緑内障34 日本初導入 CYCLO G6 レーザー①(新型毛様体凝固術)

今日は緑内障治療の歴史の分岐点になるかもしれない新しい話題を。

日本初導入!!
CYCLO G6 レーザー①
新型毛様体凝固術
先日、房水の産生量を減少させることで眼圧を下げるという、毛様体凝固術についてのブログを記載しましたが、これは合併症として炎症が強くでたり、最悪の場合、房水を作る機能が消失し眼球が小さくなってしまう眼球勞という状態になるというリスクと隣り合わせの治療でした。
CYCLO G6は、iridex社が開発した新型のレーザー緑内障治療機器で、房水の産生を抑制したり、明確な原因は分かっていませんが、ぶどう膜流出路から房水の排出を亢進させることで眼圧を低下させることができると考えられています。緑内障手術に抵抗する(手術後経過も高眼圧)症例に対した成績として、主だったいくつかの論文を要約すると、眼圧30%以上の低下、または眼圧の正常化(20mmHg以下)を得られる可能性が70~80%で得られるという、とんでもない成績を誇る画期的な治療機器です。(30%以下の眼圧下降も含めると、基本的には治療によってほぼ100%で少なからず眼圧が低下します。)
しかも欧米では最長7年間の観察をしたも研究もありますが、眼球勞などの重篤な合併症の発生が世界中で未だかつて1例もないという、安全性に関しても非常の安心できる機器です。(低眼圧になりにくいという安全性の高さから、現在、世界中で眼圧が低めの症例に関しても治療の適応が広がってきています。)
日本での国内使用の承認直後に当院でもデモ使用(レンタルして試す)を行いましたが、8眼の治療を行い、大きな合併症はゼロ、眼圧下降は平均で28mmHgから19mmHgと32%以上の眼圧下降を得ることができました。
そして昨日12月7日、CYCLO G6が当院に日本で初導入されました!!
導入直後に新生血管緑内障で紹介、緊急入院した患者様がいらっしゃり、さっそく夜間に治療を行いましたが、術前眼圧55mmHgから治療翌日には25mmHgと、我々もビックリするほどの治療効果を得られています。
正規導入後、国内第一例目に治療を受けた患者様から治療動画のUPを許可頂きましたので掲載してみます。(僕の音声付きで恥ずかしいですが・・・。)

CLCLO G6 治療動画 (クリック

もちろん治療効果には個人差がありますし、日本人での長期安全性の評価、治療条件の調整(レーザーの照射方法、エネルギー量や治療時間、麻酔方法)などが必要ですが、それも含めて、もし将来的に低眼圧の症例にも適応が広がっていくのであれば、これは緑内障治療の世界が激変してしまう可能性がある治療です!!
まずは高眼圧での治療から開始しています。緑内障治療を数多くこなす大学病院では間違いなく必要とされ、数年で国内の多数施設に導入されると予想されますが、現状では治療施設が限られます。 本来、当院は遠方からの患者様の治療を極力お断りしていますが、失明リスクの高い高眼圧緑内障の患者様は、安全性の高い、この治療に限り緊急レスキューの意味で全国からの治療を引き受けます。
眼科の先生方も難治例、術後高眼圧例、仕方ないとあきらめる前にご紹介下さい。

毛様体凝固術

今日の午前は初めての医院様に出張し特殊な手術を担当しました。数名の眼科の先生にも見学頂き、久しぶりに緊張感のある手術でした。来週からは企業と機械の開発の相談があったり、いろいろと新しいことにチャレンジが続いて新鮮な気持ちです。

今晩は逆に、少し古い治療なのですが変わった緑内障治療の話を。
毛様体凝固術(もうようたいぎょうこじゅつ)
緑内障の治療は眼圧を下げて進行を遅らせることですが、眼圧を下げる方法(治療法)として、一般的に点眼薬、レーザー治療、内服薬、そして手術治療があります。
・点眼薬の一部や内服薬は、眼内を循環する房水の産生を抑制し眼圧を下げます。
・レーザー治療(SLT,虹彩切除)や、多くの緑内障手術では、房水の排出を促進させたり、新たな排出路を作成して眼圧を下げます。

