OCT(optical coherence tomography)

予想通り、お盆があけて混みました[:冷や汗:]
午前だけで60人以上。新規の患者様が多く、眼科医1人だと、2時間くらい待つ患者様も出てしまい、すみません。頑張ってはいるのですが。
待ち時間の分、診療では少しでもご満足いただけるように励みたいと思います。

午後は以下の手術を行いました。
・眼瞼内反症手術(逆さまつ毛) 1件
・翼状片手術 1件(結膜弛緩症同時)
・白内障手術 7件
・網膜硝子体手術(黄斑円孔) 1件 
難しい症例はなく、4時過ぎには終わってしまい、午後はのんびり出来ました[:船:]

今日は眼科で使う検査の器械の話です。
OCT(optical coherence tomography)
日本語で言うと光干渉断層計。
眼底カメラの画像はこれまでも掲載ししてきましたが、カメラの写真は平面(2次元)であり、例えば網膜に水が溜まっているか?膨らんでいるか、へこんでいるか?などの3次元での評価は、なかなか困難です。

OCTは、近赤外線を利用して、眼底、網膜の性状を詳しく、3次元、立体的に測定することができる器械です。
網膜疾患、特に黄斑部と呼ばれる、物を見る中心部の網膜の診断が、今までとは比較にならないほど正確に下せるようになりました。

診察で患者様に説明するときに使っている図ですが、このように目の奥の方の網膜(光を感じ取るフィルム)の断面図を撮影することができます。右側のキレイな画像がOCT検査の結果です。


正常な方の測定結果です。網膜の中でも黄斑部(中心部)は、物を見ることだけに特化しており、その他の構造が少なく、少し凹んだ形になっています。


これは、最近テレビCMや新聞広告で有名になった、加齢黄斑変性症という病気の患者様の結果です。眼底カメラでは写真のやや右寄りに赤い出血があるのが分かります。ただし、この出血がどの程度、膨らんでいるかなどは分かりません。OCTで撮影すると、網膜がデコボコしたり、水が溜まって膨らんでいる(黒く抜ける)所見などがよくわかります。

当院のような網膜硝子体手術(網膜剥離・糖尿病網膜症・黄斑円孔・黄斑前膜などに対する手術)を行う病院には、絶対になくてはならない検査器械です。
また、緑内障の患者様で、神経(網膜)の厚みなどを測定することにも役立ちます。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)

“OCT(optical coherence tomography)” への8件の返信

  1. 今日、網膜の疾患を指摘して頂きました。
    患者が多く、先生は忙しそうだったので、多くの質問は控え
    させて頂きました。

    私は何年も前から、黄斑変性症の予防として、
    1.ルティン(Ocuvite)
    2.アスタキサンチン
    を含むサプリを飲み続けていますが、続けた方がよいでしょ
    うか。また、最近、蕎麦に含まれるルチンも良いと聞いたの
    で、韃靼そば茶でも飲み始めようかと思っています。効果
    ありそうでしょうか。

    眼科で網膜疾患の予防について聞くことはないのですが、
    何かアドバイスを頂ければ有難いです。

  2. 昨日は遠くから御来院頂き、ありがとうございました。
    将来的に手術が可能であれば、是非執刀させて頂きたいと思います。
    眼球の形状などは、かなりキレイで、ご期待の手術方式、視力にお答えできるものと思います。
    ただし、お話ししました通り、現時点では黄斑疾患の経過観察を行うことが、重要と思います。しばらく観察したのち、改善する場合や、悪化がないようであれば、再度ご連絡頂けますと幸いです。黄斑の定期診察は、しばらくは1~2カ月に1回程度必要と思いますので、近隣の眼科様でお願できればと思いますが、昨日、紹介状・資料を郵送しましたので、お手元に届きましたら、受診頂ければと思います。

    さて、ルティン(Ocuvite)や、アスタキサンチンですが、基本的には抗酸化作用のあるサプリメントになります。
    眼科では黄斑変性や、白内障などが取り上げられますが、紫外線などを原因として、眼球の組織に活性酸素が生じ、活性酸素が組織を障害することが病気のメカニズムの一因であるようです。眼科だけでなく、活性酸素は癌、動脈硬化(脳梗塞や心筋梗塞など)、調べると、アルツハイマー、糖尿病などなど、一般的に思いつくような疾患の多くに、少なからず活性酸素が影響しているとする報告がたくさんあります。
    アスタキサンチンには、特に紫外線からの活性酸素を防ぐ、強い抗酸化作用がある事は確かなようです。抗酸化作用により、身体に起こる加齢や、多くの病気にある程度はプラスに働くかもしれません。ただし、多くのサプリメント販売業者が広告に載せるような、「視力が回復する。目の病気が治る。癌が治る。歩けなかったのが走れるようになった。」などの、効果を期待することは難しいと思います。エビデンスという言葉がありますが、僕たちは科学的に信じられるデータをみて、そのデータが信じられるという根拠(エビデンス)がないと、それを患者様に勧めることはできません。
    「ブルーベリーを飲んだら、視力が回復した。」良く見る文章ですが、何を飲まされているか知らずに、ブルーベリーのサプリメントを飲み続けて、視力を測った人たち数百人と、ブルーベリーではなく、単なる白い錠剤(プラセボといいます)を、飲み続けて視力を測った人たち数百人の視力の経過を比べて、ブルーベリーを飲んだ方が成績が良好だった。というデータがあれば、信頼します。
    海外のしっかりしたデータとして、ルテインや、ゼアキサンチン、ビタミンC・E、カロテン、亜鉛、銅、不飽和脂肪酸などを飲むことで、多少のリスクが下がったというのは、大きな実験の結果であり、ある程度エビデンスがあるようです。そういった程度のものを、現時点で医師である僕が積極的にお勧めできる状態ではないのかと、今は考えています。

