糖尿病網膜症? 糖尿病

台風ですね・・・。[:強風:]
今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 11件
・網膜硝子体手術 2件
(糖尿病網膜症・黄斑症1件、眼内悪性リンパ腫1件)
本当は糖尿病の方は両眼手術の予定でしたが、途中で咳が止まらなくなってしまい、もう片方は延期に。
今日は医師の患者様の手術もありました。2年ほど前から、眼科医の先輩のご両親などの手術をお任せ頂くことが増えました。みなさん同じように手術をしますが、なんとなく医師の手術はちょっと緊張します。でも、医療のプロの人に認めてもらっていると思うと、ちょっと誇らしくも思えます。

糖尿病(とうにょうびょう)
人間が食事をすると、食物中の栄養分を消化して、ブドウ糖というものを作ります。このブドウ糖を頭の脳ミソから、手足の先まで、血液に乗せて送り届け、それぞれの細胞がエネルギー源としてブドウ糖を使用します。
血液中のブドウ糖を各細胞の中に入れ込む働きをするホルモンで、インスリンというものがあるのですが、なんらかの原因でインスリンが少なくなったり、インスリンが働きが悪くなったりすると、血液中のブドウ糖が、細胞の中に取り込まれずに、血液の中に余ってしまいます。
このような状態を「血糖が高い」、もしくは「糖尿病」と呼びます。

では、糖尿病・血糖が高い(血液中のブドウ糖が多い)と何が悪のでしょう?
実は、血液中の糖分が多いと、血液がドロドロになって、血管が詰まってしまうのです。(医学的には血管の炎症など、いろいろあるのですが、一般に分かりやすい表現で。)
血管が詰まる病気で有名なものは、脳梗塞(脳の血管が詰まる)や、心筋梗塞(心臓の血管が詰まる)などがあります。どちらも、命にかかわる重大な病気で、糖尿病の人は、これらの病気を起こすリスクが数倍に跳ね上がります。実際に糖尿病が原因でなくなる方は、年間に1?2万人もいます。
ただし、脳ミソや心臓の血管というのは、体の中では、比較的大きな太い血管であり、そういった血管が詰まる前に、多くの場合ではもっともっと小さな細い血管が詰まります。
糖尿病で、細い血管が詰まって問題となることが多い場所が3つあって、糖尿病の3大合併症と呼ばれています。

糖尿病の3大合併症
?糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)
?糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)
?糖尿病性神経症(とうにょうびょうしんけいしょう)

?網膜症
目は、眼球自体が非常に小さい臓器ですが、そのなかには非常に細い血管が無数に詰まっています。これが詰まることで、いわゆる眼底出血を起こします。日本人の失明の原因の第2位(年度によっては1位)にあたり、年に3000人以上のかたの視力を奪う重大な合併症です。

?腎症
体中をめぐった血液は、いろいろな臓器に栄養分を運び、逆に老廃物を持ち帰ります。腎臓の血管は、枝分かれして細くなって、最終的に網目状になり(毛細血管)、血液をろ過して、不要な物質を取り除きます。これが最終的に尿(おしっこ)になります。腎臓の血管が詰まると、老廃物を取り除き、尿を作る機能がなくなってしまうので、そのような場合は、人工透析といって数日毎に病院に通って、血液を人工的にキレイにする必要が出てきます。
人工透析を行う理由の第一位が糖尿病性腎症であり、年間1?2万人の人が、新たに透析になっていきます。

?神経症
手足を動かしたり、胃腸を動かしたり、血圧を上げ下げしたり。このような働きを担っているのが神経とよばれる組織です。神経の周りには細かい血管が張り巡らされ、神経に栄養分を与えるのですが、そのような血管が詰まると、神経の働きが悪くなります。手足がしびれたり、便秘になったり、立ちくらみが多くなったり(起立性低血圧)。これも糖尿病でよくみられる症状です。

日本では、糖尿病の患者様は2000万人程度いると推測されており、しかも現在もどんどん増えています。
糖尿病になりにくい生活を送ること、つまりバランスのとれた食生活や、運動、メタボなどに気をつけるのが最も重要ですが、糖尿病の原因は食事のみではありません。なりやすい体質、遺伝子の問題もあったり、他の病気が原因で糖尿病が引き起こされることもあり、糖尿病に絶対にならないと言いきれる人はいないと考えましょう。スリムで、バランスの良い食生活を続けている人も、なることもありうるのだと考えましょう。
少なくとも40歳を過ぎたら、年に1回、難しければ2年に1回でも、人間ドックや定期健診を受けるなどする事で、早期発見につながります。

そして、なにより大事なのが、糖尿病が疑われたらきちんと精密検査を受けましょう。そして、必要があれば、治療を継続して受けましょう。

外来で毎週かならず一人はいるのですが、網膜症で見えにくくなってきた患者様に、糖尿病とは言われてないのですか?と聞くと、「5年前に会社の検診で言われたけど、症状がなかったから放っておいた」と答えたり、「1年くらい治療したけど、何も変わらないから辞めちゃった」と答える方がいます。

