パーフロロカーボン

水曜日に手術をした糖尿病の患者様も経過良好で、明日退院です。

手術の前、緑矢印は網膜(眼球の奥に位置するカメラのフィルム)の前にべったりとドス黒い出血があります。青矢印は出血などが固まってできた増殖膜(ぞうしょくまく)というカサブタです。(正式にはちょっと違いますが一般に分かり安い表現で。)
カサブタが引きつれを起こすことによって、目の中がグチャっとしてしまいます。
手術でカサブタをとって新しい出血が起こらないように、レーザー光線というもので網膜を焼きます。

これが今日の写真です。手術後4日ですが、かなりキレイになっています。オレンジ色の網膜が見えますが、周囲にやや白っぽい斑点がたくさん見えます。この白い斑点がレーザーで焼いたヤケドの後です。斑点が1?2ヶ月経って、黒っぽく変わってくると、出血しにくい安定した状態となります。

手術前の状態をイラストで書くとこんな感じ。

緑が網膜です。茶色のカサブタ(増殖膜)が引きつれを起こすせいで、網膜にしわがより、内側に剥がれてきます。

以前はこのような症例では、網膜にしわがあったり、水がたまってしまい、キレイにレーザーのヤケドを作るのが難しかったのですが、最近はパーフロロカーボンという、比重の重たい液体を目の中に入れることで、手術中にしわを伸ばしたり、レーザーを簡単にうつことができるようになりました。
しわしわの紙の上に、重石を転がして、しわを伸ばすような感覚です。

こんな感じです。手術中は仰向けに寝ているので、重い液体(カーボン)を入れると、図では青になりますが、カーボンの重みによって、しわが伸びたり、網膜が押し付けられて、網膜はく離をコントロールすることができます。

手術のみでは、しわが伸びない場合には、シリコンオイルや、空気といった、比重の軽いものを目の中に入れて、手術後にうつぶせになることで、しわを伸ばす。といったことを行う必要があります。

こんな感じで、カーボンとは逆に、軽い物質を入れて、その浮力によってしわを伸ばします。

今回の患者様も、手術前にはうつぶせが必要だと説明していましたが、手術中に思ったよりキレイにカサブタがはがせ、また、重いカーボンのおかげでしわを伸ばしたり、レーザーを打つことができ、うつぶせもなし、入院も短く済みました。

ただし、カーボンは高価なのが難点です。1本3?4万円位します。
高額医療といって、患者様の実質の負担は変わらないのですが、ちょっとした液体が数万円って、医療ってお金がかかります・・・。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

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