    ? 日本人の、栄養バランスのとれた食事を規則正しく食べること。(僕にはとっても難しいのですが・・・。)
    ? 紫外線を予防すること。サングラスや、帽子など。
    ? 今現在で、きちんとエビデンスのある治療を受けること。今回の場合は、年齢や、病状からは、アバスチンという抗VFGF薬の注射が最も成績が良いと思います。(費用などは病院によって違いますので、担当される先生の説明をお聞き下さい。)
    ? きちんと眼科の診察を受けること。

    これらが、まず先に来るべきです。さらに少しだけ何かを追加したい時に、サプリメントをお使い下さい。例えばβカロテンを高容量で服用すると発癌性が上昇すると報告されています。亜鉛、銅にも過剰摂取の副作用があります。ルテインだって、もしかしたら数年後にはそのような報告が発表される可能性だってないとは言えません。ですので、サプリメントを使用する事は、悪いとは思いませんが、過剰摂取や、それにばかり頼って、上記?~?をおろそかにすることだけは、ないようにと願います。

    サプリメントや、栄養ドリンクなど、関係者の話しを聞くと、原価と発売価格の差にビックリします。僕は、なんとなくサプリメントに対して、商業的な意図を考えてしまい、少し毛嫌いしている部分があるかもしれません。
    信頼できるエビデンスのレベルは、医師によって様々です。例えば、10人飲んで、効いたと思う人が5人と言う場合に、それが有用と思うかどうかも違います。
    あくまで、僕自身の考えになります。

  3. 栗原先生、こんばんは。

    新年のあいさつに、お父様が、回復され、仕事復帰された事を
    目にして、本当に良かったと安堵しました。
    昨年は、手術の件数も多く、先生ご自身も体調不良だった時期もあったようで、とても、心配していました。
    先生の解りやすいブログと、善意で開かれれている掲示板。
    楽しみに、拝見しています。お子さんたちの写真が、ほのぼのします。

    今日は、OCT検査の事で、ご質問があります。
    正常眼圧緑内障と診断を受けて8年(左目)2年(右目)になります。視野欠損はありませんが、感度の悪いところはかなりあります(58歳会社員です)
    MD値、発症当時は、-0.6程度でしたが、現在-2台程度で、維持、横ばいです。
    視野検査は、12年前から、半年に一回受けていましたので、MD値の推移をみて、主治医からは、初期の初期だから、心配はないと言われ続けてきました。
    栗原先生のブログにも、MD値-2は初期だと書かれていたのも拝見しました。

    掛かり付けの眼科のOCTは、かなり初期の古いもので、一度、新しいOCTを受けようと思っていたのですが、思い切って、今日行ってきました。

    その際、今迄の視野検査のデータも持参して行きました。

    セカンドとして受けたOCTの結果は、かなり悪くて、正常の方の目の神経は、真ん中がオレンジなのに、私のは、白っぽく、少しオレンジがあるのみ。
    視神経に沿って黒い部分、悪い方の左目は、黒い靄が見えました。
    その写真をみて、今日の眼科医から、〇〇さんは、50代と若いし、この神経だと、30年持たせるのは難しいかもしれませんと言われました。

    色つきの分は、右が緑に赤い部分が1割程度、左が5割赤かったです。

    OCTの視神経の状態が悪いと言うのは、いずれ、その部分が欠損して行くのは理解しています。

    でも、視野検査のMD値の推移が横ばいであっても、視神経が悪い状態だと、将来、厳しい状態になってしまうのでしょうか。

    10年分の視野検査を持って行きましたが(3年分抜けています)
    視野の推移より、視神経の傷みを重要視されているようでした。

  4. OCT検査の所見は診療の参考になりますが、赤だらけ(正常より薄い)でも、視野が全く正常という症例も多々あります。
    白内障や強度近視などによっても検査結果は悪く出ますし、OCTのみで判断することは標準的な考えではありません。
    OCTが診療応用されるようになり、緑内障診療の能力が向上したことは間違いありませんが、残念ながら、OCTの結果のみで緑内障と誤診されてしまっている症例も増えてきています。
    (本来は、視神経乳頭の形状と、視野の感度の結果が適合していて、緑内障として説明がつくかを考える必要があります。)

