色覚異常? 色誤認

今日も午前中の外来が70名強と、少し待ち時間の長い患者様が出てしまいました。すみませんでした。
午後は知り合いの先生の病院でお手伝いに行きました。少し難しい症例もありましたが、無事に終わって安心です。

少しサボってしまったのですが、色覚異常の続きです。
色覚異常? 色誤認
以前も少し記載したのですが、先天性の色覚異常で問題なのは、緑が緑に見えないことではなく、赤や緑をハッキリ区別して見えている人たち(正常色覚)と、色の判別が異なってしまう事です。
仕事で、赤のカードと緑のカードがあって、「赤ならこの作業」「緑ならこの作業」と言われた時に、判別しにくいのは問題ですよね?

そういうと、先天赤緑異常などの色覚異常の方が、劣っているのでは?という誤解が生まれそうですが、決してそうではありません。例えば、鳥類は赤・緑・青以外に、紫外線より短い波長の色の認識が可能で、4原色を認識する錐体があるとされています。人間やサルの多くは3原色ですが、他の哺乳類は赤と青の2原色の錐体をもつようです。
差別的な問題を少なくするために、3錐体の正常色覚者、97%のことを多数派色覚3%の色覚異常者をまとめて、少数派色覚と呼ぶ団体もあるのですが、
どちらが優れている・どれが一番良いという事はなく、それぞれ長所と短所があり、たまたま人間の多くが、赤・緑・青の3原色を認識する色覚(正常色覚・多数派色覚)の持ち主であったようです。
民主主義での選挙もそうですが、世の中はどちらかというと多数派に有利に出来ており、多数派の見え方と異なる色覚異常(少数派色覚)の方には若干不便になってしまうのですよね。

治療
残念ながら、現在の医学では先天色覚異常の治療法はありません。
色覚異常の方は、多数派の正常色覚と呼ばれる人たちと生活していく上で、自分がどのような色が見えにくいのかをしっかりと認識をしていくことが重要となります。
どのような色の見わけが付きにくいのかは、色覚異常のタイプによって異なるのですが、基本的には経験によって獲得していくものです。一応、先天赤緑異常で見分けにくい色を記載しみます。
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?オレンジ黄緑
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?ピンク白や灰色
?黒や灰色
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?ピンク水色

上記の色をそれぞれ明るくした色や、暗くした色も判別しにくくなりますが、最終的には経験上、難しかった色について、対策を考えていくのが重要です。
仕事で、色のついたカードが判別しにくいのであれば、各色ごとにカードの大きさや形を変えるなど、色以外の方法で判別ができるようにるようにしたりします。

では、正常色覚の人は自分の思うままに生活すればでいいのでしょうか?それはNOです。色覚異常の人もいるのだと言う事を忘れずに、色覚異常(少数派色覚)の人が不自由をしないように、色覚異常があっても判別しやすい社会を作るべきです。
人類の数%を占める先天赤緑異常が読めない教科書は作るべきではありません。緑の背景に赤い文字を書いたら、認識できない人がいることに配慮しなくてはいけません。
義務教育の教科書などは、かなり気を使ったものが増えてきていますし、ユニバーサルデザインと呼ばれるような万人向けのデザインのものにも、色覚の概念が取りいられるようになっており、社会は徐々に変わってきているのかもしれません。
一方で、眼科の学会のポスターやプレゼンテーションで、色覚異常に全く配慮をしていないものを目にすると、とても残念な気分になったりする事もあるのですけどね・・・。

“色覚異常? 色誤認” への3件の返信

  1. 突然すみません。
    ネットで探していて辿り着きました。
    母が先週白内障の手術を受けたのですが、
    眼たいを外した直後から、
    中心部が紫色に暗く見え、見にくいと言っています。
    先生の話では視力が0.4から0.5に上がって成功しているとのことですが、このままにしても大丈夫ですか?

  2. こんにちは。
    中心部が暗く感じるようですが、大きく2つの原因が推測されます。(もちろん、それ以外にもありえますが、一般的に考えやすいものを記載します。)

    ?手術時の顕微鏡の光・ライトによる毒性
     多くは時間と共に軽快しますが、重症例では障害が残存する事があります(光毒性)。白内障手術の時間が長かったり、過度に強いライト(まぶしい)で手術をした場合には、可能性が高くなります。積極的な治療によって、回復を期待する方法は一般的ではなく、経過観察が主体になります。

    ?網膜・眼底疾患が発生・悪化した可能性
    加齢黄斑変性症などの、黄斑部の疾患が原因になっている可能性もあります。黄斑変性症や黄斑浮腫と呼ばれる病態は、上記のような手術時のライトによる毒性や、手術による炎症で、白内障手術後に急激に悪化する症例があることが知られていますが、この場合は、注射等の治療を早急に行う必要があります。他にも、黄斑円孔など、白内障の手術の前には診断がつきにくく、手術後に病気が隠れていたことが始めて分かるケースもあります。
    これらの病気の診断には、OCTという網膜の断面図の検査が必須です。OCT検査を受けていて問題なければいいのですが、現在、通院されている医院様にOCTがない場合には、一度他院様でも相談されてみるのもいいかもしれません。

  3. 本当にありがとうございました。
    今日の午前中に別の眼科にかかったところ、
    黄斑に水が溜まっていたようです。
    視力もさらに下がってきていて、
    水曜日にルセンテイスという薬を注射することになりました。
    インターネットでこのような出会いがあるとは思っても
    いませんでしたが、先生には本当に感謝しています。
    お忙しいと思いますが、お体を大切にしてください。
    ブログもこれからも読みつづけます。

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