血糖が高いこと自体では、普通は症状は何もないのです。(あまりに高いと、尿が近くなったり、のどが乾きやすくなったり、疲れやすくなったりしますが。)
糖尿病で怖いのは、知らぬ間に合併症が進み、症状が出た時には末期、しかももとには戻らない。ということです。
人工透析になったら、一生人工透析です。
失明したら、一生失明です。
少しくらい腎臓の機能が悪くなっても、血液検査・尿検査をしなければ全く分かりませんし、自覚症状はないのです。
目も、かなりの末期になるまで自覚症状が出ないのです。「最近見えにくい」なんて時には、すでに失明するかどうかの治療を相談しなくてはならないことが多々あります。

こうやって書くと、糖尿病は恐ろしい病気だと思ってくれますでしょうか?
そうなんです。怖い病気なんです。
ただし、早期発見をして、きちんと治療を続けていくことで、ほとんどの患者様は失明もしませんし、腎臓も悪くなりませんし、一生涯全く問題なく過ごせるのです。(1型糖尿病といって、非常に悪い糖尿病などでは難しいのですが)
つまり、きちんと通院して、きちんと治療すれば心配のない病気なのです。
問題は、発見が遅れたり、治療を受けなかったり、治療を途中でやめてしまう事です。2000万人の糖尿病の患者様のうち、実は約4割が治療を受けていない。と言われています。

糖尿病の治療は、残念ながら、病気を治してなかったことにする。とか、悪くなった合併症を回復させる。という事はできません。治療をすることによって、体のツライ症状がとれた。よくなった。と思えないと、なかなか満足できずに、治療を中断してしまう事が多いのですが、糖尿病の治療は、良くなるためのものではなく、合併症による症状が起こらなくする予防の治療です。
合併症による症状が出ずに、一生をまっとうできたとなれば、それで治療は大成功です。
患者さん自身の力も大事ですが、内科の先生の力も大切です。よく担当医の先生と相談して、治療を継続することが大事です。目立った症状がなく、外来で「変わりないですね。」と言われるのは、素晴らしいこと、治療がうまくいっているのです。

まとめ
?たまには人間ドックを受けましょう。
?検査で異常値があれば病院にいきましょう。
?治療は、必ず続けましょう。

あたり前の事で、偉そうに書いていますが、実際は難しいんですよね。
僕もドックなんて受けていませんし、実際に仕事を休んで病院にかかれるかと言うと・・・。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

糖尿病登録医制度

昨日、準緊急で両眼の手術をした患者様も、今朝は「よく見える!」とのことで一安心です。ご家族も、場合によっては・・・。と、少し諦めていたようですが、思ったより、いい結果で大満足です。後日結果報告をします。

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 11件
・外斜視手術 1件
・緑内障手術 2件
・網膜硝子体手術 2件(糖尿病黄斑浮腫)
問題なく終わりました。
結構、手術が多かったのですが、終わってみると5時半定時。
準備からなにから、スタッフが優秀で、本当に助かります[:拍手:]

時間が取れたので、夜は地域の別の病院で行われた、茨城県の糖尿病登録医制度の講習会に行ってきました。
糖尿病の治療で、一般のかかりつけの先生や、糖尿病専門医の役割、治療法などについて、茨城県の医師のレベルを統一化(底上げ;マニュアル化?)しようとする目的があるようです。本来は内科の先生が多くとられる資格のようですが、糖尿病網膜症は眼科の中でもかなり重大な病気であり、僕は糖尿病網膜症の手術目的で紹介して頂くことが非常に多いので、内科の事も出来るだけ知っておきたいと、参加してみました。

勉強になったことです。

?昨年から「DPP-4 阻害薬」という、新しい糖尿病のお薬が発売され、話題になっており、それなりには把握しておりましたが、薬についての特性や副作用について、キチンと理解することができました。DPP-4 阻害薬にも、いくつか種類があるのですが、腎臓や肝臓の機能によって使い分けなくてはいけないようです。

?ビグアナイド系糖尿病薬(メトホルミン塩酸塩)を内服している患者様にヨードを使用した造影検査は、リスクがある!!
放射能で話題になった、ヨードですが、実は医学ではCT検査などでよくつかわれます。眼科でも糖尿病の患者様などで、蛍光眼底造影検査といって、毎週行う検査なのですが、恥ずかしながら、そのような知識はありませんでした。
糖尿病の方が血糖を下げるために、内服するビグアナイド系糖尿病薬には、稀ですが、乳酸アシドーシスという重大な合併症(副作用)が起こることがあります。造影剤に使うヨードとの関係で、腎臓に負担がかかると、乳酸アシドーシスが起こりやすくなるために、検査の前48時間程度は内服を中止したり、検査後も48時間程度は薬を飲まない方がよい。というのが、欧米ではすでにガイドライン化しているようです。
これまで、幸いにも僕の患者様で、乳酸アシドーシスは起こらなかったのですが、リスクは出来るだけ避けなければなりません。今後は絶対に注意しなくては。
それなりに、眼科だけでなく、新しい医学も勉強しているつもりでしたが、とても恥ずかしいです[:冷や汗:]
ビックリして、終了後に、知り合いの眼科医2名に電話をしてみたのですが、二人とも知らなかったと。眼科医の人はどれくらい知っているのだろう。もし知らなかった人が沢山いたら、このブログを読んでくれたら幸いです。
眼科のみなさん知ってました??

