錐体ジストロフィー

金曜日の午後は特殊外来です。視野検査や蛍光造影検査以外に以下のような治療を行いました。

・鼻涙管閉塞症(涙目)に対するNS-チューブ 1件
・網膜光凝固術(レーザー治療)5件
 (糖尿病網膜症4件、網膜中心動脈分枝閉塞症1件) 
・後発白内障手術(YAGレーザー)1件
・トリアムシノロン注射 1件(静脈閉塞の黄斑浮腫)
・アバスチン注射 2件(糖尿病黄斑症)
・ルセンティス注射 2件(加齢黄斑変性症)

錐体ジストロフィー(すいたいじすとろふぃー)
昨日、網膜色素変性症(杆体錐体ジストロフィー)について記載したのですが、本日、さらに稀な錐体ジストロフィーの診断をしました。僕は珍しい疾患や重度な疾患を担当することが比較的多い方だと思いますが、錐体ジストロフィーを診断するのは、年に2?3名程度です。

網膜の視細胞には、明るさや周辺視野を担当する杆体(かんたい)、中心視野や視力、色覚などを担当する錐体(すいたい)があります。
網膜色素変性症では杆体から障害されることが多いのですが、錐体ジストロフィーでは逆に錐体を中心に機能が低下します。中心部の視野・視力・色覚が失われていきますので、自覚症状も非常に強く、日常生活での不自由がとても大きな疾患です。やはり、治療法は確立されておらず、経過観察やロービジョンケアでの対応となります。

本日の患者様は50代男性の患者様です。
中心部の障害が強いため、視力は眼鏡をかけても両眼0.1程度と不良です。
石原式色覚検査(昔、学校の検診で良く使われたやつです。みたことあるでしょうか?)では、全てのページが解読不可能でした。


昨日の写真では、周辺部の網膜に変化が強かったですが、本日は黄斑(写真の中心よりやや右下の部分;物をみる中心の網膜です)付近の網膜に異常があります。まだらで、ざらざらとした印象が分かるでしょうか?


造影検査での写真では、弱くなった部位が白くうつりますが、やはり中心部の網膜に異常を認めます。


視野検査です。中心部の視野が欠損したり見えにくくなっています。網膜色素変性症では、中心視野が最後まで残りやすく、運転免許証更新の問題は末期になるまでないのですが、錐体ジストロフィーでは中心部から見えにくくなり、視力が低下するために、免許証の更新がかなり早期から難しくなります。


網膜電図(ERG)です。bright flashといって杆体の機能を強く表す検査の方法です。網膜色素変性症ではこの検査がまっ平らになるのが特徴です。今回は杆体の機能はそれなりにあります。(波形あり)


同じくERGです。30Hz flickerと言って、錐体の機能を強く表す測定法ですが、今回の錐体ジストロフィーでは波形が平らになってしまっています。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)

網膜色素変性症

今日は午前が小美玉、午後がクリニックです。普段は午後の外来は比較的すいているのですが、今日は午後だけで40名以上と、ちょっと疲れました・・・。

網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)
(杆体錐体ジストロフィー)

網膜色素変性症は目の中のカメラでいえばフィルムに相当する網膜という膜に異常をきたす病気です。網膜は目の中に入ってきた光を、電気などの神経の刺激に変換する働きをしています。網膜と言っても、様々な種類の細胞から成り立っているのですが、光を感じ取るに最も重要な視細胞や、色素上皮細胞(視細胞を栄養する働き等があり、眼底写真のオレンジ色は色素上皮細胞によります)を、特に障害します。

疫学
日本では数千人に1名の有病率とされていますが、大人になってから失明する(中途失明)の3大原因の一つとなっています。

原因・遺伝
遺伝子の異常によって起こされる疾患であり、病気の原因となる数種類の遺伝子が見つかっていますが、まだまだ原因の分かっていない遺伝子・症例の方が大多数であり、原因不明と評されることが多くあります。
両親や祖父祖母などから遺伝する場合が約半数とされ、残りの半数は家族内に同じ病気の人がいない、弧発例といって明らかな遺伝ではない症例とされています。

