緑内障29 緑内障のセカンドオピニオンと手術適応

今晩は宮井副院長に勉強会の講師の予定があり(これも緑内障)、手術数を制限したため、僕は夕方から暇でゆっくりとした夜です。

外来が慢性的に混んでいて、予約の患者様でも待ち時間が長くなり申し訳なく思っていますが、傾向としては第5週の数日は殆どの場合で空いているようです。
そして、僕が担当の土曜日の外来は殆どの場合で待ち時間が長くなってしまいます。土曜日は初診の方、普段仕事の若い方、そして遠方からのセカンドオピニオンの方が多くいらっしゃるためです。
以前にも記載したことがありますが、基本的には僕は遠方の患者さんの手術を引き受けるのをためらいます(術後管理まで含めて責任を持ちたいので)。
が、せっかく何時間もかけていらして頂いた方に、何のメリットもなくお帰り頂くことになるもの心苦しく感じています。
今日はせっかくいらっしゃる患者さんが無駄足にならないよう、緑内障のセカンドオピニオンに関して記載してみます。

緑内障29
緑内障のセカンドピニオンと手術適応


①紹介状が必要です。
まず、緑内障のセカンドオピニオンについてですが、ある程度の説明をするにも、絶対に紹介状(診療情報)が必要です。
緑内障の治療方針は、「眼圧がいくつであるか?」よりも、「今の治療法と眼圧で悪化傾向があるか?」「悪化するスピードはどの程度なのか?」によって、より強い治療に進むべきかを検討するからです。
数年分の視野や眼底写真、OCTの結果をみて、はじめて正確な経過が把握できるのです。
患者様によりますが「以前よりも見えなくなっているから手術をしてほしい」「主治医から視野が悪くなっていると言われているから手術をしてほしい」と訴える方が数多くいらっしゃいます。
僕は緑内障手術(特にトラベクレクトミー)はリスクも高く、できる限り受けないほうがよく、「他の方法では失明が防げない時に仕方なく受けるもの」と考えています。
「悪くなっている」と仰る患者さんの話を疑うわけではありませんが、明確に悪化傾向があると判断できる根拠なしには、リスクのある手術を検討することはできないのです。

②眼圧が10以下の患者さん
比較的多いセカンドオピニオンに、「緑内障できちんと通院して、点眼薬もさぼっていないのに、どんどん見えなくなっている。」という可哀想なケースもあります。
現状で眼圧が30とか40と高い状態が続き、視野も悪化傾向であれば、もちろん手術を検討すべきですが、もし眼圧が安定して10以下でいるのに悪化傾向であれば、残念ながらそれは現在の医学の限界であり、セカンドオピニオンで病院や主治医を変えても意味がありません。
緑内障の治療で絶対的な効果が証明されているのは、唯一「眼圧をさげること」ですが、実は眼圧が低くても進行を止められない症例もあるのです。眼圧を下げることで進行を遅らせることはできますが、イコール全く進行しない。という意味ではないのです。
悪化傾向であっても眼圧が10以下でコントロールされているのであれば、主治医の先生は決して無力ではなく、できる限りの治療を頑張っていると思ってあげてください。

③手術適応と考える眼圧
緑内障の手術方法は数種類ありますが、最も重要なトラベクレクトミーに関していうと、僕は15未満で変動が少ない人の手術はまず行いません
(日内変動が大きい人や、毎回測定のたびに眼圧が上下する場合ば別)
先日のセカンドオピニオンで、「キサラタンのみ使用していつも眼圧が11だけど、手術を勧められた。受けていいか?受けるなら山王台で。」というのがあり、当院での手術はお断りしました。
緑内障手術を受けるからには、手術前よりも眼圧が下がらなければ成功とは言えません。かといって、眼圧が5未満では低眼圧という状態で様々な合併症を生じますので、術前眼圧が11の人が手術を受ける場合、術後の眼圧が安定して6~10になる場合のみ成功といえます。眼圧を一桁にする目標を立てることはいいことですが、これを100%の患者さんに達成できるかというと、今の医学では絶対に不可能です。理想と現実は異なります。
術前眼圧が40であれば、6~正常上限の20が通常の目標ですが、最悪30だとしても一応はやってよかったと言えます(もとよりは下がって進行が遅れるので)。つまり眼圧が高い人ほど手術の成功率も高く、適応は広くなります。
世の中には眼圧が10でも手術を勧める先生がいるようですが、僕はその手術を高確率で成功させる自信はありません。
そして、トラベクレクトミーは一度受けてしまうと、後戻りはできません。濾過胞への房水の抜け道(レクトミーホール)を作ってしまうと、抜け道・レクトミーホールからの流出がメインとなってしまい、もともと備わっている隅角からの房水の排出路は機能しなくなってしまうのです。将来的に濾過胞がダメになってしまった時には、本来の隅角からの流出も期待できないため、トラベクレクトミーを受ける前よりも眼圧が高くなってしまうリスクがあるのです。
もし眼圧が10で手術を勧められた場合は、その先生は「術後の眼圧の目標をいくつと設定しているのか?」「術後の眼圧がどの程度の期間に渡って安定する見込みがあるのか?(特に若い人の手術は長期を検討)」「成功率を何パーセントと考えているのか?」を相談して、ご自身が納得いけば手術を受けてもいいでしょう。
ただし、僕が思うにそれはものすごく難しいことで、そして眼圧が15以下で手術を勧めるということは多くの眼科医にとって一般的ではありません。