重症例では手術で房水の排出路を作成する機会が多くなるのですが、せっかく作った排出路が癒着によって閉じてしまうと再度眼圧が上昇します。近年の医学の進歩はすさまじく、術後成績も上がってきていますし、複数回ダメになった術後に行う新しい術式が開発されてきていますが、どうにもならない難治症例というのも世の中には存在するのです。
毛様体は眼内で房水を産生する器官ですが、毛様体凝固術はその毛様体を冷凍凝固(クライオ)や半導体レーザーで冷凍または熱凝固し、毛様体を弱らせて房水の産生を低下させることで眼圧を下げる治療です。
実はこの治療、冷凍凝固で20年以上、半導体レーザーで10年以上の歴史を持つ、かなり古い術式なのですが、現在も緑内障が失明原因の1位であるように、今の医学でも標準的な緑内障手術では眼圧がコントロールできない症例が存在し、そのような症例に限って現在でも行われているのです。

術式ですが、まず注射による局所麻酔を行い、その後、クライオ(-80°の冷凍凝固)や、半導体レーザー(熱凝固)という器械の先を黒目の周り4mm程度の部位に押し当てて、十秒から2分程度(症例によって異なる)凝固する。という技術としては非常に簡単なものです。しかし、効果の差が非常に大きかったり、合併症が多いことが問題となり一般的な患者さんに行われることはなく、他の治療でどうにもならない超重症例・難治症例のみが適応となっています。

合併症
痛みが強いです。局所麻酔を使用してもある程度の痛みがあります。(痛みで治療続行が不可能になった例は経験がありませんが、全く痛くないという人は少なくて、それなりに痛みがあるという人が大多数です。)
強い炎症が起こります。眼球前方の炎症(虹彩毛様体炎)は必発で、一過性には逆に眼圧が大きく上昇することがあります。炎症が眼球後方に及ぶと脈絡膜剥離や黄斑浮腫などを生じたり、炎症により白内障が進行する症例もあるため視力が低下することもあります。
網膜剥離が非常に稀ですが起こりえます。眼内の組織が炎症によってひきつれる(収縮する)ことで生じますが、通常の網膜剥離が手術でまず治せる時代になってきたのと異なり、緑内障の末期の方は網膜剥離の手術に耐えられない場合もあり対応に苦慮します。
眼球勞(がんきゅうろう)これが毛様体光凝固で一番の問題となる合併症です。治療によって毛様体の機能を落として房水の産生量を低下させる治療ですが、効果が強く出すぎると眼球内部の最低限の圧を保つための房水も産生されなくなり、眼圧がゼロ、眼球が小さくしぼんでしまい失明に至る状態です。
特に③や④が生じた場合は治療によって失明してしまう場合がある治療ですので、基本的には眼圧が高く、他の手術が不可能で、毛様体凝固を行わなければ短期間で必ず失明。というケースのみ適応となっている術式です。

第17回 眼科臨床機器研究会

昨日は、横浜で開催された第17回 眼科臨床機器研究会で招待講演を担当しました。午前外来後、急いで特急に乗り込み、車内で資料を作ってどうにか講演に間に合いました。懇親会の後、大学の同級生(横浜で緑内障の専門医として有名)と2年ぶりに二人で乾杯。今朝は台風もあって始発で帰りつつ、この原稿を書いています。今月から渡部先生が着任し、宮井先生と一緒に沢山の患者さんを治してくれるので、僕は少しづつゆとりができるのかな?と淡い期待を。

講演の内容は、iStentに関してです。 今年発売されたばかりの緑内障手術デバイスですので、術後2ヶ月間の短期成績ですが、手術手技のコツや、注意点を踏まえて説明しました。 簡単な治療成績としては、 20例31眼 (男9、女11)(右14眼、左17眼) 緑内障内訳(NTG 5眼,POAG 21眼,PE 5眼) 術前眼圧、平均17.1±3.7mmHgから、術翌日15.1±3.8(12%低下)、1ヶ月後13.5±3.1(21%低下)、2ヶ月後13.3±2.1(22%低下)と、有意な眼圧下降を得られました。 また、点眼薬の使用数が術前1.7±0.7から、0.2±0.9と大幅に減少し、術後は多くの方が緑内障点眼薬から解放されました。