    違ったら申し訳ありませんが、強度近視の方ではありませんか?
    強度近視では、近視にともなって網膜が菲薄化しており、全体的な感度の低下を生じます。(通常は緑内障による感度低下は上下で分断され、全体的に感度が低いという形状にはなりません。)
    また、眼球の形状にも特徴的な変化があり、OCT検査の結果も少し耳側に補正して解析すると、真っ赤だった結果が、ほぼ正常になったりします。
    視野検査の異常は緑内障以外の原因でも生じます。感度低下が、本当に緑内障によるものなのか、総合的に判断する必要があるのですが、視野検査で異常=緑内障と安易な診断をする医師も少なくはないようです。
    OCT検査の結果も、機種によってバラツキや誤差があります。ある程度は同じ機種で経過観察を行い、何より大事なのは以前と比較して進行傾向なのか変動がすくないのか。ということです。

  5. ご丁寧なお返事を有難う御座いました。

    おっしゃる通り、強度近視です。-6D弱-7Dに近いです。
    それも、小学生からなので、50年になります。

    強度近視の場合、乳頭の凹み?が緑内障との区別が付かないと言うのは、聞いた事があります。

    先日、受けた眼科の先生は、視野検査10年分のデータに目を通すより、
    視神経と、乳頭の凹みの説明、視神経の周りの黒い影だけを
    何度も説明して、こんなに酷いと30年持たないと言われて、本当にショックでした。

    栗原先生に、詳しく説明して頂いて、安心しました。
    本当に本当にありがとうございました<(_ _)>

    これからも、ブログを拝見させて頂きます。

  6. 栗原先生おはようございます。先日は、本当にありがとうございました。
    先生のOCTの説明を、もっと前面に出して頂けたら、私のように不安に
    思っている緑内障患者には、救いになります。感謝いたします<(_ _)>

    今日は、19歳の娘の、視神経の事で、質問をさせてください。
    5年ほど前から、近視が進み、3年程前の検査では、0.3と0.9でした。
    矯正も含めて、きちんと診せようと思い、昨日、近くの眼科に行きました。
    視力は0.1と0.7まで下がっていました。近視だと言う事です。

    その事より、ショックな事が判明しました。OCT検査も一緒に受けたのですが、
    「同世代の子に比べて、視神経が薄い」と言われました。
    見せて頂いた結果は、赤い所が目立ちました。
    私が緑内障を患っている為、娘の眼も、不安要素が大きいので、視野検査も受けてください。
    その後の、定期的な検査も受けた方が良いですと言われました。
    眼圧の数値は教えてくれませんでしたが、正常だと言う事です。

    私の知識の中で、視神経は、高眼圧に侵されて薄くなるか、強度近視の場合、
    あとは遺伝。この三つだけでした。それを踏まえて・・・

    ?娘の年齢、近視歴の短さ(中2まで1.0?1.2見えていました)、
    強度近視でも高眼圧でもないのに、既に視神経が薄いと言うのは、どういう事なのか良くわかりません。
    元々、視神経が薄いと言う事か、既に、遺伝が何か関わっているのでしょうか?

    ?19歳で視神経の薄いスタート。やはり、緑内障発症の確率も高いと言う事に繋がるのでしょうか。
    今後の検査で重要視すべきは、視神経の写真(乳頭の凹み)や、眼圧で、OCTは先生が仰るように
    補佐として、年に一回撮って、経過を診る程度で重きに考えずにいて良いでしょうか。

    ?担当医から言われた、「同年齢の子より視神経が薄い」と言う言葉を聞いて
    OCT器機は、年齢の設定をしてから検査を受けるのかな?と疑問に思いました。

    自分の事より辛いです。ましてや、19歳と言う若さなので。。。
    栗原先生には、何度も頼って質問を並べてしまい申し訳ありません。
    お忙しい時は無理には言いません。いつか、時間が出来た時に、よろしくお願いします。

  7. Sayoko様
    遅くなってすみません。
    先天的に網膜が薄い人は多々存在します。基本的に視神経網膜厚や網膜が薄い=緑内障では決してありません。視野に異常があるのか、そして、網膜の菲薄化が進行するのか。によって病気として扱うかどうかなのです。網膜厚の評価には年齢による補正が必要で、基本的には撮影時に生年月日を入力します。同じ厚みでも年齢によって正常化どうかはわかれます。
    機種によりますが、20歳未満はデータとして不完全(信頼性が低い、サンプルが少ないなど)だとして、測定値を評価しないものの多々あります。
    ひとまず、特に心配する必要ないと思いますが、一応は半年?1年に1回の検診を、数年続けてみて、進行傾向があるのかを把握する以外はないと思います。

  8. 栗原先生 有難う御座いました<(_ _)>

    詳しく説明して頂いて少し安心しました。
    栗原先生のような説明を、して頂けていたなら、
    こんなに不安に思わずに済んだのですが・・・。
    検査後、娘の将来を思い悩んでいました。

    遺伝のあるこの病気、
    子供たちに何も無い事だけを祈る日々です。

    定期検査をして、様子をみていきます。
    お忙しい中、詳しいご説明、本当に感謝いたします。

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