糖尿病網膜症? 網膜光凝固術(レーザー治療) その2

今日は午前・夕方で外来が80名ちょっと。
昼休みの手術は以下の手術を行いました。
・白内障手術 6件
・網膜硝子体手術 1件(糖尿病網膜症・硝子体出血)
無事に終わっています。

今日は、昨日の続き、レーザー治療です。
糖尿病網膜症
網膜光凝固術(レーザー治療)

レーザーは、昨日書いたとおりで、決してもとに戻す治療ではありません。一部の網膜を焼いて殺して、犠牲にすることで、全体としての必要な血液の量を減らし、少ない血液で重要な部位のみだけでも生き延びさせようという治療です。

治療は少なからず痛みがあったり、金額が高めだったり、嫌なことばかり。
でも、失明のリスクが高い場合には、仕方ないのです。

では、失明のリスクが高い状態・レーザー治療が必要な状態とはどんな状態でしょう?
新生血管が出来ていたり、大出血を起こしていたり、カサブタが出来ている場合には、もちろん増殖網膜症として、レーザー治療、もしくは手術が必須になるのですが、増殖網膜症になってからの治療では、むしろ遅すぎで、安全に治療を行う場合には、増殖前網膜症の段階でレーザーを行う必要があります。

ちょっと、日本で一般的な考えと海外では考えが一部異なるのですが、
まず、海外で一般的な分類で。
American Academy of Ophthalmologyでの中等症にあたるもの
?4象限の全てで20個以上の網膜出血を認める場合
?2象限以上で、静脈の数珠状拡張を認める場合
?1象限以上で、著名なIRMA(網膜内細小血管異常)を認める場合

となっています。象限というのは、眼底を右上・右下・左上・左下と分けた場合の各部位になります。
海外では、後述の蛍光眼底造影をあまり行わずに、血流が悪い場合に起こってくる出血や、血管の変化から治療の適応などを決めていきます。

次に日本では?というと、多くの施設で、
蛍光眼底造影検査という検査を行って決定します。
造影検査で、無血管野があれば、治療の適応と考えていきます。


点滴で、血管の中に造影剤と呼ばれる薬を流して、特殊な条件で写真を撮ると、血管の中の造影剤が白く光ります。造影剤は血管の枝分かれとともに広がっていきますが、正常の毛細血管にまで流れた部位では、写真の水色矢印のように薄い灰色としてうつります(灰色の部位は正常な血流がある)。
糖尿病で、血管が詰まった部位には血液が流れないので、造影剤がいきわたりません。写真の緑矢印がさす黒くうつる部分には、血流がないことが分かります。この黒くうつる部分を、無血管野(むけっかんや)と呼びます。ピンクの矢印の部分は血流の悪いところで、血管に変化が起こってできた、クネクネした血管で、IRMA(網膜内細小血管異常)と呼ばれる悪性の所見です。

日本の基準では、血管が詰まって血流が悪い部分(無血管野)があるというのが治療の基準になります。ですので、血流が悪くなってから、その後におこる出血や血管の変化をみて治療をする海外の考え方よりも、やや早期に治療が出来る場合が多くなります。

蛍光眼底造影検査は、ごくごく稀ですが、薬に対するアレルギーで、ショックと言って、心臓が止まってしまう合併症が起こることがあり、海外での診断の方が全身的には安全と言えるかもしれません。
ただし、蛍光眼底造影検査を行うと、病気の状態がとてもよくわかるので、出来れば行いたい検査です。
例えば、9月に検査をした症例ですが、こんなこともあります。

写真だけ軽い気持ちで見ると、赤く囲んだ部分、水色の矢印よりも左上の方の血管が少しクネクネして見えますが(静脈の軽い数珠状変化)、全体としては出血や白斑が少なく、重症という雰囲気はありません。
同じ症例の造影検査の結果です。

水色の矢印の部位が同じ血管を指しており、カラー写真よりもやや左上の部位の写真になります。造影検査では写真の左上のほうは黒くうつり、無血管野が広がっています。赤い矢印の先では白い造影剤が血管から漏れ出して強く光っています。これは、血流の悪い部分に生えてきた新生血管(できそこないの血管)から、造影剤が漏れ出している所見です。早急にレーザー治療が必要です。写真中央から少し右にはクネクネ血管のIRMAも見えます。

では、おさらい。
レーザー治療を行うか、どうかには、蛍光眼底造影検査を行うと、とてもよく判断できます。造影検査で、血流がない部分(無血管野)があれば治療をする必要があります。

本日も読んで頂けた方、ありがとうございました。
思ったことを、だらだら書いているだけなので、誤字脱字あったらすみません。レーザーだけでも、何日も書くことがありますね。これを実際の診療では限られた時間で理解頂かないといけないのですが。
次回もレーザーのことが続きます。
糖尿病網膜症は書くこといっぱい。
緑内障なんかも書きたいのですけどね。ゆっくりと頑張ります。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です