ボツリヌス療法 (ボトックス注射)

今日は、以下の手術を行いました。
・白内障手術 14件
・網膜硝子体手術(茎離断) 2件(黄斑円孔1例、糖尿病網膜症1例)
・水晶体亜脱臼に対する硝子体切除、眼内レンズ縫着 1例
みなさん無事に終わっています。
この間から、新しい手術装置での手術に切り替わっているのですが、ビックリするくらいの性能で、よい成績が期待でき、手術が楽しいです[:グッド:]
(コンステレーション ビジョンシステム;2011.12.08 Thursday
;http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4995)
ただ、器械を使う前の準備が今まで以上に大変で、手術患者様の入れ替えに時間がかかり、今日はスタッフ全員が少し残業になってしまいました。みなさん、ごめんなさい。だんだん慣れてくるかと思うのですが・・・。

さて、今日は一昨日、昨日と記載した、「片側顔面痙攣」「眼瞼痙攣」で記載した、ボツリヌス療法についてです。

ボツリヌス療法(ボトックス注射)

自然界にはボツリヌス菌という菌がいまして、その菌は、ボツリヌス毒素という筋肉を麻痺させる毒素を作り出します。ボツリヌス菌は、土の中にいることが多く、調理の途中で食べ物を落としてしまい、それを食べてしまった場合に、食中毒を起こしてしまった場合や、怪我をした傷口から毒素が入ってしまった場合に問題を起こします。
体の中に入ったボツリヌス毒素によって、体中の筋肉が麻痺してしまうと、手足が麻痺したり、離せなくなったり、重症の場合には呼吸が止まってしまうため、命にかかわる食中毒です。
ハチミツの中にも毒素が混入している場合があり、1歳未満の子供にハチミツを食べさせていけない。というのはボツリヌスのせいなのですが、ご存知でしたか?

このボツリヌス毒素の一種を、医学の治療に用いるのですが、その薬の名前が「ボトックス」になります。
眼科では、「片側顔面痙攣」「眼瞼痙攣」に使用するのですが、自分の意思に反して、勝手にピクピクと痙攣してしまう筋肉(表情筋や眼輪筋)に、直接注射をして、麻痺させてしまう治療です。
病気の大もとは、脳や、脳から筋肉に信号を伝える顔面神経になりますが、脳や神経を直接治療する訳ではなく、脳や神経の状態はそのままで、最後の筋肉の動きだけを止めるという、対症療法と呼ばれる治療法です(根治ではなく、症状を和らげるだけ)。

実際の治療

?申し込み
ボトックスは、劇薬・毒物にあたり、法律で使用方法が定められています。病院に在庫を保管してはいけない薬のため、治療をする1週間程度前に申し込みをしていただき、その後に治療する病院に薬が配達されます。

?同意書
定められた書類に同意書を頂く必要があります。

?麻酔
注射が痛いので、注射の前に顔を冷やすなどして、少しでも痛みを減らします。当院では、ペンレステープという麻酔のシールを、顔の注射部位に30分?1時間程度張ってから、注射をしています。

?注射
アルコール消毒後に、片目の周りに5?6箇所、眼輪筋という目を閉じる筋肉に少量づつ注射をします。(専門的には1部位に何単位などと決まっています。)
片側顔面痙攣では、頬や、口周りなどの、ヒキツレを起こす筋肉に注射をします。

当院では、30G針という、もっとも細い針での注射を行っています。
横にあるのは、麻酔のペンレステープです。

?安静
当日のみ、入浴や洗顔を控えます。
また、注射部位を押したり、もんだりしないようにします。
(薬が広がって、狙った筋肉以外に作用すると困るため)

?効果
・2?3日程度で効果が現れ始めます。
・1週?1ヶ月程度で、効果が安定します。
・その後、3?4ヶ月程度で、効果がなくなっていきます。

?再治療
効果がなくなったころに、再度注射を行います。根治術ではないので、基本的には効果がなくなったら、繰り返し注射をする必要があります。(治療はご希望の場合のみ行い、もちろん継続治療の希望がなければ、中止も可能です。)
1回目の治療を参考にして、効果が強すぎたり、弱かったりした場合には、次の治療で、薬の量を減らしたり、増やしたりして調節をしていきます。