?血糖コンロトールは、意外と厳しい!
血糖コントロールがうまくいっているかの指標にHbA1cという値があります。
通常は5%とか、血糖がまずまずの人はは6%、7とか8%になってくると悪い人。といった具合です。(妊婦や高齢者など、各々の患者様によって、目標とする血糖値は異なります。)
ただ、僕が網膜症の手術をする人たちの多くは、8%とか9%なんていうのが、しょっちゅうで、なかには12%とか、ビックリするような人もいいっぱいいます。
網膜症で外来に来る人は、みなさん血糖が高いので、、8%とか9%とか位だと、いつの間にか慣れてしまって、「まぁ、少し高めですね。内科の先生とよく相談しましょう」とか、7%では「頑張ってますね!」なんて言ってしまうことがあります。
今日の講習会で再確認したのですが、どんなに高齢者でも、状態が悪くても、8%はコントロール不良!!絶対ダメな値だということです。学生自体に覚えたことですが、10年も経つと忘れてしまいます。「血糖が高い。もっと頑張れ!」なかなか言いにくいのですが、最終的には、そう言ったほうが患者様のためなのでしょうか?難しい問題です。
それと、妊婦さんの糖尿病の値は正常値、5%にしないといけないそうです。1型といって、若く発症する糖尿ではとっても難しい目標です。先日8%なんて人がいましたが、目が悪くならないといいのだけど。

実は講習会は来週もあって、次も参加しないと資格は取れないのですが、来週のテキストには、糖尿病網膜症に関して、眼科の事が書いてありました。
ちょっと予習してしまったのですが、眼科の分野の記載は非常に微妙です・・・[:撃沈:]
10年前の医学生の教科書?といったレベルで、残念ながら手術の適応などは現在の眼科医学とはかけ離れています。テキストからすると、まさに今日手術をした人は適応にならないようで・・・。
内科の先生をメインの対象として作られたからでしょうが、糖尿病を専攻する医師向けなのでしょうから、もう少し頑張ってみてもよかったのでは??なんて、ちょっと偉そうですが。

血糖コントロールは内科的な仕事、合併症の網膜症は眼科の仕事。でも、
眼科医だって、ある程度は内科の知識が必要です。
内科医だって、ある程度は眼科の知識があった方がと思います。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)

糖尿病網膜症

近隣ではガソリンの供給が進んで、あまり待たずに入れられるようになりました。ただし、今日からは水がまったく売ってません。昨日の汚染のニュースの影響でしょうが・・・。当方は買占めはやらないぞ!っと。

山王台病院では被災地域の患者様の透析などを受け入れています。
人工透析の原因として、糖尿病腎症がもっとも多いのですが、このような患者様は目の合併症も起こしていることが多くあります。

糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)
糖尿病があると、血液がドロドロになったり、血管に炎症が起こったりして、とにかく血管が詰まります。
末期では脳梗塞とか心筋梗塞とかになりますが、その前に細い血管だらけの組織、目や腎臓などの障害が始まります。

目の中の網膜と呼ばれる組織(カメラでいうとフィルムの役割)には、たくさんの血管がありますが、網膜の血管が高度に詰まってくると、網膜が血液(酸素)をほしがって、新しい血管が出現します。(新生血管)
新生血管により、血流が回復すればいいことなのですが、そう上手くはいかず、残念ながら新生血管は出来損ないが多く、非常にもろい血管で、すぐに破れる等して大出血にいたります。(硝子体出血)
出血が重度で長引いた場合には、目の中にカサブタ(増殖膜)を形成しますが、このカサブタが引きつれを起こすと、網膜がグシャグシャになって失明していきます。
糖尿病網膜症によって、残念ながら年間数千人の方が失明し、日本の失明の原因の第1位または2位となっています。

上の写真は本日こられた、被災地域の52歳男性の患者様です。
両眼ともに視力は0.01で、写真のように目の中は血みどろといった具合です。出血の奥にはカサブタ(増殖膜)が覆いつくしており、早急に手術が必要です。
下の写真は、数日前にこられた38歳男性の写真です。こちらはまだカサブタにはなっていませんが、次回の診察で出血が減らないようであれば、早めに手術を行い、運転免許を残したいと思います。
当院は6月まで手術予定がいっぱいですが、このような手術は何ヶ月も待つわけには行きませんので、週末を利用して治療を行いたいと思います。

糖尿病網膜症は、早期からのきちんとした通院、定期検査を行い、必要に応じてレーザー治療などを受ければ、現代の医学では失明するといったことは殆ど起こりません。
「まだ見えてるから検査はいい。」ではなくて、見えなくなる前からの通院がとても重要になります。


白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)