H26年7月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

今晩は、水戸市でyoung ophthalmologistの会(若手眼科医の会)という勉強会に参加させて頂きました。眼瞼手術の知識が増えてよかったです。

梅雨も明けて、夏本番ですね。
7月の治療実績を集計してみました。
失明するかしないかの難症例の硝子体手術や緑内障手術の紹介が増え続ているようです。その分、全体としては、白内障手術など緊急性のないものをセーブさせて頂いており、申し訳ありませんが手術の待ち時間が長くなっています。
(一部の症例を除いて、白内障は手遅れになることがありません。そもそも当院ではご本人が不自由を感じていない場合には白内障手術を勧めることもありません。白内障は進行してからでも治すことが可能な疾患です。)

H26年7月の手術実績
手術合計 187件
内訳

・白内障手術 116件

・網膜硝子体手術 31件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 13件
・結膜の手術 11件(翼状片・結膜弛緩症など)
・眼瞼(まぶた)の手術 7件(霰粒腫・眼瞼下垂など)
・その他の手術 9件(DCR・角膜・瞳孔など)

レーザー手術合計 23眼
内訳
・網膜光凝固 16眼(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 6眼(後発白内障に対するレーザー)
・緑内障レーザー 1眼(SLTレーザー・虹彩光凝固:LI)
*手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。

抗VEGF薬 硝子体注射 72件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・アイリーア・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 34件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。マキュエイド・ケナコルト)

白内障などの緊急性のない手術の待ち時間は、6ヶ月待ち、来年の2月からの予約となります。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)

眼瞼下垂症手術動画(CO2レーザー使用:ミュラー筋タッキング)

昨日は、久しぶりにDCR(涙目の治療)を執刀しましたが経過良好で気分爽快です。
今日の午後は宮井副院長と以下の手術をしました。
・翼状片手術(遊離弁移植) 1件
・白内障手術 13件
・緑内障手術 2件
・網膜硝子体手術(茎離断) 6件
ベットが満床で、重症の網膜剥離の紹介や、黄斑円孔の患者様も外来手術となってしまい申し訳ありませんでしたが、手術は問題なく終わっていますのでご安心ください。

以前にyou tubeにUPした眼瞼下垂の手術動画ですが、
痛み、内出血の少ない麻酔針の開発の関係で、公開が遅れてしまっていました。
その後、針の開発に目途がついたので、本日再度公開としてみます。
(この動画の針は新開発のものではありません)
眼瞼下垂症手術動画(CO2レーザー使用:ミュラー筋タッキング)
手術の術式自体は以前に記載していたのですが、やっぱり動画の方がわかりやすいですよね。

手術動画←クリック

眼瞼下垂は、加齢・外傷・ハードコンタクトレンズ長期装用・その他疾患によって、まぶたが下がり、目が開きにくくなる疾患です。
手術にはいくつかの方法があり、下垂の原因や病状、術後の見栄えなどの希望によって選択する必要があります。
今回は、CO2レーザー・炭酸ガスレーザーを使用したミュラー筋タッキングという術式をupしてみます。CO2レーザーによって手術中や手術後の出血(皮下出血)を軽減することができ、より早期に職場へ復帰することが可能になります。(それでも手術後1週間くらいは、腫れて、見た目がかなり悪いものです。)
さらに、当院では麻酔時に内出血が起こらない麻酔針を使用しています。

左右差の軽減(左右を比べながら手術)と、通院時間や医療費の軽減のため、当院ではできる限り同日に両眼の手術をしています。局所麻酔で両眼で約30分程度の手術です。

できる限り見た目のキレイさを考えて治療はしていますが、基本的には病的な眼瞼下垂の患者様の治療目的での手術を、保険適応でお引き受けしています。
下垂の程度の軽い方、美容目的の方などの手術は、当院では施行しておりません。

