失明

今日は小美玉市医療センターで井上先生と手術です。
午後に白内障手術が7件でした。無事に終わっています。

今日は、ちょっと嫌な話ですが、失明について書いてみます。
失明(しつめい)
失明とは、明かりを失うこと、目が見えなくなることです
一般的には人生の途中で見えなくなることで、生まれつき見えない場合は盲(もう)と呼びます。

日本中で1年間に失明されるかたが、どれくらいいるのでしょう?
実は、これが非常に難しいのです。

例えば、失明を、まったくの光が分からない(生物学的な失明)とするか、視機能の低下により日常の生活ができない(社会的失明)とするか、などで、数がかなり変わってきます。
また、失明した人を把握するという事自体が、とても難しく、死亡届のように届け出の義務がないため、片目が見えなくなっても誰にも言わない人もいますし、医師も片目失明した人に、なにかの登録などを勧めるわけでもありません。両目の視力が悪くなり、視覚障害というのに該当する場合には、医師から患者様に登録を勧めるのですが(残念ながら、そうしない医師もいますし・・・。)、視覚障害(身体障害者)の申請を好まない患者様もいるので、実際に失明していても、国として全てを把握することはとても難しいのです。

一般的な値として、僕たちが診察中に失明の原因として説明する時は、厚生労働省などが発表する統計を参考にするわけですが、基本的には視覚障害者の申請の数から決められているようです。これが、新聞や医療の講演会などでも引用されます。

では、一般的に言われているランキングです。
失明の原因
?緑内障
?糖尿病網膜症
?網膜色素変性症
?黄斑変性症
?強度近視(変性近視)

などとなっています。

上記の全てに関して言えるのが、網膜・神経が駄目になるという事です。

眼球の断面図ですが、左側(黒目側)から入ってきた光が、右奥(眼底)に届くと物が見えます。青矢印(角膜)や、赤矢印(水晶体)は、光を通してピントを合わせるという、カメラで言うとレンズの役割をします。右側の緑の部分が光を感じ取るフィルムの役割で、網膜と呼ばれます。
赤矢印の水晶体が濁った場合を白内障と言いますが、この場合は、見えなくなってから病院に来ても、人工のキレイなレンズと交換すれば、簡単によく見えるように回復します。青矢印の角膜が駄目になっても、簡単ではないですが、角膜移植といって交換をすれば、ある程度は回復します。
こんな感じで、目の前の方の病気は、悪くなってから交換しよう。で、すむのですが、
目の後ろの方(眼底)に問題が起こると大変なのです。
現在の医学では、上の図の緑の部分、網膜や神経を回復させたり、交換するといった医療は存在しませんので、網膜や神経が駄目になって見えにくくなったら、あきらめましょう。という事になります。
・圧力が原因で、神経が押しつぶされる⇒緑内障
・糖尿病で血管が詰まり出血⇒糖尿病網膜症
・遺伝子レベルの以上で網膜が死んでしまう⇒網膜色素変性症
・加齢などが原因で、網膜・フィルムで出血⇒黄斑変性症
・眼球が以上に大きくなり、網膜が薄くなる⇒変性近視

他には、
・外傷などで網膜が破れる⇒網膜剥離 なども失明につながります。

よく外来で、1ヶ月前から見えなくなった。もしくは、1年前から見えにくかった。という患者様がこられます。
眼科では、加齢を原因に人類の全員がなる、白内障という病気の患者様が多いため、手術をすれば治る。というイメージが強いのですが、上記のような網膜や神経の病気は、基本的には治りません。それ以上進まないように治療をすることになります。

