
緊急手術の紹介が多かったので、件数が多めになりました。
(1名、合併症が起こり、再手術が必要になりましたが、無事に経過し、退院となりました。よかった。)

H24年3月の手術実績
手術合計 122件
内訳

・白内障手術 78件

・網膜硝子体手術 19件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 5件
・涙器の手術 5件(NSチューブ)
・眼瞼(まぶた)の手術 10件(眼瞼下垂・さかさまつげ・霰粒腫)
・結膜の手術 3件(翼状片・結膜弛緩症)
・その他の手術 2件(斜視、角膜など)

レーザー手術合計 27眼
内訳
・網膜光凝固 10件(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 10件(後発白内障に対するレーザー)
・SLTレーザー 7件(緑内障に対するレーザー)

*手術数は、分院である小美玉市医療センターとの合計数です。手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。 白内障の手術時に、逆さまつ毛や眼瞼下垂の手術を追加で行っておりますが、それらはカウントしておりません。また、病気が古くてNSチューブが挿入できなかった症例などもカウントしていません。

抗VEGF薬 硝子体注射 30件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・マクジェン・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 17件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。トリアムシノロン)

現時点では、白内障などの、緊急性のない手術は約3ヶ月待ちとなっています。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)

麦粒腫 ものもらい

今日は重症の紹介などもなく、落ち着いた1日でした。
僕は明日はお休みなので、今年度のクリニックでの仕事は今日で終わりです。
この3月は緊急手術が異常に多くて、とにかく忙しかったです。個人的にはちょっと疲れていましたが、スタッフの協力にて乗り越えられました。いつもありがとう。

今日は、今朝退院の患者様の話題から一つ。
麦粒腫(ものもらい)
麦粒腫(ものもらい)は、とてもよくある病気で、当院でも週に1人か2人くらいは診断します。(当院は通常のクリニック様と病気の内容の比率が異なるので、一般的な眼科医院ではもっと多いかもしれません。)

まぶた(眼瞼)には、脂を分泌する脂腺(しせん)と呼ばれる組織と、汗を分泌する汗腺(かんせん)と呼ばれる組織が存在します。

赤矢印がマイボーム腺と呼ばれる大きな脂腺で、ここから分泌される脂によって、まばたきが滑らかになったり、涙の蒸発を抑えて、ドライアイから目を守ったりしてくれます。
このマイボーム腺に、バイ菌が繁殖して感染症を起こしたものが、麦粒腫、とくに内麦粒腫と呼びます。
青矢印、まつげ(睫毛)の根元のあたりにも、小さな脂腺と、汗腺が存在しますが、ここに感染が起こった場合を、特に外麦粒腫と呼びます。

内麦粒腫でも、外麦粒腫でも、バイ菌による感染が成立すると、まぶたにウミが溜まって炎症を起こします。まぶた全体が、比較的やわらかくプックリと赤く腫れ、熱を持ち、メヤニ(眼脂)がでます。瞬きをするとゴロゴロと痛みを感じたりします。

最近、当院に来た人たちですが、まぶたが、赤くプックリと腫れています。お岩さん。といったイメージです。

バイ菌と説明すると、「私は汚いものは触ってない!」なんておっしゃる患者様もいますが、手術室でもない限り、身の回り、本当は空気中だってバイ菌だらけです。僕たちの皮膚にも、常在菌(じょうざいきん)といって、普段から細菌が住み着いています。むしろ、常在菌が皮膚いることで、体を別のもっと悪い菌きら守ってくれていたりするのです。
一番有名な常在菌として、黄色ブドウ球菌というのがいるのですが、子供がよくなる皮膚の「とびひ」なんかも、体や皮膚が弱った時に、黄色ブドウ球菌が病的に増殖してしまったことが原因で起こります。
麦粒腫の原因菌も黄色ブドウ球菌の事が多いようです。体調が悪かったり、目にキズがあったりするときに、ちょっと擦ってしまったりすると、麦粒腫が発症したりするので、特に畑仕事や土いじりをしたわけではなくても、麦粒腫になるときはなってしまうのです。もちろん、洗顔をしないなど、清潔に出来てない人の方が感染しやすいです。

感染力の強いウィルスが原因ではないので、流行り目(流行性結膜炎)などとは違い、よほどの事がないと人にうつることはありません。左目から右目にうつることも少ないので、ほとんどは片目にできます。

