緑内障25 最新手術 バルベルトチューブシャント?

今日は白内障手術を8件、夕方は県内の他院様にて硝子体手術のお手伝いでした。
手術は問題なく無事に終わりましたが、今日は久しぶりに助手なしでの手術になりました。数年前は、助手なしで1人で手術をすることが多かったのですが、現在は井上先生や、その他沢山の先生に代わる代わる来て頂いたり、ナースにも助手をしてもらう事もありますが、みんな気配りのできる人ばかりなので、僕は手術に集中できて助かっています。久しぶりに1人でやってみると、ありがたさを再確認できます。支えて頂き、本当にありがとうございます。

さて、昨日バルベルトチューブシャント?を記載しましたが、さっそくコメント欄で質問を受けたので、そのあたりについて、書いてみようと。
緑内障25 最新手術
バルベルトチューブシャント?

以前も記載しましたが、この春・4月から緑内障手術で、チューブシャントという術式や、手術に使用する物品の費用などが、保険診療内で行う事が出来るようになりました。
バルベルトが4月。エクスプレスが6月に発売され、今までは自費で輸入して頂いかなくては行う事が出来なかった医療が、保険診療で出来るようになったことは喜ばしいことです。

ただし、新しい手術方法には、それなりに不安定な要素もあり、飛びつけばいいというものではありません。
現在のところ、当院で行ったチューブシャントは全例で大きな合併症もなく、眼圧の経過も良好ですが、5年後、10年後にどういう経過となるかは、今後もしっかりとした観察が必要です。

エクスプレスシャントは、基本的に通常のトラベクレクトミーを簡易化・安定化させたようなもので、もしも眼圧が上昇しても、通常の手術に乗り換えることは、難しいことではありません。基本的には、初回の緑内障手術(トラベクレクトミー)に対して、行われることが多くなります。

では、バルベルト チューブシャントはどうかというと、バルベルトは基本的には、他の緑内障手術を複数回行ったうえで、それでもどうにも眼圧の安定を得られない、難症例・超重症例に行うための手術方法と考えられています。

トラベクレクトミーを繰り返して行った人は、黒目・角膜の近くの結膜で、ブレブ(房水の貯留池)を作ることが困難になります。そんな時に、バルベルトチューブの中を通して、眼球の後方に水を排出させるという方法ですが、大きく切ったり縫ったりすることが必要になり、一度バルベルトを縫いつけた場所は癒着がひどく、追加の手術を行う事が困難になります。

また、通常のトラベクレクトミーでつくられるブレブは、黒目・角膜のすぐ上などにプックリと出来るため、水がきちんと排出されているかなどを、診察で簡単に確認することができます。もしも、ブレブに癒着が起こっても、ニードリングという処置で癒着を剥がすことも出来ます。

通常のトラベクレクトミーでつくられる、ブレブのイメージと写真です。

一方、バルベルト手術を受けた人の診察の写真です。、

左の青矢印の部分を拡大したのが、右の写真ですが、ピンク矢印の先に眼内に差し込まれたチューブの一部は見えるものの、

イメージのように、水が目の奥の方に流れて溜まっていく様子は、診察では調べることができないのです。なので、どの程度、水の貯留池ができているのか、癒着が進んでいるのかどうかなど、詳細を把握することが困難なのです。

少し難しい内容となってしまいましたが、まとめとしては、バルベルトチューブシャントの術式は、他の緑内障手術を行っても上手くいかない場合に、他の方法がないので、仕方なく行う最終手段。といった意味合いの強い手術になります。
(現時点では、バルベルト手術を行った場合、全例で定期的な経過観察を行い、経過報告を厚生省に提出することが義務付けられています。)

医学の進歩とともに、新しい手術方法がどんどん増えています。緑内障の手術と言っても、何種類もあるのですが、個々の症例に対して最適と思われる手術方法を提案・実施することが、僕たちの責務です。

“緑内障25 最新手術 バルベルトチューブシャント?” への5件の返信

  1. 栗原先生
    お疲れさまです。
    ご多忙の中、ブログ更新本当に有り難うございます。
    また、8/24『お手紙』心底嬉しく、重ねてお礼申し上げます。心温まるお返事有り難うございました。
    今、先生がピックアップされているバルベルトチューブシャント…まさしく小生が8/17に右眼に受けた手術でした。すごいタイミングでのピックアップだなあと驚いています。個人授業のようです(笑)

    【小生の右眼圧に着目すると…】
    ★8/1⇒22
    ※ニードリング
    ★8/2⇒17→12
    (→は眼球指圧)
    ★8/3⇒2
    ★8/6⇒8
    ★8/8⇒8
    ★8/10⇒12→8
    ★8/13⇒68→56
    ※ニードリング
    ★8/14⇒21
    ★8/17⇒50→36
    ※緑内障治療用インプラント挿入術+PPV
    ★8/18⇒0(9時)、1(13時)、3(16時)
    ★8/19⇒2(9時)、2(11時30分)
    ★8/20⇒6(15時)、6(16時)
    ★8/21⇒32(16時)、32(17時):※デュオトラバ点眼開始
    ★8/22⇒16(15時30分)、14(16時30分)
    ★8/23⇒14(16時30分)、14(17時50分)
    ★8/24⇒13(16時30分)、12(17時)
    ★8/25⇒24(8時)、21(14時30分)
    ★8/26⇒20(8時)、20(11時)
    ★8/27⇒24(16時)、22(17時)
    ★8/28⇒17(8時)、24(11時)、20→12(16時)
    ★8/29⇒22(8時)
    ★8/30⇒17(10時30分)、20(13時40分)
    ★8/31⇒23(9時)退院
    ★9/3⇒19(16時15分)
    ★9/5⇒30(9時15分)
    ★9/7⇒16→12(9時30分)
    ※角膜内皮:《右≫約500、《左≫約2800

