裂孔原性網膜剥離? 手術動画

シルバーウィークは久々に数日のお休みを頂きました。
連休前に網膜剥離の手術が立て続けにあり、安静のために入院して頂いていた患者様方も非常に経過良好で、今日の診察では視力1.0の維持を確認できました。明日退院相談です。(満床で外来手術となった市内の患者様は今週末に診察ですが、きっと大丈夫かと)

最近はインターネットを利用する患者様が多くなりました。実は今回紹介になった網膜剥離の方は、前もって紹介先の先生から連絡先をお聞きしたため、みなさん当院に来院する前に僕の網膜剥離のブログを読んでもらうことができました。緊急入院で慌てている時に、ゆっくりと説明する時間はなかなか取れないので、前日の時点で病気の理解が深まるのはとても良いことかと思います。
(多くのケースでは、前日に他の医院様で網膜剥離が診断され、翌日当院に紹介・緊急入院・緊急手術となります。)
当院以外の患者様にとっても、動画での説明は理解に役立つ場合もあるかと思いますので、掲載してみることにしました。


裂孔原性網膜剥離? 
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7月に手術をした60代男性の患者様ですが、本日、術後2ヶ月の定期検診があり、動画掲載の許可を頂けました。ありがとうございます。

7月の初診時の画像です。下半分の網膜剥離です。

残念ながら、写真赤矢印の部位(黄斑)まで網膜剥離が進行していて、メガネをかけても視力が0.3しかありません。受診する2日前までは、中心部はしっかり見えていたとのことです。できるだけ早く復位させる(くっつける)必要があり、緊急入院・翌日手術をさせて頂きました。

本日の画像ですが、きちんと復位(網膜がくっつく)できており経過良好です。今日の矯正視力は幸い0.9まで回復しています。半年などの長期間では1.0に届くかもしれません。ただし、残念ながら、ある程度の歪みや暗さは残ってしまします。本来は網膜剥離は剥離が中心部(黄斑)に及ぶ前に治療を受けることが重要です。

動画の説明を大まかに。
0?1分:麻酔・止血
1?6分:白内障手術(50歳以上の多くは同時手術)
6?8分:硝子体手術の創口作成(27ゲージ)
8?16分50秒:硝子体の切除
16分50秒?21分:空気置換
21?23分:レーザー光凝固(火傷による組織癒着)
23?24分:閉創など

当院では2014年後半から、網膜剥離を含めて硝子体手術の全てを、27ゲージ(0.4mm)という最小の傷口で手術を行っていますので、術後の痛みも極軽度です。網膜剥離の一般的な手術時間は約30分程度となっています。

“裂孔原性網膜剥離? 手術動画” への6件の返信

  1. 眼科医をしています。
    勉強になるブログでいつも拝見させて頂いています。
    素晴らしい技術をお持ちで勉強になりますが、網膜剥離で20分程度で手術を終えられる術者は一般的ではなく、動画の公開は患者の期待が過剰になってしまわないかと不安な面もあります。
    栗原先生は周辺部の圧迫はされないのでしょうか?
    他のビデオでもテノン麻酔の結膜を凝固されるようですが、必要でしょうか?

  2. おはようございます。
    動画は「気持ち悪い」というご意見を頂くケースもあり、賛否両論だと思いますが、手術が本当に必要になった方の理解や、不安の解消には役立っていただけるのかと思っています。
    時間に関しては、たしかに難症例では少し長くなりますが、実はYOU TUBEにアップロードする時に、長時間の動画はかなり大変なのです。(僕のパソコンが悪いのかもしれませんが・・・。)
    周辺部の処理が必要と思うケースでは、もちろん圧迫をしています。ただ、僕はwide viewing systemでも、コンタクトレンズでも、眼球をかなり傾けて手術をするので、小瞳孔でなければ多くの症例で圧迫なしで巨状縁まで観察できてしまします。全例27Gで手術をしていますので、カッターに負担がかからない工夫が必要です。ご希望があれば見学にいらして頂ければアドバイスできると思います。
    圧迫を要する場合でも、古いPVRなどでなければ、網膜剥離の手術時間は白内障別で30分あれば十分と思います。これは当院のみでなく、時代の流れ、手術機器の進歩により標準的な時間になってきていると思います。輪状締結併用であれば別ですが、通常1時間を超えることはないのではないでしょうか?

    テノン嚢下麻酔の結膜切開後の止血は、術後の結膜下出血の予防が目的です。医学的な意味あいはありませんが、術後に白目が赤くなることは多くの患者さんにとってhappyではありません。おそらく、医師の価値観と患者さんの価値観が大きく異なる部分だと思います。
    硝子体手術も日帰りで行ったり、術後に早期職場復帰するケースが増えてきています。必要性があるかどうかは、医師の立場、疾患自体のみでなく、患者さんに喜んでもらえるかどうかも大事なのかと考えています。
    僕の出張先でも、多くの施設で取り入れて満足頂いているようです。ただし施行する場合は、万が一には将来緑内障になる症例もあるかもしれません。上方の結膜はレクトミーなどが必要な場合に不利になる可能性がありますので、麻酔は下方結膜からがよいと思います。(当院は全例で鼻側下方と決めています。)

  3. いつも拝見させています。
    今の硝子体手術は周辺部硝子体はとらないのが
    主流なのでしょうか?自分がいたところだと全例
    圧迫してとっていたと思います。

  4. ご質問ありがとうございます。
    周辺部の硝子体をとる・とらないは、症例や手術手技によって異なるかと思います。
    以前、20Gの手術ではできる限りの郭清が望ましかったのは間違いありませんが、23Gや25Gの手術が出始めたころは、わざと硝子体を残して嵌頓させた方が閉創がよいと報告されました。
    あまりに残せば剥離になるかもしれませんし、脱出した硝子体を介して眼内炎のリスクも高いかもしれません。
    観察機器の発達により、圧迫をしなくてもかなりの視野を確保できるようになり、当院では圧迫しなくても周辺部まである程度の郭清を心がけています。(最低でも全トロカールの先端に硝子体が残らないところまではとっています。)
    もちろん、小瞳孔や巨状縁断裂、PDR、PVRなどでは全周性に圧迫を行っていますし、case by caseかと思います。
    全例で圧迫して直視下で判断したほうが、医原性裂孔などの発見率は高まるかと思います。
    近年の硝子体手術では結膜の温存が標準ですが、この場合、圧迫はある程度の痛みを伴います。
    また、圧迫なしで手術を終えた場合の方が炎症は軽微で、黄斑疾患の硝子体手術ではフィブリンはまず出ませんし、白内障トリプルで手術をしても、cellもあるかないかですんでしまいます。
    結膜下出血にも気を付けると、手術直後に前医の先生に逆紹介をしても、キレイすぎて本当に硝子体手術後ですか?と質問がくることもあるくらいです。

  5. 実はうちも硝子体OPを月に数例ずつまとめて
    大学の硝子体グループDrにやってもらっていますが、
    ここ最近の進歩は著しいようですね。
    以前に比べて非常に時間が短縮化されているし
    安全性も高いです。
    まあ、先生のように症例をたくさんやっている
    勤務医の先生にまとめてやってもらった方が
    より良い結果につながると思うのでうちもそうしております。

    どうもご回答ありがとうございます。

  6. 詳しいお返事をありがとうございました。
    ユーチューブで結膜弛緩の動画もありましたが、興味があります。どのように手術しているのでしょうか?お忙しいと思いますが、今後のブログも楽しみにしています。

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