今日のお昼は白内障手術のみ9件、無事に終わりました。
午後の外来は空いていて、のんびり。久しぶりに、外来が途切れてしまっている「心配な人リスト」に電話ができました。リストがキレイにさっぱりしました。
今日は視神経炎の具体的な治療に関してです。
視神経炎? 治療その2 ステロイドパルス療法
体内にはステロイドといって、体にかかるストレスや負担、炎症などを抑える働きを持つホルモンが、もともと存在しています。
以前に、ぶどう膜炎のブログでステロイド治療について記載したことがありますので、ご参照ください。
視神経炎は免疫のバランスが崩れて(自己免疫性疾患)、自身の視神経(症例によっては脳や脊髄)に炎症を起こしてしまう病気ですが、
治療法は、ステロイドを体外から余分に投薬してあげることで(自分が産生する量以上に)、視神経の炎症を抑え、病態を落ち着かせることを目的とします。
ステロイドには内服薬(飲み薬)や、注射薬(点滴)、眼科では点眼薬(目薬)、眼球周囲への局所注射などの使用法があります。
目薬では眼球の後方の視神経には届きませんし、初期治療として安易に飲み薬を使用することは予後を悪くするという報告もあり、視神経炎の標準治療としては、点滴による治療が行われています。
ステロイドパルス療法
炎症を抑える働きをもつステロイド剤を、短期間で大量に点滴する治療法です。
当院では、主にソル・メドロールという薬を使用しています。
ソル・メドロール 1000mgの点滴を、午前中に1時間かけて投与
同じ点滴を3日間、連続で行います。
(人間が正常時に自分の体で産生するステロイドの、200倍以上の量を、1日で投与します。まさに大量療法ですね。)
超高齢者や、小児のお子さん、他の疾患で全身的なリスクが高い患者さんでは、500mgと半分の量で治療をしたりもします。
副作用
ステロイド剤はとっても有用なお薬ですが、残念ながら副作用も沢山あります。
・感染症が起こりやすくなる、糖尿病の悪化、胃潰瘍、骨粗しょう症、高血圧、高脂血症、体重増加、筋力低下、精神症状、体が火照る、不眠などなど。
(もともと、免疫力による炎症は、バイ菌などの外敵が体内に入ってきた時に、体を守る防衛反応として存在します。ステロイドは炎症を抑えてしまうので、バイ菌が体に入った時の防衛反応が出来なくなってしまうのですね。)
副作用と書くと、みなさん治療に怖気ずいてしまうのですが、ステロイドパルス療法では、ステロイドの量が多い割に、全身的な副作用が起きにくいとされています。
ただし、重症の肺炎を起こしたり、糖尿病が急激に悪化したり、血圧の変動から脳や心臓に急に負担がかかったりと、非常に稀ですが、重篤な副作用も起こりうるので、基本的には入院での治療をお願いしています。
(当院では外来治療は行っていません。)
比較的よく起こる副作用としては、ドキドキと動悸を感じたり、体がほてったり、眠りにくくなったり。このような場合は安静にしたり、睡眠薬を処方して対応します。超高齢者では、一過性ですが、精神症状「ここはどこ?私はなにしているの?」など、精神的に不安定になってしまう事があり、家族の方に付き添いをお願いする場合があります。
その後
3日間の治療1回(1クール)で、完全によくなってしまう症例はいいのですが、残念ながらまだ病気の勢いが残ってしまう場合もあります。そのような場合には、1週間毎程度で同様の治療を繰り返し、重症例では3クールの治療を行う事があります。
また、点滴でのパルス療法の終了後に、再発のリスクが高い症例では、飲み薬のステロイド剤を内服し、ゆっくりとステロイドを減らしていく治療を追加することもあります。
今回例にしている患者様のケースでは、
初診日の視野検査の結果です。視力は0.05まで低下しています。
初診日にMRIを含めて全ての検査を施行し、当日中に確定診断。
翌日の朝から入院し、ステロイドパルス療法
(夜に治療をすると眠りにくくなったり大変なので、翌朝からの治療に。)
1クール目のパルス療法後です。まだ中心部に暗点(視野の見えない部位
)が残っており、視力は0.2
MRIでも僅かに炎症があり、翌週に2クール目のパルス療法を施行しました。
2クール目の治療後は、暗点が縮小し、視力も0.8まで回復しました。
2週間程度様子をみたのですが、反対目の視神経に炎症と視野障害があり、ステロイドの飲み薬を開始。(プレドニン1日30mgから徐々に減量中)
これは最近の結果ですが、両眼ともに落ち着き、視力も0.9?1.0を保っています。
視神経炎と診断され
治療をどうするを悩んでます
治療費はどんなものかを知りたいのですが
教えていただけますか?
