角膜鉄片異物

今日の話題から一つ。
角膜鉄片異物
角膜鉄片異物はその名の通り、角膜(黒目)に、鉄のかけらなどが刺さった状態です。当院には2週に1名か2名程度の患者様がいらっしゃいますが、殆どの患者様が男性で、「仕事中にサンダーで鉄を削っていて痛くなった。」などの理由が多いようです。

先週の患者様です。(緑内障の手術後で、上方の瞳孔が欠けています。)

瞳孔の左下、水色矢印の部分に黒いかけらが刺さっているのが分かりますか?
このままほっておくと、鉄の周りが炎症を起こし、錆が角膜に沈着し、炎症を起こして角膜が白く濁っていきます。キズに感染症が起こると最悪失明に至ることも。

点眼薬の麻酔をして、針やセッシで鉄のかけらを除去します。
刺さってすぐに来てくれたら、錆が残らずに簡単に除去できて楽なのですが・・・、

だいたいの人は、数日我慢して、それでも痛いから。と受診されます。この方も、錆が出てきて、角膜に茶色いリングが残っています。錆を残すと、炎症が長引いたり、角膜に濁りが広がってしまう事が多いので、出来る限り除去します。

まるで歯医者さんのようですが、こんなドリルを当てて角膜を削ると、錆は簡単に1?2秒で除去できます。

多くの方は、目の前で作業をされると怖くて目が動いてしまいます。僕たちはまっすぐ見ていて頂くのが一番やりやすいのですが、動くと危ないので、あまり針などが見えないように、出来る限り、横や上を見ていて頂いて、目が動かないうちに、パパッと作業をします。

まずまずキレイになりました。
削ったところは、感染症に弱いので、抗生物質の目薬キズを早く治すための目薬(ヒアルロン酸など)、痛みが強い場合には軟膏を入れて眼帯をするなどの処置を行って頂き、2?3日後に必ず再診をお願いしています。

この方は、3日後に再診に来て頂いた時点で、キズが治り、濁りの残存もなく、キレイになっていたため終了となりました。

皆さんが、きちんと目薬をつけて再診に来て頂けると助かるのですが、残念ながら、角膜鉄片異物で処置をした人は、半数程度が再診をしてくれません・・・。
鉄片をとって薬をつけ、痛みが消失してしまうと、受診したくなくなるようです。だいたい、仕事を持っている男性に起るので、仕事が忙しかったり、建築関係の人などは点眼薬を持ち歩いて、昼につけたりするのは難しいのかな?
例えば、この方は半年前の患者様ですが、

青矢印の部位に鉄片を認め、除去しました。

2日後の再診では、軽度の混濁を認めるものの、まずまずキレイになってきています。ところが問診で、「忙しくて薬は付けてない。」と・・・。濁りが出そうな患者様にはステロイドという目薬を使うのですが、処方を行い一週間後に予約をとりました。
と、残念ながらその後、音信不通に・・・。
その方が本日、別の目のメヤニで久しぶりに来院されたのですが、

思いっきり濁りが残って拡大しています。角膜がヒキツレて、デコボコになる不正乱視という状態となっており、視力も0.8まで下がってしまいました。もう半年もたっているので、今更目薬を使っても治せません。まだ若いのですが、視力1.0は諦めて頂きます・・・。

痛みが取れても、きちんと治療をしないと、角膜に濁りやヒキツレが発生して、5年や10年など、長時間たってから視力が低下してしまう事もあります。将来、白内障の手術が必要な場合にトーリックレンズなどの高性能レンズが使えなくなってしまうケースもあります。

角膜鉄片異物で受診される方にお願いです。
忙しいと思いますが、
?きちんと目薬をつけましょう。
?きちんと通院をしましょう(ほとんどが2回、たまに3回受診するくらいです)

?サンダーなどを使う時にはゴーグルをつけましょう。

今日も30歳くらいの若い男性の鉄片を除去しました。土曜日に再診の予約をとったのですが、来てくれるかな?