清水公也先生と。今では僕の診療の重要な部分である、「脳で物をみる!」という概念は清水先生の著書から学びました。

小林先生。大学時代からの親友です。緑内障のエキスパート。夜景がきれいなお洒落なお店を予約してくれましたが、周りはカップルだらけの中におじさん二人というのは・・・。

第71回 日本臨床眼科学会

今週10月12日から15日まで、都内で第71回 臨床日本眼科学会が開催されました。

僕は「白内障手術時の乱視は、角膜だけでは説明できない」という内容の発表を行いました。医学の学会もIT化の波によって、スケジュール管理がスマホのアプリになっていたり、発表形式も初体験のデジタルポスターという形式で、不慣れで大変な思いをしました。ポスターの登録期限が学会開催日よりもかなり前もって設定されており、個人的な準備不足ですが、誤字脱字も多くなり反省です・・・。

発表内容の趣旨は以下のようなものです。

理論上(教科書上)、眼球の乱視のほぼ全ては「角膜の乱視」と「水晶体の乱視」の2つの成分で成り立ち、白内障手術では濁った水晶体を除去するために、眼球に残るのは「角膜の乱視」のみであるから、人工レンズの選定の計算には「角膜の乱視」のみ考慮すればよいことになっています。

しかし、実際の医療では少なからず誤差が生じて、計算通り乱視がプラマイナスゼロとなった!ということは、あまりないのです。

例えば、乱視用ではない単終点レンズ(Non-Toric IOL)を挿入した場合、理論上は術後の角膜乱視とレフ値の乱視の軸や大きさは、完全に一致しなくてはいけませんが、そんな人はまずいません。手術で角膜乱視を上手に消して術後の角膜乱視がゼロになっていても、レフ値の乱視はゼロにはならないのです。そして、ここが面白いのですが、そのような術後に残存する乱視の特性(軸の角度・大きさ)は、術前のレフ値に大きく相関するのです。

当院では5年以上前から、その点に目をつけ、白内障手術における乱視のコントロール、眼内レンズの選定・計算に、術前のレフ値も参考係数として利用することで、非常に良好な術後裸眼視力を誇っています。

何故そうなるのか?ということに関しては、まったくの謎で現在の医学では説明できません。角膜後面乱視も含めて検証しても説明できませんでした。網膜面の乱視によるもの、思った以上に他の組織に屈折力がある(硝子体等)、いろいろ考えられますが、今後の検査機器の開発が期待される分野です。

眼科の先生向けですが、参考にしてくれる先生がいて、日本中の患者さんの乱視が少しでも減れば嬉しいです。

*ケラトやトポで、術前の角膜乱視がゼロや、僅かに直乱視でも、術前のレフが倒乱視であれば、耳側切開をしてみてください。もしレフが-2Dなどの比較的大きな倒乱視であれば、思い切って水平方向にToric IOLを挿入してみて下さい。経験と術後データ解析の積み重ねで、術前のトポやレフ等どちらを信頼するのか、そして、空想の乱視をどの程度矯正するのか、徐々に成績がよくなると思います。

*ケラト、トポ、レフなど、測定信頼性が高いものに限ります。角膜乱視の信頼性はTOMEY社の機種に表示されるKAIやKRI、不正乱視の係数が手軽で参考になります。

*まだまだ改善の余地がありますが、当院では一応現時点でのアルゴリズム化ができています。見学希望等あれば医院に直接、またはMRさん等への依頼にてご連絡ください。

*何を言っているんだ。教科書と違う。水晶体を除去するのだから、角膜だけ見てればいいんだ。という先生も沢山いらっしゃると思います。まずは先生方が執刀した症例で術後に倒乱視になってしまったケースを見直してみて下さい。きっと術前のレフは、角膜乱視と乖離して倒乱視になっていたはずですよ。

10月から渡部大樹先生が着任します。常勤医3人体制に。

今日はとても嬉しい報告です。

10月10日に(目の愛護デー)、新しい眼科常勤医が増えます。
平日は常勤医のみでも常に3人体制で診療を行うこととなります。

渡部大樹 先生
(わたなべひろき)