標準治療であるステロイドパルス療法は、薬代は安く、点滴をするだけです。
通常入院が一般的ですが、入院費は施設規模によって異なり、また入院日数も病院によります。
主治医の先生への質問で答えて頂けるはずですが・・・。
特殊検査や、複数回の治療の場合はやや高額になることもありえますが、
よほど高収入の方以外は、高額療養費制度によって上限数万円になります。
「高額療養費制度」で検索してみて下さい。
ありがとうございます。
ステロイドパルス治療ワンクールで悩んでいます?多毛症など副作用はどの程度出るのでしょうか?
通常、短期間で行うパルス療法では多毛などの慢性的な副作用はでません。
球後視神経炎と診断され昨日からステロイドパルス治療を始めました。目が半分見えない!と気づいたときから3件の眼科をまわり2件めまではミューズだろうと診断され でも見えない右目に少し痛みがあったのが気になり紹介状を書いて頂き発症してから5日めに総合病院の眼科にきてCT検査をして診断がつきました。その間にもどんどん見えなくなっていて とても不安です。今朝起きたらまた見える部分が減っていて右目はほぼ見えておりません。ステロイドパルスをあと2日行ってどこまで回復できるかとても心配でこの先の仕事や 人生など怖いことばかり浮かびますが今はできることをやろうと思い、ステロイドパルスに期待をしています。私の理解力では
1クール終えた時点ではすぐには
まだ視力の回復はできないということでしょうか?せめて半分見えたら…と期待してしまいます。とりとめのない文章になりましたが ネット検索してたどりつぎした。お時間のあるときに回答をお願い致します。
すみません。出張や学会が続いており、遅くなりました。
CTで視神経炎を診断することは、まずできないので、MRIでしょうか?
多くの患者さんは2日目くらいから、痛みや明るさに変化を自覚されるようです。しかし個人差も大きく、1週以上遅れて反応することも経験ありますし、痛みが改善しているということは効果があるのではないかと思いますが。
こんにちは。
視神経炎の治療をするかで悩んでいます。
約2ヶ月前から自覚症状があり、この数週間MRI等の検査をしてもらいました。
MRIでは特別な異常は見当たらなかったものの、視野検査と自覚症状(視野のかけや明るさの違い)から視神経炎だと言われました。
医師からはもう少し様子を見て自然治癒を待とうか。と言われていたのですが、2ヶ月ほど症状が変わっていないので、1週間後の診察で改善がないようであれば、ステロイドのお薬を出します。と言われました。
色々検索していると、通常ステロイドの飲み薬から始めることはないとの記事をたびたび見かけたのですが、内服薬から始めても大丈夫なのでしょうか?
特発性視神経炎でよろしいでしょうか?