高額療養費制度? 上手な活用法

今週は、水曜から土曜日まで医療関係の方々との食事会が続き、先週の体調不良ダイエットから一転、プクプクに体重が増加してしまいました・・・。
昨日は眼科医会の理事の先生の紹介で、他県の眼科の先生と、3人で神楽坂に。
ミシュラン☆☆☆の高級なお店でしたが、奢ってくれるそうで、遠慮なく飲んできました[:熱燗:]眼内レンズのことなど、いろいろ教えて頂き勉強になりました。

高額療養費制度? 上手な活用法

先日、高額療養費について記載しましたが、簡単に言うと、「ひと月の中であれば、どんなに医療費が掛かっても自己負担は一定額で上限。」という制度です。
今日はその利用法について書いてみます。

?まずは使おう。
よい制度でも使わなくては意味がありません。
70歳以上の患者様は申請は不要です。70歳以上の患者様は病院の方で申請し、利用をしています。
70歳未満の患者様は、事前申請と、年末調整での申請に分かれます。
年末調整の場合は、ひとまずは窓口で自己負担分の3割などを支払い、あとでお金が戻ってくるようになります。領収書を保管し、年末の確定申告が必要です。
当院では、3割負担の患者様で治療費が8万円を超えそうな場合は、できる限り事前申請をお勧めしています。
事前申請をしておくと、会計の時点で限度額以上は支払う必要がなくなりますので、用意するお金の額を減らすことができます。
事前申請は、国保の場合は市役所、健保の場合は会社の人事課や総務課など、健康保険を担当している部署にご相談ください。「来月、病院で治療費が高くなりそうです。」とお願いすると、「限度額認定証」という紙がもらえるので、治療時や入院時に持参ください。

?支払をまとめよう。
限度額の上限は、基本的に月単位です。
例えば、70歳の人が外来で白内障手術を受ける場合、ほとんどの人の自己負担は、片目でも上限の12000円ですが、同じ月内であれば、両眼でも12000円です。今月は右目の治療で、来月は左目の治療というのは、非常にもったいないことです。
他には、当院では再手術がありうるような難しい手術をする場合、できる限り月初めに行うようにします。今月手術をして、合併症の処置が来月になれば自己負担が増えてしまうからです。
また、眼科以外の治療も合算できるので、時間が許すのであれば、大きな治療をするときには、できるだけ同じ月にまとめることで自己負担を減らすことができます。
注)お金も大事ですが、治療よりも優先されるべきではありません。担当の先生が医学的に治療と治療の間をあけるべきという場合は、あきらめましょう。

?年齢と限度額、入院か外来か
収入によって限度額は変わりますが、標準的な家庭で考えると、
70歳未満では、外来80100円・入院80100円+α
70歳以上では、外来12000円・入院44000円

が上限となります。
・例えば、69歳で両眼の白内障手術を受けると、自己負担は外来では8万円弱、入院した場合80100円+αですが、70歳になってから外来で受ければ、両眼で12000円なので、6倍近い差があります。
当院ではよほどの不自由や、免許更新などの理由がなければ、69歳の方に白内障手術は進めず、70歳を待つようにお話します。
・また、70歳以上では、外来と入院での限度額は約4倍と大きな差があります。両眼の白内障手術で、通院の送り迎えを頼むのが大変と思っても、遠方の病院でなければ3日間ほど往復でタクシーを使っても入院するよりも安いかもしれません。

他にも、世帯合算(家族内の医療費の合計額を考慮)や、多回数該当(年に3回以上、4回目からはさらに上限が低く)といった制度もあります。
医療費が高額で気になった場合は、担当の先生や病院、保険などに問い合わせてみてください。

10年以上前、僕が研修医のころは、患者さんにお金の話をすることは全くありませんでした。日本も不況で、医療費の問題で迷われる患者様が多くなったのは間違いありません。
最近は「これはいくらです。」「こっちは安いけど、副作用が多くなります。」といった会話を毎日するのが当たりまえになりました。時代は変わっていきますね。今も収入によって受けられる医療に差が出始めているのですが、今後、自由診療との混合診療が解禁になると、もっともっと差が大きくなっていくのでしょう。
混合診療によって最先端医療の分野は進むのかもしれませんが、どちらがよいのか、僕には難しい問題です。今の現状でできる医療を全力でやっていくだけです。