個人的な話題で申し訳ありませんが、錆を取るドリルの写真を見ていたら、歯医者さんを思い出しました。実は、親知らずが生えていて、痛みがあるため、23日の土曜日に口腔外科の先生に抜いてもらい予定です。山王台の口腔外科先生たちは評判がいいので、安心してはいるのですが、僕もなかなか休めないので、一回で4本全部抜いてもらう事に。大丈夫かな?月曜の外来でちゃんとしゃべれるかな?
人の手術は簡単ですが、自分が受けるのはプレッシャーを感じますね[:冷や汗:]

白内障手術 乱視矯正? LRI(乱視矯正角膜輪部切開)

今日は以下の手術を行いました。
・眼瞼下垂症手術 2件
・加齢性下眼瞼内反症(逆さまつ毛)1件
・瞳孔形成術+眼内異物除去 1件
・白内障手術 6件
・網膜硝子体手術(茎離断:黄斑前膜)1件
・緑内障手術(バルベルトインプラント)1件
みなさん無事に終わりました。今日は片眼の方が多くちょっと少なめ。
最後の症例は、重症例の緑内障のみに今年の4月から正式に保険診療で認められた術式です。今日の方は、大学病院などで両眼ともにそれぞれ3回以上も手術をされている患者様でしたが、なかなかコントロールがつかずに新しい術式で対応させて頂きました。
技術としては難しい手術ではないのですが、昔の手術の癒着がひどいのと、まだ僕が慣れないせいもあり、50分ちょっとかかってしまいました・・・。もっともっと勉強・修行が必要です。

今日の緑内障の手術方法なんかもブログに載せようとか、書きたいことがいっぱいあるのですが、なかなか忙しくて・・・。とりあえず、地道にすすめていきます。
白内障手術 乱視矯正?
LRI(乱視矯正角膜輪部切開)

最近は、白内障手術を行う時には、ついでに乱視(眼球のゆがみ)を補正してしまおう。というのが、多くの眼科で流行ってきているようです。
当院は特に乱視の軽減に力を入れており、以前に主な方法について書きました。
白内障手術 乱視矯正? 強主経線切開
白内障手術? トーリック眼内レンズ
最近は?のレンズの開発が進み、かなり強い乱視までを補正できるようになってきています。
なので、なかなか出番がないのですが、最近行った乱視矯正の患者様が今週再診でいらしたので、そこから話題を。

眼球が完全な球体であれば乱視がない状態、ラグビーボールのようなキレイな楕円状にゆがんだ状態を正乱視(せいらんし)と呼びます。そして、眼球がデコボコとしていびつにゆがんだ状態を、不正乱視(ふせいらんし)と呼びます。
上下左右対称のような、キレイなゆがみの乱視(正乱視)には、トーリック眼内レンズによる補正がとても有力で、かなり強度のゆがみまで補正出来るようになってきています。

ところが、デコボコにゆがんだような不正乱視にトーリックレンズを入れると、相性が悪くて余計に見えにくく感じてしまう症例があることが分かっています。
こんな時には、角膜(黒目)を切り刻むことで、角膜の形状を変化させ、乱視を軽減させる方法が有用です。
白内障手術 乱視矯正? 強主経線切開でも書いたのですが、基本的に角膜を切開すると、切り込みを入れた方向の角膜のカーブが和らぎ、その方向の近視の度数が減弱します。


昨年末に翼状片という角膜(黒目)の上の出来物を切除した69歳の女性です。(本当は、こんなに大きくなるまで放っておいてはいけません。)

これは、翼状片切除手術後、一週間の写真ですが、一見かなりキレイになっています。

今回、約半年過ぎで前回手術後の角膜のキズや形が落ち着いたことと、70歳になって1割負担になったころから、白内障の手術が予定されました。手術の前の検査で角膜(黒目)のデコボコさ加減を、精密に測定する角膜トポグラファーで撮影をしてみると、