当院では、実際には、
注射
⇒1週間後に副作用のチェックの診察
⇒1ヶ月後に効果や副作用のチェック
⇒3?4ヶ月後に、希望があれば再治療
というスケジュールで行っています。

副作用
副作用は、薬が効きすぎた場合や、予想外の部位に効いてしまうことによって起こります。
・目を閉じる筋肉に注射をしますが、効き過ぎると、目が閉じにくくなり、角膜が乾燥してしまうなどの合併症が起こります。この場合は落ち着くまでドライアイの治療が必要になります。
・注射後にこすってしまった場合などに、薬が広がってしまい、目を開ける筋肉に作用すると目が開きにくくなってしまったり、涙の排出を担当している部位に作用すると涙目になってしまったり。
ただし、副作用が起こったとしても、ボトックスの効果がなくなるころには一緒に消失してしまうため、過度に不安になる必要はありません。

費用
費用は保険で決められていますが、
1割負担⇒6000円程度、
3割負担⇒18000円程度
薬自体が約5万円ととても高価です。もう少し安くなるといいのですが。

ボツリヌス療法について書いてみましたが、顔に注射、毒素なんて聞くと、ちょっと怖くなってしまう患者さんもいるかも知れませんね。ただし、実はボトックスは眼科で使うよりも美容外科で多用される薬なのです。
頬の筋肉に注射して小顔にしたり、痙攣してなくても表情筋に注射して「シワ取り」を行ったり、多汗症などにも使います。
そう聞くと、女性の方は、注射をしてみなくなったりして??

注)当院では保険診療で行える「片側顔面痙攣」「眼瞼痙攣」に対する治療としてのみ注射を行っています。美容目的の注射はお引き受けしておりません。

ブログを書いている途中で、県南の眼科様から電話で、明日も網膜剥離の紹介がくるようです。稲敷郡。日に日に遠方からの患者様の紹介が増えています。明日も頑張ろう!

眼瞼痙攣 (がんけんけいれん)

今日は小美玉市医療センターで井上先生と、白内障や翼状片の手術をさせて頂きました。
朝はとても寒くなりましたね[:雪:]車で出勤しようとすると、窓ガラスが凍っていて、すぐに出発できなかったり。風邪に気をつけないと。

さて、昨日と同じような内容で、まぶた(眼瞼)がピクピク痙攣する病気について。

眼瞼痙攣(がんけんけいれん)
昨日の書きましたが、自分の意思で筋肉を動かすことを随意運動、意思に反して勝手に動いてしまう事を不随意運動と呼びます。
12月9日に記載した「眼瞼ミオキミア」は、ストレス・疲労・寝不足などで、主に片側のまぶたが軽くピクピク動いてしまう病気。
12月19日に記載した「片側顔面痙攣」は、脳から出たすぐの顔面神経の障害により、片側の表情筋、主にまぶた、ホホ、口などが強くヒキツレてしまうツライ病気です。

眼瞼痙攣(がんけんけいれん)は、まぶたを閉じるための筋肉(眼輪筋)が勝手に収縮しまう病気で、多くの場合は両眼に起こります。

原因
まばたきをコントロールしている脳に異常があることが推測されますが、現在の医学では明確な原因は分かっていません。
精神安定剤や、睡眠薬の内服が原因になることもあります。

