第71回 日本臨床眼科学会

今週10月12日から15日まで、都内で第71回 臨床日本眼科学会が開催されました。

僕は「白内障手術時の乱視は、角膜だけでは説明できない」という内容の発表を行いました。医学の学会もIT化の波によって、スケジュール管理がスマホのアプリになっていたり、発表形式も初体験のデジタルポスターという形式で、不慣れで大変な思いをしました。ポスターの登録期限が学会開催日よりもかなり前もって設定されており、個人的な準備不足ですが、誤字脱字も多くなり反省です・・・。

発表内容の趣旨は以下のようなものです。

理論上(教科書上)、眼球の乱視のほぼ全ては「角膜の乱視」と「水晶体の乱視」の2つの成分で成り立ち、白内障手術では濁った水晶体を除去するために、眼球に残るのは「角膜の乱視」のみであるから、人工レンズの選定の計算には「角膜の乱視」のみ考慮すればよいことになっています。

しかし、実際の医療では少なからず誤差が生じて、計算通り乱視がプラマイナスゼロとなった!ということは、あまりないのです。

例えば、乱視用ではない単終点レンズ(Non-Toric IOL)を挿入した場合、理論上は術後の角膜乱視とレフ値の乱視の軸や大きさは、完全に一致しなくてはいけませんが、そんな人はまずいません。手術で角膜乱視を上手に消して術後の角膜乱視がゼロになっていても、レフ値の乱視はゼロにはならないのです。そして、ここが面白いのですが、そのような術後に残存する乱視の特性(軸の角度・大きさ)は、術前のレフ値に大きく相関するのです。

当院では5年以上前から、その点に目をつけ、白内障手術における乱視のコントロール、眼内レンズの選定・計算に、術前のレフ値も参考係数として利用することで、非常に良好な術後裸眼視力を誇っています。

何故そうなるのか?ということに関しては、まったくの謎で現在の医学では説明できません。角膜後面乱視も含めて検証しても説明できませんでした。網膜面の乱視によるもの、思った以上に他の組織に屈折力がある(硝子体等)、いろいろ考えられますが、今後の検査機器の開発が期待される分野です。

眼科の先生向けですが、参考にしてくれる先生がいて、日本中の患者さんの乱視が少しでも減れば嬉しいです。

*ケラトやトポで、術前の角膜乱視がゼロや、僅かに直乱視でも、術前のレフが倒乱視であれば、耳側切開をしてみてください。もしレフが-2Dなどの比較的大きな倒乱視であれば、思い切って水平方向にToric IOLを挿入してみて下さい。経験と術後データ解析の積み重ねで、術前のトポやレフ等どちらを信頼するのか、そして、空想の乱視をどの程度矯正するのか、徐々に成績がよくなると思います。

*ケラト、トポ、レフなど、測定信頼性が高いものに限ります。角膜乱視の信頼性はTOMEY社の機種に表示されるKAIやKRI、不正乱視の係数が手軽で参考になります。

*まだまだ改善の余地がありますが、当院では一応現時点でのアルゴリズム化ができています。見学希望等あれば医院に直接、またはMRさん等への依頼にてご連絡ください。

*何を言っているんだ。教科書と違う。水晶体を除去するのだから、角膜だけ見てればいいんだ。という先生も沢山いらっしゃると思います。まずは先生方が執刀した症例で術後に倒乱視になってしまったケースを見直してみて下さい。きっと術前のレフは、角膜乱視と乖離して倒乱視になっていたはずですよ。

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