上記のような重大な病気を含めて、基本的に目の病気というものは、初期段階では自覚症状がなく、気がついた時にはかなり症状が進行しているというものが圧倒的に多いのです。このため、自己判断により病院に行かなかったり、治療を怠ったりすると失明という最悪の結果を生み出します。
初期の段階で、きちんと発見し、その後もきちんとした治療を受ければ、医学が進歩した現代では、実は?緑内障も、?糖尿病網膜症も、?黄斑変性症もほとんど失明することがない時代なのです。
どれも年間数千人の失明者がでる病気ですから、みなさんが、出来れば、年に1回程度の定期検査をしたり、異常を感じた時にすぐに病院に来たり、きちんと治療を受けてくれれば、年に一万人の失明者を減らせるのです。

昨日のブログで書いた、網膜中心動脈閉塞症の患者様は、小美玉市医療センターで、現在の医学で出来うる限りの治療を行いましたが、残念ながら、手動弁(しゅどうべん)といって、光の影が動くのが分かるか分からないか。といった程度です。片目ですが、社会的失明に当たる視力です。
この病気は、血管が詰まって、見えにくくなってから1時間?2時間での治療が必要です。この患者様は丸々1日たってからの受診のため、治療前から予想は出来ていましたが、やはり駄目か。といった具合です。急に見えにくくなったら、すぐに眼科に電話をするか、救急車を呼ばなければいけないのです。明日でいいやでは、遅いのです。
(網膜中心動脈閉塞症に関しては、以前のブログを参照下さい。)
2011.04.23 Saturday
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4925

健康な人であればものを見るのは無意識で、特になにも考えなくてもあたり前のようできるのです。ですから少しでも異常、異変、違和感を感じたら、早めに眼科での診察を受けてください。

当たり前ですが、眼科医は患者さんに失明されるのが、とっても嫌なのです。僕も外来で、たまには、厳しいことをいうことがありますが、許して下さいね。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

“失明” への3件の返信

  1. 始めまして。私は38歳男性です。先生にお聞きしたいんですが。
    私は、20歳の夏に交通事故にあいまして、片方の目が見えない状況です。

    見えないといっても、見た目では判断が全くつきません。
    なぜなら、きちんと両方の目もものが動いた方に動きます。

    瞳孔はほとんど動いてないのですが・・・
    例えば、光を見ても全くまぶしくなく、見える目の方を隠して見えない方で見てみると

    例)真直ぐ見た状態だと、上半分は真っ暗で、下半分は薄くぼやけて見える感じです。

    事故をおこした時は、先生に恐らく、今の医療では直らないと思います。と、つたえられました。

    その時はキャッチボール・ゴルフが出来なくなる!と思いました。しかし今は、片目になれて両方やってます。

    ただ、きちんと両方の目で見えた方が遠近感も分かるし、
    子供と遊ぶとき・車を運転するときはいいと思い先生に何か言い方法(治すことが可能)があるのかと思いメールをさせて頂きました。

    実際は診察が必要とおもいますが、宜しくお願いいたします。

  2. ご連絡ありがとうございます。
    おっしゃる通りで、実際には診察をしないと分からないのですが・・・。
    もしも、事故で障害された部位が、網膜や視神経と呼ばれる部位なのであれば、現在の医学では回復は不可能と思われます。病名としては、網膜剥離、網脈絡膜委縮、外傷性視神経症・視神経委縮などと言われている場合です。
    これらの部位に障害がなく、瞳孔や、角膜・水晶体といった光を通すべき、眼球の前の方の組織の異常なのであれば、多くお場合で手術加療によって回復が望めます。具体的には、角膜混濁、白内障、瞳孔偏位などになります。

    きちんとした眼科様で、回復は望めないと言われたのであれば、おそらく前者と思われますが、「10年前のケガでもう駄目だと言われている。」といって、白内障手術や、瞳孔形成術を行う事で、よくなって帰るひともしょっちゅういますので、やはり診察をしないと分からないのですが。

    ご近所の医師に、正確な病名を一度詳しく聞いてみて頂けるとよいのですが。

    この程度した、お力になれず、すみません。

  3. ご親切に有難う御座いました。

    近くの病院で聞いて結果わかりましたらぜひ後連絡させて頂きます。

    返信が遅れましてすみません。

    何とか治ってくれたらいいのですが・・・

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