症状
・目がピクピクする
・目が開けられない(開きにくい)
・目が重い
・ショボショボする
・まぶしい

などがよく聞かれる症状で、自覚症状が強いことが多いようです。
まぶしくて目が開けられない。と、運転や読書ができずに日常生活に支障がでることもあります。
ピクピクする。という、いかにもケイレンを想像させる訴えの時には、診断が簡単なのですが、開きにくい、重い、ショボショボする、眩しいなどの症状は、ドライアイで聞かれる事が多いため、残念ながら、ドライアイとして誤診されていることもよくあります。
眼科医でも積極的に治療を行っている医師が少ない病気で、上手く診断がつかずに、ドライアイとしか診断されていないと、目が開かないなんて、おかしいんじゃないか?なんて、心療内科や精神科を勧められてしまったりして、ドクターショッピングといって、いろいろな眼科を点々としてしまうこともあります。

検査
ドライアイの合併や鑑別のために、ドライアイの検査を行います。
他に、瞬目テストと言って、きちんと機能的なまばたきが出来るかどうかを調べたりします。
・早く軽いまばたきをリズミカルに10秒間できるか?
・強く目を閉じ、すばやく目を開ける動作を10回できるか?
などを観察して、途中で変に痙攣が起こらないかなどを調べます。

治療
片側顔面痙攣と同じような治療で大きく3つに分かれます。

?内服薬
精神や神経の興奮を抑える、精神安定剤や、てんかんの薬、睡眠薬を処方します。(ただし、逆に、これらの内服薬が病気の原因となることもあり、診察では飲み薬の開始時期を詳細にお聞きする事があります。)

?ボツリヌス療法
ヒキツレ・痙攣をおこす眼輪筋にボツリヌスと呼ばれる毒素を注射します。眼瞼痙攣の治療として、非常に効果が高く、多くの場合で患者様に満足して頂けます。毒素が眼輪筋を麻痺させて、痙攣を止める効果がありますが、注射の効果が3ヶ月ちょっとで切れてくると、再度注射をしなければなりません。
(詳細は別のブログを記載しようと思います。)

?外科手術
痙攣の強い部分の眼輪筋を切除してしまう方法ですが、目が閉じにくくなる。という副作用があり、超重症例で、ボツリヌス療法が上手くいかない場合に限ります。

基本的には根治術というものはなく、対症療法と言って、症状を和らげるための治療を行う事になります。
ただし、眼瞼痙攣の患者様はドライアイと誤診されている症例が多く、「とても辛いのに、どの眼科でも相手にされなかった。」といって受診される患者様が多いので、きちんと診断をつけて、ボツリヌス療法で少しでも症状が和らぐと、とっても喜んで頂けることが多く、眼科医としてやりがいのある病気です。

ドライアイと言われているけど、症状が消えない。ツライ。
素早いまばたきが出来ない。
なんていう患者様は、一度、眼瞼痙攣がないか相談されるとよいでしょう。

*眼瞼痙攣のような目が開きにくいという症状は、ドライアイ以外にも、重症筋無力症などの重篤な病気が鑑別疾患に考えられます。自己判断はせずに、眼科医(できればボトックス認定医)に相談をするようにしましょう。

片側顔面痙攣 (へんそくがんめんけいれん)

今日は以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 6件
・網膜硝子体手術 1件(網膜剥離)
無事に終わっています。
網膜剥離の患者様は先週反対目の手術をして、経過良好の患者様です。
今回の目は、初期の網膜剥離で、中心部も剥がれていないので、視力1.0が期待できそうです!

12月9日に、眼瞼ミオキミアについて記載しました。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=5179
今日は同じ眼瞼(まぶた)の痙攣(けいれん)でも、やや重症例のお話です。

片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん)
顔には、大小様々な筋肉が付いており、表情筋と呼ばれます。笑ったり、怒ったり、泣いたり。自分の意思で筋肉を動かすことが可能で、お笑い芸人さんなどは、とても豊かに表情を作ることができます。
このような動きは、自分の意思で脳ミソから、各表情筋に「動け!」という伝令が働くのですが、この脳ミソから筋肉までの伝令を担当している神経を顔面神経(がんめんしんけい)と言います。
顔面神経は、自分の意思以外でも、乾いた時に瞬きをしたりと、脳ミソが勝手に行っている伝令、運動もあります。

