硝子体出血① 病態・原因・治療

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 11件
・緑内障手術(エクスプレスシャント)1件
・網膜硝子体手術 4件(茎離断3件・増殖1件)
(増殖糖尿病網膜症2件、黄斑前膜1件、硝子体出血/静脈閉塞1件)
無事に終わりましたが、糖尿病の方が大変で、出血を取り除くと、

増殖膜(カサブタ)をハサミで切って、網膜から剥がしたり。というのが、目の中に10か所くらいビッシリ。眼科で定期検診を受けていたようなのですが・・・。疲れた。
定時を思いっきり過ぎました・・・。スタッフの皆さん、お疲れ様でした。いつもありがとうございます。

今日の手術から、一つ話題を。
硝子体出血①(しょうしたいしゅっけつ)

眼球はカメラによく似ていますが、角膜(黒目)側から、光が入ってきて、水晶体(レンズ)で光を曲げて、網膜(フィルム)で光を感じ取ります。硝子体は、レンズとフィルムの間、イラストの矢印、目の中で最も広いスペース(硝子体腔:しょうしたいくう)を占める、ゼリー状の組織です。
卵の白身のようなベトベトした組織で、若い時には目の中いっぱいに。加齢よって干からびたりすることを以前に書いたことがあります。(飛蚊症の項)

硝子体出血は、この硝子体腔に出血が広がってしまった状態です。

症状
本来、無色透明で光を通過させるはずの硝子体に赤い出血が起これば、出血が光をさえぎるために、見え方を低下させます。
・出血が極少量であれば、飛蚊症として認識されたり、
・中程度であれば、視力低下や、血液の濃いところ薄いところが動いたりして、もやが動いているようにみえたり。
・出血が多い場合には、「真っ暗」など、高度な視力低下を引き起こします。

原因
原因は主に網膜や脈絡膜など、眼球の後方からの出血ですが、網膜から出血を起こす病気は数えられないくらいあるのですよね・・・。一応、記載すると、
・網膜静脈閉塞症(中心静脈・中心静脈分枝閉塞症)
・糖尿病網膜症
・動脈瘤破裂
・加齢黄斑変性症
・高血圧網膜症
・網膜剥離
・くも膜下出血(テルソン症候群)
・ぶどう膜炎
・外傷
・後部硝子体剥離
・感染症
・腫瘍
    などなど。

治療
原因となる疾患がハッキリしている場合には、その治療が必要です。
糖尿病網膜症なら血糖値のコントロールが必要ですし、
ぶどう膜炎なら、ステロイドによる消炎が必要です。
ここでは、大本の治療以外の起こってしまった出血に対する治療を記載します。
①経過過観察
血が出続けている状況ではなく、一過性の出血のみで止まってしまった場合には、よほど濃い出血などをのぞいて、自然にキレイになっていくのを待ちます。
(手足の内出血も、時間が経てば、自然に吸収されますよね?)
②止血剤・血管強化薬
アドナやシナールなどの内服薬を使用することがあります。
③注射
原因となる病気の種類によりますが、抗VEGF薬(アバスチン・ルセンティス)とよばれる薬や、ステロイド剤を、眼球内や眼球周囲に注射をする事があります。
④手術
手術で眼球内にと直接機械を挿入し、出血を除去・洗い流したり、出血の原因をレーザー光線で焼いて、止血をしたりします。

今日の患者様は94歳で、県南の眼科様から昨日紹介となった方です。目の中が血みどろで、視力は光覚弁といって、光が分かるか分からないかくらいです。
まず、仰向けに寝て、点眼薬の麻酔⇒消毒⇒注射の局所麻酔

白内障がある場合には、一緒に手術をしてしまいます。


次に、黒目の周りに、3~4か所の穴をあけて、直接眼内に機械を挿入します。内が赤いのが分かりますか?


眼球内で処置をしている写真です。出血が多い場合には、ただ赤く見えるだけの写真になってしまうのですが・・・。これでも一生懸命洗っている最中です。

硝子体出血の手術と、ひとえに言っても、
簡単なものでは15分くらい。重症例では1時間かかることも。
術後の見え方も、1.0と良好なものから、失明に近い状態まで様々です。
どうしてそんなに違うのか?というと、出血をした原因の病気や、出血をした場所によって様々だからです。
次回は、そのあたりをもう少し詳しく書いてみます。

今日の94歳のおばあちゃんは、黄斑変性という悪い病気の疑いで紹介だったのですが、手術で出血を除去して観察すると、静脈閉塞症という病気だったようで、予想以上によい結果になりそうです。良かったよかった。

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