治療は、感染症なので、抗生物質を使うことで、原因となるバイ菌・細菌をやっつけることです。外来では点眼薬を処方したり、腫れが強めの場合には、内服薬も併用して治療を行います。
ウミがたくさん溜まって、痛みが強い時などには、針を刺したり、メスで切開をしてウミを出すこともあります。

実際の診療では、ほとんどの場合では点眼薬のみで数日で治ってしまいます。なので、当院では「数日で治ったと思ったら、もう来なくてOKです。治りが悪かったり、悪化するときには必ずまた来てね!」と説明しています。

今回の患者様は、「他院の眼科や内科様で、点眼薬や内服薬の治療を受けたが、どんどん腫れてきた。」との訴えで先週末に当院を受診されました。
珍しい経過なので、腫れたまぶたを少し切開して、ウミのサンプルを取り出し、培養(ばいよう)と言ってバイ菌の種類を調べる検査を行って、とりあえず、強い抗生物質の内服薬を出してみました。
その後、週明けの月曜日にまた来て頂いたのですが、あまり良くなっていませんでした。
培養の結果もちょうど出たので、よく見てみると、MRSAと呼ばれる、多剤耐性菌が感染の原因となっていました。MRSAは、ほとんどの抗生物質が効かない特殊なブドウ球菌です。
「それじゃあ、治らないよな。」と、月曜日にそのまま入院して、バンコマイシンという、MRSAによく効く抗生物質の点滴治療を受けて頂きました。
今日はまぶたの腫れもかなりよくなって、退院となりました。

左が初診時、右が退院時です。腫れ・痛みが引いて良かったです。

「麦粒腫で入院。」というのは、僕の人生では初めての経験なのですが、
「ものもらいなんて簡単な病気だから、この薬で大丈夫。」という先入観はよくない。
「治りが悪い時には、必ずまた来てね!」と言うのはいいことで、今後も必ず続けよう。と、再び認識することが出来ました。

地域。

今日の午後は以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 10件
・水晶体摘出 1件(亜脱臼・続発性緑内障)
・網膜硝子体手術(茎離断)4件
(裂孔原生網膜剥離1件、黄斑変性に伴う硝子体出血1件、
 網膜中心静脈閉塞症にともなう黄斑浮腫1件、増殖糖尿病網膜症)
まずまずの件数でしたが、スタッフがお昼休みを削って協力してくれたので、終わってみれば17時と、結構早くできました。
もちろん術後の経過観察は重要ですが、手術は上手に出来たと思います!

地域に、石岡市に根差した医療を!と思っていますが、
今日の入院患者さん、8名の住所を見てみると、日立市や、鉾田市、土浦市、つくば市、守谷市などなど、結構遠方の患者様のほうが多くなって、むしろ石岡市の方はたった1名でした。
石岡市内の方の目の状態が良くなっていて、重症の方が減ってきているのだと、嬉しいのですが、たまたまかな?

ちょっと予定があり、病気のブログはお休みです。
明日も、後輩の眼科の先生たちと会う予定があり、週末くらいから復活します。

円錐角膜? 診断

今日は、夕方からは久しぶりのお休みでした。と言っても、子供たちの体調がまだ完全ではないので、出かけたりはできませんが。
昨日も緊急入院がありましたが、今日も網膜剥離の紹介があり、緊急入院に。
昨日、再手術の症例で、ちょっと心が折れそう。なんて書いていましたが、そんなことを言っている暇はないようで、バリバリ仕事しなくては。頑張るぞ!!

円錐角膜 診断
円錐角膜は、角膜に薄くて弱い部分ができて、そこを頂点に角膜が尖ってしまう事で、強い乱視が発生する疾患です。

診断
角膜が尖ってくる疾患ですが、明らかに尖っているのが分かったり、角膜に典型的な濁りや、断裂の所見があるような、進行例の症例では、普段診療に使用するスリットランプという検査だけで、簡単に診断がついてしまいます。

ただし、実際には、そこまで進行してから病院に来る症例はごく一部で、もっと軽症の状態で診断が必要になります。このようば場合にとっても便利なのが、角膜トポグラファーです。角膜(黒目)の形を精密に計測して、分かりやすいイメージ図を作成してくれます。