自分の意思で筋肉を動かすことを随意運動、なんらかの原因で自分の意思に反して運動が起こってしまう事を不随意運動と呼びます。
眼瞼ミオキネアは疲労やストレスなどで、まぶたの筋肉のみがピクピクと動いてしまうものですが、あまり大した病気ではないことを記載しました。(2011.12.09 Friday)

顔面神経は、脳ミソ(専門的には脳幹)と呼ばれる脳の中心部から出てきて、各表情筋につながっているのですが、脳からでてきた直後の部分などで、神経に異常が起こると、自分の意思に反して、顔が片側にひきつったような状態になってしまいます。
このようばヒキツレ、ケイレンを、片側顔面痙攣と呼びます。

意図せず、目をつぶってしまったり、ほほや、口の周りがひきつれたりします。目を開きにくいという症状以外にも、整容的に見た目が気になってしまい、抑うつ気分などにつながってしまう事もあります。
ストレスによって症状が悪化する症例が多く、自分で見栄えを気にしてしまったり、病院で診察を受ける時や、写真を撮られる時などに悪化することが多いようです。

原因
多くの原因は、顔面神経が脳幹から出る部分で、異常な血管によって圧迫されるために起こることと考えられています。年齢や動脈硬化などの血流障害が元になり、子供などには少ない病気です。
ただし、非常に細かい神経や血管なので、MRIの撮影などで、明確に病変を指摘できない(見つけられない)場合も多く、原因不明とされることも多々あります。

治療
治療は大きく3つに分かれます。

?内服薬
精神や神経の興奮を抑える飲み薬や、睡眠薬を処方します。
手軽に始められる治療法ですが、残念ながら、効果が安定せず、あまりよい結果を得られることは少ないようです。

?ボツリヌス療法
ヒキツレ・痙攣をおこす筋肉にボツリヌスと呼ばれる毒素を注射します。世界的に、顔面痙攣の治療法として第一選択とされている治療法です。(標準的治療法)
非常に効果が高く、80%程度の患者様が注射により満足な結果を得られますが、顔面神経の障害を根本的に治しているわけではなく、神経の病気はそのままで、ケイレンを起こしている筋肉を麻痺させるだけの治療法です。注射の効果が3ヶ月ちょっとで切れてくると、再度注射をしなければなりません。
ボツリヌス療法に関しては、後日、詳しく説明のブログを記載しようと思います。

?脳外科手術
顔面神経を圧迫する、悪い血管を脳外科的な手術で除去する治療法です。多くの場合で、根治(こんち:完全に治る)が期待できますが、脳の手術だけあって、他の治療法に比べるとリスクが高いのが特徴です。
現在の医学では、ボツリヌス療法が効かない症例などに行われることが多いようです。

*以上はあくまで一般的なお話です。
ドライアイや、うつ、自律神経の異常などで、顔面痙攣に似た症状が出ることがあったり、同じ顔面痙攣といっても程度や状態は様々で、内服薬の治療を行う事や、初めから手術をお勧めする症例もあります。
診断や治療に関しては、ご担当の先生とよく相談するようにしてください。

師走

更新が滞ってしまい・・・[:冷や汗:]
やはり12月は忙しいですね。

なかなか時間がないのですが、数日前から家の大掃除を頑張っています[:おうち:]
高圧洗浄機にハマってしまい、玄関やベランダ、窓、外の階段など洗いまくってみました!

コンクリートの階段は、普段は汚れているのかどうか、よく分かりませんが、高圧洗浄機で洗浄すると灰色のコンクリートに、白い文字が書けちゃいます!洗浄の前後の写真をとっておけばよかった・・・。
白内障の手術もそうですが、窓など、曇りが取れてキレイになると気持ちいいですよね。

難点は、洗ったあとの泥水が跳ねて、服も顔もビショビショです。晴れてはいましたが、12月に水で濡れたままだと、けっこう寒い。筋肉痛もあるし明日までに体調を戻さないと。

昨日は、幕内会の忘年会がありました[:ビール:]
僕は正式に仲間に入れてもらって、2年弱ですが、
H11年に山王台病院ができたときの総職員数は35名くらいだったようです。
それが、H23年の現時点では500名弱にまで!すごい[:びっくり:]
来年は「特別養護老人ホーム ようよう」もでき、さらに仲間が増えるようで。
規模が小さいのと大きいの、どちらも利点・欠点がありますが、地域医療として、総合的に考えると、やはり大きいに越したことはないのでしょう。
僕は眼科のことしか力になれませんが、よりいっそう地域医療に貢献して行きたいと思います!

