緑内障? 治療:SLTレーザー

今日の午後は以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 10件
・斜視手術 1件(甲状腺眼症:眼筋移動)
・緑内障手術 1件(トラベクレクトミー:血管新生緑内障)
・網膜硝子体手術(茎離断)3件
(黄斑前膜1件、糖尿病網膜症1件、裂孔原性網膜剥離1件)
つくば市の眼科様から緊急で網膜剥離の紹介があり、予定より件数が伸びたため、全部終わると18時で、ちょっと遅くなってしまいました。スタッフのみなさんご苦労様でした。手術は無事に終わっています。

緑内障
治療:SLTレーザー

緑内障の治療は眼圧を下げて視神経が押しつぶされることを止めよう。というものです。失った視野や視力が元に戻る方法はまだありません。

眼圧を下げるには、目の中を循環する房水(ぼうすい)の産生量を減らすか、排出量を増やすかになります。治療法に関しては、緑内障?にも書きましたが、点眼薬、レーザー、手術などに分類されます。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4931

今日はSLTレーザーについて記載しようと思います。

まず、房水は目の中の隅角(ぐうかく)という出口から排出されていきます。

図の赤矢印の先が隅角になります。
緑内障の患者様では、この出口の構造に問題があって、房水の排出が悪いことがあります。SLTレーザーは、隅角に特殊なレーザー光線を照射することで、隅角からの房水の排出を増加させ、眼圧を下げる治療法です。

隅角からの房水の排出を邪魔する、色素細胞に影響することで、房水の排出を増加させるのではないか?と推測されていますが、別の説を唱える先生もいらっしゃり、明確な原理は不明です。

治療方法
点眼薬の麻酔で施行可能で、痛みは殆どありません。
・片目の治療で、隅角に約120回レーザーを照射します。治療時間は5?10分
外来治療で、当日から入浴や洗顔も可能です。生活の制限はありません
・炎症を抑える目薬を、治療後1週間程度使用します。
・副作用のチェックや、効果の判定を、1週間後、1ヶ月後に行います。

SLTの良い点
・レーザーが良く効いた人は、点眼薬をつけなくてよくなったり、点眼薬の数を減らすことができます。
効果が約1年間持続します。効果が弱くなってきた時には何回でも再治療が可能です。

ここまで書くと、とってもいい治療!なんて思いますよね??
でも、問題点もあるんです。

SLTの悪い点
費用が高い。(1割負担で片眼9000円弱、3割負担で片眼27000円弱)
・人によって効果に差があります。
 良く効く人では、治療前35の眼圧が10とかにまで下がることがあります。
 逆に、全く効果が出ない人も20%くらいあります
・一過性眼圧上昇:治療後の炎症などから、眼圧が一過性に上昇することがあり、きちんと検診が必要です。(稀ですし、対処法があるので過度な心配はいりません。)

目立って副作用がなく、点眼薬から開放されると思うと、ぜひチャレンジしたい治療法ですが、結構な金額を払って、もしも無効だったらと思うと、実は、僕は第一選択ではお勧めしていません。
(病院経営としては、数分で終わるSLTレーザーは、緑内障の治療法の中では、最も儲かる治療法でしょう。でも、毎日の目薬が可能で、眼圧下降が得られる症例では、今の医療情勢では、点眼薬による治療が第一選択ではないかと思います。点眼薬1剤を1年間購入しても、片眼のSLTレーザーよりも余程安価です。両眼SLTレーザーではかなり差がでます。)

僕がSLTをお勧めする場合は、以下のような場合です。
?点眼薬を使用しているのに、眼圧下降が十分に得られない症例
?仕事が不規則などで、点眼薬を規則正しく使用できない症例
?点眼薬への副作用があり、点眼薬が使用できない症例
?点眼が面倒という主張で、かつ、経済的に恵まれている方
?水晶体嚢性緑内障(PE)、色素緑内障、ステロイド緑内障など、高い効果を望めそうな方

保険診療って、案外面倒です。
もしも、SLTレーザーが今の3分の1位の費用で可能であったら、おそらく3倍以上の患者様の治療に用いられているでしょう。
価値観や経済力は、人それぞれですが、片眼3000円で、目薬をつけなくてよくなるかも。となったら、治療希望者も沢山いそうですよね??

茨城県には10台弱のSLTがあるのかな?と思いますが、
もちろん当院にもあって、毎月数名の患者様の治療をしています。
上記???に当たる方で、治療のご希望があれば、受診してみてください。

“緑内障? 治療:SLTレーザー” への6件の返信

  1. 3/21に主人が網膜剥離の手術でお世話になりました。(今入院中です)思いもかけないことだったので、正直うろたえました。大変ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

  2. 網膜剥離は「入院です。手術です。」と、突然言われることが多いので、ビックリしますよね。
    今のところ、うつ伏せもしっかりと頑張って頂いているようで、経過は良好です。このまま順調なら、予定通り1週間で退院になるかと思います。
    申し訳ありませんが、来院時にはすでに中心部まで剥がれており、視力も0.15でしたので、元通りなどの良好な視力への回復は難しいと思います。ある程度は改善しますが。どの程度に改善するかは、数ヶ月経ってみないと分かりませんが、少しでも明るくなるといいなと思います。
    退院後は、紹介先のもとの眼科様で、少しの間は毎週のチェックをお願いすることにあります。当院にも退院後1回は来て頂きたいと思います。距離が遠いですが、ご協力下さい。