左は通常の乱視の症例で、縦方向よりも横方向の角膜のカーブが強いことをしめしています。メガネで簡単に矯正出来ます。
右が円錐角膜の症例です。中心部より下方にある、赤い部分が角膜が尖っていることを示します。今となっては特に目新しい機械ではなくなりましたが、角膜トポグラファーの出現により、これまで、ただ「乱視がつよいねー。」なんて言われていた症例が、円錐角膜であると診断がつくことが多くなりました。

明日も予定がいっぱいなので、今日は早くねます。
では、お読み頂き、ありがとうございました。

ipad

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 8件
・網膜硝子体手術(硝子体切除)1件
硝子体の方は、残念ながら今年初の再手術の方です。
網膜剥離の手術後、当日夜間に駆逐性出血という大きな出血を起こしてしまったようです。非常にまれな出血で、器械の出し入れだけでも起こることもあり、気をつけようがない。とも言われる合併症ですが、再手術は患者様にとって非常にストレスな事態で、申し訳なく思います・・・。
最悪のケースでは失明に至ることもある疾患ですが、今回は幸いにも、駆逐性出血の中では、軽症のタイプ(脈絡膜下血腫)たっだようで、網膜への影響はほぼなく、問題が起こらなければ、きちんと回復してくれそうです。一安心ですが、再手術は僕たち医師にとっても、かなりストレスです。全症例が一回の手術で、上手くいけば最高ですが、難しいですね・・・。ちょっぴり心が折れそうです。

ipad
最近、タブレット型パソコンといって、タッチパネルの薄いものが流行っているようです。
特にアップル社のipad(アイパッド)は、爆発的な売れ行きのようで、使いやすさや、画面のキレイさ・解像度がずば抜けているとのこと。なんでも、画面はretina displayと呼ばれますが、reninaは網膜の意味です。「人間の目では一つ一つのピクセルが認識できない」なんて評論されていました。
スマートフォンや、タブレットに、ちょっと乗り遅れていた僕ですが、今月、一気にデビューしてみました。

これが実物ですが、確かに画面がキレイです。実際には、近づいて見ると、一つ一つのコマ・ピクセルはかろうじて判別できるようですが、通常の距離では認識できません。今度、手術用顕微鏡でのぞいてみます。

二つ購入してみたのですが、一つはクリニックで、患者様への病気や手術の説明に使ってみたいと思います。手元で、スーッと写真やビデオを流していったら、ちょっとカッコいい感じかな?楽しみです。
しかし、これが日本製だったらいいのにな。とも思います。

目土:芝生

今日は長女の体調が悪く、救急で病院にかかったりとプライベートが大変でした。眼科のことにはそれなりに自信を持っていますが、小児科のことって難しい。
我が家は、ちょっとやそっとで小児科を受診しては、小児科の先生が大変なのでは?と思ってしまい、多少の発熱などでは病院には行きません。(自分で解熱剤などを処方してしまうのもあるので、もちろん一般の家庭とは、異なりますが。)
今回は40度の熱が数日続いたり、頭が痛いとのことで、もしかして髄膜炎や脳炎などでは?と不安になってしまい、結局、小児科の先生にお世話になりました。検査の結果は、あまり重大な病気ではないようで、ほっと一安心です。
病院にかかることで、治癒が早まったわけではありませんが、悪い病気じゃない。と分かるだけで、とても安心できました。お世話になった方々には感謝です。
医者の役割は治すだけじゃなく、安心させることも重要ですよね。今回の経験で再認識しました。

さて、週末のブログなので、目のことではなく、先日行った芝生のことでも。
目土
恥ずかしながら、ごく最近まで間違って「めど」と呼んでいましたが、ご近所さんとの会話で間違いに気が付きました。「めつち」と読むようです。
春先などに芝生の上に、新しい土や砂を巻くことです。
?新しい土は栄養分も豊富
?芝生の生長点(成長が盛んなところ)が地表よりも徐々に高くなるようですが、目土により地表をあげることで、害虫や外気温から芝生を守る役割
?地面の高低差。デコボコを慣らす役割
?サッチは地中のほうが分解が早い
などの目的があるようです。


肥料入りや、砂入りなど、いろんな目土がありまが、僕にはよく分かりません。近所のホームセンターで、一番安い奴を買ってきました。


熊手や、ホウキで出来るだけ均一にならしていきます。

写真を撮り忘れましたが、最後にたっぷりお水をあげます。
新しい土で、もりもり成長してくれるといいのですが。
それよりなにより、芝生で元気に遊べるように、娘が早く治ってくれるといいのですが。と願いつつ。
今日も読んで頂いた方、ありがとうございました。