写真や診察ではキレイに見えても、実際には角膜はデコボコで、専門的ですが、-5.75Dというかなり強い乱視が残ってしまっています。このまま白内障手術をしたのでは、裸眼の視力はかなり悪いものとなってしまいます。
そこで、手術では角膜を切開して、どうにか目玉がマル、球体に近づくようにと頑張ります。

6月4日の手術ですが、
?まず、通常の白内障手術で、強主経線切開を行い、少しでも乱視を和らげます。斜めの乱視が強いのですが、青線の方向の乱視を弱める効果があります。

?次に、手術前に角膜トポグラファーで撮影した角膜のゆがみを補正するように、角膜に切開を加えます。

右が切開後ですが、わずかに出血の赤い線が見えるくらいで、肉眼ではあまり片がが分かりませんね。

こんなナイフを使って、角膜に切り込みをいれます。

基本的に、角膜の厚みを測定し、角膜90%の深さを切開をします。残りが10%しかなくなるので、かなり深い切り込みを入れることになります。強い乱視を補正するには、長い切り込みをいれ、弱い乱視を補正するには短い切り込みをいれるのですが、やり方は施設毎にある程度は異なりますので、詳しくは担当の医師にお聞きください。


これは、6月11日の外来で撮影した術後のトポグラファーですが、キレイとは言えませんが、かなりゆがみが減少して、乱視の度数を-1.69Dまで軽減することができました!患者様にもとても喜んで頂いています。

最近はトーリック眼内レンズの普及で、LRIを行う事がだいぶ減りました。上記のような角膜がデコボコの特殊な例(不正乱視)に行うだけなので、月に1件とか2件とか。
ところが、ちょうど最近、正乱視でもLRIをやった症例がいたので、ついでに。
6月6日に手術をした80代の女性ですが、黄斑前膜という手術を行います。既に他院で白内障手術が済んでおり、眼内レンズが入っているため、トーリックレンズが使えません。

トポグラファーと照らし合わせて、切り込む位置に目印をつけます。

角膜の厚みの90%まで切開できるメスをつかって、黒目の両脇に切開を入れます。

黒目の両脇に赤い出血の線がみえますか?

引き続き、黄斑前膜の手術を行います。
(LRIはついでに行い、無料です。)

左が手術前、-3.25Dの乱視がありましたが、2日後の検査では右側、-1.0Dの乱視にまで軽減できています。

順番待ちが・・・。

今日は県南の開業医様で、白内障や硝子体の手術を行わせて頂きました。
無事に終えて良かったです。

とうとう、白内障などの、緊急性のない手術の順番待ちが10月になってしまいました・・・[:冷や汗:]
あまり長いと、手術を予約したことを忘れちゃったり、体調が変わってしまったりと、いろいろ困ることもあります。開院以来、着々と1日にできる手術数を増やして対応してきましたが、そろそろ、そういう対応では限界が近付いているようです。
次年度から、眼科医師の増員と施設の拡張を検討しているところですので、もうしばらくお待ち頂く形となりますが、ご了承ください。(緊急性のある病気は、適宜対応しています。)
実は、茨城県は眼科医が少ないことで有名です。
当院も決してサボっているわけではなく、一生懸命にやってもやっても追いつかないのです・・・。頑張ります。

そうそう、先ほど、新しい炭酸ガスレーザーの購入が決まりました[:ときめき:]
今度は眼科専門の器械ではなく、美容外科での採用が多いレーザーを購入してみました。主に、眼瞼下垂という病気の手術で使うのですが、炭酸ガスレーザーは、出血をさせないで皮膚や筋肉を切ることができるので、術直後からの見た目がキレイにできます。
美容目的ではありませんが、どうせやるなら、美容外科に負けないぞ!の気持ちでやらないと。(器械だけでも?)