    見づらいまとめ方で申し訳ございません。
    8月だけでもニードリングを二回するというのは、若さ故の癒着の早さがあるんでしょうね。右眼は角膜内皮細胞がほとんどないので、これ以上の悪化を防ぐのと頼りの左眼のケアーが非常に大切になってくると思います。小生は出血しやすく、もしチューブを入れた右眼から出血して血がチューブに詰まると再び眼圧は上がると思います。チューブを取り出してチューブ内を掃除して改めて挿入したらいいかと思うのですが、手術に耐えられる角膜内皮の数ではないような…。
    主治医にも訊ねてみますが、また案件などありましたら是非ご紹介下さいませm(_ _)m
    続く

  2. 続きです。
    度々失礼しますm(_ _)m
    角膜内皮細胞ですが、高眼圧状態が続いても減るそうですが、例えば手術においては、どのような手術が特に細胞を減らすのか差し支えない範囲で教えていただければ光栄です。
    栗原先生もご多忙のお身体。お時間の許すときで結構ですので、よろしくお願いします。
    朝晩と少しずつ涼しくなってきた気がします。ほとんどを眼科病棟で過ごしてきた小生にとって、この季節や自然の移り変わりを肌で感じるのがすごく新鮮です。
    先生のブログは専門である眼科での治療や手術についてなどが幹になっていますが、時々、お祭りのことや身近な話題にも触れられるので、きれいに枝も育っている感じですよ。

    これからも多忙な日々は変わらないと思いますが、お疲れ出しませんようにくれぐれもご自愛下さい。
    遠くから応援しております。

  3. Y様 こんばんは。
    遅くなってすみません。
    いつか、角膜内皮細胞の培養などの再生医療が進み、移植以外でも簡単に治療ができる日がくるといいのですけどね。
    手術操作によって、直接内皮を触れば一気に減少します(まずありませんが)。
    そういう異常な操作以外でも、正常な操作によって、角膜がたわんだり、シワがよったりすると、角膜内皮は減少します。他には、手術によって起こる炎症も減少に関与しますし、ある程度安全と言われていますが、手術で使用する様々な薬剤の内皮を減らす可能性があります。点眼薬に入っている防腐剤や、点眼薬の成分自体も、ある程度の濃度で試験した場合には、内皮を減らすことが分かっています。
    また、手術中には角膜が乾かないようにしますが、あまりに乾燥させたりするのも影響がないとは言えません。高眼圧が悪いことは御存じのようですが、手術中には眼圧が上がったり下がったり、極端に変動します。

    基本的に手術を行う事自体、角膜内皮に対して悪でしかありません。ただ、ご理解頂いているかと思いますが、その悪い部分と、手術のメリットを天秤にかけた結果。手術を行う必要があると思う場合には、手術をお勧めするのです。

    内皮のこと、時間をみながら書いていければと思います。

  4. 初めてコメントさせていただきます。
    現在ブラジルに住んでおり、すでに10年の緑内障歴です。
    一昨年、その前の年とほぼ1年の間隔をあけて、両眼の緑内障手術をしました。
    が、その後も両岸とも眼圧20ぐらいの高値安定。
    今までの主治医の先生は、もう少し上がってくるようだったらバルブ装着手術(ポルトガル語を直訳するとこんな感じ)をしますとのことでした。
    今回、主治医の先生がいなくなってしまい(!)、別の先生に見ていただいたところ、さまざまな条件をかんがみて(今まで市よしてきた薬のこととか病歴などから)、バルブ装着手術をしたほうがよいでしょうとのお話がありました。

    来週、実際に手術をしてくださる先生の第一回の診察があるので、この手術のことを少し勉強しておいたほうがよいかと思い、いろいろしらべているうちに先生のブログに出会いました。
    私は眼科医ではないし、ポルトガル語も専門の用語に関してわからないことがたくさんあります。
    先生のブログを参考にさせていただいて、診察までに少しでも勉強しておきたいと思っています。
    日本語で大体のことが理解できていれば、ポルトガル語で多少わからないことがあっても、言葉を変えて質問するなどできて安心ですので。

    疑問なこと、不安なことがありましたら、質問させてください。
    よろしくお願いします。

  5. こんばんは。ご連絡ありがとうございます。

    日本では日曜日の23時、今日は衆議院選挙がありました。
    遠い地でのご病気は、心配が大きいかと思いますが、
    可能な限り、お力になれればと思います。
    (少し、時間が取りにくくなっており、お返事が遅れることが多くなっています。すみません。)

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