高額療養費制度? 制度の説明

当院は眼科の先生方に見学に来て頂く事は多々あり、他には手術室の看護師さんやスタッフの方の見学を引き受けることも数回ありましたが、
今週は、初めて他院のORT(視能訓練士)さんに見学・勉強に来て頂きました。
ORTは、以前にも書きましたが、専門の大学に通って、国家資格を得た眼科検査のスペシャリストです。
当院には20?30代の常勤のORTが4人いて、年齢の割に優秀だなぁとは思っていましたが、いつもまにか人に教えたり、見学に来てもらえるほどにレベルアップしているようです。看護師さんの手術知識も高度ですし、医療は医師一人で行うものではないので、スタッフ全員のレベルアップはとても嬉しく思います。

さて、今日は少しお金の話を。(うまい儲け話ではありませんよ)
高額療養費制度
美容外科など一部の医療を除いて、日本の医療のほとんどが公的保険診療によって行われています。
患者さんが医療機関の窓口で直接支払うお金は年齢や収入などによって、1割?3割が自己負担となり、その他の金額は加入している保険組合(国保や健保、共済など)が負担してくれます。日本が誇る国民皆保険のおかげで、日本の医療費の自己負担は世界的にみても非常に安いものです。
(安すぎて、いらない薬まで不要に欲しがったり、軽い病状で過剰に病院を受診したり、残念な患者さんが多いのも日本の事実です。)
ただし、「1割?3割で安い」とはいっても、大きな手術をしたときなどは、医療費の自己負担も大きくなってしまいます。例えば、急な事故で意識もなく、1ヶ月間集中治療室に入った場合、医療費が1000万円。自己負担は300万円なんていうケースもありえるのです。普通、300万円は払えませんよね??

高額療養費制度は、「1ヶ月間の自己負担額の上限」を定めるもので、医療に支払う自己負担額に上限を決めて、それ以上は支払う必要をなくす制度です。
標準的な家庭を例にすると、
70歳未満の患者様では、1ヶ月に8万円強が医療費の自己負担の上限で、それ以上は支払う必要がありません。
70歳以上の患者様では、1ヶ月に外来治療では12000円、入院治療では44000円が上限となり、これ以上は支払う必要がありません。
(所得によって上限となる金額は異なります。下に別記します。)
(入院時の食事代などは医療費に含まれません。)

大きな病気で、どのくらいの入院になるのか?など、先が明確に見通せない手術を受ける時には、お金はいくらかかるのだろう?という不安も生じるものだと思います。どんなにかかっても44000円で済むんだと思えれば、心の負担が全く違いますよね?高額療養費制度はとてもよい制度だと思います。

療養費制度の利用法などについては、また後日書いてみます。

高額療養費の上限金額
70歳未満
・上位所得者(健保で月収が53万円、国保で年所得が600万円以上)
 150000円+(医療費-500000円)x 1%
・標準所得者
 80100円+(医療費-267000円)x 1%
・住民税非課税者
 35400円

70歳以上
・上位所得者(月収が28万円以上)
  外来 44000円  入院 80100円+α
・標準所得者
  外来 12000円  入院 44000円
・住民税非課税者
  外来 8000円   入院 15000円?24600円

充血の話 ・ 白目の美しさ??

今日の午後は近隣の眼科様で手術のお手伝いがありましたが、
他に、4人の眼科の先生方から、患者さんの相談のメールを頂きました。
今はインターネットで患者さんの眼底写真やOCT検査の結果などを簡単に見せてもらえるので、遠くの患者様について沢山の先生と一緒に考えることができるようになりました。本当に便利な時代ですね。

充血の話 ・ 白目の美しさ??
先日、ブログで以下を記載しました。
・白目の充血のすべてが悪ものではないこと。
・市販の充血用の目薬はお勧めできないこと。

でも、実際には多くの方が、白い目が好きなのですよね。
こんなの。
外来をやっていると、週に数人は充血の相談に来られる患者様がいます。
今日は白い目を取り戻すために気を付けることを書いてみます。