ちょっとサボってしまいましたが、病気の解説も来週から頑張ります!

緑内障? 治療:目薬

今日は、
・白内障手術 15眼
・緑内障手術 3眼
・網膜硝子体手術 2眼
 (黄斑前膜1眼、ぶどう膜炎後の黄斑前膜・黄斑円孔1眼)
無事に終わっています。
件数の割に定時に終わりましたが、なんだか今日は目がショボショボします[:悲しい:]
ドライアイ?眼精疲労??自分の目は診察できないので、いい加減な診察ですが、ヒアレインという目薬をつけてみます。

緑内障? 治療:目薬
繰り返しになりますが、緑内障の治療は、眼圧を下げて視神経が押しつぶされることを止めること!
眼圧を下げるには、以下が必要になります。
A:房水の産生量を減らす
B:房水が排出量を増やす

点眼薬も各種類によって、AまたはB、もしくはA+Bの両方の作用があり、
結果として眼圧を下げ、病気の進行を遅らせることが期待できます。
(近年は、ある種の点眼薬には、目の血流を改善させて、視神経を丈夫にする可能性があるかも知れないと考えられていますが、まだ明確な治療法とはいえないレベルです。)

現在の日本では、緑内障の点眼薬というと、
プロスタグランジン関連薬、交感神経遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬などが主に使用されますが、他にも症例によって交感神経刺激薬、副交感神経刺激薬と呼ばれるものがあり、それぞれ効果や副作用が異なります。
さらに、たとえば、交感神経刺激薬はαブロッカーや、βブロッカー、αβブロッカーなどに分類され・・・・・、
さらに、各会社から別の種類の薬が開発され・・・、
さらにさらに、ジェネリック医薬品・後発医薬品という薬が・・・・。
ジェネリックについて⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=122782

このブログは、一般の皆様が分かりやすい内容で!というのを目標にしていますので、個々の薬の専門的な特徴は省略させていただきます!

簡単に言うと、緑内障の薬は数え切れないほどあって、各医師が患者様に最適と思われる処方を行っているはず?です。
(よく何の点眼薬を使っていますか?と聞くと、オレンジの袋で・・・。なんていうお返事が多いのですが、袋がオレンジの点眼薬だけでも何十種類もあります。ご自分で使う薬は、できるだけ正式な名称を控えるようにしましょう。)

今回は、緑内障の患者様に守って頂きたい事を書いてみます!

?毎日、点眼薬を!
とにかく毎日つけてください!緑内障の治療は、目標眼圧を達成できるうち、通常は副作用・経済的・点眼回数など、できるだけ負担の少ないものから始めます。もし、ある一種の点眼薬を使用している人が、その後の検査で悪化した場合には、より低い目標眼圧を定めて、点眼薬を2種類に増やしていきます。
ここで問題なのは、
「今までの目薬では治療効果が不十分だったから」のか、
「その目薬で十分なはずなのに、つけ忘れが多かったから」
どちらの原因で悪化したのかは、誰にも分からない。ということです。
本当は一種類で十分なのに、悪化して、より強い治療となれば、その分負担は増えていきます。
そうは言っても忘れちゃう・・・。という方は、
今すぐ、目薬専用の目覚まし時計をセットしましょう!
携帯電話を持っている人も増えていますので、携帯のアラームを、朝起きるためではなく、たとえば夜20時に目薬をつけるために、セットしましょう!

