副院長も出張手術が増えています。

今日も満床でしたが、さらに網膜剥離の紹介もあり、どうにかベットや手術室の器材などのコントロールを付けていたのですが、夕方に手術をしていると、つくば市のさくら眼科クリニックさんから電話が・・・・。
「緑内障発作で緊急手術が必要な人がきました・・・」
当院ではどうやってもキャパシティーオーバーです。「深夜にさくら眼科さんへ伺って手術かな、ちょっと疲れたな。患者さんも痛いの我慢するの辛いだろうな」と思いながら、返答を考えていると、、、、
ふと横に座っている宮井副院長に気が付きました。
「先生、治してきてくれない??」
二つ返事で「いいですよー(笑)」とのこと。
もともと各方面で手術をしている宮井先生ですが、夜間の緊急手術って、
どちらかというと女性の先生はどうかな。という思いがありましたが、
(偏見ですみません。)
やっぱり宮井副院長は頼りになります。
先ほど、さくら眼科の先生から完璧な手術でしたとお褒めの電話を頂き、一応上司?の僕も鼻が高い!!
渡部副院長への紹介状もどんどん増えています。
当院は既に一般のクリニックというより、県内の医療を担う中核病院だと自負していましたが、副院長たちも茨城県を代表する眼科医になっています。
3人で切磋琢磨できるこの環境に感謝です!!

脳で見る!② ピントの話

昨日は最大手の眼科医院の先生(若手2名)と3人で食事をしました。
いろいろと知識の交換ができてよかったです。

脳でみる!②
白内障手術後のピント(目標屈折値)

脳で見る!①で記載しましたが、基本的には網膜にうつる映像と、頭の中に思い浮かぶ映像には乖離があり、脳による画像処理が介入した後の映像を僕たちはみています。
今日は、診療で気を付けるべき、いくつかの具体的な事案のうち、ピントについて書いてみます。

白内障手術時に、近くと遠く、または遠近など、術後にどこにピントを合わせたいか、どこでメガネをうけいれるか。ということを僕たちは毎日患者さんと相談しています。多くの方はメガネの必要性を下げたいと考え、例えば遠方重視(裸眼で遠方視力1.0など)を希望される方がいたとします。手術が上手に終わって、検査値としては(理論上は)遠視も近視も乱視も全くない、網膜にぴったり焦点があう状態ができたとしても、実は患者さんによっては遠視や近視のメガネをかけた方が見える場合も多いのです。
もともと遠視や近視が強い方が手術を受けた場合に生じやすい現象なのですが、遠視や近視が強い人が、手術前に完全矯正の強いメガネをかけ続けていたかというと、そういう人は多くはありません。ほとんどの人が少し弱いメガネをかけていたり、お風呂上りなどメガネを外して過ごす時間があったり、メガネが嫌いでかなりのピンボケのまま過ごしている方もいます。こういう人の脳は、網膜に映ったピンボケの映像を補正(画像処理)してから、頭の中に描き出す能力にたけています。

この脳による映像の補正は手術後も長期的に機能します。
手術前の数十年間、遠視であったか近視であったかなどによって、映像を補正する方向性が異なり、術後のピントを同じように合わせても全く異なる結果を生む原因になるため、手術で遠方にあわせるか、近方に合わせるかということは、患者さんの希望のみではなく、もともとの状態をよく加味する必要があります。

強度遠視だった人が正視(遠方)にピントを合わせた場合
●ピントは遠方にあっているのに、思ったより近方も見える。(+2Dの遠視を我慢して見ていたような人は、頭の中で映像を2D分、近視側に補正できる能力があります。手術後にプラスマイナスゼロに合わせると、近くの50cm;2D分の補正能力で老眼鏡がなくても字が不自由なく読めたりします。殆どの方が単焦点レンズでもメガネ不要で生活できるようになるケースです。
もとが重度の遠視の場合、術後に光学上は正視でも、遠くを見るときに少し近視のメガネをかけて+1D程度の遠視にしたほうが遠方視力が良好で運転しやすくなることが多くなります。(少し遠視側にピンボケした映像を脳で補正する方が慣れていて楽。)

強度遠視だった人が近方にピントを合わせた場合
近くはよく見える。という意見が多くなります。
遠くは異常に見えない。とクレームが必発です。(若いころから遠くが自然に見えていた脳の人は、近視側にピンボケした映像を補正して見る能力が鍛えられていない。)

