緑内障28 iStent①(アイステント) 最新の白内障併用緑内障手術(日本初認定)

今日は手術が早く終わり、久しぶりに緑内障の新しい話題を。
眼科専門医という資格はありますが、実は眼科医が「私は緑内障の専門」とか「角膜の」「網膜の専門」とか名乗るのは本当にそういう資格があるわけではなく、その医者が自分で勝手に名乗っているだけで、緑内障手術を1件も行っていない先生が緑内障専門と名乗っても一応は問題ないのです。
僕は基本的になんでもこなす方のオールラウンドタイプですが、自分では網膜硝子体手術を一番の専門として名乗っています。決して緑内障の専門科とは名乗っていないのですが、年々緑内障手術の紹介が増えてしまい、非常勤手術も合わせると年に約200件の緑内障手術をしているようで、茨城県ではいつの間にか1番多くなってしまいました。
緑内障は自覚症状に乏しく、通院が途切れやすいことでも有名ですが、当院の通院継続率の高さを学会発表した経緯から、今年は大手製薬会社さんの緑内障管理のパッケージ管理というパンフレットの作成で特許を取らせて頂いたりもしました。(このパンフレットが全国に浸透して、ベースライン眼圧を測定しない医者が激減することを祈っています)
「あれ?いつの間にか緑内障も専門に?」と自分でも不思議に思っているのですが、本日、新しい緑内障手術の正式な認定証を日本で一番初めに頂く事ができたようなので、報告してみます。
(iStentを国内で使用可能にするために臨床治験などに尽力頂いた評議員の5名の先生方を除いて、正規の講習を受けた中で1番目になります。)

iStent (アイステント)
緑内障という病気は不可逆性で、失った視野・視機能を回復する方法がありません。現在の医学では点眼薬、レーザー、手術などによる治療で眼圧を下げることで進行を抑制することが治療の目標になります。
日本ではまずは点眼薬を使用して眼圧を下げることが最も多く行われていますが、多数の点眼薬を使用しても眼圧の下がりが悪い場合や、病状の進行が止められない場合、副作用で点眼薬が続けられない場合などには手術による治療が行われます。
緑内障手術にもいろいろな方法がありますが、一般的なものは以前のブログを参照ください。
緑内障ブログ(隅角形成、エクスプレス、バルベルトなど)
血管新生緑内障のブログ(通常のトラベクレクトミーはこちらに)

今回新たに国内で承認された手術は、iStent(アイステント)というチタン製のステント(筒)を、房水の主流出路であるシュレム管に突き刺して、房水の排出を増加させ眼圧を下げる手術です。

直径わずか1mmのステントを、下図の赤矢印のように隅角(房水の出口)に突き刺す手術になります。

トラベクレクトミーほどの眼圧下降効果はなく、基本的には緑内障で失明リスクが差し迫った患者さんのための手術ではありません。緑内障で加療中の人が白内障手術を受けるときに併用して、術後に点眼薬を減量できたり、上手くいけば点眼薬が不要となることを目標とする手術です。
手術適応や特徴などは次回のブログで記載します。

眼科医の先生にもブログを見て頂く事が多いようなので、認定までの具体的なスケジュールも書いておきます。
3月25日に国内承認。4月9日の日眼総会後に初回講習会(今後も適宜開催予定;詳しくはグラウコス社に)。その後4月13日、自院にてグラウコス社の担当者とウェットラボ(ハンズオン)。4月14日に初回手術1例。17日に1例。19日に2例。本日26日1例。(全て国内の担当者立ち合い。)
本日アメリカからグラウコス社の専任アドバイザーがきて(今日はMark.Mさん)、実際に手術室で手術手技に問題がないことを確認して頂き、晴れて認定証がもらえました。