症状
初期には暗い所で見えずらい。などの症状が有名です。(夜盲、鳥目)
網膜の視細胞には、杆体と錐体と呼ばれる2種類の細胞があります。杆体は視野の周辺部を担当する部位に多く存在し、明るさなどの感覚を主に担当します。錐体は視野の中心部を担当する部位に多く存在し、細かい視力や色覚などを主に担当します。
網膜色素変性症(杆体錐体ジストロフィー)は、杆体・錐体の両方とも侵す疾患ですが、とくに杆体を中心に障害することが多く、暗いところでの見え方が悪くなることで有名です。
一般的には、杆体は周辺部の視野を担当しているために、周辺の視野が狭くなり(求心性視野狭窄)、徐々に中央部に迫って、全ての杆体錐体が侵された場合に失明となります。
(病状や、遺伝の形式も多種多様で、中心から見えなくなる方など、症状にもかなり個人差があります。)

予後
基本的には進行性の病気です。非常に早く進行し数年で失明に至る症例もおりますが、ほとんどの症例はとてもゆっくりと進行します。失明に至るのは病気を発症した人のうち0.5%(200名1人)と報告されていますので、過度に失明を心配する必要はありません。

治療法
残念ながら現在の医学では治療法は見つかっていません。研究段階では遺伝子治療や、人工網膜などによる治療の報告があり、近年は実際に人体への治療を開始したグループもあります。将来的には治療可能な疾患となる日が来るものと信じています。

ロービジョンケア
回復させることは困難ですが、眩しさを軽減するために遮光眼鏡を使用したり、視野が狭くなった場合に残った視野を少しでも有効に使用するための特殊機器を使用することがあります。
2011.05.09のブログ「ロービジョンケア」もご参照ください。
日光などの強い光は、網膜色素変性症を悪化させる原因の一つと言われています。あまり晴れている日の外出時には、つばのある帽子をかぶったり、サングラスを使用することも重要です。(紫外線や青色の光が悪化させるとの認識が多いですが、それ以外の波長の光も悪化の原因になるとの報告もあり、あまりに明るい電球なども見つめない方がよいでしょう。)

特定疾患(難病)・視覚障害
特定疾患とは、国が決めた難病のうち、申請・登録することで医療費の扶助が受けられるなどの疾患です。医師の書いた診断書を保健所に申請することが必要です。病気のデータを集めることで、病気の解明や治療法の開発にも役立ちます。
また、症例によっては視覚障害に該当する場合には、申請することで、等級によってですが、様々な補助が受けられるようになります。


これは、普通の方の眼底写真と、蛍光眼底造影検査になります。



これは、先日当院で診断した40代男性の患者様になります。網膜のオレンジ色が全体として灰色のように薄くなり、ところどころ黒い斑点を認めます。網膜の血管が細くなっているのも特徴的な所見です。中心部の方がオレンジ色がしっかりしているのは、周辺部の杆体に比べて、中心部の錐体と呼ばれる細胞の方がまだ元気だからです。


同じ患者様の視野検査です。中心部(錐体)はまだ侵されていないため、視力は1.0異常と良好です。周辺部の杆体がリング状に侵されており、その部位が見えなくなっているために、リング状に視野が欠けています(青く塗りつぶした部分が見えない)。運転や歩行などには注意する必要があります。


同じ人の網膜電図(ERG)と呼ばれる検査結果です。ERGは簡単にいうと脳波のようなものです。光刺激を与えると元気な網膜には大きな電気が流れ、波形が動きますが、元気のない網膜では電気の発生が弱く、波形が平坦となります。網膜色素変性症では、発症早期からERGの波形が平坦化することが知られており、診断に重要な検査です。(脳波が平坦な場合は脳死になります)