強度近視だった人が、近視を弱めつつも近方にピントを残した場合
ピントは近くにあっているのに、思ったより遠方も見える。(-10Dの近視で-10Dのメガネをかけている人は多くありません。多少弱い-8D程度のメガネをかけて、-2Dの近視が残った状態で生活をしている人が大多数です。 目を細めたり、脳の補正を利用したり。-2D分、近視側にピンボケした映像を補正することに慣れているので、手術で-2Dに合わせても思ったより遠くが見えてしまいます。術後にメガネがいらなくなることが、まずまず多いケースです。

50cm;-2D程度にあわせると、少し近方が弱く感じる。字を読むときに+1~+2D程度の老眼鏡を追加して、さらに近視側に振った方が読書が楽なことが多い。

強度近視だった人が正視(遠方)にピントを合わせた場合
・遠くはクラクラするほどよく見える。という意見が多くなります。
・近くは異常に見えない。とクレームが必発です。(若いころから近くが自然に見えていた脳の人は、遠視側にピンボケした映像を補正する訓練をしていないので能力が乏しい)

簡単にまとめると、
・もともと強度遠視 ⇒ 術後は正視(遠方)狙いが無難
・もともと強度近視 ⇒ 術後は近方(30~50cm)狙いが無難
ということになります。
ライフスタイルに偏りがあって、例えば強度近視だけど仕事が運転手さんで、とにかく裸眼で運転したい。などという人は、強度近視から遠方へ逆転させることもできますが、術後慣れるまでにかなりの根性と覚悟が必要になります。

*除外例:強度近視でも、ハードコンタクトレンズによる完全矯正の時間が長く、デスクワーク時にコンタクトレンズの上から老眼鏡をかけていたような人は、上記の強度近視だった人には当てはまりません。

*脳も楽をしたがるようで、「補正をしなくても見えてきた」ということに気が付くと、補正する能力が衰えていきます。遠視から正視にした人は、術後早期は裸眼で新聞が読めますが、年単位では老眼鏡が必要になります。
若い人では、長期的な変化も考えて手術を行う必要があり、超高齢者で+5Dなどの強い遠視の人ですと、術後は正視希望でも、わざと+1Dを残してあげることも行っています。(余命の数年間、その方がよく見える。)

脳で見る!①

昨日が今年の手術初めです。通常、金曜日はお昼休みの1時間強、3~4名の手術のみを行っています。もともと黄斑円孔や硝子体出血の予定がありましたが、なんと年明けそうそう2名の網膜剥離が!
僕は午前外来、午後に特殊処置の予定なので夜に手術か・・・。とお正月気分も吹き飛ぶ忙しさかと思っていたら、夕方に宮井副院長から「2名とも治しておきましたよ。」と報告がありました。年明け早々、こんなに嬉しいことがあるなんて!!今日の診察は僕の担当でしたが、両名共にキレイに治っているよう。すばらしい!頼りになる副院長です。
(僕もサボっている訳でなく、火曜日にひたちの眼科で2名の網膜剥離の手術予定)

今日は様々な病気や症状に影響する、基本的だけど、とても重要な話を。
脳で見る!!
「目がいいとか、よく見えるとか、見えないとか」、多くの患者さん(残念ながら一部の眼科医も)が、全ての原因は目にある!と信じ込んでいます。今、頭の中に描き出された映像は、網膜にうつった映像と全く同じなのだと。
そんなことはありません。あなたの頭にある映像は自分に都合よく作りだした嘘ばかりなのです!

これは実際には動いていない模様です。網膜にも動いていない映像が映っているはずですが、脳の働き(誤作動)で、まるでウネウネ動いているように見えてしまいます。脳が自分の都合のいいように画像を動かしてしまうのです。
目の中に入ってきた映像、網膜にうつった映像は、3つの色に分解された刺激として脳に届き、脳で映像として再合成され好きなように映像処理されたものが、頭の意識の中に描かれます。
テレビも電波から映像が合成されて表示されますよね。詳しい仕組みは僕には分かりませんが、モニターパネルには赤・緑・青のランプが目に見えない細かさで並んでいて、電波信号の情報から3色の組み合わせで映像や色が再現されるようです。目や脳も同じような原理で、脳にはそこでさらに映像処理能力が組みこまれているのですね。