切れ味がすごくいいのですが、他の特徴としては、実は今回の機種はいろいろなモードやハンドピースがついていて、なんとホクロやイボなんかも除去出来ちゃうんです!!
こっそり僕のホクロが消滅する状況を、あとでブログに載せてみますね。
注)当院はホクロも含めて、美容目的での手術は引き受けていません。すみません。

さっそく明日の手術から使用開始です。
僕は新しい手術器械が大好きで、まさにオタクな感じなのですが、早く使いたくてワクワクしてしまいます[:ラブ:]

黄斑円孔? 手術後の回復・見え方

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 5件
・涙小管形成手術(涙小管断裂)1件
無事に終わりました。

黄斑円孔、今日で?ですが、そろそろ終わりです。
黄斑円孔? 手術後の回復・見え方
黄斑円孔の手術に関しては、?で記載しましたが、簡単におさらいすると、目の中に器械をいれて、内境界膜という網膜の表層の膜を剥離し、網膜を柔らかくします。その後、目の中に空気を入れてうつ伏せをすることで、円孔の周囲の網膜を浮力で引き寄せて、穴を閉じる。という方法です。

ここで重要なのですが、手術は、
なくなってしまった中心部(黄斑部)の網膜を元に戻すのではありません。
周りの網膜を引き寄せて、穴を閉じ、中心部の網膜の代役をさせるのです。

イメージ図にしてみると、

?正常な網膜です。中心部の赤い部分の網膜には、物を見るための視細胞が沢山集まっています。その周りの青にも、視細胞がありますが、赤に比べると数が少なくなります。緑はさらに見え方が落ちる部位です。
?黄斑円孔で、赤の部分の網膜が硝子体に引っ張られて断裂し、無くなってしまうと、視野の中心部が欠損、見たい部分が見えなくなってしまいます。
?手術の効果で、青や緑の網膜を中心部に引き寄せます。
?青の部分の網膜が、視野の中心部の視界を担うようになります。

僕たち眼科医の感覚では、穴が閉じることを治癒「病気が治った」と表現しますが、これは「全く元の状態に戻った。」という訳ではありません
赤に比べて、青の網膜は、視細胞の数も能力も乏しくなります。この青の網膜が中心部の見え方を担当するようになるので、どんなに回復しても「視力が悪い」、「感度が悪い」、「少し暗く見える」などが残り、完全に元通りという事はあり得ないのです
また、中心部にギュッと網膜を引き寄せた感じになるために、基本的には「ゆがむ」「物が小さく見える」などの症状も残ります。

青に比べて、緑はさらに感度が悪いのですが、黄斑円孔の穴が大きく、青の部分まで無くなってしまった症例では、緑が中心部の役割を担うために、さらに後遺症が大きく残ります。
⇒手術前の穴が、大きければ大きいほど術後の回復が悪く、穴が小さければ小さいほど良好な回復が得られます

完全に元に戻らない。なんていうと、ガッカリしてしまいますが、黄斑円孔は手術直後に見え方が悪くても、数ヶ月?半年程度は改善傾向になることも多いので、術直後の見え方だけで落ち込む必要はありません。
例えば、右利きの人が、事故で右手を失った場合に、全く同じとは行かなくても、長い期間のリハビリによって、左手を右手の代わりに使えるようになると思います。
同じように、最も重要な黄斑の網膜(赤)がなくなって、その周りの網膜(青)が中心部の代役を担うようになって、何ヶ月も経つと、脳が映像を補正するなどして、青の部分の網膜があたかも赤の部分のように働けるようになる場合もあります。
こういう反応って、器用・不器用などの個人差も大きいのですが、年齢も重要です。一般的に年齢が若い時の方が回復がよいようです。10代で右手を失っても、左手を利き手として、あまり不自由なく生活ができるようになる人が多いと思いますが、80代で利き手を失ってしまった場合に、反対の手でいろいろな仕事を行えるようになるのは大変なことです。
⇒年齢が若い患者様のほうが良好な回復が得られます