    ご本人様にはお話してありますが、血液データにかなりの異常があり、内科様での治療が必要です。退院後、お近くの内科様に必ず通院するようにお願い致します。

  3. はじめまして、緑内障について調べていて辿り着きました、40代後半の男です。

    私は今、緑内障の長期点眼治療を始めるか?、もう少し様子(視野等)をみるか?・・・それともSLTが良いのか? 等で悩んでいます。

    眼病歴としましては
    小学生より春季カタル?アレルギー性結膜炎があり、潰瘍による角膜混濁も左眼に残っています。それも年齢と共に軽快し、現在は無点眼でやり過ごせる事がほとんどという状態です。

    20歳前に急性型(ステロイド?)緑内障で眼圧が60迄上がり、手術を左右しました。それで視神経は痛めたものの、手術後は眼圧12前後で安定、視野も特に欠損部無しという事で、無治療にて25年以上過ごしてきました。

    その後去年、久々に視野検査した時も特に欠損部はなく安心していたのですが、先週の検査では右目鼻側(盲点の反転位置)に少し欠損部が見られました。花粉MAX時で涙目だった影響も考慮し 今週再検査をしました。しかし若干は減少したものの同様型の欠損部が出ました。
     MD:去年 右-3.91 / 左-4.62
         |
        先週 右-6.06 / 左-5.78
    今週 右-4.24 / 左-4.05

    PSD:去年 右2.94 / 左2.00
         |
        先週 右4.03 / 左2.04
    今週 右4.48 / 左2.35
     手術後十年間のデータ等はカルテ破棄により無し 

    眼圧:数年来15前後(接触式) 空気式で15?17
       若年時に比べて 3?4前後上昇
       円錐角膜気味で 強度近視-8D

    ・手術後に白内障発現、中年になり進行気味
     な可能性も有
    ・青年期よりアトピーは重症で治療中
     (免疫抑制剤内服&外用ステロイド少量)

    以上のような目や体質なのですが、方針決断は医師からも任されている状況です。

    一旦点眼を始めると今度はなかなかやめれなくなるし、かといって2?3か月毎の検査での様子見で もし結構悪化してた時の後悔も大きいだろうし、それならば長期点眼によるアレルギー誘発も心配なので 貴院のような設置施設でのSLTが良いのか・・・?

    そこでご質問なのですが

    ・若年時に結膜炎の薬数種を長期点眼していての経験則なのですが、防腐剤?や成分?が目の生理を弱らせる様な感じがしてなりませんでした(科学的根拠無し)。
    緑内障点眼薬でも上述の様なことや又、アレルギー性結膜炎を誘発しやすいとかはありがちなのでしょうか?

    ・SLTは私のような眼病歴の正常眼圧者にも効果は出し易いのでしょうか?
    又、施術者による技術・経験差が出やすい技術なのでしょうか?

    ・その他、上記データからの見解等ありましたら宜しくお願いいたします。

    お忙しい所、細かい長文失礼致しました。 

  4. こんばんは。ご連絡ありがとうございます。
    質問の答えですが、
    ?防腐剤によるアレルギーや角膜障害は有名ですが、緑内障などの誘発に関しては関係ないものと思います。緑内障点眼薬によってアレルギー症状が起こることはありますが、中止により軽快が可能です。

    ?SLTは正常眼圧緑内障でも有効な例はありますが、開放隅角緑内障や、PE緑内障(水晶体嚢性緑内障)に対してのほうが効果が高いようです。どちらにしても、効果に個人差があります。
    手技自体は非常に簡単なもので、数回しかやってことがない。などの先生をのぞいて、多少のの経験があれば問題なく施行可能な処置です。

    ?現在の視野異常が、本当に緑内障によるものなのか?なども考える必要があります。視神経の所見や、OCTやGDxなどによる3次元画像解析での評価を行うべきです。強度近視・病的近視などでも視野には異常が起こりえます。
    眼圧も高いようではないので、進行もゆっくりです。個人的には半年程度は様子をみてもよいのではないかと思います。半年後に視神経のデータや視野変化などを総合的に評価して、悪化傾向であれば治療をお勧めします。
    以前の緑内障手術の内容と経過によっても治療法が異なります。もしもトラベクレクトミーなどの手術が行われており、ブレブが残存するのであれば、ニードリングなどの処置が第一に検討される場合もあります。

    以上、参考になれば幸いです。

  5. ご回答ありがとうございました。大変参考になりました。

    担当の先生も同様に急いで対応する病状では無いとの事でしたので 少し安心しました。

    ただ、今後幸い悪化しないとしても常にギリギリのラインを綱渡りしている様な状況に視神経が置かれていると判ったので、気休めであっても極力 体も若く保つようにしていきたいと思います。

    また不明点などお聞きする事があるかもしれませんがその節は宜しくお願い致します。ありがとうございました。

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