こういう治療法が見つかっていない病気であることを、患者様に伝えるのはちょっと厳しいです。遺伝子の問題はご本人には何の責任もありません。早く治療が可能な時代が来るといいのですが。

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学校健診 弱視

今日の午前の外来はちょうど50名で、もう終わってしまいました。
午後からは手術が9件で以下の予定です。
・白内障手術 6件(上方切開2,耳側2,斜方2,乱視レンズ2)
・緑内障手術(トラベクレクトミー)1件
・翼状片手術 2件

条例などで、春になると学校健診で視力検査が行われます。
当院は、手術目的の方が多く、やや高齢の患者様が多い病院なのですが、今週は子供さんに沢山受診して頂いています。月曜日は80名の外来のうち、10名以上がお子様の視力検査でした。

屈折性弱視(くっせつせいじゃくし)
弱視とは視力が上手に発達しなかったために、大人になって、眼鏡をかけても視力が出ない状態を言います。先天性の白内障や網膜の病気など、重篤な病気が原因のことも稀にはありますが、斜視や、屈折性弱視と呼ばれるものが大多数の原因を占めています。

近視や遠視、乱視などを屈折異常と呼びます。大人になって屈折異常があっても、眼鏡やコンタクトレンズを使用することで、ほとんどの方は問題ない視力が得られます。そのような方は、小さい頃には屈折異常がなかったか、あっても軽いものであったと推測できます。

実は、生まれたばかりの赤ちゃんは、明るいか暗いかぐらいしか分かりません。その後、きちんと物が見える状態を保つことで、0.01から1.0以上に向かって視力がどんどん伸びていきます。4?5歳くらいになるとほとんどの子が1.0以上の視力を獲得します。
このように視力が発達するためには、網膜に鮮明な映像をあわせることが必要です。
多くのお子さんは、屈折異常がない、またはあっても軽度なものなので、何もしなくても視力が勝手に発達しますが、子供の時から、強い遠視や乱視などの屈折異常がある場合には、ぼやけた映像したしか目の奥に届かないため、網膜や視神経、その後の脳神経なども、ぼやけた映像を理解・処理できる程度までにしか発達しません。このような場合を屈折性弱視と呼びます。

視力が伸びる・発達するのは6?7歳程度までと言われており、その時点で眼鏡をかけても1.0が見えない場合は、一生涯眼鏡をかけても1.0見えないということになります。つまり弱視です。

もし、強い屈折異常がみつかれば、子供のころに網膜にピントを合わせるような眼鏡をかけることで弱視を回避、視力を育てることができます。
重度の弱視は3歳児検診で引っかかることが多く、その場合、6?7歳までの3?4年という長い治療期間が確保できます。軽度や中程度の弱視は入学前検診で引っかかることが多いですが、やはり1?2年の治療期間が持てるため、この2つの検診で引っかかった場合、現在の医学ではほとんどの屈折性弱視を治療することが可能になっています。

実はこの1週間以内で、学校健診で視力低下を指摘され初診となったうち、7?9歳のお子様3名が屈折性弱視でした。もちろん治療は行ってはみますが、すでに視力が発達する限界の時期(臨界期)を超えているのであれば、残念ながら視力の改善は期待できません。
良く勘違いされてしまうのですが、弱視は眼鏡をかけても見えないのです
例えば、眼鏡をかけても0.7が見えないのであれば、一生涯運転免許は取れないということです。
その3名は、みさなん、3歳児検診や入学前検診で異常を指摘されたのに、それぞれ理由はあるのでしょうが、眼科にはかかって頂けなかったようです。

お子さんに、「君は運転はできない可能性が高い。こういう職業はあきらめましょう」と伝えるのはとても辛いです。屈折性弱視は治せる病気です。検診で異常を指摘されたら必ず受診するようにしましょう。

