水晶体脱臼(落下)

今日は緊急手術などもなく、落ち着いた日でした。

先週の木曜、今週の火曜日と緊急で手術を行った、水晶体脱臼のお話です。
水晶体脱臼(すいしょうたいだっきゅう)

8月18日、19日のブログにも書きましたが、水晶体と呼ばれる、目の中のレンズが、正規の場所からずれてしまう状態です。
図でみるとこんな感じ。

レンズがズレてしまう原因は、生まれつきレンズの支えが弱い人や、病気、加齢、外傷であったりしますが、白内障手術の失敗などでも同じような状態になります。

レンズが目の奥に落ちてしまうと、光を曲げる(屈折)する力がなくなり、ピントが全く合わないために、ほとんど見えなくなります。また、今回の症例のように、目の中の水の流れに変化を起こして、緑内障という状態を引き起こしたり、目の奥の組織を傷つけて、網膜剥離という重症の病気を起こす事もあります。
ですので、目の奥まで落ちてしまったレンズは、基本的には取り除いて、白内障手術のように、新しいレンズを入れる必要があります。
目薬一回で、ずれた水晶体が溶けてしまうと楽なのですが、そういう医学はありませんので、治療法は手術になります。

手術は大きく2つの方法です。
?目の奥の方で頑張る手術(網膜硝子体手術)

18日の女性はこちらです。眼球後方、網膜や硝子体に起こる病気のための手術で、奥の方まで器械を入れて、落ちてしまったレンズ(水晶体)を取り除きます。特殊な液体をレンズの下にいれて、網膜を傷つけないように行えば、傷口も小さく負担が少ない手術です。

こんな感じで、目の奥まで器械を入れます。

赤矢印でさした白い円形の物が、落下した水晶体です。青矢印が硝子体カッターといって、掃除機のような器械です。本来は硝子体カッターはもっとデリケートなものを吸い出す器械で、水晶体(白内障)を吸い出すのは結構時間がかかります。固い水晶体を吸いづつけると壊れてしまうため、この日はカッターを3本も使用して手術も40分以上かかりました。
ただし、眼球のキズはとても小さくてすむため、日帰りで帰れましたし、翌日には矯正視力0.5まで改善しています。

?レンズを引き上げて、黒目の脇から取り出す手術

レンズがもとの場所からちょっとだけズレた場合には、こちらの手術が優先です。(硝子体や網膜を傷つけるリスクがないため)
23日にレンズを取り出した男性は、目の奥までレンズが落ちていたのですが、水晶体があまりに固くて、途中で硝子体カッターで吸うのを諦めて、黒目の脇から取り出しました。硝子体の中をパーフルオロンと言う液体で満たすと、目の奥に落ちていたレンズが浮き上がってきます。

レンズが瞳孔付近に見えるようになったら、黒目の脇にナイフでレンズを取り出す傷口を作ります(青矢印)
(普通は黒目の上方にキズを作りますが、この方は、19日に緑内障手術をして、上方にはそのキズがあるので、仕方なく横?下方に作っています。)

傷口からレンズを取り出します。

傷口が大きいために、キズを縫います。(抜糸は必要ありません)

最終的にはこんな感じ。硝子体カッターで吸うのは早々に諦めたため、手術自体は30分程度と短時間で済みますが、傷口が大きいため、しばらく乱視が大きくなったり、術後にゴロゴロとした痛みがあります。
特に合併症もなく順調ですが、緑内障の傷口のコントロールも必要であったため、結局1週間入院し、明日退院です。

本来は、白内障手術でもそうですが、レンズ(水晶体)をとる手術では、新しいレンズ(眼内レンズ)を挿入することが必要です。
今回のような患者様は、緊急で手術をするために、前もって正常な状態での検査ができていないため、ピッタリ合うレンズの準備ができません。
ですので、メガネなしで本当によく見えるようにするためには、数ヵ月後に傷口が落ち着いてから、再度手術をしてレンズを入れる必要があります。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

“水晶体脱臼(落下)” への10件の返信

  1. 知識不足のために質問をすみません。パーフルオノンを注入するとレンズが浮き上がってくるのはなぜですか?レンズが軽いからでしょうか?