これを読んでいる殆どのかたは、頭の中の映像には視界・視野が欠けている部分なんてないと思っていますよね?そんなことないんです。本当はマリオット盲点という、全員が見えない部分があり、虫食いの映像なのですが、脳は虫食いの部分を黒と表現するのではなく、周りの上方から好き勝手な映像を作り出しているのです。マリオット盲点に関しては以前のブログ(クリック)も見てみて下さい。

次は逆に存在しているもの(網膜に映った映像)が、脳では省略されて見えなくなる現象です。
点滅する緑の点をじっと集中してみていると、黄色の3つの点が消えて見えなくなるタイミングがあります。
錯覚実験 (12)

次は、脳が別のものとして認識、画像変換をしてしまう現象。
灰色の線の交差部は白色ですが、脳の働きで黒色に置き換えられます。

この「脳で見る!」というのは、多くの目の病気の症状や理解には必要不可欠で、「私はこんなに辛いのに、あの目医者は私の症状を分かってくれない。」というトラブルの大きな要因になります。次回は、この「脳で見る!」ということが、目の病気の症状とどのように関わってくるのかについて記載したいと思います。なかなか信じられないという方も多いと思いますが、このブログで少しでも納得頂き、症状の軽減につながると嬉しいです。(同じように理解してくれる眼科医の先生方が増えて、当院のセカンドオピニオンが減りますように・・・。)

最後に。黄色の点を見つめながら、画面に顔を近づけたり、遠ざけたりしてみてください。

どうでした?ピンクが回って見えましたか??
脳の働きって面白いですね。
(画像はdistractify様より引用させて頂いています。)

あけましておめでとうございます。

喪中の身で、今年の元日はゆっくり過ごしました。
双子の怪獣は2才半になりました。上の子たちでは見られなかった肉体的なケンカが元旦も続いています。いつになったら我が家に平穏が訪れるのか・・・。

書き初めの中央が双子のものですが、同じように育てても、こんなに違いがあって、全く異なる人生を歩むのでしょうね。紙を千切って糊でペタペタ。熱中していると思ったら、なんだかお正月らしい工作ができあっていました。

今年は戌年です。誠実、忠実、勤勉で人情深い犬。12子の11番目の干支、最後尾に近い戌年は良い意味でも悪い意味でも集大成という意味があるそうです。当院も開院から8年近くたち、医師もスタッフも機材も充実して、茨城県を代表する医院になってきたと自負しています。
コツコツと目の前の治療を誠実に行うことはもちろんですが、今年は特に学会発表を活発に行うことを目標にします。発表の題材は沢山あり、現時点でも宮井・渡部、両副院長と併せて、全国区の学会で8題の発表を考えています。当院からの活発な情報発信で、日本の眼科医療に貢献できるよう頑張ります。
3人体制になり、4人の子育ても少しは落ち着いて?、ブログの更新も頑張れそうな気分。また今年は既に多くの先生方から見学の依頼があったり、各分野のエキスパートの先生方と食事をさせて頂く予定など、スケジュール帳が大変なことになっていますが、忙しいのって幸せなこと。充実した1年にできるよう頑張ります!

優秀なスタッフに恵まれて好き勝手に働いてしまいます。いつも助けてくれて本当にありがとう。今年も忙しい年になると思いますが、あたたかく見守って下さい。

H29年の治療実績 茨城県 山王台病院附属眼科・内科クリニック

網膜剥離の紹介で大晦日も診察がありました。年末年始の閉院は4日間の予定ですが、その間に処置室(硝子体注射や緑内障パルスレーザー;CYCLO G6レーザーの専門スペース)の新設工事も進みます。
今年1番の出来事は渡部副院長が就任したことでしょうか?宮井副院長と同じく勉強熱心で手術が上手です。常勤医が3人いると、お互いに刺激しあいながら研鑽できるので幸せです。

H29年の治療実績を集計しました。 もう驚きはありませんが、例年通り重症例の患者様の紹介が多くありました。 全体としては2399件と微増ですが、眼科では施設の手術レベルの指標とされることが多い硝子体手術の件数は412件と増加。緑内障手術も132件と増加。白内障手術は遠方の患者様で簡単な症例は基本的にお断わりしており、減少傾向でした。