?使用方法を守って!
点眼薬(目薬)については、以前のブログもご参照ください。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=122783
緑内障では、特に以下に注意しましょう。
・1回1滴で十分です。
 何滴つけても効果は変わらず、副作用が増えるだけです。
・2種類以上の目薬をつける場合は間隔をあけて。
 緑内障の目薬は10分以上あけて頂くのが望ましいです。
・開封後1ヶ月以上たったら、残っていても交換。
 特に夜に1回などと処方されているプロスタグランジン製剤は薬品として
 不安定であり、開封後1ヶ月以上たつと、効果が弱くなってしまいます。

?問題があれば、早めに医師に相談を!
他の点眼薬に比べて、緑内障の点眼薬は副作用だらけです。
充血、黒ずみ、目やに、ドライアイ、しみる、心臓や肺に影響する全身的な副作用も多々あります。それらの副作用があっても、失明とどっちがいいですか??という治療なのです。
そうはいっても、やはり個々の患者様との相性もあるので、「少ししみる。」くらいは別にして、「すごく痛い・メヤニが止まらない・呼吸が苦しい」など、辛いことがあった場合には電話でもいいので、すぐに医師に相談してください。
「目薬がしみて、辛かったから、勝手にやめて、通院もしなかった。」と、結局、見えなくなってから眼科に戻ってくる患者様が大勢いる病気です。
点眼薬との相性が悪いようであれば、副作用を打ち消す薬を追加したり、目薬を別の種類に変更したり、SLTレーザーや手術など、別の治療法を相談することだってできます。

?定期通院を!
一般的には、点眼薬の効果で目標眼圧を達成できるまでは、毎月の検査。
一番多いのは、2ヶ月に1回程度の検査。数年悪化していないような人は3ヶ月に1回などで、定期検査が必要です。
たまに、「目薬だけつけてればいいんだから、検査はしない。」なんていう人がいますが、そんなことありません。高血圧で毎朝1錠の薬を飲んでいた人が、薬が利きにくくなったり、病気が悪化した場合には、血圧が上がって朝晩2回薬を飲むようになったりします。
緑内障の点眼薬も、たとえば交感神経遮断薬などは、数年使用したりすると、効果がなくなってきてしまう場合が多々あります。眼圧はご自宅では測れませんので、せっかく病院に来るときには、きちんと眼圧を測定する必要があります。

緑内障・・・・。
まだまだ続きます・・・。
眼科手術専門といいつつ、手術の話題はまだ先になりそう・・・。

両眼 網膜剥離 

今日は他院様での手術もなく、家で大掃除を手伝う予定だったのですが、
お昼前に小美玉市の51歳の男性が「左目の下半分が見えない。」と・・・。

まさか??

やっぱり??

網膜剥離です。

ヒドイ・・・。
しかも進行期の緑内障もあるようで、特殊なガスや空気を入れる手術ですが、手術後に眼圧が高くなっては一大事なので、通常の空気を少なめに入れて。
ちょうど午後休みだったので、受診後2時間程度ですぐ手術に。無事に終わりました。ついでと言っては何ですが、昨日の緑内障発作のおばあちゃんも手術で治してしまいました。

落ち着いて、網膜剥離の患者様の反対目を診察すると・・・、
なんと見えている方の目も、軽いですが網膜剥離になっているではありませんか[:びっくり:]年に1例あるかないかの珍しさです。
だいたいの硝子体手術は両眼一緒にやってしまうのですが、空気をいれてうつ伏せになってもらう手術は、両目一緒だと、しばらく何も見えなくなってしまいます。
まずは、今日の手術が安定するまで様子をみよう。

