血管新生緑内障? 術後管理2:レーザー切糸

実は一ヶ月以上前に、結婚当時に購入した小さなダイニングテーブルをリサイクルショップに処分しました。子供と使うには狭くて。
その後、新しい家具を注文して、すぐに届くと思ったら、なんと納期が一ヶ月と・・・。一ヶ月間、床に寝そべって、ノートパソコンでブログという、とても疲れる姿勢で書いていましたが、とうとう数日前に納入されまして、素敵なテーブルでお酒を飲みながら書いています。環境が悪かった分だけ?今はかなり気分が良いです。

血管新生緑内障?
術後管理2:レーザー切糸

何度か記載している、先週の土曜日に手術をした、30代の血管新生緑内障の患者様の術後管理について書いてみます。
(もっと、いろいろ処置が必要になって、やった手技について説明したいと思っていたのですが、あまり変動なく経過良好で落ち着いてしまったので、そろそろ記載したいと。外科的処置については1種類のみです。もちろん患者様にとっては良いことです。)

2月25日(土)
術前眼圧65mmHg、夕方に手術、夜間簡易測定で眼圧30mmHg

2月26日(日)
朝の診察:眼圧30mmHg

手術前よりは低くなりましたが、眼圧30はまだまだ高い眼圧です。眼圧が高いと、角膜(黒目)の透明度が悪くなり、写真がちょっとボヤけた感じになります。黒目の上のほうに水の貯留池(ブレブ)を作っていますが、青矢印の部分が少し膨れているのが分かりますか?

ブレブ(貯留池)のイメージ図ですが、まだこれでは、水の漏れ出しが少ないので、ブレブが小さく、眼圧が正常値まで下がり切っていません。

ここで必要になるのが、
レーザー切糸(レーザースーチャーライシス)です。
キズ口を縫った糸を切ることで、キズを開く作業です。

このような特殊なレンズをブレブ(水の貯留池)に押し当てると、強膜に作ったキズの状態が良く見えるようになります。キズ口は、黒くて細い、ナイロンという糸で縫ってあるのですが、レーザー光線は黒い色に良く反応するので(女性のムダ毛脱毛も同じ原理です。)、レーザー光線を黒い糸に照準を合わせて照射すると、周りの組織を傷つけずに、糸だけを切断することができます。この処置をレーザー切糸(レーザースーチャーライシス)と呼びます。

左が処置前、右が処置後です。矢印の先にあった、黒い糸がなくなっているのが分かりますか??レーザー切糸によって、キズ口を抑える力が弱まるので、キズが開いて、水の排出量が増加し、眼圧が低下します。

夕方の診察:眼圧19mmHg
19だと、通常の緑内障では、翌朝まで様子をみることが多いのですが、血管新生緑内障は、VEGFとういホルモンなどの影響で、キズ口の癒着が早いことで有名です。明日まで待って、眼圧が跳ねあがっていては困ります。
迷いましたが、5本縫ったキズ口のうち、朝1本切ったのですが、ここでもう1本、レーザー切糸をしてみました。

2月27日(月)
朝の診察:眼圧8mmHg

眼圧8は、通常の緑内障では完璧に近い数値です。右の写真では、ブレブが昨日よりも明らかに大きくなり、しっかりと水が漏れ出ていることが分かります。緑内障の眼圧のみ考えれば、眼圧が低くなったことは喜ばしいのですが、血管新生緑内障は目の中に弱い新生血管が沢山ある病態なので、ちょっと眼圧が変動するだけで、簡単に出血してしまうのです。左の写真で、黒目の下の方に出血が沈殿しているのが分かりますか?このような状態を前房出血と呼びます。
手にケガをしたら圧迫止血といって抑えることで止血が出来ますが、目の中は眼圧が高かい方が、出血を抑えて止める効果があります。でも、緑内障としては、眼圧を上げたくない。上がっても困るし、下がっても出血。ここが血管新生緑内障の難しいところです。
ひとまず、安静を頑張って頂き、止血剤を飲んで頂きます。

イメージ図だとこんな感じ。

レーザー切糸によって、眼内の水が、貯留池(ブレブ)に大量に流れるようになり、眼圧が下がりましたが、それによって出血してしまった。という具合です。
眼圧が低くなると、角膜(黒目)の透明性が高まり、目の中がよく見えるのですが、虹彩をよくみてみると新生血管がウネウネしています。
これは出血しますよね・・・。

夜の診察:眼圧8mmHg
出血は悪化してないようです。圧迫眼帯というもので、少し水の流れを抑えてみます。

2月28日(火)
朝の診察:眼圧7mmHg

眼圧は横ばい。出血は少し増えたでしょうか。新生血管を弱らせるために、抗VEGF薬であるアバスチンを追加注射します。
(手術時にも投与していますが、硝子体手術後+緑内障手術後では、眼内の房水と一緒に、すぐに薬が流れてなくなっていってしまうので、少し早いですが、こういう場合には、躊躇することなく再投与が必要です。とにかく素早い対応が肝心です。)

2月29日(水)
朝の診察:眼圧7mmHg
出血が少なくなってきました。眼圧も落ち着いています。

3月1日(水)
朝の診察:眼圧7mmHg

出血はほぼなくなっています。眼圧も落ち着いています。ブレブもプックリと大きくてキレイなものが出来ています。

まだまだ、きちんとした経過観察が必要ですが、基本的には、この勝負は勝ちでしょう。本当に良かったです[:楽しい:](もちろん、これ以上血管が詰まることがないように、血糖や禁煙に気をつけなくてはいけません。)
ただし、反対の左目もアバスチン注射や点眼薬で治療していますが、眼圧が30mmHgと、このままでは見えなくなってしまいます。右目をあと数日みたら、今度は左目の手術が待っています。頑張るぞ!!

“血管新生緑内障? 術後管理2:レーザー切糸” への3件の返信

  1. ルベグラの公開ってすごいっす。尊敬します。
    上手くいかなかったらどうしてたんでしょうか。

  2.  今年3月に両眼を白内障手術し、11月15日に左眼を緑内障手術しました。緑内障の手術後、左眼の霞みがきつくなったようです。(日にちが経てば霞みは取れるかと思っていました)昨日、12月3日、2本目のレーザー抜糸をしました。(1本目の時より痛みを感じました。)今朝、左眼の異常(極端な霞み、視力低下、光の縞模様が見えるなど)を感じて受診。眼圧4、矯正視力0.07)。診察では、左眼をぶつけたような状態で、出血があり、硝子体も少し漏れ出ている可能性があるとのこと。レボフロキサシン1日8回、ベルべゾロン6回の点眼と就寝時にアルミ眼帯をして、明日受診するよう指示がありました。手術がうまくいかなかったのかととても心配です。霞眼についても炎症なのか手術に伴うものなのか分からず不安です。

  3. 山田様
    すみません。この数ヶ月、重症の方の手術ばかりが立て込んでおり、パソコンでゆっくりとお返事を記載するのが難しい状態です。
    ただ、山田様の病態も、あまり思わしくないようです。
    電話を頂ければ、少しでも対応をさせて頂けるかと思います。
    すみません。
    栗原

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