そもそもステロイド治療自体が、短期的な改善は得られても、
長期予後には大きな効果がない。とも考えられている疾患です。
(1回よくなっても、再発を繰り返す症例は繰り返し、最終的には見えなくなる。)
そして安易な内服は、将来的に多発性硬化症の発症率を上昇させるという報告があるため、
一般的には、まずは初期治療としてステロイドパルス療法。というのが標準です。
視神経乳頭炎や、ぶどう膜炎に続発する視神経炎などでは、内服も行われます。
81才の父は、緑内障だけでなく、視神経炎と診断されており、すでに視野は95%欠損で障害2級認定をいただいています。右目中央部にごく僅かにのこる視野からの視力が最近低下しており、ステロイドを内服していますが、視力低下が続くので、二度目のパルス療法を提案されています。1度目の時は、効果があり、
視力は02から07になりました。が、治療入院中、幻視や妄想がおこり、精神的に不安定になりました。高齢で、さらに緑内障も併発している父に、二度のパルス療法は大丈夫なのか、心配です。
すでに全盲に近い状態の父ですが、ご意見をいただきたいです。
パルスをしなければ、失明という状態なのかはわかりませんが、
それと、精神面への負担を天秤にかけて、ご本人の希望やご家族の希望によるとしかいいようがありません。
せん妄はもちろんステロイドの影響もありますが、81歳、特に男性では、ステロイドを使わなくても出る時はでます。
ステロイドが原因としても、基本的に、せん妄は入院せずに外来治療で自宅で過ごす方が有利です。
入院の場合も、入院直後より最後まで、ご家族に付き添って頂くことは、ものすごく大きな効果があります。
ご検討頂ければと思います。
全ての家庭で、それが叶えられるわけではないと承知しています。
僕も父が入院してせん妄になった時に、こんな仕事ですし「24時間」というのは無理でした。
毎日、仕事のあと群馬県に向かい、夜の11時にに父を病院から連れ出し、実家のお風呂に入れてあげて、
朝5時に父を病院に返して、車で戻ってくる。という時期がありました。
眠くて、辛くて、当時は少し鬱になっていたはずですが、今になっては良い思い出です。
澤田さんの事情や状況ももわかりませんが、ふと思い出して書かせて頂きました。
はじめまして。
昨年の12月に、どうもメガネが合わないと思い近くの眼科を受診しました。
これは、眼鏡が、合わないとかの問題ではないので、直ぐに大学病院で診察してもらいなさいといわれました。
慌てて年末大学病院を受診して、特発性視神経症の両眼の
球後視神経炎と診断されました。
すぐにパルス療法を行いたかったのですが
C型肝炎の既往歴があり、大学病院の内科で治療済でウィルスがいない事を確認して
今年の1月8日から1クール目のパルス療法をはじめました。
3回のステロイド剤の点滴が、昨日で終わり今日の朝の診察で、効果が全く見られてない旨をいわれました。
発症から約半年を経過している上に視神経の萎縮がかなり進んでいて網膜もかなりダメージが酷いといわれました。
パルス療法を1クールでやめて内服のステロイドを服用しても回復はしないと思うと言われてとてもつらいです。
パルス療法を、2クール、3クールやれば少しは視力は回復する見込みはないのでしょうか??
また、球後視神経炎で治療中に多発性硬化症を発症することもあるとどこかのサイトで見たのですが、そういう事もあるのですか??
多発性硬化症や抗アクアポリン4抗体が陽性ならば 神経内科との連携で治療方法もあるのだけど、現在のところ私は陰性なのでできる治療はステロイド薬しかないとはっきり断言されました。
セカンドオピニオンで、そちらの病院を受診しても同じ治療しかできないのでしょうか??
他の大学病院に行ってみる価値はありますか??
とめど無い文章ですいません。
我にもすがる心情です。
どうかお助け下さい。
よろしくお願いします。
診断があっているかなどは何とも言えませんが、
基本的に視神経炎にはパルス療法しかありません。(抗アクアポリン4抗体での急性期血漿交換などを除き)
パルス療法も急性期の消炎を目的として行われます。
通常、炎症が強い時には視神経や網膜は腫れて厚みが増します。
既に萎縮して菲薄化しているのであれば、かなり時間がたって、病気の成れの果てという状況と考えます。
再発していて、炎症所見があれば、それ以上の悪化を防ぐ目的で、パルスを行う必要性がありますが、
現在炎症を指摘できなければ、パルスを行う必要性さえなくなってしまいます。
また、外傷性でも、特発性でも、虚血性、中毒性でも、急性期の炎症が強い時期には判断しやすいですが、
既に萎縮状態となっている場合には、確定診断や何が原因というのは、なかなか難しいものです。
あまり期待のできない回答となってしまって申し訳ありません。
ご自身が納得できるように、あとで後悔しないように、他大学のセカンドオピニオンを受けるという事自体は全く否定しません。
