色覚異常? 検査・診断

今日の手術は白内障手術が7件で、無事に終わりました。
だんだんと、暑い夏が増えてきましたね。

今年はアサガオの緑のカーテンに挑戦しているのですが、どのくらい育ったか、
毎朝毎朝気になってしまいます[:見る:]

色覚異常? 検査・診断
先天色覚異常の多くは、実は問診だけで診断が付きます。
というのも、眼科に受診する時点で、ご両親や自分自身で色覚異常だと認識して相談に来ることが多いからです。
色覚異常の多くは、先天赤緑色覚異常と呼ばれるL-錐体M-錐体の異常なのですが、男女を決定する染色体(遺伝子)に原因があることがおおく、殆どの患者さんは男性になります。
父親や、母方を含むおじいさんや、おじさんに、同じような症状の方がいるため、受診時にはなんとなく気がついていたり、すでに自覚していていることが多く、「父親やお爺さんが色覚異常で、この子もなんとなく色を間違えやすいみたい。正確に診断できますか?」という相談や、「色覚異常ですが、この職業に就くのは可能ですか?」という相談が多くなります。

実は、先天赤緑異常は軽いものを含めると、なんと、日本人男性では20人に1人弱(5%弱)と、とても身近にありふれたものなのです。(女性では500名に1人弱と極端に男女差があります。)

次に黒っぽい赤黒っぽい緑などの見分けが付きにくいかどうか?等を聞いて、赤に関連したものが見えにくい⇒L-錐体異常(1型)と診断がついてしまいます。

そうは言っても、本当に患者さんが来た場合には、せっかく受診して頂いたので、きちんとした検査を受けて頂きます。

?仮性同色表
いくつか種類があるのですが、当院では石原式仮性同色表を採用しています。

正常色覚では数字が書いてあったり、クネクネの迷路を指でなぞったりすることが可能です。色覚異常で、赤や緑などの背景と文字や線の見わけが付きにくい場合には、数字が読みにくくなります。
全てのページを検査すると、かなり軽い色覚異常でも、発見することが可能です。逆に、仮性同色表をスラスラ判読できる場合には、色覚異常は心配ないとも言えます。
(たまに、本当は物が見えるのに、見えないふりをする困ったお子さんや、保険金の裁判中なんていう仮病・詐病の人が来院されます。仮性同色表には、ある程度の視力があれば、色覚異常の方でも判読できるページもあり、そういう判定にも役立ちます。内緒のページなのでUPはできません!)

パネルD-15テスト
グラデーションで色がついたパネルを、色合いが近い順から並べていくテストです。一番左端の青だけは固定で、順に15個のパネルを並べていきます。

正常色覚では上のように順に並べることが可能ですが、

色覚異常では、上のようにごちゃごちゃと並べてします。
パネルの裏側には番号が付いていて、

並べ方によって、赤の異常なのか、緑の異常なのか、青の異常なのかを判定することができます。
(パネルD-15は、色覚異常が軽度の場合には正常に配列が可能で、中程度以上の異常を診断することが可能です。)

アノマロスコープ
光の3原色で書いたのですが、赤の光と緑の光を合わせると、黄色の光ができます。アノマロスコープは、上下に2つに分けられた丸があり、

・上半分は緑→黄色→赤へと変化、
・下半分は黄色の明るさ(明るい黄色・暗い黄色)を変化
させることができる装置です。
正常色覚では、少し暗い黄色で、上下の色がほぼ同じになるように調節することが可能ですが、色覚異常者では「正常者が上下の色は異なる色だ」と判断する状態で、色が同じになった。と認識します。
この上下の色の解析により、どの錐体にどの程度の異常があるのかを、かなり正確に判定することが可能です。

どこま正確なのかは不明ですが、i-padのアプリで、パネルD-15などを見つけました!3000円で購入してみました。

医学で使うものって、値段がなんで??と思うものが多いのですが、上記の正規の検査機器は8万円以上します。僕は結構いろいろな病院で勤務歴がありますが、当院以外では大学病院くらいでしかパネルD-15を見たことがありません。
数千円のアプリでも正確な検査が可能なのであれば、日本中の眼科で使われるようになるのかな??と期待をしつつ、しばらくは両方の検査をやって頂き、正規のものと判定が異なるかどうかを確認してみたいと思います。
注)アプリには、あくまで参考です。正確な診断は病院で正規の検査を受けるべきだと注意書きがありました。

“色覚異常? 検査・診断” への3件の返信

  1.  「多くは父親から男の子に遺伝していきます」というのは、
    違うのではないでしょうか? 男親(XY)が色覚異常でも、
    母親(XX)が正常(保因者でもない)なら、男の子(XY)の
    Xは必ず母親由来で、色覚は正常です。

  2. ご指摘頂きましてありがとうございます。

    ・父親を主体として、その多くが子供に遺伝する。
    ということではなく、
    ・患児を主体として、その多くは父親からの遺伝である。
    という意味で記載していました。

    また、専門的な事柄になってしまいますが、実際には、父親が色覚異常でも、母親が保因者でなければ子供は発症せず(娘が保因者にはなる)、
    父親が色覚異常で、かつ母親が保因者であった場合にのみ発症例がでます。むしろ、母が保因者であれば基本的に息子は発症します。
    ですので、ご指摘の通り遺伝学的には、父親⇒息子という短絡的な形態ではありません。

    ただし、実際に外来を行っていると、父や母方の祖父と同じでは??と、自分たちで「色覚異常」であることを把握して来院されるかたほうのうが多くなります。
    母が保因者で子供が発症した場合には、ご家族自身には色覚異常の家系であるとの認識が希薄で、受診の機会がなく、程度の軽い異常では、病気であることを知らずに育っているケースが多くなります。

    僕の勝手な価値観ですが、保因者という表現は多くの一般の患者様に分かりにくく、患児の父親や、祖父(母方を含む)などに発病者がいたとして、症状や表現形としての同じ病態を遺伝。という意味で書いた方が分かりやすいかなという思いがあり、そういった意味で遺伝という言葉を使ってしまいました。

    ご指摘の通りで、伴性劣性遺伝の場合、母が正常であれば、父親が発症者でも、男児が父と同じ病態を発症することは考えなくていいのですが、実は色覚異常に関しては、保因者となる母親がかなり多くいらっしゃるために(報告にもよりますが数十人に1人は)、色覚異常のお子さん(男児)が受診した場合に、その父親や、祖父(母方を含む)が発症者であることが多々存在してしまうのです。

    一般の方になるべく分かりやすい文章でと、一気に記載し、また推敲もしていないので、意図した記載とは、別に意味の文言となってしまいました。
    分かりにくくなってしまい、申し訳ありません。
    ご指摘をありがとうございました。

    ナイーブな分野でもありますし、可能であれば、本文の訂正を行いたいのですが構いませんでしょうか?

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