円錐角膜? 病態と原因

この数日は、眼科医の先生方などに食事に誘って頂くことが多く、ちょっとブログをサボってしまいました。有名な緑内障の先生と初めてご一緒させて頂き、とても勉強になりました。日々の診療で生かしていきたいなと思います。いろいろな先生と話す機会があると刺激になります。

さて、目の事を書こうかな。
昨日の外来でみた症例でも。
円錐角膜(えんすいかくまく)
病態と原因

眼球は、黒目(角膜)から光が入って、目の奥のフィルム(網膜)に光が当たると物が見える、カメラのような構造をしています。入ってきた光が、目の中で進行方向を変え(屈折)、ちょうど網膜上で像を結ぶ(ピントを合わせる)ことができれば、物が良く見えるのですが、この、光を曲げる(屈折させる)役割を担っているのが、角膜と水晶体(レンズ)になります。
近くをみたり、遠くをみたり、見る距離によって形を変えて、ピントを合わせる力を持っているのは水晶体ですが、実は、光を曲げる力(屈折力)でみると、角膜は水晶体の約2倍、光を曲げる力が強いのです。
レーシックでは、角膜を削って形を変え、屈折力を弱くすることで近視を治したりします。

角膜は本来、キレイな半球状の構造ですが、円錐角膜は角膜の先がとんがって、円錐状になってしまう疾患です。


通常の角膜(赤矢印)が、キレイに光を屈折するとすると、


円錐角膜の患者様では、角膜の先がとがって歪んでしまうため、角膜の部位によって、不規則に光が侵入し、乱視が重度にひどくなったり、物が何重にも見えてしまうようになります。

疫学
およそ千人に一人とされていますが、報告により様々です。
昔は数万人に1人。なんて言われていましたが、近年は診断機器の開発が進み、今までは「ただの乱視」と言われていたような人が、円錐角膜と診断されることが多くなったようです。眼科医の僕にとっても、「稀にみる珍しい病気」ではなく、「ちょこちょこ出会うよくある病気」という印象です。女性よりは男性に多い疾患で、思春期頃に男の子が発症。というのが一番多いケースです。

原因
実は、明確な原因はまだ分かっていません
円錐角膜が多い家系が知られていますが、原因遺伝子も特定されていませんし、そもそも遺伝ではない孤発例の方がよほど多くあります。
ダウン症候群の方や、アトピーの方に合併することがよくありますが、その原因も不明です。(アトピーでよく目を掻いているから?との推測もありますが、化学的な解明はされていません。)

何らかの原因で、角膜の中央部のやや下方を頂点に、角膜が薄く・弱くなってしまいます。眼球内には房水と言う水が循環して、眼球を内側から膨らませていますが、この薄く・弱くなった部位は、他の角膜に比べて、内側からの圧力に弱いため、その部位が突出していきます


円錐角膜に細いスジ状の光を当てて撮影した写真です。写真の中央部、縦に光る白い線が角膜ですが、キレイな弧ではなく少しいびつになっていたり、角膜の厚みが一定化していないのが分かるでしょうか?

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