日本眼科学会認定専門医。
筑波大学医学専門学群卒業、筑波大学眼科や土浦協同病院眼科での勤務など、僕とほとんど同じ経歴の先生で、現在は土浦協同病院で眼科医長(一番の責任者)をされています。
白内障はもちろん硝子体手術、緑内障手術など、ほぼ全ての眼科手術をオールマイティーにこなせる、当院にピッタリの即戦力の手術専門医です。
僕の知らない知識や経験を教えてもらえるかと、眼科医としても今からワクワクしています。

すでに手術予約が入り始めていますが、渡部先生の専門外来は年明け1月から予約枠を開設する予定です。

緑内障31 istent? (アイステント) 最新の白内障併用緑内障手術

今晩は、ある先生が発起人になって開催された「茨城県 若手術者の会」というクローズドな第1回勉強会に参加しました。
県内の40才前後、初回は6名の医師で全員が年間数百件の執刀をするメンバーでしたが、僕の出身大学の方は1名のみで、新鮮な話題も多く刺激になりました。
本日も少しistentのことを話しましたが、
10月21日に北里大学主催で開催される第17回眼科臨床機器研究会でもistentの講演依頼がありました。⇒http://www.soci.jp/

緑内障30 istent? (アイステント)
istentの手術動画

まだまだ研鑽中ですが、10症例目の患者さんに手術動画のネット掲載を快諾して頂けたのでupしてみます。
istent手術動画 ← クリック

実際の手術手技については、
・白内障のみの手術(点眼麻酔)と異なり、眼球後方への注射による麻酔を行います。
・標準的な白内障手術を施行。最後に洗浄する目の中の粘弾性物質という薬は、まだ残しておきます。
・白内障手術のために開いておいた瞳孔(散瞳)を、閉じる(縮瞳させる)薬を投与。
・患者さんのお顔を手術をする目と反対側に傾けます。(左目なら右側)
・少し頭を上げ、顎を引く位置にも傾けます。
・目の中を観察する顕微鏡を傾け、目の中を斜め上から観察できるようにセットアップをします。
・特殊なレンズを角膜(黒目)にのせると、隅角が観察できます。
・鼻側下方の隅角に、istentを差し込みます。
⇒隅角にistentを刺すと、基本的には必ず出血します、
・顔の位置、顕微鏡の位置をまっすぐに戻します。
(実はここが、医者の筋力・疲労として一番大変な作業です。)
・白内障手術で使用した粘弾性物質と出血を洗浄して終了です。

現在は20例程度施行し、istentのみでは約2分程度の手術となっています。

istentの一番の利点は、結膜などに全く侵襲がない手術であり、
手術時にきちんと挿入できない。感染。大出血など、まず起こらないような合併症がなければ、最悪のケースでも眼圧があまり下がらなかった。という程度で、将来にマイナスとなる後遺症が全くないことです。
(トラベクレクトミーは将来的な結膜の瘢痕、虚血性変化など、手術をすれば絶対に後遺症が残る手術です。)

緑内障30 istent? (アイステント) 最新の白内障併用緑内障手術

3月25日に国内承認された新しい緑内障手術、iStent(アイステント)ですが、
当院では開始後3ヶ月で13例を執刀しました。(出張の非常勤手術は除く)
まだ術後短期の成績ですが、今のところ13例全例が手術前と比べて眼圧が下がっていて、約半数は緑内障点眼薬を全く中止した状態でしばらく様子をみられる状態になっています。
初回の患者様ではistentの挿入手技に5分程かかっていましたが、10例くらい経験すると2分もあれば挿入可能になります。非常に低侵襲で将来性のある有望な手術です。
今日はアメリカの会社から取材があり、英語が苦手な僕はドキドキしていましたが日本語の対応で大丈夫でした。
今日はistentの一般的な説明を記載してみます。