円錐角膜? 病態と原因

この数日は、眼科医の先生方などに食事に誘って頂くことが多く、ちょっとブログをサボってしまいました。有名な緑内障の先生と初めてご一緒させて頂き、とても勉強になりました。日々の診療で生かしていきたいなと思います。いろいろな先生と話す機会があると刺激になります。

さて、目の事を書こうかな。
昨日の外来でみた症例でも。
円錐角膜(えんすいかくまく)
病態と原因

眼球は、黒目(角膜)から光が入って、目の奥のフィルム(網膜)に光が当たると物が見える、カメラのような構造をしています。入ってきた光が、目の中で進行方向を変え(屈折)、ちょうど網膜上で像を結ぶ(ピントを合わせる)ことができれば、物が良く見えるのですが、この、光を曲げる(屈折させる)役割を担っているのが、角膜と水晶体(レンズ)になります。
近くをみたり、遠くをみたり、見る距離によって形を変えて、ピントを合わせる力を持っているのは水晶体ですが、実は、光を曲げる力(屈折力)でみると、角膜は水晶体の約2倍、光を曲げる力が強いのです。
レーシックでは、角膜を削って形を変え、屈折力を弱くすることで近視を治したりします。

角膜は本来、キレイな半球状の構造ですが、円錐角膜は角膜の先がとんがって、円錐状になってしまう疾患です。


通常の角膜(赤矢印)が、キレイに光を屈折するとすると、


円錐角膜の患者様では、角膜の先がとがって歪んでしまうため、角膜の部位によって、不規則に光が侵入し、乱視が重度にひどくなったり、物が何重にも見えてしまうようになります。

疫学
およそ千人に一人とされていますが、報告により様々です。
昔は数万人に1人。なんて言われていましたが、近年は診断機器の開発が進み、今までは「ただの乱視」と言われていたような人が、円錐角膜と診断されることが多くなったようです。眼科医の僕にとっても、「稀にみる珍しい病気」ではなく、「ちょこちょこ出会うよくある病気」という印象です。女性よりは男性に多い疾患で、思春期頃に男の子が発症。というのが一番多いケースです。

原因
実は、明確な原因はまだ分かっていません
円錐角膜が多い家系が知られていますが、原因遺伝子も特定されていませんし、そもそも遺伝ではない孤発例の方がよほど多くあります。
ダウン症候群の方や、アトピーの方に合併することがよくありますが、その原因も不明です。(アトピーでよく目を掻いているから?との推測もありますが、化学的な解明はされていません。)

何らかの原因で、角膜の中央部のやや下方を頂点に、角膜が薄く・弱くなってしまいます。眼球内には房水と言う水が循環して、眼球を内側から膨らませていますが、この薄く・弱くなった部位は、他の角膜に比べて、内側からの圧力に弱いため、その部位が突出していきます


円錐角膜に細いスジ状の光を当てて撮影した写真です。写真の中央部、縦に光る白い線が角膜ですが、キレイな弧ではなく少しいびつになっていたり、角膜の厚みが一定化していないのが分かるでしょうか?

緑内障? 治療:SLTレーザー

今日の午後は以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 10件
・斜視手術 1件(甲状腺眼症:眼筋移動)
・緑内障手術 1件(トラベクレクトミー:血管新生緑内障)
・網膜硝子体手術(茎離断)3件
(黄斑前膜1件、糖尿病網膜症1件、裂孔原性網膜剥離1件)
つくば市の眼科様から緊急で網膜剥離の紹介があり、予定より件数が伸びたため、全部終わると18時で、ちょっと遅くなってしまいました。スタッフのみなさんご苦労様でした。手術は無事に終わっています。

緑内障
治療:SLTレーザー

緑内障の治療は眼圧を下げて視神経が押しつぶされることを止めよう。というものです。失った視野や視力が元に戻る方法はまだありません。

眼圧を下げるには、目の中を循環する房水(ぼうすい)の産生量を減らすか、排出量を増やすかになります。治療法に関しては、緑内障?にも書きましたが、点眼薬、レーザー、手術などに分類されます。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4931

今日はSLTレーザーについて記載しようと思います。

まず、房水は目の中の隅角(ぐうかく)という出口から排出されていきます。

図の赤矢印の先が隅角になります。
緑内障の患者様では、この出口の構造に問題があって、房水の排出が悪いことがあります。SLTレーザーは、隅角に特殊なレーザー光線を照射することで、隅角からの房水の排出を増加させ、眼圧を下げる治療法です。