1.病気の治療
充血が悪いことばかりではないと言っても、ドライアイや、アレルギー性結膜炎などが合併していることも多々あります。メヤニなどがなくても、1回は眼科で検査をして、もし病状に見合った点眼薬などの処方があれば、使用するべきです。
*ドライアイなどの点眼薬は即効性があるものばかりではありません。ゆっくりと体質改善などを促すものもあるので、使用回数を守って数ヶ月単位で気長に付き合いましょう。

2.紫外線を予防・禁煙
紫外線は熱傷やアレルギーなどによって充血を引き起こす原因になります。また、黒目の両眼に瞼裂斑(けんれつはん)と呼ばれる、黄ばんだ?茶色い膨らみ・出来物を作ってしまうリスクの原因ともなります。

矢印が瞼裂斑です。加齢に伴って、ある程度の瞼裂斑は誰もが持っています。
サングラスをかけたり、帽子をかぶったりすることで、充血だけでなく、瞼裂斑のような黄ばみや茶色の膨らみを抑えることができます。
また、喫煙(タバコの煙)も瞼裂斑が生じるリスクの一つとなったり、血管収縮から血流動態に影響することがありえます。見た目を重視する人は禁煙が望ましいでしょう。

3.眼精疲労を減らす
疲れた目は、栄養分を多く必要とするため、充血して血流を増やし回復に努めます(充血は回復にとって有利!)。なので、充血自体が悪いわけではないのですが、充血の見た目が気になる人は、睡眠時間をしっかりとったり、細かい作業やパソコン業務では適宜休憩をとったり、老眼鏡など適切な眼鏡を使用しましょう。
目を疲れさせない生活をおくることで充血を減らすことができます。

4.結膜弛緩症
ある程度以上の年齢では、結膜弛緩症による充血がよくみられます。
加齢やその他の原因によって、結膜の緩みが大きくなると、まばたきをする時の摩擦が大きくなります。結膜の摩擦が大きくなると、コイル状・コークスクリュー状の異常な血管が形成されることが知られています。

結膜弛緩症が充血や、結膜下出血の原因となる場合には、手術にて緩んでしまった結膜を切除したり、結膜の皺を延ばすことで、白い目に戻ることもできます。(保険適応)

ほとんどの充血は上記のようなことを守って、気長に付き合うことで、ゆっくりと薄らいでいくものです。即効性で短期間で治るものではないですが、白い目を強く希望する人なら、多少時間がかかっても頑張っていただけるのかな?と思います。

*いろいろ頑張ってやっても、どうしても充血が気になる人は、一応手術にて充血を消失することもできます。他の病気や、結膜弛緩症もないような場合、手術加療は美容的な問題に対するものであり、基本的には保険適応ではありません。
山王台病院での手術は、失明のリスクのある重症患者様の手術でも数ヶ月?半年待ちとなっている状態ですので、現在は美容目的の手術などはご遠慮頂いております。どうしてもという場合には、私が非常勤で手術を担当している医院のうち3施設で、自由診療にて対応しますので、ご相談ください。

CTR(水晶体嚢拡張リング)? 手術動画

ちょっと体調不良にて、辛い数日を送っていましたが、
持ち前の元気さで無事復活しました。
さっそくビールを片手に、ブログを更新してみます。

難症例の白内障手術:
CTR(水晶体嚢拡張リング)? 手術動画

前回、難症例の白内障手術、CTRについて??を記載してみましたが、眼科の先生より動画の要望(書き込み)を頂きまして、You TubeにUPしてみました。
外傷例などはもともと難しいので、キレイな白内緒のビデオとは違いますし、今後キレイな録画例を待ってもいいのですが、7月1日発売で、眼科の先生には翌日の使用経験というのは珍しいと思いますので、一応そのままUPしてみます。

CTR;手術動画(クリック)

明日は午前がクリニックで外来。午後は県外の医院様で硝子体手術や、難症例ばかりの白内障手術が多数待っています。CTRを使うような症例はあるのかな??
(難症例は大変ですが、僕は難しい手術が好きなようです。)