緑内障30 istent? (アイステント)
最新の白内障併用緑内障手術

istentを簡単にまとめると、
軽症の緑内障の人が、白内障手術を受ける時に、同時にistentを隅角に挿入すると、術後に眼圧が少し下がることが多く、点眼薬が減ったり不要になるケースがある。数分の治療で費用も保険診療に含まれる(多くの人は両眼の白内障手術と自己負担が変わらない)。
という手術です。
*緑内障の末期の患者さんが、失明するかしないかという時に検討をする手術ではありません。(そういうケースは多くはトラベクレクトミーという術式が選択されます。)

専門的ですが、手術を受けられる人の適応を記載します。
?早期中期の開放隅角緑内障患者で白内障を合併している人
 (現時点では白内障手術を受ける時の同時手術しか、保険が通りません。緑内障が進行期・末期の人は適応外です。)
?20歳以上の成人 (小児は受けられません)
?以前に目の中の手術を受けた人は適応外。
?開放隅角のみ適応。
 (隅角に癒着など、特殊な病態があると受けられません。)
?その他、角膜や水晶体の状態により受けられない人がいます。

こちらは眼科医側の問題ですが、資格申請に最低以下が必要です。
A. 白内障手術の経験が100件以上(僕は約20000件)
B. 緑内障手術(レーザー治療除く)の経験が10 件以上(僕は約1000件)

具体的な手術手技は次回記載します。

緑内障29 緑内障のセカンドオピニオンと手術適応

今晩は宮井副院長に勉強会の講師の予定があり(これも緑内障)、手術数を制限したため、僕は夕方から暇でゆっくりとした夜です。

外来が慢性的に混んでいて、予約の患者様でも待ち時間が長くなり申し訳なく思っていますが、傾向としては第5週の数日は殆どの場合で空いているようです。
そして、僕が担当の土曜日の外来は殆どの場合で待ち時間が長くなってしまいます。土曜日は初診の方、普段仕事の若い方、そして遠方からのセカンドオピニオンの方が多くいらっしゃるためです。
以前にも記載したことがありますが、基本的には僕は遠方の患者さんの手術を引き受けるのをためらいます(術後管理まで含めて責任を持ちたいので)。
が、せっかく何時間もかけていらして頂いた方に、何のメリットもなくお帰り頂くことになるもの心苦しく感じています。
今日はせっかくいらっしゃる患者さんが無駄足にならないよう、緑内障のセカンドオピニオンに関して記載してみます。

緑内障29
緑内障のセカンドピニオンと手術適応


①紹介状が必要です。
まず、緑内障のセカンドオピニオンについてですが、ある程度の説明をするにも、絶対に紹介状(診療情報)が必要です。
緑内障の治療方針は、「眼圧がいくつであるか?」よりも、「今の治療法と眼圧で悪化傾向があるか?」「悪化するスピードはどの程度なのか?」によって、より強い治療に進むべきかを検討するからです。
数年分の視野や眼底写真、OCTの結果をみて、はじめて正確な経過が把握できるのです。
患者様によりますが「以前よりも見えなくなっているから手術をしてほしい」「主治医から視野が悪くなっていると言われているから手術をしてほしい」と訴える方が数多くいらっしゃいます。
僕は緑内障手術(特にトラベクレクトミー)はリスクも高く、できる限り受けないほうがよく、「他の方法では失明が防げない時に仕方なく受けるもの」と考えています。
「悪くなっている」と仰る患者さんの話を疑うわけではありませんが、明確に悪化傾向があると判断できる根拠なしには、リスクのある手術を検討することはできないのです。

②眼圧が10以下の患者さん
比較的多いセカンドオピニオンに、「緑内障できちんと通院して、点眼薬もさぼっていないのに、どんどん見えなくなっている。」という可哀想なケースもあります。
現状で眼圧が30とか40と高い状態が続き、視野も悪化傾向であれば、もちろん手術を検討すべきですが、もし眼圧が安定して10以下でいるのに悪化傾向であれば、残念ながらそれは現在の医学の限界であり、セカンドオピニオンで病院や主治医を変えても意味がありません。
緑内障の治療で絶対的な効果が証明されているのは、唯一「眼圧をさげること」ですが、実は眼圧が低くても進行を止められない症例もあるのです。眼圧を下げることで進行を遅らせることはできますが、イコール全く進行しない。という意味ではないのです。
悪化傾向であっても眼圧が10以下でコントロールされているのであれば、主治医の先生は決して無力ではなく、できる限りの治療を頑張っていると思ってあげてください。