黄斑円孔の手術後の回復の程度や見え方は、円孔の大きさや、発症からの時間、年齢など、様々なものが関与するため、一概には言えないのですが、完全な元通りを期待するものではないことはご理解下さい。
僕は手術の前から上記のような説明をして、「元通りにはならないですよ。」と数回お伝えしてから手術をするのですが、黄斑円孔ってなかなか理解が難しいようで、手術後1週間とか2週間とかで、手術前よりも視力の数値が改善していても「まだあまり見えないけど、いつころ元に戻るの?」「中心部がゆがんで見えにくい」「中心が少しくらいけど」といった質問を多々受けます。
「だから、完全に元には戻らないって、何度も言ってますよね?」って、ちょっと凹んでしまいます。僕の説明がまだまだ分かりにくいのかな・・・。

逆に、早期に手術ができて、視力が1.0以上に回復する症例も多々あり、「私は手術後に全く不満がなく、完璧に治った。」と喜んでくれる方もいますが、これは正確な話ではなくて、その方は症状に疎いというか、多少のゆがみなどは気にしなかったり、気が付きにくいだけなのです。まぁ、医師としては喜んでもらえたほうがうれしいのですが、そういった意見を待合室で耳にしてしまうと、「あっちの人は治ったのに、私は治ってない。」というクレームの元になってしまうのが難しいところです。

なんだか、よく分からない話なってしまいましたが、
基本的には黄斑円孔の手術を行って穴が閉じれば、
・病気が極端に古いとかでなければ、視力がある程度は改善します。
・両眼で物を見るときは、多くの人がゆがみや違和感を感じにくくなります。(片眼づつ見え方を比べると、何らかの後遺症を自覚する例がほとんどです。)
以上の回復は、手術直後に起こるわけではなく、手術後に数ヶ月?半年程度の期間をかけて完成されていきます。

今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

黄斑円孔? 実際の症例

今日も網膜剥離の紹介がありました。
午前中は小美玉市医療センターで外来だったので、お昼休みに戻り次第手術ができ、中心部の網膜(黄斑)が剥がれる前に手術ができました。きっといい視力が温存できるはず。よかったです。
今日の患者様は、県内の眼科医様のご親せきの方ですが、同業の先生に頼って頂くのはとても嬉しいことです[:楽しい:]
ブログ見て頂いているでしょうか?バッチリ手術できましたよ[:チョキ:]

黄斑円孔のブログもだいぶ進んできましたが、現実味がないので先月手術の実例をもとに書いてみますね。
黄斑円孔? 実際の症例
5月14日:初診
いつから見えないかは不明で、眼鏡をかけた矯正視力は0.1

写真だとなかなか分かりにくいのですが、拡大した写真の青矢印の先が、丸く穴になっているのが分かるでしょうか?OCTだと、網膜の断裂がとってもよく分かりますね。
黄斑円孔は、一般的に網膜剥離ほど緊急性は高くないので、翌週か翌々週に手術をする事が多いのですが、今回は予約枠の都合と患者様の協力もあって、すぐに手術が可能でした。

5月16日:手術手術法は前回のブログを。
局所麻酔(テノン嚢下麻酔:眼球後方への注射)
白内障とあわせて、30分くらいの手術です。

5月17・18日:手術後はとにかくうつ伏せ!!
うつ伏せをして、手術で眼内に入れた空気の浮力で、網膜を引き延ばして穴を閉じます。
(うつ伏せをしなくても穴が閉じたという報告も出てきていますが、穴が閉じない場合には、結局再手術をして入院期間が長くなってしまいます。当院では現時点の医学でもっとも安全・成績がよいと言われる手術法を選択するようにしています。大変だけど頑張りましょう!)

5月19日:円孔閉鎖

写真の上方が黒っぽくうつるのは、まだ空気が上半分に入っているからです。空気に邪魔されて、キレイなOCT画像が撮影できませんが、網膜の断裂がなくなっていることは確認できます。この時点で、うつ伏せの必要はなくなり退院が可能となります。(希望者は日帰り手術も可能ですが、入院の方がきちんとうつ伏せが出来るようです。)
もしかしたら、手術の翌日には穴が閉じていて、うつ伏せは必要なくなっている可能性もありますが、空気が沢山入っている間は、正確なOCTの撮影ができないので、しっかりとした撮影ができるまでは、うつ伏せを保って頂くようにしています。当院ではだいたい2日半から3日位でうつ伏せが終了となります。