学校健診の紙なども、「視力が不良です。眼科の専門医の診察をお勧めします。」などとしか書かれていないものが多いですが、「将来、運転免許証が取得できない可能性があります。診察をお勧めします。」とかに変えた方が、リアリティーがあって受診してくれる親御さんが増えそうですが、どうだろう。

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眼内レンズ交換

今日は小美玉市医療センターで手術でした。
・白内障手術 7件
・眼内レンズ交換 1件

眼内レンズ交換は、実は先月、白内障手術を施行させて頂いた70代女性の患者様です。
手術後の見え方は、遠くの見え方を優先させたいとのことで、-0.5Dという度数(2m程度で一番ピントがあう)を狙って手術を行いました。ところが手術後の結果は-1.5Dと、思ったより近視の状態となってしまい、70cm程度にピントがあってしまいました。

手術自体は全く問題なく終わり、乱視はほぼゼロにすることができ、近方視力は良好で裸眼で新聞も読めます。遠方5mの視力は裸眼で0.4、-1.5Dの眼鏡で1.0以上とまずまずとも思いますが、テレビがぼんやりするとの訴えが強く、本日入れ替えを行わせていただきました。
少しピントが遠くになりますので、裸眼での読書は少し難しくなりますが、離れたテレビはより見えるようになるかと。

近年は、眼球の形状などを測定する器械の制度が向上し、当院でも最新型の器機で対応しているため、多くの患者様が一度の手術で裸眼の視力に満足いただけるようになっています。
ただし、どうしても目の形には個人差があり、予測していた度数と、実際の度数がずれてしまい、レンズの入れ替えが必要になる患者様がごく稀にいらっしゃいます。このような患者様が少しでも少なくなるよう、日々精進していきたいと思います。

また、あまりに白内障が進んでしまうと、手術でのレンズの誤差が大きくなりますので、そういった意味では、それなりの時期に(そう遅くならないうちに)手術をするというのもいいのかもしれません。

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ベーカリー アップルアップル

今日のお昼は5名の患者様に手術を行いました。
・白内障手術 7件

当院では白内障手術時の乱視軽減に力を入れています。(遠視・近視ももちろんですが)
http://www.sannoudai.or.jp/clinic/ope.html
今日の手術時の切開は、横から3件(耳側切開)、上から3件(上方切開)、斜めから1件(斜方切開)1件でした。
また、乱視用レンズ(トーリックレンズ)使用が3件でした。
視力や乱視は明日測定ですが、楽しみです。

今回の石岡市の紹介です。

ベーカリー アップルアップル
月曜日や水曜日の手術の前、お昼ごはんで毎週利用しています。
焼き立てのパンがおいしいです[:パン:]
僕は、ミルクフランスと、夕張メロンパン、カレーパン、海老カツバーガー?(名前違うかも)を良く食べます。


といっても、実は同じ敷地内にあるパン屋さんです。←宣伝か??
みなさんも外来にきたときには是非食べてみて下さいね!
パンってどうやってつくるのだろう。今度新メニュ作成とかに参加したいな。

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学会

今回の学会では、普段の診療内容に大きな変化がでるような新しい知識はありませんでした。
以前、OCTと呼ばれる新しい検査の器械が出てきたときや、アバスチンやルセンティスといった薬が出てきたときは、学会場でビックリするようなこともありましたが、最近は大きな新しい変化というものは出てきてはいないようです。

緑内障点眼薬の配合剤(2つの点眼薬を混合したもの;点眼回数を減らせるメリット)は、きちんとした効果があった。との報告が多かったですが、当院でも、ほとんどの患者様がすでに配合剤に変更しております。

乱視用レンズの報告もありましたが、すでに行っています。

他に、最近の硝子体手術は25Gという小さな機械で行うために、傷口を縫わないのですが、傷口からバイ菌が入りやすいとも言われるようになり、手術中に消毒剤をかけるなどの方法で感染のリスクを減らせるとの報告もありました。以前にもご発表されたグループの先生で、当院でも参考にさせて頂き、現在は硝子体はもちろん、白内障手術でも実践しています。今回はきちんとしたデータとして有効であったとのことで、やってて良かったなと。今後も是非続けさせて頂きたいと思います。