③手術適応と考える眼圧
緑内障の手術方法は数種類ありますが、最も重要なトラベクレクトミーに関していうと、僕は15未満で変動が少ない人の手術はまず行いません
(日内変動が大きい人や、毎回測定のたびに眼圧が上下する場合ば別)
先日のセカンドオピニオンで、「キサラタンのみ使用していつも眼圧が11だけど、手術を勧められた。受けていいか?受けるなら山王台で。」というのがあり、当院での手術はお断りしました。
緑内障手術を受けるからには、手術前よりも眼圧が下がらなければ成功とは言えません。かといって、眼圧が5未満では低眼圧という状態で様々な合併症を生じますので、術前眼圧が11の人が手術を受ける場合、術後の眼圧が安定して6~10になる場合のみ成功といえます。眼圧を一桁にする目標を立てることはいいことですが、これを100%の患者さんに達成できるかというと、今の医学では絶対に不可能です。理想と現実は異なります。
術前眼圧が40であれば、6~正常上限の20が通常の目標ですが、最悪30だとしても一応はやってよかったと言えます(もとよりは下がって進行が遅れるので)。つまり眼圧が高い人ほど手術の成功率も高く、適応は広くなります。
世の中には眼圧が10でも手術を勧める先生がいるようですが、僕はその手術を高確率で成功させる自信はありません。
そして、トラベクレクトミーは一度受けてしまうと、後戻りはできません。濾過胞への房水の抜け道(レクトミーホール)を作ってしまうと、抜け道・レクトミーホールからの流出がメインとなってしまい、もともと備わっている隅角からの房水の排出路は機能しなくなってしまうのです。将来的に濾過胞がダメになってしまった時には、本来の隅角からの流出も期待できないため、トラベクレクトミーを受ける前よりも眼圧が高くなってしまうリスクがあるのです。
もし眼圧が10で手術を勧められた場合は、その先生は「術後の眼圧の目標をいくつと設定しているのか?」「術後の眼圧がどの程度の期間に渡って安定する見込みがあるのか?(特に若い人の手術は長期を検討)」「成功率を何パーセントと考えているのか?」を相談して、ご自身が納得いけば手術を受けてもいいでしょう。
ただし、僕が思うにそれはものすごく難しいことで、そして眼圧が15以下で手術を勧めるということは多くの眼科医にとって一般的ではありません。

④まずは主治医の先生と相談を
当院は基本的に全ての患者さんで、「付き添いの方は一緒に診察室に入って下さい」とお願いしています。病気の説明も複数で聞いた方が漏れがありません。点眼薬や食生活の管理がうまくいっているか、送迎が可能かなども確認できますし、緑内障など遺伝傾向がある疾患では簡単に診察をしたりもします。
セカンドオピニオンの場合もご家族一緒に説明しているのですが、「かかりつけの先生には一緒の説明を聞いていますか?」と質問すると、面白いことに多くの場合で「NO」というお返事をもらいます。
マンツーマンのやり取りはどうしても偏りがあったり、理解不良になる原因となります。わざわざ何時間もかけて当院にセカンドオピニオンに来る前に、まずは家族全員でかかりつけの先生に「治療は上手くいっているのか?悪化傾向なら他の方法が考えられるのか?」、相談をしてみては如何でしょうか?

緑内障28 iStent? (アイステント) 最新の白内障併用緑内障手術(日本初認定)

