緑内障21 最新手術 エクスプレスシャント トラベクレクトミー?

土曜日は通常は午前外来だけなのですが、ちょっと早めの手術が望ましい人が多く、午後は手術日になりました。スタッフの皆さん、ご協力ありがとう。
・白内障手術 3件(加齢黄斑変性注射同時2件)
・血管新生緑内障ニードリング 1件
・網膜硝子体手術(茎離断)4件 (全て糖尿病黄斑浮腫)
無事に終わりました。

さて、今日は緑内障手術から新しい話題を。
緑内障最新手術 
エクスプレスシャント トラベクレクトミー?

緑内障は目の中を流れ、眼球を膨らませている水が、神経を圧迫して見えなくなっていく病気です。内部の水の量を減らして、圧力を低下させることで、進行を遅らせる事が出来ますが、多くの症例は点眼薬による治療でコントロールが可能です。点眼薬で目標とする眼圧まで低下させることができない場合には、レーザーや手術を行うのですが、
いくつかの手術方法のうち、最も強力で、最も多く行われている方法が、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)になります。一般的なトラベクレクトミーの方法に関しては、以下のブログを参照下さい。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=129061

手術自体は、比較的簡単なトラベクレクトミーですが、手術後のキズ口の癒着が早い・遅いなどの個人差が大きく、術後管理がとても大事であることを以前に記載しました。
⇒トラベクレクトミー後の術後管理

術後の問題点としては、主に以下の二つがあります。
・作成した水の抜け道が癒着してしまい、水が流れない⇒眼圧が高い
・抜け道が大きすぎて、水がじゃじゃ漏れ⇒低眼圧

これまでは、水の抜け道の作成は、眼科医の手によって、切ったり縫ったりと、手作業で行われてきましたが、人工のバルブやチューブを使用することで、出ていく水の量を一定化し、眼圧を安定して低下させる方法を、チューブシャント手術と言います。
欧米では、チューブシャント手術は以前より広く用いられてきましたが、日本の保険診療では認められずに、これまでは自分たちで勝手にバルブやチューブを輸入してこっそり使っていました。
今回、日本でもとうとう、今年の4月から保険診療でチューブシャント手術を行う事が認可されたのです!!(嬉しい!!)


一般的なトラベクレクトミーのイメージ図ですが、赤の矢印が房水を目の外に流す抜け道です。青が目の外の水の貯留部(ブレブ)です。
これまでは、この赤矢印のように水を流すためには、下の写真のように、白目(強膜)の組織の一部や、線維柱帯、茶目(虹彩・瞳孔)の一部をメスやハサミで切除する必要があり、全症例で大なり小なり必ず出血が起こりました。

エクスプレスシャントは、上のような組織の切除を必要とせず、白目(強膜)から目の中に向けて、下のようなバルブをプスッと刺すだけで、水の抜け道が形成されます。

エクスプレスシャント利点は沢山あります。
?出血が少ないこと
?手術手技が省略され、手術時間が短くなること
?キズが小さいので、炎症が少ないこと
?キズが小さいので、キズを縫う縫う範囲や数が小さく、手術にともなう乱視が出にくいこと
?、??により視力が安定・回復するまでの時間が短いこと

などなどありますが、なにより、一番重要な利点は、
?流れる水の量が一定化し、眼圧が下がり過ぎたりする合併症が減少することです。

一部のベテランの先生で「エクスプレスなんて使わなくても、きちんと切って、きちんと縫えば、大丈夫。」とおっしゃる方もいるのですが、僕が思うには、どんなに上手な人が丁寧に手術をしても、人間の手作業・手縫いで作られてたキズ口を流れる水の量に比べれば、人工的に作られたバルブの中を流れる水の方が、流量が一定化するに違いないと。

エクスプレスは6月18日に発売され、当院でもすでに3件の手術が済みましたが、みなさん安定化も早く、今のところとても良好な経過となっています。術後の管理で行う処置の回数が少なく、退院が早いのも特徴です。
8月も3件、9月もすでに予定が入っていますが、手術がとても楽しみです。
次回は、実際の手術方法に関して書いてみたいと思います。

では、今日も最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

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