  2. 眼科様
    こんばんは。その通りです。
    パーフルオロンは、非常に比重の高い液体で、水晶体(白内障)やIOLに比べて重いので、レンズが浮き上がってきます。

  3. 恐れ入ります。
    私も水晶体亜脱臼で10/21眼科診察し、11/4(水晶体取り出し)と11/20
    (人口水晶体取付)を行うととしております。
    11/4まで日程を伸ばしたのは月をまたがると治療費が高くなるため
    その様な日程したとの話しです。
    白内障の場合は1日で1眼の手術を終え、回復した後もう片眼するとは
    聞いてますが、私の場合片眼を2回に分けて手術を行うことは妥当
    なのでしょうか。
    場合によっては病院を変えても良いと思ってますが、
    ご教示頂ければ幸いと存じます。
    因みに私の治療を要する眼は弱視のため今まで殆ど活用してません。
    60歳になります。

  4. 上記の患者様は、来院時点で緑内障発作という病態を伴っており、眼内レンズの測定が不可能(または、誤差が大きくなるリスクが高すぎる)であったため、複数回に分けた手術をしています。
    水晶体がずれていても、眼内レンズの度数を決定する検査が十分にできれば、1回で摘出と縫着を行うことが一般的です。水晶体が完全に落下し、眼圧なども正常であれば普通は測定可能です。
    水晶体が半分ずれていて、視界のちょうど真ん中のあたりに水晶体の縁(エッジ)があると、測定ができないケースなどもあります。
    弱視で、もともと見えていない目で、多少の誤差を気にしない場合などは、だいたいでレンズを選んでもいいかもしれません。
    ただちょっと気になるのは、通常の白内障とことなり、一般的院は傷が大きくなる手術が予想されます。11月4日に水晶体を摘出して、11月20日までに眼球の形状が安定しなければ、結局誤差が大きくなってしまいます。レンズの注文の関係もありますので、一般的には11月17日くらいには測定できないといけませんが、結構難しいことだと思います。

  5. 栗原様

    ご回答有難うございました。
    周りから色んな情報が入り多少不安になっておりました。
    お陰様で安心致しました。

    今まで見えなかった眼が見えるようになると斜視も有るので
    返って邪魔な面もあります。
    又水晶体が無い方が良く見えるので水晶体除去後レンズは入れなくて
    済むならそうしたいと思っております。
    水晶体が無くても(ずれた状態で)未だ現在の右目と同じ強い近視用
    メガネレンズを通すと今までに無く良く見えます。
    現在仕事も立てこんでおり、手術で休みや安静期間を増やしたくない
    事もありますので。

    謹んで御礼申し上げます。

  6. 栗原先生
    3歳の息子がマルファン症候群による、水晶体脱臼寸前です。
    眼圧も上がっていて。
    落下すると痛みますか?
    真っ暗になりますか?
    私の目の届かない保育園で落下したらどうなるのか
    保育士さんにも伝えて心の準備をしたいので。無知な母親です。教えてくださいm(_ _)m。

    1. 落下しても痛みはありません。
      脱臼寸前というのは、すでに瞳孔(中心部)を超えて、レンズがずれているレベルでしょうか?
      もしそうで、眼圧も高いのであれば、基本的にはもう手術適応と思いますが・・・。
      水晶体が中心にかからないくらいずれる(水晶体を通過しないで見る)と、かなりのピンボケの状態になります。
      虫眼鏡で遠くをみるような感じと思えばよいかと。
      現状でその状態であれば、落下してもきっとわかりません。

      今は水晶体を通してみているのであれば、水晶体にかからなくなった時点で、大人なら気が付きます。
      3歳ですと、反対の目でみるなどして、自分では訴えないと思います。