今日は手術が早く終わり、久しぶりに緑内障の新しい話題を。
眼科専門医という資格はありますが、実は眼科医が「私は緑内障の専門」とか「角膜の」「網膜の専門」とか名乗るのは本当にそういう資格があるわけではなく、その医者が自分で勝手に名乗っているだけで、緑内障手術を1件も行っていない先生が緑内障専門と名乗っても一応は問題ないのです。
僕は基本的になんでもこなす方のオールラウンドタイプですが、自分では網膜硝子体手術を一番の専門として名乗っています。決して緑内障の専門科とは名乗っていないのですが、年々緑内障手術の紹介が増えてしまい、非常勤手術も合わせると年に約200件の緑内障手術をしているようで、茨城県ではいつの間にか1番多くなってしまいました。
緑内障は自覚症状に乏しく、通院が途切れやすいことでも有名ですが、当院の通院継続率の高さを学会発表した経緯から、今年は大手製薬会社さんの緑内障管理のパッケージ管理というパンフレットの作成で特許を取らせて頂いたりもしました。(このパンフレットが全国に浸透して、ベースライン眼圧を測定しない医者が激減することを祈っています)
「あれ?いつの間にか緑内障も専門に?」と自分でも不思議に思っているのですが、本日、新しい緑内障手術の正式な認定証を日本で一番初めに頂く事ができたようなので、報告してみます。
(iStentを国内で使用可能にするために臨床治験などに尽力頂いた評議員の5名の先生方を除いて、正規の講習を受けた中で1番目になります。)

iStent (アイステント)
緑内障という病気は不可逆性で、失った視野・視機能を回復する方法がありません。現在の医学では点眼薬、レーザー、手術などによる治療で眼圧を下げることで進行を抑制することが治療の目標になります。
日本ではまずは点眼薬を使用して眼圧を下げることが最も多く行われていますが、多数の点眼薬を使用しても眼圧の下がりが悪い場合や、病状の進行が止められない場合、副作用で点眼薬が続けられない場合などには手術による治療が行われます。
緑内障手術にもいろいろな方法がありますが、一般的なものは以前のブログを参照ください。
緑内障ブログ(隅角形成、エクスプレス、バルベルトなど)
血管新生緑内障のブログ(通常のトラベクレクトミーはこちらに)

今回新たに国内で承認された手術は、iStent(アイステント)というチタン製のステント(筒)を、房水の主流出路であるシュレム管に突き刺して、房水の排出を増加させ眼圧を下げる手術です。

直径わずか1mmのステントを、下図の赤矢印のように隅角(房水の出口)に突き刺す手術になります。

トラベクレクトミーほどの眼圧下降効果はなく、基本的には緑内障で失明リスクが差し迫った患者さんのための手術ではありません。緑内障で加療中の人が白内障手術を受けるときに併用して、術後に点眼薬を減量できたり、上手くいけば点眼薬が不要となることを目標とする手術です。
手術適応や特徴などは次回のブログで記載します。

眼科医の先生にもブログを見て頂く事が多いようなので、認定までの具体的なスケジュールも書いておきます。
3月25日に国内承認。4月9日の日眼総会後に初回講習会(今後も適宜開催予定;詳しくはグラウコス社に)。その後4月13日、自院にてグラウコス社の担当者とウェットラボ(ハンズオン)。4月14日に初回手術1例。17日に1例。19日に2例。本日26日1例。(全て国内の担当者立ち合い。)
本日アメリカからグラウコス社の専任アドバイザーがきて(今日はMark.Mさん)、実際に手術室で手術手技に問題がないことを確認して頂き、晴れて認定証がもらえました。

患者さんの家族の協力

珍しく2日連続でブログ更新!
実は上の娘二人が通う学校に寮ができて、体験入寮という形式で日曜から土曜までまるまる1週間、面会謝絶の状態です・・・。寂しい反面、僕自身は時間が空いて仕事がはかどっています。
小学1年生の子に大丈夫だろうか?と本心では心配していますが、うちの子含め、最近の子供は間違いなく過保護に育っていますし、自立心・自尊心の形成にはいいことなのかな?学校の先生方も大変でしょうが、信じて見守る今週です。

実は、僕の外来では患者さんに結構厳しいことも話すのですが、今日はそれについて。

患者さんの家族の協力
僕は毎週必ず、糖尿病網膜症の手術をします。多い週は網膜症の手術だけで10件をこえることも。
網膜症にもいろいろな病態があり、出血で濁って見えない人が手術で視力を取り戻すケースもありますが、多くの眼底疾患の手術は「回復ではなく、失明を防ぐため。悪化を防ぐため」の手術であり、白内障と比べると術後に喜んでもらえることが少ない手術です・・・。
それでも、治療をして将来の失明を防ぐことに僕はやりがいを感じています。
そして、せっかく一度救った目が再度悪化して再手術をしたり、最終的に見えなくなっていくのを見るのは、本当にやるせない気持ちになるのです。

