黄斑前膜? 手術動画と手術適応(手術時期)

昨日は早朝6時から入院患者さんの処置。急いで移動し県外の医院様で硝子体手術を10件、その他数件。夜は新幹線で東京駅に向かいCTR講習会という眼科手術の研修を受け、その後は横浜の眼科医の先生と食事。と、超超ハードスケジュール[:冷や汗:]そして、今日は水戸で眼科医会の勉強会に参加です。さすがに疲れました・・・。
白内障手術って、ほとんどの患者様では簡単ですが、極たまに目の組織の弱い患者様などにお会いすることがあります。CTRはそんな患者様に使う事で手術の安全性を高めることができる秘密のアイテムですが、今まで日本では保険診療の認可を受けていませんでした。7月から正式に認可を受け、本日の第一回目の講習に早々と参加し、今後は堂々と使用することが可能になりました。のちのちブログに書いてみたいと思います。

今日はQ&Aで黄斑前膜の質問が多かったので、そちらについて書いてみます。
黄斑前膜? 手術動画と手術適応

病気や手術の術式については、以前のブログを参照下さい。
黄斑前膜?黄斑前膜?

2週間くらい前に両眼の黄斑前膜の同時に手術した60代女性の患者様のご好意で、手術ビデオの公開を許可頂きましたので、まずはこちらを。(H様ありがとうございます)
黄斑前膜手術動画?
白内障同時手術 編集なし

この患者様は、しばらく前から半年単位で観察していましたが、悪化傾向で視力が低下するために手術を相談させて頂きました。
OCTの断面図の推移を見てみると、

半年前には、まだ中心窩陥凹(中心の凹み:正常な目は凹んでいる)があり、矯正視力は1.0

半年後の外来では悪化傾向で矯正視力は0.7に低下。中心の凹みもなくなってきています。手術を決定しました。

手術2日後です。少し眼圧も低くゆがみが残っています。

手術2週後です。早くも中心部の凹みが現れ、矯正視力は0.8まで回復しました。
おそらく今後1.0以上の視力への回復が予想できる症例です。

*当院では硝子体手術でも、白内障手術時の乱視の軽減に努めています。
専門的ですが、このかたは、
術前、Vs:0.06(0.7x-5.5D=cyl-2.5DAx6)
術後、Vs:0.3xIOL(0.8x-2.75D=cyl-0.5DAx15)
と、乱視が-2.5Dから-0.5Dと、5分の1に軽減しました。裸眼で家事や読書がよく出来ると思います。

次に、6ヶ月前に手術をしたK様の動画です。
黄斑前膜手術動画?
膜除去のみ

(動画のUPは時間がかかるので、膜処理のみに編集してみました。)
こちらの患者様のOCTの推移は、

初診時に既にやや進行した黄斑前膜で、網膜がかなりひきつれ、厚みが増しています。矯正視力は0.4。そのまま手術申し込みへ。

手術後2週です。

手術後6ヶ月弱。だいぶ滑らかな網膜になり、視力は0.7?0.8とまずまずですが、中心部は凹まず膨れたままに。物が小さく見えるゆがみは残っているようです。残念ながら時期的にこれ以上の回復は難しいと思います。

黄斑前膜の手術時期
黄斑前膜を含めて、基本的に眼底・網膜の手術は、完全に元通りという事はありません。網膜(黄斑)は白内障のレンズのように交換することはできないからです。手術の第一の目的は進行予防なのです。
あまりに見えなくなってから手術をしても、視力が回復するわけではありません。それなりに見えているうちに手術をして、視力を温存・維持することが目標になるのです。
では、黄斑前膜があったら何でもすぐに手術なの?というと、それも間違っています。手術によって元通り完治するわけではないので、もし放っておいても進行しない場合には、手術をしてもしなくても結果に変わりがありませんし、手術は100%安全ではなく、少なからずリスクを伴うのです。
(1%未満ですが網膜剥離とうい合併症で再手術が必要になったり、1000件とかのレベルでは失明に至るような重篤な合併症も起こるかもしれません)
そして、網膜の手術をすると白内障が進行することも分かっており、通常50才?60才以上の患者様では白内障手術も同時に行うため、老眼の問題も生じることになります。(もともと老眼の人にはデメリットはありませんが)

当院では具体的には以下の要件で手術を決定してます。
?初診時すでに中程度以上の黄斑前膜があり、あきらかな視力低下がある場合。
?軽度の黄斑前膜では、半年毎程度で進行の有無をチェックし、進行のスピードと余命を考慮して、手術のリスクよりも、放置した時の将来的なリスクが上回ると判断した場合。

(実際には手術をしないで様子をみている患者様の方が多くなります。)

また、手術後の見え方は、多くの場合では視力が温存または軽度回復し、ある程度のゆがみの改善が望まれます。
基本的に、
・病気が重度なほど
・病気の経過が長いほど
・年齢が高いほど

視力の改善が乏しく、ゆがみの残存する程度が大きくなります。
網膜・黄斑の形態変化は、手術後半年程度は改善傾向に向かう事があり、病状が安定しているとお話するまでには半年程度の長い期間をみて頂きます。

“黄斑前膜? 手術動画と手術適応(手術時期)” への2件の返信

  1. 硝子体レンズはなんのコンタクトレンズですか?
    周辺部は圧迫しないのですか?
    止血を気にされているみたいですが、PEAの創を凝固しても大丈夫ですか?
    質問が多くてすみません。非常に勉強になります。

  2. おそくなってすみません。

    Q&Aで同じような質問があり、少しコピペさせて頂きます。

    この動画では、コンタクトレンズを使用しています。
    後局はややWideなタイプで、周辺の観察は高屈折の角度付きのバイコンベックスレンズになります。
    広角観察システムも時々使っていますが、コンタクトレンズの方が、ゆがみがすくなく立体感があるようです。

    それと、僕は8か所くらいで手術をしているのですが、コンタクトレンズなら、
    どの施設でもどの顕微鏡でも同じような手術ができて慣れている。というのもあります。

    圧迫は、症例によります。上記の光学系でも多くの症例で巨状縁までは確認できます。(眼球を傾けますが)
    剥離やPVRではやはり圧迫が必要です。症例により異なります。

    個人的に術後の見た目をとっても気にしています。
    医学的には手術が成功するとして、他にも、体の負担とか、やはり赤いと職場復帰を気にする人もいますし、折角小ゲージ手術が可能になった時代ですので、できる限り白いままお帰り頂きたいと思っています。
    動画程度の凝固では乱視は出ないようです。全例で凝固するのではなく、止まりにくいときのみ行っています。

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