白内障手術 乱視矯正?

今日の午後は小美玉で井上先生と手術です。
・白内障手術 5件
・さかさまつ毛(眼輪筋縫縮)1件
・眼瞼下垂症(炭酸ガスレーザー:ミュラー筋タッキング) 1件
夕方は開業医様の手術のお手伝いに。

先日、病院のホームページの内容を更新したのですが、ホームページで記載している、白内障手術についてちょっと書いてみたいと。
http://www.sannoudai.or.jp/clinic/ope03.html
白内障手術 乱視矯正?
強主経線切開

水晶体が濁ってしまい、光の通過が邪魔をされるために、視力が低下してしまうのが白内障。白内障手術は濁った水晶体を人工のキレイなレンズと交換することが第一の目標です。ただし、近年は医学も進歩し、「濁りをキレイにする。」という目標はあたり前で、それ以外に「出来る限りメガネなしで見えるようにしたい。」と、より高度な目標をもって手術をする事が一般的になってきました。
その一つが、「乱視を減らそう」というものです。
乱視とは、眼球の歪みに由来して、縦方向や横方向のピントにズレが生じることです。(縦は近視なのに、横は遠視など。)

イメージ図を作ってみましたが、分かりにくいですかね??眼球がまん丸に近いと乱視が少ない目。楕円というか、ラグビーボールのような形だと乱視の強い目。という感じです。

こっちの図の方が分かりやすいですかね?

乱視の治療としては、メガネをかけたり、コンタクトレンズを使用ことが最も一般的で、より積極的な治療としては、レーシックなどの屈折矯正手術があります。
今回は、白内障手術を行う場合に、ついでに乱視を減らしてしまおう。という方法のうち、もっとも手軽にできる方法を紹介します。

左が手術前、右が手術後のイメージ図です。白内障手術では黒目(角膜)と、白目(強膜)の境目あたりにキズをつけて手術を行います。切り口が出来た部分の角膜は薄くなって変形し、切り口の方向では、角膜が平坦化し、ピントが後ろ側にズレるようになります。このような手術のキズ口のせいで、乱視のピントに変化がおこることを惹起乱視(じゃっきらんし)と言います。
手術技術や、器械の進歩によって、手術のキズ口はどんどん小さくなっているため、惹起乱視も小さくなっていますが、白内障手術をすれば、多かれ少なかれ、良かれ悪かれ、乱視に変化が起こるのです。
この惹起乱視と上手に付き合うことで、白内障手術を行うついでに、乱視を和らげてしまうことが可能になります。逆にいえば、黒目の横にキズを作るべき場合に、上から切開を行えば、乱視は悪化してしまうのです。
当院で白内障手術を行う場合には、全症例で必ず乱視を減らすように努力をしています。


これは、角膜トポグラファーという器械で、黒目(角膜)の形を詳細に測定した結果です。眼球の乱視(ゆがみ)は、水晶体などの部分に由来する部分も一部ありますが、ほとんどは角膜に由来するものです。また、水晶体は手術で除去してしまうので、白内障手術では、特に黒目(角膜)に注目して、乱視をコントロールしていきます。
黄色に比べて、オレンジの部分がカーブが強いことを表した図ですが、この患者様の手術をする場合には、オレンジを切る方向、つまり横から切った方が乱視が軽減することになります。

実際に、どう手術をするかというと、
例えば、上から切った方がいい場合では、

こんなふうに上から切開をして手術をします。

横から切った方がいい場合には、

こんな感じ。僕はほとんどの場合、患者様の頭の上側に座って手術をします。写真は上下反対のようになります。これは、右目の手術を右耳側から切開しています。

同じ横からでも、左目の場合には、

こんな感じ。左手での手技になることもあります。僕は小さい時は左利きだったようですが、右利きに矯正されまして、今は右手の方が得意です。なので、左目を横から切る場合には、少し手術がゆっくりになったり、面倒に思う事も。
でも、少しでも乱視が少なくなって、裸眼視力の向上につながるなら。と思えば、頑張りがいがあります。

このような切開の方向による乱視矯正(主経線切開)は、もっとも手軽に行う事が出来る方法です。ただし、矯正効果はあまり大きくなく、主に乱視が軽い場合に行われます。より強い乱視を矯正していく方法に関しては、別に機会に記載したいと思います。
明日も手術がいっぱいなので、今日はこれでお休みなさい。お読み頂き、ありがとうございました。

“白内障手術 乱視矯正?” への5件の返信

  1. 4日後に、白内障の手術をします。
    乱視が入った近視なのですが、軽いのでトーリックではなく、普通のレンズを使用するそうです。心配

    今日から手術に向けての目薬が始まりました。
    不安がいっぱいで、白内障で検索をしています
    術後、乱視で見え方が悪い時は、LRIはどうかと思って、少し
    安心できました。
    くわしくわかりやすい説明で、先生の情熱を感じます

  2. こんばんは。
    遅くなってすみません。今日が手術でしょうか?
    当院でも今日、20眼弱に眼内レンズを挿入しました。
    白内障は、心配する手術ではなく、楽しみに待っていただける手術です。よい視力に回復されることをお祈りしています。

  3. お返事ありがとうございます

    ラグビーボールのようでジャガイモのような目で、予定の視力は出ないかもと言われていたのですが、そのとうり
    左は遠くが見えて(0.5)近くはどこにも焦点が合わない
    右は遠くも近くもそこそこ見えるのですが、乱視ぎみ

    そんな物と思うのか、以前コンタクトを入れていた頃のくっきりした世界を思い出して、少し暗い気分です
    予約を入れて、石岡にいくしかないようです

  4. 質問させてください。

    当方、円錐角膜(ペルーシドかどちらか)です。両眼ともに白内障があり、左目はハードコンタクトで0.9、右は1.2くらいの矯正状況です。左は5年ほど前から白内障があるとゆわれてていままできました。逆光のときや、蛍光灯をみると、とくに白内障を感じます。右はまだ自覚症状もさほどなかんじです。現在33なののですが、将来的には白内障の手術は、避けられないと思っています。

    もし、白内障手術後に私の様な円錐角膜による不正乱視も、LRIとかで軽減は可能なのでしょうか?

  5. 不正乱視の矯正は、なかなか難しいものがあるのですが、
    程度や種類によって、最近はトーリックIOLもしようすることが多くなりました。
    (以前はトーリックIOLは不正乱視には向かないと考えられていましたが、思ったより良好な結果になるという医師が増えてきています。)
    LRIよりは、トーリックIOLの方が行われる可能性が高いと思いますが、不正乱視の程度などにもよりますので、診察次第だと思います。
    また、申し訳ありませんが、手術がどんなにうまくいっても、裸眼のみでの良好な視力というのは期待できない場合が多いと思います。トーリックIOLである程度の乱視軽減をして、やはりハードコンタクトを装用。という形になると思います。

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