治療実績(H29年1月~H29年12月)
観血的手術合計 2399件
内訳 
・白内障手術 1404件(眼内レンズ交換含む)
・網膜硝子体手術 412件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔・黄斑前膜など) 
・緑内障手術 132件 
・眼瞼(まぶた)の手術 187件(眼瞼下垂・さかさまつげ・霰粒腫など) 
・結膜の手術 154件(翼状片・結膜弛緩症など) 
・角膜の手術 73件(角膜移植・角膜形成術など) 
・涙器の手術 12件(NSチューブ・涙嚢の手術) 
・その他の手術 25件(斜視、レンズ整復、瞳孔形成、眼窩など)

レーザー手術合計 320眼 
内訳 
・網膜光凝固 117眼(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー) 
・緑内障レーザー 19眼(毛様体凝固CYCLO G6・SLT・虹彩切除LI)
・YAGレーザー 191(後発白内障に対するレーザー)

*手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。今年新設(仮設)の白内障手術併用眼内ドレーンistentは白内障、緑内障の両方の件数に算定。白内障の手術時に、逆さまつ毛や眼瞼下垂の手術を追加で行うことがありますが、それらはカウントしておりません。

抗VEGF薬 硝子体注射 1258件(加齢黄斑変性症や黄斑浮腫などに対する注射です。ルセンティス・アイリーア・アバスチン)

ステロイド薬 テノン嚢注射 370件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫、ぶどう膜炎などに対する注射です。トリアムシノロン・マキュエイド)

緑内障35 CYCLO G6 レーザー② 治療方法

当院は明日30日の午前まで通常外来を開いています。(渡部副院長担当)
定時手術は27日までの予定でしたが、本日も県外から網膜剥離の紹介手術があり、結局年末ギリギリまで手術で例年通りの年の瀬です。
みなさん、絶対元日には目の怪我をしないで下さいね。

今日は国内発導入された新しい緑内障治療機器について記載を。(現状で日本で3台稼働のよう)
CYCLO G6 レーザー② 治療方法

新しい器械なので、今後適宜アレンジが進みますが、現在の治療法に関して記載します。
①局所麻酔が必要です。
ある程度は痛みがある治療です。球後麻酔という、下まぶたの皮膚から針を進めて眼球の後方に麻酔薬を注入する方法が行われたり、当院ではもう少し痛みの少ない、テノン嚢下麻酔という結膜を切開して眼球の後方に麻酔薬を注入する方法で行っています。(テノン嚢下麻酔の場合、結膜の出血が起こると治療が困難になるため、ある程度の技術と止血機材の準備が必要です。)
麻酔が良く効くまで15分程度待ってから治療に進みます。

②まぶたを開く器械を付けて、レ―ザーを照射。
開瞼器という器械を取り付けて強制的にまぶたを開きます。
当院では現在はエネルギー2000mWで、角膜輪部から4mm程度、毛様体を目標にレーザープローブを軽く押し当てて、上下に各40~80秒、合計80~160秒の照射を行っています。この治療エネルギーや治療時間は、今後の治療データの調査によって、重症例ではより長時間、眼圧が低い症例では短時間になるなど、適宜調整が行われる見込みです。
その後、数時間、麻酔がきれるまで眼帯をします。
治療自体はこれで終了し、非常に簡単な治療です。

③消炎治療・投薬
ある程度の炎症は起こるため、ステロイド薬が必要で、ステロイド点眼薬と、現在のところ当院では全身状態に問題がなければ内服薬も処方しています。

④評価、再治療
稀ですが炎症による一過性眼圧上昇が起こることがあるとされ、治療翌日(入院の場合は当日夜間など)に検査が必要です。半数以上は治療翌日には目立った眼圧下降を得られます。数日~1ヶ月かけて徐々に低下する症例もあるようですが、1,2ヶ月後にさらに眼圧下降を目指す必要があれば追加で再治療が可能です。

④費用
実は現時点では昔からある半導体レーザーでの毛様体光凝固術と同じ点数で算定されます。K271、4670点(46700円)
3割負担の方は14010円、1割負担の方は4670円。手術に比べると、現状では非常にリーズナブルな治療です。

追記(2月8日)
*2018年4月の診療報酬改定で5600点に増額されることになりました。患者さんの負担増は申し訳ありませんが、費用 対 効果で考えると、過剰な点眼薬の増量ややSLT等と比べて、かなりよい治療と考えられます。