④まずは主治医の先生と相談を
当院は基本的に全ての患者さんで、「付き添いの方は一緒に診察室に入って下さい」とお願いしています。病気の説明も複数で聞いた方が漏れがありません。点眼薬や食生活の管理がうまくいっているか、送迎が可能かなども確認できますし、緑内障など遺伝傾向がある疾患では簡単に診察をしたりもします。
セカンドオピニオンの場合もご家族一緒に説明しているのですが、「かかりつけの先生には一緒の説明を聞いていますか?」と質問すると、面白いことに多くの場合で「NO」というお返事をもらいます。
マンツーマンのやり取りはどうしても偏りがあったり、理解不良になる原因となります。わざわざ何時間もかけて当院にセカンドオピニオンに来る前に、まずは家族全員でかかりつけの先生に「治療は上手くいっているのか?悪化傾向なら他の方法が考えられるのか?」、相談をしてみては如何でしょうか?

“緑内障29 緑内障のセカンドオピニオンと手術適応” への3件の返信

  1. 栗原先生、初めまして。お忙しいところ失礼いたします。
    正常眼圧緑内障の女性49歳です。35歳の時に緑内障と診断され、以来、都内の緑内障専門医のもとで点眼治療を続けてきました。現在は3種類の点眼薬(アイファガン、トラバタンズ、コソプト)を両目に点眼しています。
    先月の診察で、点眼薬ではこれ以上の眼圧低下が望めないということで、症状の重い右目の線維柱帯切除術を勧められました。失明をしないためには手術しか方法はないが、まだ(患者が)若いのであまり手術はしたくないとおっしゃったため、不安になり、調べているところで、先生のブログを拝見いたしました。

    現状は、
    ・両目とも眼圧は14です(4年くらい前は11〜12でした)。
     点眼薬が効いていないのでは、ということで、昨年12月に点眼を両目とを3週間ずつ止めたところ、左目は14のままで右目は21でした。点眼薬再開後の初めて検診の先月は両目とも14でした。
    ・右目は−8で(−20で失明すると説明されました)、このままの進行速度では手術しなければ失明すると言われました。3年ほど前から進行が速くなったようです。
    ・自覚症状はありませんが、視野検査の結果は中期程度の結果だと思います(検査結果はもらっていません)。

    以下をご質問させていただきたく、コメントさせていただきました。
    1.CYCLO G6 レーザー治療は正常眼圧緑内障では受けることができないのでしょうか?
    2.遠方の場合は極力手術を受けないと拝見しましたが、セカンドオピニオンを受けたいのですが、検査結果だけでなく紹介状が必ず必要でしょうか?

    お忙しいなか恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします。

    1. 僕は手術件数が多いので、よく勘違いをされてしまうのですが、
      基本的には「手術をしなくてすむうちは、極力手術なんてしないで。」というスタンスです。
      白内障手術などは初診時で患者さん自身が手術希望できた場合、早期手術のデメリットなどをよく説明して実際に半分程度は手術をお断わりしています。
      緑内障手術も(特に濾過手術は)、点眼薬で多少のジリ貧と比べた場合(進行はしているけど緩徐)、長期成績やデメリットをよく考えて手術は慎重に考えるように説明することが多いです。
      担当の先生が若い方の緑内障手術をしたくない心情はとてもよく分かります。

      実は最近、正常眼圧緑内障に対してもCyclo G6による治療を開始しています。渡部副院長が10月の臨床学科学会で発表予定ですが、平均値で約40%の眼圧下降が得られました。1例、24mmHgから治療後に2mmHgまで下がってしまった症例があり、緑内障点眼薬を中止して6mmHgまで回復したものの、本当にヒヤヒヤしました。
      やはり低眼圧が怖いので、現在は低眼圧の方にはエネルギーや照射時間条件などを減弱して、効果が乏しい時には複数回の治療をするようにしています。(申し訳ありませんが、患者さんはより通院時間や治療費がかかります。)
      短期的にはよい成績と思っていますが、10年後、30年後、安全性をみた報告はありませんので、正常眼圧で治療を受けたい人はそういうリスクが納得できるかどうかになります。(実際は濾過手術後30年もきちんとしたデータはないですけどね。)
      現時点では治療可能施設が少なく、遠方からの症例もお引き受けしています。都内の方ですと、最近、東京大学にも導入されていると思います。(正常眼圧に対して治療をしているかは不明)
      検査結果だけ持参というのは、カルテ開示でもしているのでしょうか??
      紹介状なしで治療を受けた場合、お戻り頂くことが難しくなってしまうこともありうると思います。ご判断はお任せします。

      1. 栗原先生、お忙しい中、コメントをありがとうございました。
        前回のコメントでは言葉不足でしたが、私はできるだけ手術は受けたくないと思っています。なので主治医が手術を勧めつつも手術をしたくないとおっしゃったために、どうしたらいいのか、線維柱帯切除手術以外に治療はないのだろうか、と悩んでいましたが、先生のコメントで主治医の心情もわかりました。また、Cyclo G6の治療のリスクについてもありがとうございました。
        カルテ開示はしていませんが、紹介状をもらいにくい状況だったため、検査結果をもらえれば、と考えてしまいました。失礼いたしました。紹介状を書いてもらった上で、セカンドオピニオンを受けたいと思います。
        ありがとうございました。

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