5月23日:術後経過
矯正視力は0.3まで改善しています。

円孔が閉じて、黄斑部のオレンジ色が濃くなり、均一でキレイな色調に変わっています。OCTでは断裂がなくなっていますが、中心部にわずかに黒く抜ける部分があるのが分かりますか?まだ網膜の構造には隙間があるようです。

5月30日:術後経過?
矯正視力は0.5まで改善しています。

隙間もなくなり、正常な網膜のOCT・網膜の断面図に見えるようになりました。

今後、半年間くらいは回復基調となりますが、どこまで見えるようになるかは不明です。ただし、残念ながら手術前が0.1なので、1.0まで改善する症例は非常にまれです。
一般的には、
・発症から手術までの時間が早いほど
・年齢が若いほど
・穴が小さいほど
・手術前の視力がよいほど(0.7とか、0.8とか)

視力の予後が良好とされています。(視力1.0以上に回復しやすい)

今日も最後までお読み頂きありがとうございました。

黄斑円孔? 治療:手術

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 13件
・水晶体摘出術+前部硝子体切除(亜脱臼・浅前房)1件
・網膜硝子体手術(茎離断) 4件
 (裂孔原性網膜剥離1件、糖尿病網膜症1件、黄斑前膜2件)
皆さん無事に終わりました。

と、県南の病院様からお電話があり、明日も網膜剥離があるようです。
でも、ただいま満床です。うーん、困ったぞ・・・。

黄斑円孔? 治療:手術

硝子体が収縮して、黄斑部の網膜を引っ張って、ビリっと破けてしまう病気ですが、黄斑円孔は残念ながら目薬では治りません。治療法は手術のみになります。
硝子体手術と言って、目の奥の方まで器械を入れる必要があります。

まず、仰向けになって、麻酔の目薬や消毒、注射の麻酔を行います。

50?60歳以上では、白内障の手術を同時で行います。

次に目の奥の方まで器械を入れ、収縮して網膜を引っ張っていた硝子体を出来る限り切除します。残念ながら、硝子体に連れ去られてしまった黄斑部の網膜を元の位置に戻すことはできず、硝子体と一緒に切除してしまいます

その後、網膜の最表層の薄皮を1枚だけピンセットで剥いで、網膜をやわらかくする作業を行います。(内境界膜剥離)。
実は網膜は10枚の膜が重なって出来たような構造をしていますが、一番内側の内境界膜は網膜を硬く固定する役割などがありますが、物を見るという機能には関与していません。内境界膜を手術で1枚剥いでしまうと、網膜がやわらかくなり、伸びやすくなります

緑矢印が黄斑円孔です。内境界膜は透明に近い膜で、ピンセットでつまみにくい場合があり、そんな時には、青や緑の色素を振りかけて、膜に色をつけることで、手術中に見やすくしたりします。黄斑円孔の周りで肌色のようになった部位が内境界膜が剥がされた部位になります。

最後に目の中に空気を入れて、手術は終了になります。目の中に空気が入っている間はキラキラと目が光って見えます。

だいたい20分?30分くらいの手術ですが、実はこれだけで終わりではありません。きちんと治すためには、手術後に数日、うつ伏せを頑張って頂くことになります。

手術後にうつ伏せをすると、空気の浮力によって、目の奥の方(黄斑のほう)に向かって力が働きます(赤矢印)。この浮力が眼球内の斜面では、網膜を眼球の最後方、頂点に向かって、網膜を引き伸ばすような力に変換されます(青矢印)。この力によって、黄斑円孔の方向へ網膜が引き寄せられ、穴が閉じることになります

黄斑円孔? 経過

今日の午後は、小美玉市医療センターで井上先生と手術でした。
・白内障手術 6件
・翼状片手術 2件
すごーく早く終わって、3時には暇に。久しぶりに幼稚園のお迎えに行ってみました[:子供:]まぁ、ゆとりは長くは続かず、夜には網膜剥離の紹介のお電話で、明日さっそく緊急手術となりそうですが[:冷や汗:]スタッフのみなさんよろしくです。