費用に関しては、どちらかというと医療機関側の経済的な問題が大きいようです。治療用プローブ1本の値段が3万円(発売直後、先月は4万円)で、プローブは1回1回使い捨て。(デジタル管理で再滅菌不可能)消毒や麻酔など、いろいろ考えると1症例で1万円ちょっとの利益。これでは高額な機械の本体代を考えると経営的な問題で導入できない施設がありそうです。
istent手術も白内障手術と比べて、治療点数の増加分がistentの本体代と同等なので、病院の純利益がほぼない治療です。(時間がかかる分、赤字ととらえる医院も多いようです。)
当院は失明を防ぐ地域の中核的な病院としての役割が大きく、経営面は二の次と考えていますが、どちらもよい治療法なので、ある程度は眼科の医院にもメリットがある点数がついて、日本中の眼科で施行できるようになるといいのですが。。。

緑内障手術 網膜硝子手術 白内障手術 茨城県 眼科 山王台病院附属眼科・内科クリニック

緑内障34 日本初導入 CYCLO G6 レーザー①(新型毛様体凝固術)

今日は緑内障治療の歴史の分岐点になるかもしれない新しい話題を。

日本初導入!!
CYCLO G6 レーザー①
新型毛様体凝固術
先日、房水の産生量を減少させることで眼圧を下げるという、毛様体凝固術についてのブログを記載しましたが、これは合併症として炎症が強くでたり、最悪の場合、房水を作る機能が消失し眼球が小さくなってしまう眼球勞という状態になるというリスクと隣り合わせの治療でした。
CYCLO G6は、iridex社が開発した新型のレーザー緑内障治療機器で、房水の産生を抑制したり、明確な原因は分かっていませんが、ぶどう膜流出路から房水の排出を亢進させることで眼圧を低下させることができると考えられています。緑内障手術に抵抗する(手術後経過も高眼圧)症例に対した成績として、主だったいくつかの論文を要約すると、眼圧30%以上の低下、または眼圧の正常化(20mmHg以下)を得られる可能性が70~80%で得られるという、とんでもない成績を誇る画期的な治療機器です。(30%以下の眼圧下降も含めると、基本的には治療によってほぼ100%で少なからず眼圧が低下します。)
しかも欧米では最長7年間の観察をしたも研究もありますが、眼球勞などの重篤な合併症の発生が世界中で未だかつて1例もないという、安全性に関しても非常の安心できる機器です。(低眼圧になりにくいという安全性の高さから、現在、世界中で眼圧が低めの症例に関しても治療の適応が広がってきています。)
日本での国内使用の承認直後に当院でもデモ使用(レンタルして試す)を行いましたが、8眼の治療を行い、大きな合併症はゼロ、眼圧下降は平均で28mmHgから19mmHgと32%以上の眼圧下降を得ることができました。
そして昨日12月7日、CYCLO G6が当院に日本で初導入されました!!
導入直後に新生血管緑内障で紹介、緊急入院した患者様がいらっしゃり、さっそく夜間に治療を行いましたが、術前眼圧55mmHgから治療翌日には25mmHgと、我々もビックリするほどの治療効果を得られています。
正規導入後、国内第一例目に治療を受けた患者様から治療動画のUPを許可頂きましたので掲載してみます。(僕の音声付きで恥ずかしいですが・・・。)

CLCLO G6 治療動画 (クリック

もちろん治療効果には個人差がありますし、日本人での長期安全性の評価、治療条件の調整(レーザーの照射方法、エネルギー量や治療時間、麻酔方法)などが必要ですが、それも含めて、もし将来的に低眼圧の症例にも適応が広がっていくのであれば、これは緑内障治療の世界が激変してしまう可能性がある治療です!!
まずは高眼圧での治療から開始しています。緑内障治療を数多くこなす大学病院では間違いなく必要とされ、数年で国内の多数施設に導入されると予想されますが、現状では治療施設が限られます。 本来、当院は遠方からの患者様の治療を極力お断りしていますが、失明リスクの高い高眼圧緑内障の患者様は、安全性の高い、この治療に限り緊急レスキューの意味で全国からの治療を引き受けます。
眼科の先生方も難治例、術後高眼圧例、仕方ないとあきらめる前にご紹介下さい。

毛様体凝固術

今日の午前は初めての医院様に出張し特殊な手術を担当しました。数名の眼科の先生にも見学頂き、久しぶりに緊張感のある手術でした。来週からは企業と機械の開発の相談があったり、いろいろと新しいことにチャレンジが続いて新鮮な気持ちです。