大自然 茨城:川遊び

今日は日曜日。梅雨時期に久しぶりに晴れました。
入院の患者様も全員経過良好で、明日退院の予定となりました。

明日も20件と沢山の手術が控えているので(宮井副院長とあわせて)、しっかり週末を楽しんで、頭をリフレッシュさせたいなと、子供と自然を満喫しに。


場所は秘密ですが、石岡・小美玉ICから高速も使って約1時間半。とってもきれいな我が家の秘密の清流です。

万が一にも溺れないように、当たり前ですがお酒は控えて、ライフジャケットをして、子供はロープもしばって。じゃっぶーん

透明な川の水の中には、アユや岩魚など川魚が沢山。一視野に数十匹が目に入る時もあります。

とったどー!と言いたいところですが、川魚はすばやくて一匹も取れませんでした・・・。

残念ながら、まだ川の水が冷たく、子供は早々にリタイア。

僕だけ何度もプカプカ浮いて川流れ。
頭もすっきりリフレッシュして、明日からまた頑張るぞ!

茨城県、海・山・川。自然たっぷりで、子育てにも最高です。

難症例の白内障手術:CTR(水晶体嚢拡張リング)?

今日は先日の話題の続きで、難症例の白内障:CTRの利用について書いてみます。

難症例の白内障手術:CTR(水晶体嚢拡張リング)?
まず、先日記載した白内障の患者様の写真です。

外傷後の昔の治療で、写真の左下のほうは角膜(黒目)が白や黒に濁っているのですが、この部分のチン氏帯(眼内で水晶体を支える糸)が切れてしまい、瞬きをするだけでも水晶体がグラグラと揺れています。
このような症例では、通常の手術をすると手術中に水晶体嚢が縮んでしまったり、水晶体嚢ごと目の奥に落ちてしまって、眼内レンズが入れられなくなってしまうことがあります。

まず目薬の麻酔をしたあとに、簡単な注射の麻酔をして、目をあけっぱなしにする器械を付けます。

手術では上下反対になるのですが、手前側(目の上方)に白内障手術をするためのメインの傷をつけます。(この患者様は、固定内斜視と呼ばれる合併症があり、どんなに頑張っても目が正面を向けないので、少し写真が右上に寄ってしまいます。)
一般的な患者様より瞳孔(黒目)が広がりにくい患者様です。通常では、これくらいで十分手術が可能ですが、難症例の患者様では念には念を入れて、アイリス・瞳孔リトラクターという器材を使用して瞳孔を左上の方まで引っ張って広げ、安全に手術可能な術野を確保します。

CCCと言って、水晶体を包む袋(水晶体嚢)に丸い穴をあけて濁りを吸い出す準備をします。

手術では水晶体がグラグラしていると濁りを吸引しにくくなります。特に写真の右上の方のチン氏帯が弱いため、このまま濁りを吸い出すと、袋が右上から縮んでしまい眼内レンズが入らないかもしれません。

そこで、HOYA社のCTR(水晶体嚢拡張リング)の出番です。

ちょっと分かりにくいですが、上の写真の青く細いリング状の物体がCTRです。

これを水晶体嚢の袋の中に入れるのですが、手前の傷口からゆっくり丁寧に袋の中にいれはじめ、

時計回りにグルグルと袋の中に進めて行きます。

CTRが水晶体嚢の中に入ると、袋を内側から広げて支えてくれるので、水晶体嚢(袋)が全体的に安定します。

濁りを安全に吸引可能できました。


濁りがなくなったら、

レンズを入れて、キレイに手術が終わりました。
CTRがなければ1時間以上かかるような手術で、眼球への負担が大きくなったり合併症のリスクも大きかった症例ですが、20分弱の手術で安全に行うことができました。術後にも喜んで頂けてよかったです。