また、白内障の手術で、傷を1つ作成する方法と、2つ作成する方法があるのですが、1つの方が術後の惹起乱視が少ないとの報告もありました。当院でも90%以上の患者様で1つの傷での手術(プレチョップ法)を行っていますが、やはりデータとしてみると満足します。(白内障が高度の場合は、カウンタープレチョップ法やフェイコチョップ法と呼ばれる2つの傷で行っています。)
当院でも、データをとって報告していきたいと思いますあ、何しろ忙しく・・・。来年?再来年などに、医師が2名体制になったら積極的に参加したいなと。

硝子体手術の器械で非常に優れた新しいものがそのうち発売になるようです。
最新の器械での手術の方が患者様にも有益と。
とっても高いのですが、とっても欲しいです[:びっくり:]
おねだりしよう。

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学会中です。

午前中の外来後、今日も学会に来ています。
車で東京国際フォーラムに来ていますが、片道1時間くらい。
渋滞さえなければ、車の方が早いようです。

震災の関係でしょうか?今年は学会場に人が少ないようです。
眼科以外の多くの医学学会総会が自粛中止とあったくらいなので、仕方ないのかも。

大学の同級生が横浜の大学病院系列で働いているのですが、偶然みつけて、
ちょっとお茶をしました。元気で頑張っているようで良かったです[:嬉しい:]
半年前の学会でもあって、いつか一緒にホノルルマラソンに出ようと約束していたのですが、僕はまったく練習していなくて・・・。帰ったら頑張ろう[:ジョギング:]

日本眼科学会総会

5/12?5/15までの4日間は、東京国際フォーラムで日本眼科学会の総会が行われています。
僕も本日の午後より参加となっております。一部の外来予約をお断りさせていただいておりますが、ご了承ください。学会で新しい知識を身につけて、少しでもよい医療を皆様に還元できるよう学びたいと思います。

かかりつけの患者様などで、急に見えなくなったなど、緊急性の高い症状がある場合は、まずはお電話にてご連絡ください。可能な限り戻って診療いたします。

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ジェネリック医薬品(後発医薬品)

ジェネリック医薬品という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ある製薬会社が薬品を開発し、その薬の成分自体の物質特許を取得した場合、その後の10年間は他の会社は同様の薬を販売することが難しくなります。はじめに作った会社の薬を先発品と呼びます。

10年が経ち、特許が切れた場合に、他の製薬会社が同様の成分の薬を製造し、販売することがありますが、この、あとから発売される薬のことをジェネリック医薬品(後発医薬品)と呼びます。

ジェネリック医薬品の最大のメリット(良い点)は価格が安いことです。
薬を開発し、認可されるためには、研究開発費・動物実験・臨床治験など様々なコストや時間がかかりますが、ジェネリック医薬品はこれらの多くを省くことができるために、安い値段で製造・発売が可能になるからです。

こんなご時勢ですので、医療費の削減は国家としても重要なことです。使い方によってはジェネリック医薬品を選択することは、とてもよいことだと思います。ただし、なんでもジェネリックにすればよいというものではなく、特に点眼薬に関して注意するべき点を記載します。

?ジェネリックは全てが同じ薬ではありません
薬の特許には、薬の成分自体の物質特許以外にも製法特許や製造特許というものがあります。薬の成分・物質自体を溶液(お水)にどのように溶かすか、どのような溶液に溶かすかなどにも特許はあります。基本的には薬の成分自体が同じであれば、それは同じ薬(ジェネリック)として認められます。
多くの点眼薬には防腐剤(薬が傷まない・腐らないようにする添加物)などが含まれていますが、近年、防腐剤による角膜障害などの副作用の報告が数多くなされています。防腐剤にアレルギーがある方もいらっしゃいます。薬の成分自体が同じであれば、防腐剤の種類や濃度に違いがあっても、ジェネリックとして販売が可能なのです。