隅角からの房水の排出を邪魔する、色素細胞に影響することで、房水の排出を増加させるのではないか?と推測されていますが、別の説を唱える先生もいらっしゃり、明確な原理は不明です。

治療方法
点眼薬の麻酔で施行可能で、痛みは殆どありません。
・片目の治療で、隅角に約120回レーザーを照射します。治療時間は5?10分
外来治療で、当日から入浴や洗顔も可能です。生活の制限はありません
・炎症を抑える目薬を、治療後1週間程度使用します。
・副作用のチェックや、効果の判定を、1週間後、1ヶ月後に行います。

SLTの良い点
・レーザーが良く効いた人は、点眼薬をつけなくてよくなったり、点眼薬の数を減らすことができます。
効果が約1年間持続します。効果が弱くなってきた時には何回でも再治療が可能です。

ここまで書くと、とってもいい治療!なんて思いますよね??
でも、問題点もあるんです。

SLTの悪い点
費用が高い。(1割負担で片眼9000円弱、3割負担で片眼27000円弱)
・人によって効果に差があります。
 良く効く人では、治療前35の眼圧が10とかにまで下がることがあります。
 逆に、全く効果が出ない人も20%くらいあります
・一過性眼圧上昇:治療後の炎症などから、眼圧が一過性に上昇することがあり、きちんと検診が必要です。(稀ですし、対処法があるので過度な心配はいりません。)

目立って副作用がなく、点眼薬から開放されると思うと、ぜひチャレンジしたい治療法ですが、結構な金額を払って、もしも無効だったらと思うと、実は、僕は第一選択ではお勧めしていません。
(病院経営としては、数分で終わるSLTレーザーは、緑内障の治療法の中では、最も儲かる治療法でしょう。でも、毎日の目薬が可能で、眼圧下降が得られる症例では、今の医療情勢では、点眼薬による治療が第一選択ではないかと思います。点眼薬1剤を1年間購入しても、片眼のSLTレーザーよりも余程安価です。両眼SLTレーザーではかなり差がでます。)

僕がSLTをお勧めする場合は、以下のような場合です。
?点眼薬を使用しているのに、眼圧下降が十分に得られない症例
?仕事が不規則などで、点眼薬を規則正しく使用できない症例
?点眼薬への副作用があり、点眼薬が使用できない症例
?点眼が面倒という主張で、かつ、経済的に恵まれている方
?水晶体嚢性緑内障(PE)、色素緑内障、ステロイド緑内障など、高い効果を望めそうな方

保険診療って、案外面倒です。
もしも、SLTレーザーが今の3分の1位の費用で可能であったら、おそらく3倍以上の患者様の治療に用いられているでしょう。
価値観や経済力は、人それぞれですが、片眼3000円で、目薬をつけなくてよくなるかも。となったら、治療希望者も沢山いそうですよね??

茨城県には10台弱のSLTがあるのかな?と思いますが、
もちろん当院にもあって、毎月数名の患者様の治療をしています。
上記???に当たる方で、治療のご希望があれば、受診してみてください。

サッチング:芝生

今日は重症の救急患者様もなく、のんびりとした春分の日でした。
暑いも寒いも彼岸まで。といいますが、今日も少し暖かくなってきましたね[:花:]
午後には、しばらく放置していた芝生のお手入れをしてみました。

サッチング
まず、「サッチ」についてですが、芝生の枯れた葉などが地表に堆積したものを呼ぶらしいです。サッチが積もると、水はけが悪くなったり、地表への日当たりが悪くなったり、芝生の成長環境が阻害され、病原菌の繁殖リスクも上昇してしまうようです。自分の老廃物?とはいえ、芝生にとって、サッチは良いものではないようですね。
この、サッチを取り除くのがサッチングです。

芝刈りをしたら、熊手などで、その都度しっかりと掻きだして、サッチのもとになる葉を除いて行くのが理想的のようですが、毎回は大変。ついつい溜まってしまいます。
3月のこの時期には、茶色く枯れた芝生も多いので、年に1回くらい、一気に掻きだそうと、かれこれ3年間、毎年やっています。