*CTRはとても有用な手術補助器具ですが、当院では主に外傷例など特殊な症例のみに限って使用しています。外傷例ではチン氏帯が弱っている場所が一部分など限定的(局所的)ですが、チン氏帯が弱る他の原因(加齢に伴うものや、PE症候群に伴うもの)などでは全体的に弱っていることが多いため、手術はどうにか上手くいっても、それ以降の加齢に伴ってCTRごと眼内レンズが目の奥に落ちてしまうことがあるからです(眼内レンズ落下・眼内レンズ脱臼
例えば、95歳であと5年は持つだろうと自信を持てる時はいいのですが、70歳でCTRを使用して、あと20年もつかというと結構厳しいものがあります。もしあとからレンズが落下してしまうと、硝子体手術などのより難しい手術でレンズとCTRを取り出して、新しい眼内レンズを縫い付ける。なんていう複雑な手術が、80代とかより高齢の時期に必要となってしまうリスクがあります。それなら最初の手術でしっかりとレンズを眼内に縫い付けた方が安心なのでは?と思うのです。
当院の白内障手術でCTRを使うのは0.1%程度の症例ですが、世の中には「CTRを沢山使っているが、術後に問題が起こったことがない。」と仰る有名な先生もいます。実際にはそうではありません。白内障手術で急にCTRが必要になった場合には、手術時間が思ったより長かったり、痛みも強めだったりと、「予定と違った」と患者さんの満足度が低かったり、信頼関係が築けていない場合が多くなります。このような患者様が、レンズが落下して急に見えにくくなった場合には、もとの眼科さんではない眼科さんに転院してしまうことも多いのです。
実際に、今までにCTRとレンズが落下して、僕が拾い出したという症例は、もともとは全員他の医院様で手術を受けた症例です。有名な大学病院でCTRを使って、他の医院で修正手術を受けているなんて言うことが思ったより多くあり、そのことを術者の先生は知らないだけだったりするのです。

難症例の白内障手術:CTR(水晶体嚢拡張リング)?

今日の午後は以下の手術を無事に終えました。
・翼状片手術 1件、白内障手術12件、網膜硝子体手術 4件
それなりの件数ですが、最近はスタッフと宮井先生の能力がUPしているようで、5時前には終わってしまいました。手術の順番待ちも長いので、「これならあと2人くらい治せたかも?」なんて、つい欲が出てしまいますが、あまり無理するのもよくないでしょうか・・・。
さて、最近は毎週のように都内など遠方から難症例の白内障手術にいらしてくださる患者様がいます。今日も3件の白内障がまずまず難しかったのですが、うち1例は、この半年ほどではチャンピオンと思われる難症例があったので、それをネタにブログを書いてみます。

難症例の白内障手術:CTR(水晶体嚢拡張リング)?
情報化社会が進み、医学知識も簡単に手に入るようになりまいした。「白内障って5分で終わる簡単な手術でしょ?」と、少し勉強をされた患者様から聞かれることが多くなりました。その通りで多くの方では簡単なのですが、実は全員が簡単なのではないのです。1%程度ですが10分を超える難症例もありますし、0.1%程度では30分以上の手術とか、手術が2回以上必要になる症例もあるのです。
手術が難しくなる場合というのは、以前に書いたこともありのですが
小瞳孔、奥目の方、成熟白内障、緑内障(狭隅角)、チン氏帯脆弱、強度近視、強度遠視、角膜混濁、顔や体がふるえる、硝子体出血、難聴、認知症など、いくつか原因が挙げられます。難しい手術を助ける補助器具の開発や、手術技術の向上により、今はどれか一つくらいのリスクでは特に大きな問題は起きないのですが、リスクが2つ、3つと重なっていくと大変です。

今日の患者様は、
・最強度近視(眼軸32mm)
・固定内斜視(目が内下方を見たまま動かない)
・角膜混濁(外傷破裂後の入墨術後)
・角膜内皮減少(1000以下)
・外傷後のチン氏帯脆弱(スリットでグラグラ)
・中等度散瞳
そして高齢で、しかも反対の目もほぼ失明。という悪条件のデパートのような症例でした。