また、効果に関してですが、基本的に統計学上で±15%程度の効果があれば同等の薬として認められる事となっています。15%を大きいと思うか、小さいと思うかは、人それぞれだと思いますが全く同じと表現するのはどうでしょうか。多くの先発品は数多くの、そして長期間の検査をクリアしてやっと販売許可が下ります。臨床治験や市販後調査など、数千、数万、数十万人という莫大なデータを取得・調査する必要があります。
一方、薬によってですが、ジェネリックの調査は先発品との効果が同等かどうかを数十例とか、数百例集めるだけで認可される場合もあり、データの信頼性といった点でも全く同じという訳にはいかないと考えられます。溶かし方や、添加物が違えば、目の中にきちんと到達する薬の量が異なることも容易に推測できます。

?ジェネリック医薬品を選択したことを医師に伝えましょう!
決してジェネリックを批判している訳ではありません。
薬の費用が安いことは、患者様の経済的な負担が減りますし、国の財政としてもとても大きなメリットがあります。
僕も白内障手術などで使う粘弾性物質と呼ばれる薬などはジェネリックを使用しています。(人工のレンズを入れる場合に滑りを良くするのに使う薬です。レンズを入れた後は目の中を洗浄するために眼内には残りません)
また、ドライアイに使用するヒアルロン酸製剤と呼ばれる薬では、付け心地がよいとの評判で、一部の患者様には始めからティアバランスと呼ばれるジェネリック医薬品の目薬を処方することもあります。(目薬には相性がり、全員にいいと言っているわけではありません)

開業医様などで薬を院内で処方する場合には、その医師が安全性などについて検討した結果で、採用・処方しているのだと思いますのが、現在、多くの病院では院外処方といって、処方箋を発行し、あとは患者様が好きな薬局で薬を購入することになっています。多くの医師は先発品をイメージして薬の処方箋を出しますが、患者様が薬局でジェネリックに変えたことは医師には伝わらないこともあります。

上述したように、ジェネリック医薬品は薬を溶かすお水や、防腐剤の種類、濃度など、全てが一緒ではありません。点眼薬では、このような違いによって、点眼後の刺激感(しみる)や、防腐剤に対するアレルギーなどにも違いが起こることがあります。
また、緑内障では眼圧を1とか2とか、非常に微妙なラインでコントロールすることもあり、15%という効果の値の差でも、医師の考える治療法に影響することがあります。

ジェネリック医薬品を選択されること自体には問題はありませんが、一度、医師にお伝え頂けると良いと考えます。

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点眼薬(目薬)について

今日は8名の患者様の手術を行いました。
・白内障手術 8件
・眼瞼下垂症手術 2件
・眼内レンズ交換 1件

レンズ交換は、数年前に他院様で縫いつけたレンズが脱臼して(ズレて)しまい、古いレンズを切断し摘出してから、新しいレンズを縫いつける手術で30分以上と少し時間がかかりました。

今日は点眼薬(目薬)の使用法について記載します。

点眼薬

点眼薬は、みなさんご存じのとおり、目の中に入れるお薬です。
基本的に液体で、容器から薬を押し出して、目の中に入れます。
(最近は目の中に留まる時間を長くするために、ゲル状の薬などもありますが)

?点眼の仕方
一般的には、片手で点眼容器を持ち、反対の手で、下まぶたを引っ張ります(アッカンベー)。そこに、液体を1滴垂らします。
ただし、手術直後などの特殊な時期を除いて、目の中に入りさえすればやり方は何でも大丈夫です。親指と人さし指でまぶたを大きく開いて行う方や、点眼容器に取り付けてまぶたを開く器械(薬局や100円ショップなどにあります)を使う方など様々です。