ご返信ありがとうございます。
視神経炎は、発症してから早い時期に
治療しないと、回復は見込めないのですね。
今更とはいえ、
できる限り、頑張って行きたいと思います。
初めまして。
昨年、高校生の娘が原田病と診断され、ステロイドパルスを2クール受けた後、プレドニン40mg服用から現在10mgまで減薬中です。
原田病と診断されるまで、掛かり付けの眼科で誤診され、大学病院へ行き着くまで二週間かかってしまい、網膜剥離がかなり進行していて、大学病院でも原田病でここまでの網膜剥離はこの子が初めてと言われてしまいました。
相談ですが、昨年12/11から1クール目のパルスを受け、その後12/18から2クール目のパルスを受けて以降、網膜剥離が治まったのは翌年1/16日でした。
そこから視力は両目共に発症前に近いまで戻ったのですが、見え方に異常があり、今も変わっていません。
本人曰く、片目ずつで見ると、左目は左側に、右目は右側に薄いグレーの暗点があるとのこと。
これは網膜剥離が治まって以降、中心暗点が少しずつ小さくなって視界の中心から耳側へズレたおかげで視力が出たのですが、プレドニンが減薬となって以降はこの薄いグレーの影が残ったままです。
加えて、視界の中心に透明なドーナツ状のものが常にあるのと、そのドーナツ状の両端に水の玉がチラチラとずっと動いているそうです。
また、視界の中心以外は水の中にいるような見え方をしているようで、お風呂上がりや寝起きの際に体温が上がった時などはこの水中感が視界の中心にまで及ぶそうです。
主治医によると網膜剥離は治まっており、再発も見られない、緑内障でもないとのことでしたが、網膜と脈絡膜の間に炎症痕のフィブリンが所々あるので、それがこうした見え方をしているのかもしれないとも言われています。
また眼底写真には瘢痕があり、これは炎症が強かったので炎症痕として残ったものと説明されましたが、この部分は黄斑に被っていないのでそこが暗点として見えているとは考えられないとも説明されました。
入院中から視神経にも炎症があると言われてはいたのですが、その炎症も今は治まっているとのことで、今の段階でMRIを撮っても何も出てこないと言われています。
因みにぶどう膜の原因は髄液検査をされていないので特定されていません。
網膜剥離の状態や、原田病特有の初期症状、血液検査のみで原田病と確定受けました。
プレドニンを減薬する中で呼吸不全を起こした際に脳のMRIを神経内科で撮られたのですが、特に問題はありませんでした。
この暗点は何なのでしょうか?
両目で見ると暗点はないと娘は言いますが、この暗点は視野欠損なのでしょうか?
また視界の中心にあるドーナツ状のものや水の玉や水中感は暗点と同じくこのまま後遺症として残ってしまうのでしょうか?
1/16日に網膜剥離が治まってから2ヶ月弱、この先見え方は治らずじまいなのでしょうか?
それから、今治療を受けている大学病院にはぶどう膜の専門医がいません。
黄斑の医師が娘の主治医となっていますが、ぶどう膜の専門医であればもっと違った治療が受けられるのでしょうか?
また、プレドニンを服用しているのに骨粗鬆症薬が処方されていません。
何度か主治医に尋ねたのですが、若いから自分の体内で作り出せるから必要ないとのこと。
これも骨密度を下げるのではと心配でなりません…
あれこれ質問攻めで申し訳ないのですが、どうぞ宜しくお願い致します。
現在、炎症所見がなければ、基本的に治療適応はなく、以前の炎症・網膜剥離後の後遺症と考えることになります。
目の中に移った映像と、頭の中に描かれる映像には、乖離があります。
緑内障で見えない場所が黒く認識されるわけではなく、多くの方は脳が補正した偽物の画像を取り入れて、なんとなく霞んだ視界に。
黄斑円孔では中心が真っ黒になるはずですが、多くの方が歪んで補正された映像、揺れたり動いたりする映像が頭の中に描かれます。
光視症、飛蚊症など、気にしないでいれば脳の補正で症状が和らぐはずなのに、過剰にチェックすることで、より強調された画像が描かれ、
ノイローゼの方が生まれてしまう原因になります。
両眼で暗転がないのに、片眼で生じるのは、やはり脳の補正によるところが大きいかと。
再発が心配であれば、OCTや診察を頻繁に受けるとよいとは思いますが、
個人で過剰に症状をチェックしすぎるのは、同じ状態でも自覚症状が強まり、幸せな結果にはならないかもしれません・・・。
(診察もしていないので、再発していない、現在炎症がないとは言っていません。)
原田病は進行した典型例では、診断が簡単です。明らかに診断できる場合は、侵襲・リスクのある髄液検査が省かれることも多々あります。骨粗鬆症薬に関しては明確には小児への治療指針・安全性が確立されていませんが、現在のステロイドの容量と、内服期間によっては加療対象となることが増えています。担当の先生とよくご相談ください。