黄斑円孔? 経過
黄斑円孔は中心部の見え方が低下する病気ですが、基本的には治療法は手術しかありません。では、手術をしないとどうなってしまうのでしょう?みんな失明してしまうのでしょうか?答えはNOです。

黄斑円孔の大まかな自然経過としては、
?稀ですが、自然治癒(穴が勝手に閉じる)する場合があります。
?同じく稀ですが、網膜剥離という病態を合併して、失明に至ることがあります。
?そして、それら以外、最も多くの場合では徐々に視力が低下し、中心部のみの見え方が奪われ、0.02とか、0.05とか、0.1以下の視力で落ち着いてしまいます。

通常は、黄斑部以外の網膜には異常が出ないため、周辺部の見え方(視野)は正常なままで、失明に至ることは殆どありません
なので、患者様が90歳とか100歳とか、あまりに高齢で、もう片方の目が問題ない場合には、「こっちの目はこのままでいいかな?」なんてお勧めする事もあります。また、発症後1年以上経ってしまった症例は、穴が閉じても視力の回復は殆ど望めないため、既に視力が0.04で病気が古くなってしまった症例なども手術は行いません。(いつから見えにくくなったかを、ハッキリ覚えている人ばかりではないので、迷う事も多々ありますが・・・。)
(当院で、開院後2年間を調べると、古いものを含めて黄斑円孔を認めた人は39名のようですが、手術をしたのは29名のようです。ちなみに手術をした全員で円孔の閉鎖を得られています。)

また、稀に自然治癒する事があると書きましたが、それは視力が元通りに戻るという意味ではありません。穴が閉じて、それ以上の悪化を認めなくなる。という意味です。例えば、発症後に半年も経ってから自然に穴が閉じても、良好な視力は望めません。
後日詳しく記載する予定ですが、黄斑円孔は発症早期に手術をするほど、視力の回復が良好なので、発症早期の患者様が見つかった場合には、通常は出来る限り早く手術をすることが多くなっています。

注)上記は一般的な特発性黄斑円孔についてです。僕たちが診察をして、自然治癒を期待することが出来そうだと思えば、少し様子とみたいと説明する場合もありますし、強度近視などで、黄斑円孔網膜剥離という失明につながるような合併症の発症リスクが高い場合には、積極的に手術をお勧めする場合もあります。詳しくは担当の先生とよく相談しましょう。

黄斑円孔? 原因

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・眼瞼腫瘍切除 1件
・眼瞼下垂症手術 1件
・麻痺性内斜視 1件
・白内障手術 5件
無事に終わっています。

さて、黄斑円孔の続きです。
黄斑円孔? 原因
黄斑円孔の原因を分類すると、以下のようになりますが、
?特発性(加齢に伴う後部症下剥離に伴うもの)
?近視性(強度近視に伴うもの)
?続発性(黄斑前膜など、他の病気によるもの)
?外傷性(外傷により後部硝子体剥離が早まった場合など)

最も多いものは特発性と呼ばれる、加齢に伴って起こる病態です。
加齢に伴って、目の中の硝子体が収縮し、後部硝子体剥離と呼ばれる現象が起こることを以前に書きました。(⇒後部硝子体剥離について以前のブログ
硝子体の収縮により、正常な目では、網膜と硝子体が問題なく分離・剥離していきます。ところが一部の患者様で、網膜と硝子体の癒着が強い場合に、網膜をビリっと破いてしまう場合があります。黄斑は構造上、薄く弱いという特徴があり、後部硝子体剥離によって、黄斑部の網膜がビリっと破けて、硝子体にくっついていってしまうと、黄斑にぽっかり丸い穴が開いてしまうのです。