糖尿病で網膜の血管が半分、50%詰まった時には、レーザー治療で網膜を半分殺して、目の機能を半分の50%にすることで、残った半分の血液で網膜を賄える状態にバランスを取ります。手術でレーザーを追加したり、出血を洗い流したり、増殖膜(カサブタ)を除去したり。網膜の手術の成績は日進月歩で、大出血で失明というケースはほとんどない時代となりました。
しかし、レーザー治療も手術治療も決して網膜の血流を正常の状態に戻したわけではないのです。半分の血流で賄えるように一度バランスを取っただけ。
その後にさらに血管が詰まって、血流が30%しかなくなればバランスが崩れ、20%間引くための追加の治療が必要ですし、最終的に全ての血流がなくなったら誰がどうやっても失明してしまうのです。

当院かかりつけの患者さんは、よくご存じだと思いますが、僕はその後の全身コントロールに関して、かなり口うるさい医者です。
せっかく一度助かった目が再度悪くなっていくのが本当に嫌なのです。いつもお願いをしていますが、
・糖尿病網膜症で手術を受けたような人は絶対に禁煙をして頂きます。
外来で煙草臭い人がきたら、ポケットにあった煙草を診察室で捨てることも多々あります。
厳格な血糖コントロールや血圧コントロールにも口を出します。
糖尿病もピンキリで、不摂生の塊のような人の血糖がよかったり(軽い糖尿)、食事も運動も禁煙もしっかりやっているのに血糖が下がらない(悪い糖尿病;家族歴など)。そういう可哀想で重篤な糖尿病の方もいるので一概には言えないのですが、外来でまだまだ努力の余地がある人がいれば、いろいろとキビしいことを話してしまいます。

ここでお願いなのですが、糖尿病の管理というのは一人ではなかなか難しい
のだということを、家族の方にも必ず知っておいてほしいのです。手術前後は基本的に全患者様のご家族をお呼びしていますが、そこで僕がよく言っているとても嫌味なセリフがあります。
「普通の家族が外出後にお饅頭やアイスのお土産を買ってきたら、ほほえましいと思うのですが、あなたが食事の調節を考えずに、ただ患者さんにアイスを買ってきて渡したら、早く死ね。と言っているのと同じですよ。」
自分でもかなりひどいことを話していると思いますし、伝えた直後にご家族の表情が強張っていることに気が付くことも多々あります。
が、憎まれても、これが僕の仕事なのです。

糖尿病網膜症で手術が必要になった方の多くは、あまり自制心が強い方ではありません。(全員がそうだといっているのではなく、ある程度の傾向があるという意味。きちんとしている患者さんも沢山います。)そういう人のそばで、家族が好きなものを好きなだけ食べている時に、「あなただけ我慢して」というのは現実的でありません。
煙草も同じです。禁煙後の再発は周りの人が吸っていたので。というのが一番のリスクになるのです。
眼科でご家族含めて説明した後は、かかりつけの内科様にも、家族全員で一緒に受診して「どうやったら血糖コントロールがよくなりますか?」と聞いてきてもらうようにしています。

目が見えなくなった人を、ご家族自身で介護するというのはものすごく大変なことです。目が見えている間に、食事や運動に気を使ってあげたり、緑内障の人は朝晩目薬をつけてあげたり。そっちの手間の方がよほど楽なはず。
糖尿病、生活習慣病、慢性疾患はご家族の方の協力で予後が大きく異なります。受診時はできる限り一緒に診察室に入るようにして下さい。

「若造がえらそうな事を言いやがって!!」と思う方も大勢いるかと思います。そう思われても、術後も禁煙できずに失明していく人を見るほうが僕は嫌なのです。

眼科医だから「目だけ見てればいい」とは思いません。当院で手術を受けた人が、生命予後も、そしてその後の人生観まで変わってしまうようなお手伝いができればと思って診療を心がけています。