      そして落下したからと言って、時間単位の緊急性はありません。
      気が付いたら翌日や、週末であれば週明けに眼科を受診してね。というレベルです。
      保育園から救急車などということも必要ありません。

  7.  今年6月8日に地元の大学病院で、白内障術後3年経過後の左眼眼内レンズ亜脱臼によるレンズの縫着手術を受けました。この時の亜脱臼はレンズが虹彩からはみ出したり戻ったりを何度か繰り返しており、レンズ脱落の危険があるということで縫着手術を受け、術後に網膜剥離予防として硝子体嵌頓に対するレーザー照射をしました。現在、視力は1.2位まで回復しているのですが、視界の歪みが酷く右眼に比べてずいぶん小さく見えます。術後3週間目の診察の時に、医師から「またレンズが出てきている」と診断を受けました。その後、毎日何度も鏡で確認すると、夜、入浴時にレンズがズレて朝戻る状態を毎日のように繰り返しています。(家族の入浴介助の時にはズレないが自分が入浴するとズレる)
    昨日(7月25日)に、診察に行った時に、歪みとレンズがズレることは別の問題である。歪みは、近視が極度に強いケースでは歪み等の症状が出ることがあり、回復には相当長い日数がかかる。回復も個人差がありどの程度までの回復が見込めるか分からず対策はない。レンズのズレについては、極度の近視の患者にみられるケースで、縫着したレンズの内側と外側の「圧」に差があるためにレンズが押し出されている。対策として2つの手術の提案を受けました。1つ目は穴をあけて圧を安定させる。2つ目は、2本位の糸を縫いつけてレンズが出ないようにブロックを作る。という2種類の手術です。前者は日帰り手術で対応できるが、後者の手術は3~4日の入院が必要。後者の方がレンズのズレを抑えるには適していると思われる。という説明を受けました。担当の医師は、縫着手術の以前より7月から非常勤になることが決まっており、現状は週に1度、手術指導で病院に来られるだけとなっているため、診断はこの非常勤医師ですが現在は経験の浅い医師が主治医となっています。提案された手術は非常勤の医師が行うと説明を受けています。昨日の症状説明、手術説明は丁寧な説明を受けたつもりですが、私自身の理解が浅いため、他の人に説明する際に症状の専門的用語は分かりません。手術後の予後については、提案の手術方法での施術歴が浅く、数年後、数十年後の経過は確実なことは言えない。このまま放置するとレンズが全部出てしまう可能性や他の合併症の危険もあると説明を受けました。1週間後(8月1日)の受診時には、手術を受けるかどうか、どちらの手術を受けるのか方針を決めることになっています。縫着手術をしたのにレンズがズレることや手術後に出た歪み等の症状から、手術を受けることに不安があります。他の治療方法はないのでしょうか。また、大阪府近辺で私の症状の治療に適していると思われる病院を紹介していただけないでしょうか。

    1. 遅くなってすみません。
      ・戻る状態もあるのであれば、戻った時にサンピロという縮瞳薬を点眼し、定期的に継続。
      寝るときに仰向けを意識する。などで、虹彩捕獲が起こりにくくはなると思います。
      ・外科的な治療法としては、糸で抑えるか、レンズを丸々交換(大きめのレンズで、固定をしっかり)の2種類であっています。
      そもそも、通常の白内障手術でさえ、数十年後に大丈夫か?というのは保証されていません。
      今販売されている風邪薬を飲んだ後に50年生きている人はいないでしょうし、50年後、その子孫に影響がないかなど調べようもありません。
      現在の西洋医学のほとんど全ての分野で、数十年後の安全を確保しているものはないと思います。
      ・ゆがみは、近視によって起こるものは、手術直後に発症することはありません。
      術後の低眼圧(低眼圧黄斑症)や、炎症による黄斑浮腫の後遺症と思います。
      低眼圧や浮腫が軽快しているのであれば、積極的な加療は必要なく、どこまで回復するかは個人差になります。

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