今晩は逆に、少し古い治療なのですが変わった緑内障治療の話を。
毛様体凝固術(もうようたいぎょうこじゅつ)
緑内障の治療は眼圧を下げて進行を遅らせることですが、眼圧を下げる方法(治療法)として、一般的に点眼薬、レーザー治療、内服薬、そして手術治療があります。
・点眼薬の一部や内服薬は、眼内を循環する房水の産生を抑制し眼圧を下げます。
・レーザー治療(SLT,虹彩切除)や、多くの緑内障手術では、房水の排出を促進させたり、新たな排出路を作成して眼圧を下げます。

重症例では手術で房水の排出路を作成する機会が多くなるのですが、せっかく作った排出路が癒着によって閉じてしまうと再度眼圧が上昇します。近年の医学の進歩はすさまじく、術後成績も上がってきていますし、複数回ダメになった術後に行う新しい術式が開発されてきていますが、どうにもならない難治症例というのも世の中には存在するのです。
毛様体は眼内で房水を産生する器官ですが、毛様体凝固術はその毛様体を冷凍凝固(クライオ)や半導体レーザーで冷凍または熱凝固し、毛様体を弱らせて房水の産生を低下させることで眼圧を下げる治療です。
実はこの治療、冷凍凝固で20年以上、半導体レーザーで10年以上の歴史を持つ、かなり古い術式なのですが、現在も緑内障が失明原因の1位であるように、今の医学でも標準的な緑内障手術では眼圧がコントロールできない症例が存在し、そのような症例に限って現在でも行われているのです。

術式ですが、まず注射による局所麻酔を行い、その後、クライオ(-80°の冷凍凝固)や、半導体レーザー(熱凝固)という器械の先を黒目の周り4mm程度の部位に押し当てて、十秒から2分程度(症例によって異なる)凝固する。という技術としては非常に簡単なものです。しかし、効果の差が非常に大きかったり、合併症が多いことが問題となり一般的な患者さんに行われることはなく、他の治療でどうにもならない超重症例・難治症例のみが適応となっています。

合併症
痛みが強いです。局所麻酔を使用してもある程度の痛みがあります。(痛みで治療続行が不可能になった例は経験がありませんが、全く痛くないという人は少なくて、それなりに痛みがあるという人が大多数です。)
強い炎症が起こります。眼球前方の炎症(虹彩毛様体炎)は必発で、一過性には逆に眼圧が大きく上昇することがあります。炎症が眼球後方に及ぶと脈絡膜剥離や黄斑浮腫などを生じたり、炎症により白内障が進行する症例もあるため視力が低下することもあります。
網膜剥離が非常に稀ですが起こりえます。眼内の組織が炎症によってひきつれる(収縮する)ことで生じますが、通常の網膜剥離が手術でまず治せる時代になってきたのと異なり、緑内障の末期の方は網膜剥離の手術に耐えられない場合もあり対応に苦慮します。
眼球勞(がんきゅうろう)これが毛様体光凝固で一番の問題となる合併症です。治療によって毛様体の機能を落として房水の産生量を低下させる治療ですが、効果が強く出すぎると眼球内部の最低限の圧を保つための房水も産生されなくなり、眼圧がゼロ、眼球が小さくしぼんでしまい失明に至る状態です。
特に③や④が生じた場合は治療によって失明してしまう場合がある治療ですので、基本的には眼圧が高く、他の手術が不可能で、毛様体凝固を行わなければ短期間で必ず失明。というケースのみ適応となっている術式です。

第17回 眼科臨床機器研究会

昨日は、横浜で開催された第17回 眼科臨床機器研究会で招待講演を担当しました。午前外来後、急いで特急に乗り込み、車内で資料を作ってどうにか講演に間に合いました。懇親会の後、大学の同級生(横浜で緑内障の専門医として有名)と2年ぶりに二人で乾杯。今朝は台風もあって始発で帰りつつ、この原稿を書いています。今月から渡部先生が着任し、宮井先生と一緒に沢山の患者さんを治してくれるので、僕は少しづつゆとりができるのかな?と淡い期待を。