知り合いの先生の紹介でいらした時には、ちょっとだけ「手術を断ってしまいたい・・・。」と逃げてしまいたい気持ちもありましたが、せっかく縁があって当院にいらして頂いたのですし、どこか他に紹介するお勧めもなく、自分で頑張ることに。

まず、以前のブログで白内障手術の復習を(クリック)
通常の白内障手術では、水晶体を包んでいる袋(水晶体嚢)の中身の濁りだけを除去し、残した袋の中に新しい眼内レンズをいれます。

実は水晶体嚢と呼ばれる袋は、無数の細い繊維によって眼球の中に宙づり状態になっていて、この水晶体嚢を支える細い繊維チン氏帯と呼びます(イメージ図の緑)。
加齢や、生まれつきの疾患、遺伝、そして外傷などによって、このチン氏帯が切れたり、チン氏帯の数が少なくなっていると、水晶体嚢を支える力が強くなります。すると、

白内障や眼内レンズが目の奥に落ちてしまったり、

手術時に水晶体嚢(袋)が縮んで、レンズが入れられなくなってしまうことがあり、
これをチン氏帯脆弱と呼びます。

CTR(水晶体嚢拡張リング)は、チン氏帯脆弱例で、水晶体嚢(袋)の中に強度のあるリングを入れ内側から水晶体嚢を支えることで、袋が縮むのを防いだり、袋の眼内での安定性を向上させて、落下を防いだりしてくれる素敵な手術補助具です。

実はCTRは世界中では、10年以上前から当たり前のように使用されています。日本ではなかなか認可が下りずに、今までは医師が海外製品をこっそり輸入して、こっそり患者さんの目に入れる。といった、微妙な使われ方をしていました。
僕はCTRはあまり使わない方で、例えばこの4年でが4例に使用しました。年に約1例、0.1%未満です。自分のポケットマネーでインターネットで個人輸入をして、合計10万円くらいかかったかと思います。お金だけの問題ではなく、正規のルートでない物品をネットで購入して、人の体に埋め込むことがよいことなのか?倫理的にも難しい面がありました。

そして、とうとう日本でも正式に認可が下り、昨日、国内企業であるHOYA社から正式に発売されたのです!万歳!!
7月1日に発売ですが、今日の重症例の患者様に間に合いました。
(手術を申し込んだのは数ヶ月前で、発売も決まっていなかったのでラッキーでした。)

手術はそれでも難しく、20分弱と白内障手術にしては大変な時間がかかりましたが、もしもCTRがなかったら、眼内レンズを目の中に縫い付ける手術で、さらに時間もかかったでしょうし、角膜も悪くなって濁ってしまうリスクもあったかもしれません。HOYA社に本当に感謝です。
手術画像もUPしようと思っていましたが、遅くなってしまったのでまた明日記載します。おやみなさい。

ひたちの眼科

今日、茨城県の日立市で筑波大勤務時代の同僚が開業しました。

ひたちの眼科

茨城県は人口あたりの眼科医が非常に少ないことで有名です。
つくば市など県南地域では、比較的充足していますが、県北地域では患者さんの数と医師の数があわずに、医師が疲弊しているということをよく耳にします。
あまりに忙しいと、目の前の仕事でいっぱいになり、医師としてスキルアップができなかったり、地域内の眼科医同士が切磋琢磨するくらい出ないと、地域の医療レベルは上がりません。

ひたちの眼科は、白内障・緑内障・網膜硝子体手術など、眼科の重要な手術のほとんどを対応できる最新設備を整えたクリニックです。
私も微力ながら硝子体手術のお手伝いをさせて頂く予定です。
県北にお住まいで当院への受診が難しい方や、当院で手術を受け、その後のfollowを県北でという希望の患者様は、ひたちの眼科をぜひ受診されてみてください。

ひたちの眼科HPはこちらをクリック(ネットで予約もできるそうです)



6月29日に内覧会があったので、僕も訪問してみたのですが、すごく混んでいて、なんと350名の見学者がいらしたそうです。県北地域は、もっともっと眼科医が必要なのでしょうね。