?点眼の量
1回1滴で十分です。それ以上使用しても、まぶたの外に溢れてしまうだけです。まぶたに点眼薬がついたままにしておくと、皮膚がただれるなどの副作用が起こることがあります。沢山つけるほど良く効くという事は全くありません。

?点眼後
もっとも良い効果を出したい場合は、点眼後に目がしらを指で数分押えて、目をつぶっています。こうすることで、薬液が目の中に留まる時間が長くなります。ただし、そのような事をしなくても、それほど効果が落ちるわけではありませんので、あまり気にしなくても良いかと思います。(緑内障など、そのようにした方がよいと言われている方は守って下さい。)

?複数の点眼薬を使用する場合
目の表面で薬液が混ざると、組み合わせによっては結晶という塊が出来てしまったり、また、後から付けた薬で、前の薬が流されてしまうために、効果が出にくくなってしまう事があります。
複数の点眼薬を使用する場合は、点眼後に5分から10分程度の間をあけて、次の点眼薬を使用するようにしましょう。間をあけることで、先につけた点眼薬が完全に吸収されてから、次の点眼薬を投与することができます。
最後につける薬の方が、最終的に目の中に残るため、点眼の順番は大事なものほど後にするとよいでしょう。
その他、液状の薬⇒懸濁液⇒ゲル製剤などの順番でつける方が良いとされていますが、ある程度の時間をあけていれば、順番はそれほど気にしなくて大丈夫です。(緑内障などで、精密な指示を受けている場合は、守るようにしましょう)

?点眼薬の保存方法
一番大事なのは、ほとんどの点眼薬は、開封後1カ月で処分することです。食べ物には保存料と呼ばれる添加物が入ることで、賞味期限を調節しています。ほとんどの点眼薬にも防腐剤という添加物が入っており、ある程度の期間は腐らないように(菌が繁殖しないように)なっていますが、1ヶ月以上は保障されていません(すべてが1ヶ月ではなく、一部、防腐剤がはいっておらず1回使い切りなどの点眼薬もあります)。また、点眼薬は温度や、酸化(開封後に酸素と触れあう)、光線などによって、効力がなくなっていきます。開封後、長期間過ぎたものは、効力がないうえに、もしも内部で菌が繁殖していた場合には感染症の原因となってしまうことさえあります。賞味期限切れの牛乳は飲みたくないですよね?目薬だって同じです。古くなった点眼薬は使用しない。気をつけましょう。
また、薬の種類によっては冷蔵庫で保管するものや、遮光の袋に入れて光を当てないようにする必要があります。そのように言われた薬は、保管方法を守るようにしましょう。

?自分の薬は自分だけのもの
家族内に結膜炎の方がおり、同じメヤニだから、同じ薬を使ってしまおう!という方がいらっしゃいます。点眼容器についた菌をうつし合ったりする原因となるので絶対にやめましょう。また、点眼薬との相性が悪く、万が一副作用が起こった場合に、保障などが受けられなくなる可能性もあります。

?調子が悪かったら、医師に相談を!
点眼薬に限った事ではありませんが、相性の問題などで薬に対してアレルギーがある場合や、残念ながら薬の副作用が出てしまう場合もあります。また、例えば感染性の結膜炎で、細菌を倒すために抗生剤の薬を出しても、菌の種類によっては薬が効きにくいなどで、なかなか治らないこともあります。
薬をつけてるのに治らない、悪化する。このような場合は必ず医師に教えて下さい。薬を勝手にやめたり、通院しなくなってしまうのはもったいないです。医師は治らなかった場合に、次に行う治療を必ず考えていますので。
また、「薬をつけるとしみる」などの理由で、勝手に点眼薬を中断してしまう方がいらっしゃいますが、特に緑内障などでは、少しくらいしみることがあっても、失明を防ぐためには仕方ない。というのがあります。あまりに辛い場合には、点眼薬の種類を変えたり、別の治療を相談することができます。勝手に薬を辞める前に必ず医師に相談してください。

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