年末に向けて、緊急手術祭り??のあやしい雰囲気が出てきました。
僕は昔から、1月1日とかに急患に当たってしまうタイプなのですよね・・・。

緑内障? 治療方法

今日は白内障6件、結膜弛緩症1件。無事に終わっています。

夕方に緊急で来られた患者様が・・・。急性緑内障発作で眼圧が60以上。反対目は数十年前に失明しており、見えている方の目がほとんど見えなくなっています。
実はしばらく前から、「治療をしないと、いつか急性緑内障を起こして急に失明しますよ。」と、何度も勧めていたのに治療を拒否されていた患者様です。
そう説明すると、「もう年だから失明してもいい」とか「見えなくなったら死ぬから。」なんて反論する人が、残念ながらたくさんいるのですが、実際に見えなくなると、「どうにかして!」「やっぱりなおして!」と、結局来院されるのですよね・・・。困ります。
今日の患者様も、「失明は嫌だけど、今日入院するのも嫌」と、すぐにでも失明しそうな状態で、どうしていいのか・・・。結局、今日は無理やり入院して頂きました。

緑内障? 治療方法
緑内障の治療は眼圧を下げて視神経が押しつぶされることを止めよう。というものです。

眼圧は、目の中の房水(ぼうすい)が多いほど高く、少ないほど低くなります。
なので、実際に眼圧を下げるためには、
A:房水の産生量を減らす
B:房水が目から出ていく量を減らす

といったことが必要になります。

通常の具体的な治療方法としては、
?点眼薬(もっとも行われている治療です)
?レーザー治療(SLTレーザーや、虹彩光凝固術)
?緑内障手術
(虹彩切除、隅角形成術、線維柱帯切開術・切除術)
?飲み薬(短期間の治療に)
?白内障手術(閉塞隅角緑内障などに)

などがあります。また、続発性緑内障といって、別の病気が原因となる場合には、
元になる別の病気をコントロールすることが必要になります。
?原因疾患の治療
例えば、
・血管新生緑内障⇒抗VEGF薬の注射
・ぶどう膜炎⇒ステロイド薬による消炎
・ステロイド緑内障⇒ステロイド薬の中止
・水晶体による合併症⇒手術
・硝子体・前房出血によるもの⇒止血剤・手術

上記のように、治療法は個々の病態に応じてたくさんあるのですが、基本的には、簡単でリスクが少なく、手間が少なく続ける事が可能で、治療の経費が安いものから始めます。
緑内障の治療法は、患者様にとっては面倒で、お金もかかって、副作用の心配もして・・・。全て嫌なものだと思います。それでも失明には変えられません。
また、一つの治療を始めても、治療法との相性で、全く効果がないことなども良くあります。目標眼圧をしっかりと定めて、一つの治療を行っても無効だったり、十分に眼圧が下がらない場合には、治療法を変更したり、追加していく必要があります。
例えば、点眼薬を2種類つけでも駄目なら、3種類に。3種類つけても駄目ならレーザーを追加して。それでも駄目なら手術をしましょう。といった具合です。

個々の治療法に関しては、また別の機会に。
では、お休みなさい。
今日も最後まで呼んで頂いた方、ありがとうございました。

つくば市 100本のクリスマスツリー

今日は久しぶりに、全員退院して入院患者さんがいませんでした!
以前に住んでいた、つくば市で、恒例の「100本のクリスマスツリー」を見てきました!
子供が、「100個数える!」と言い出したものの、数え方のこだわりが強く、付き合うのが大変でした・・・。

明日からまた頑張るぞ!

地域連携

土曜日は平日に仕事で来られない患者様、比較的お若い患者様が多くこられます。やはり時期的に、ドライアイの方が増えてきているようです。
ドライアイについては、以前記載したブログを参照ください。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4963
もう少しすると、ムコスタ点眼薬という、ドライアイの新薬が発売になりますが、楽しみにしています。

地域連携
今日は午前のみで外来は終了となりますが、今から市内の他の病院様に往診に行きます。石岡市の病院で眼科の常勤がいるのは当院だけなので、本来は設備の整っている当院で対応するのが望ましいのですが、人工呼吸器の付いている方、寝たきりで動く事が難しい方など、どうしても来院が難しい患者様に対しては、石岡近隣の病院に限って往診をしています。
開院以降、これまで5つの病院様で往診をしていますが、内科や外科の担当の先生がある程度の治療をしても、治療が難しい症例の場合に声をかけて下さるので、比較的重症の事が多く、「行ってよかったなぁ。」と思う事が多いです。