講演の内容は、iStentに関してです。 今年発売されたばかりの緑内障手術デバイスですので、術後2ヶ月間の短期成績ですが、手術手技のコツや、注意点を踏まえて説明しました。 簡単な治療成績としては、 20例31眼 (男9、女11)(右14眼、左17眼) 緑内障内訳(NTG 5眼,POAG 21眼,PE 5眼) 術前眼圧、平均17.1±3.7mmHgから、術翌日15.1±3.8(12%低下)、1ヶ月後13.5±3.1(21%低下)、2ヶ月後13.3±2.1(22%低下)と、有意な眼圧下降を得られました。 また、点眼薬の使用数が術前1.7±0.7から、0.2±0.9と大幅に減少し、術後は多くの方が緑内障点眼薬から解放されました。

清水公也先生と。今では僕の診療の重要な部分である、「脳で物をみる!」という概念は清水先生の著書から学びました。

小林先生。大学時代からの親友です。緑内障のエキスパート。夜景がきれいなお洒落なお店を予約してくれましたが、周りはカップルだらけの中におじさん二人というのは・・・。

第71回 日本臨床眼科学会

今週10月12日から15日まで、都内で第71回 臨床日本眼科学会が開催されました。

僕は「白内障手術時の乱視は、角膜だけでは説明できない」という内容の発表を行いました。医学の学会もIT化の波によって、スケジュール管理がスマホのアプリになっていたり、発表形式も初体験のデジタルポスターという形式で、不慣れで大変な思いをしました。ポスターの登録期限が学会開催日よりもかなり前もって設定されており、個人的な準備不足ですが、誤字脱字も多くなり反省です・・・。

発表内容の趣旨は以下のようなものです。

理論上(教科書上)、眼球の乱視のほぼ全ては「角膜の乱視」と「水晶体の乱視」の2つの成分で成り立ち、白内障手術では濁った水晶体を除去するために、眼球に残るのは「角膜の乱視」のみであるから、人工レンズの選定の計算には「角膜の乱視」のみ考慮すればよいことになっています。

しかし、実際の医療では少なからず誤差が生じて、計算通り乱視がプラマイナスゼロとなった!ということは、あまりないのです。

例えば、乱視用ではない単終点レンズ(Non-Toric IOL)を挿入した場合、理論上は術後の角膜乱視とレフ値の乱視の軸や大きさは、完全に一致しなくてはいけませんが、そんな人はまずいません。手術で角膜乱視を上手に消して術後の角膜乱視がゼロになっていても、レフ値の乱視はゼロにはならないのです。そして、ここが面白いのですが、そのような術後に残存する乱視の特性(軸の角度・大きさ)は、術前のレフ値に大きく相関するのです。

当院では5年以上前から、その点に目をつけ、白内障手術における乱視のコントロール、眼内レンズの選定・計算に、術前のレフ値も参考係数として利用することで、非常に良好な術後裸眼視力を誇っています。

何故そうなるのか?ということに関しては、まったくの謎で現在の医学では説明できません。角膜後面乱視も含めて検証しても説明できませんでした。網膜面の乱視によるもの、思った以上に他の組織に屈折力がある(硝子体等)、いろいろ考えられますが、今後の検査機器の開発が期待される分野です。

眼科の先生向けですが、参考にしてくれる先生がいて、日本中の患者さんの乱視が少しでも減れば嬉しいです。

*ケラトやトポで、術前の角膜乱視がゼロや、僅かに直乱視でも、術前のレフが倒乱視であれば、耳側切開をしてみてください。もしレフが-2Dなどの比較的大きな倒乱視であれば、思い切って水平方向にToric IOLを挿入してみて下さい。経験と術後データ解析の積み重ねで、術前のトポやレフ等どちらを信頼するのか、そして、空想の乱視をどの程度矯正するのか、徐々に成績がよくなると思います。

*ケラト、トポ、レフなど、測定信頼性が高いものに限ります。角膜乱視の信頼性はTOMEY社の機種に表示されるKAIやKRI、不正乱視の係数が手軽で参考になります。

*まだまだ改善の余地がありますが、当院では一応現時点でのアルゴリズム化ができています。見学希望等あれば医院に直接、またはMRさん等への依頼にてご連絡ください。

*何を言っているんだ。教科書と違う。水晶体を除去するのだから、角膜だけ見てればいいんだ。という先生も沢山いらっしゃると思います。まずは先生方が執刀した症例で術後に倒乱視になってしまったケースを見直してみて下さい。きっと術前のレフは、角膜乱視と乖離して倒乱視になっていたはずですよ。