赤矢印が芝を刈るリール刃、青が交換したサッチを掻きだすサッチング刃です。


左が作業前、真ん中は芝刈り機で1回通ったあとです。中央に縦に見える色が濃い部分がサッチを掻きだしたあとです。右は作業後です。


拡大ですが、左は作業前、真中は作業後です。サッチがなくなり、下の土がしっかり見えています。写真では分かりにくいのですが、少し緑の葉も出てきています。右の写真は芝刈り機に溜まった、枯れ芝やサッチです。


40Lのゴミ袋が5袋いっぱいになりました。
芝生、今年もキレイに育つといいな。

先ほど、ニュース番組の特集で、「治る!緑内障」とのテロップが張られたテレビ番組が放送されていました。気になったので、一応見てみましたが、微妙に間違っていることが多々あり・・・。撮影を受けた眼科先生方の意思と、テレビの放送内容に、きっと差があるのでしょうが、放送前に確認とかはないのでしょうか?
テレビの医師も言っていましたが、緑内障は治る病気ではなく、進行を極力遅くすることが目標です。
主にSLTレーザーと、トラベクトームを使用した手術に関して放送されていました。12月以降、緑内障のブログが止まっていましたが、これらの治療についてもブログを書いて行こうと思います。

瞳孔膜遺残

今日は以下の手術を行いました。
・結膜腫瘍切除 1件
・白内障手術 7件
・網膜硝子体手術 1件(硝子体出血)
問題なく終わりました。

今日の手術症例から1例お話を。
瞳孔膜遺残(どうこうまくいざん)
瞳孔とは、茶目の中心部の黒目の部分で、茶色い虹彩によって形作られる、丸い穴の事を言います。明るい場所では瞳孔が小さくなり、目の中に入る光を減らしたり、暗い場所では瞳孔を大きくして、目の中に多くの光を取り入れようとしたりと、瞳孔には目の中に入る光の量をコントロールする役割があります。
赤ちゃんが母親のお腹の中で、眼球を形成していく過程では、実は瞳孔は丸い穴ではんなく、血管の組織に富んだ膜で覆われ、ふさがっています。この血管に富んだ膜のことを瞳孔膜と呼び、瞳孔膜は水晶体に栄養を与えるなどして、眼球の形成に役立っています
瞳孔膜は通常は出生までに、委縮して消失していくのですが、何らかの間違いで、瞳孔膜が残ってしまう異常を瞳孔膜遺残といいます。

本日の症例の写真です。
光が入る道筋に、光をさえぎるものがあるので、なんとなく見にくいだろうな?というように思いますが、実は瞳孔膜遺残のほとんどは症状がありません。瞳孔膜遺残は、世の中でもっとも多い先天異常(生まれつきの異常)の一つですが、弱視等の問題を起こすことはほとんどなく、稀にみる超重症例や、たまたま光の侵入経路の中心部を邪魔するような膜が残った場合のみに、問題となります。

外来ではちょこちょこ目にする異常ですが、生まれたばかりの小児にみつけた場合では、多くの場合に、生後数ヶ月とか、1?2年くらいうすると、勝手に小さくなってしまいます。
まれですが、実際に瞳孔の中心部を瞳孔膜が覆い、視力を阻害してしまう場合があります。この場合には、瞳孔を開く目薬等を使用して、瞳孔膜遺残が瞳孔の中心部を避けるようにする治療を行うことがあります。

今日の症例ですが、左が何もしない時、右が瞳孔を開いた場合です。瞳孔を開くことによって光が通る道筋に変化が出ることが分かりますか?
また、稀ですが、YAGレーザーという特殊な光線で、瞳孔膜の一部を弾き飛ばして、瞳孔膜を除去してしまうという治療を行う場合もあります。

なんて、治療について書いてみましたが、僕の人生で瞳孔膜遺残の症例は数え切れないほどみていますが、点眼薬で治療したのは1例、YAGレーザも1例のみで、ほとんどが無治療で済んでしまうようです。

超重症例では、手術で切除するのでしょうが、小児期に手術を必要とした症例にはまだ出会ったことがありません。

今日の患者様は、白内障の手術目的に、紹介となった患者様です。
瞳孔膜の手術というよりは、白内障のついでに切除してしまったのですが、

こんな感じで、瞳孔を開いた後に、ハサミで瞳孔膜をちょきちょき切ってしまいます。

その後は、通常通りの白内障手術が可能です。

明日は祝日ですが、手術患者様のみは診察があります。きっと今日の患者様も視力が上がって喜んでくれるはず。期待大です!!