当院にきた患者様が、内科や外科で他の医院様にかかりつけの場合、僕は眼科以外の知識は乏しいので、そちら先生方の力を借りなくてはいけません。give and take、地域の医療の充実のために、特に近隣の先生方とは、病院の垣根を越えて、診療科の垣根を越えて、お互いによい関係を築いていければいいなと思います。

今夜も、幕内先生たちと、他の病院様の忘年会に参加させて頂くことになっています。いろいろな先生と交流を深められるといいな。と。
(アルコールの量が増えているので、仕事関係の忘年会ではあまり飲まなければいいのですが、僕はお酒が好きなので、会に参加してしまうと、結局いっぱい飲んでしまうのですよね・・・。肝臓が心配です。)

注)
大変申し訳ありませんが、他の病院様に入院中の患者様の診察に伺う場合にも、診察の時間は夜間になったりと、基本的にはクリニックの診療の合間で、行けるときに行く。という形になります。
一般家庭、ご自宅への往診は行っていません。

眼瞼ミオキミア

師走で、何かと忙しいですよね・・・。
今日は何を書こうか迷っていると、なんだか、僕の右の下まぶたがピクピクしています。
これは、患者さんによく説明する眼瞼ミオキミア。

眼瞼ミオキミア
眼瞼(がんけん)は、まぶたのことです。まぶたの開け閉めは、自分の意思で行う事も可能ですが、普段は特に意識をしなくても目が乾かないようにと、瞬きを行う事が出来ますよね?
目が乾いてきたり、ゴミが入ったり、急に目になにかが近づいて来たりすると、脳へその信号が伝わり、目を閉じろ!という命令が折り返されて、目のまわりの皮下にある眼輪筋(がんりんきん)という筋肉が収縮して、勝手に目を閉じます。
一般的に、このような脳ミソを中心に起こる自然な瞬きの力よりは、自分の意思でまぶたを開けているぞ!という力(随意運動:ずいいうんどう)の方が強いため、目を開けていようと思えば、しばらくの間は目を開けっぱなしでいられます。

ところが何かの問題で、このような働きのバランスが崩れると、変に筋肉が収縮して、自分では開けていようと思っているのに、自分の意思に反して眼輪筋が収縮し、ピクピクとケイレンしてしまう事があります(不随意運動:ふずいいうんどう)。

このような、まぶたに起こるピクピクとしたケイレンを、眼瞼ミオキミアと呼びます。片側の下まぶたの外側で自覚することが多いようです。

ほとんどの原因は、ストレス、寝不足、眼精疲労、ドライアイなどが原因であり、若い子にも起こるので、年明け頃になると受験生がよく外来を受診します。(今日の僕はおそらく眼精疲労)

治療法としては、
しっかり休憩をとって、良く寝て、メガネの度数があっているか確認して、ドライアイがある人は点眼薬でコントロールして。このような対応で、だいたいは1日?2週間くらいで自然に治ってしまいます

なるべく早く止めたい場合には、
ホットパックで目を温めて、血流の改善を促すのもよいでしょう。濡らしてから、かるく絞ったタオルを、電子レンジでチンして、温めたものを目に5分?10分くらいのせてみましょう。

それでも・・・、と言う人は、
少し安定剤のようなものを処方したり、あまりに辛いとか、長引く場合には、ボトックスといって眼輪筋を麻痺させる注射薬を使用することもあります。

眼瞼ミオキミアは基本的には良性の病気であまり心配はありません。ただし、非常にまれですが、脳腫瘍などが原因となっていることもあるので、上記の治療などを行っても治らない、悪化していく、何度も繰り返すなどの場合には、MRIなどの検査を行って良く調べてみる必要があります。

いろいろ書いているうちに、僕のミオキミアは止まったようです。