若い時の硝子体は、目の中いっぱいに広がり、黄斑部でも網膜と硝子体はペッタリくっついています。


加齢に伴って、硝子体が前の方に向かって収縮を始めます。通常は網膜と硝子体はキレイに離れていきますが、黄斑部での癒着が強いと、硝子体が黄斑を引っ張ってしまいます。OCTでは水色矢印の先に白い線が見えますか?これは硝子体の最後方の境界が写っている画像です。このような状態を黄斑牽引症候群といって、黄斑円孔のリスク群(予備群)として、ゆがみを自覚したりします。

さらに硝子体が収縮した場合にも網膜との癒着が取れないと、網膜がビリっと破れてしまい、黄斑部の網膜が硝子体にくっついて連れ去られてしまいます。OCTで水色矢印の先が硝子体の境界です。ピンク矢印の先に破れた網膜の断片が写り、黄斑部がポッカリと穴になってしまっています。

そんなわけで、
後部硝子体剥離を原因とする裂孔原性網膜剥離と同じようになりますが、
特発性黄斑円孔の原因をあえて上げようとすると、
●生まれ持った性質(黄斑部の網膜が薄い、硝子体と網膜の癒着が強い)
●加齢

という事になりますので、なにか悪いことをしたのかな?などと後悔をする必要はなく、「病気になる人はなる。」という程度にお考えください。

他の黄斑円孔の原因としては、
?強度近視のかたは、網膜が薄く、眼球の形状にも問題があり、黄斑円孔が起こりやすくなったり、重症化しやすくなったりします。
?網膜剥離などで硝子体手術後やレーザー治療後、黄斑前膜でカサブタのヒキツレにより網膜が断裂してしまう場合、
?外傷による外力で、穴が開いてしまう場合などがあります。

?については、網膜剥離の手術後などは、どんなに落ち着いても、1年に1回などの定期通院をお勧めする理由になります。

黄斑円孔(おうはんえんこう)? 病態・検査・症状

なんと、今日(日曜日)は入院患者さん0名、救急外来も0名でした。(夜大丈夫ならですが。)こんなことって、すごく久しぶり[:楽しい:]
とても、ゆっくりと過ごせました

今日はきちんと眼科の病気のことを書いてみようかな。
黄斑円孔(おうはんえんこう)
眼球はカメラにとてもよく似ていて、レンズ(水晶体)が光を通して屈折させたり、フィルム(網膜・眼底)が光を感じ取ったりする構造をしています。そのフィルムの中心部を黄斑(おうはん)と呼び、視野の中心部で、細かいものを良く見るといった役割があります。(⇒黄斑については以前のブログを。)

黄斑円孔(おうはんえんこう)は、その黄斑に丸い穴が開いてしまう病気です。
実際の写真で見るのが分かりやすいかな?

眼底写真と呼ばれる、目の奥・網膜の写真ですが緑矢印の先が黄斑です。この症例では、丸くリング状に、オレンジ色が濃くなっているのが分かるでしょうか?半透明の網膜に穴があいて、裏側にあるオレンジ色の脈絡膜の色がむき出しになるために、オレンジ色が強く見えます。

OCTと言って、網膜の断面図を撮影する検査を行うと、(⇒OCTについて、以前のブログ)

上が正常な断面図で、下が黄斑円孔の症例です。正常では黄斑は少し凹んだ形をしているのですが、下の図では、黄斑の部位(ピンク矢印)で網膜が断裂しているのが分かるでしょうか?
(今回の眼底写真は穴が大きめで、かなり分かりやすい症例を出したのですが、実は、写真をとったり、眼科医が診察するよりは、OCTで断面図を調べる方が、ずっと正確です。初期で治療をする事が重要な病気ですが、初期で穴が小さい場合に、OCTがないと病気を見逃してしまう事が多々あります。)

症状は病気の程度によりますが、物を見る中心部のフィルム(網膜)が障害されるため、中心暗点と言って、視野の真ん中が見えなくなって視力が低下したり、中心部の色が暗く見えたり、小さく見えたり、ゆがみを自覚したり(変視症;へんししょう)します。

日常生活では物を両眼で見ることが多いため、片方の目に異常があっても気が付きにくいものです。たまにでいいので、片方の目を手で隠して、カレンダーの文字がキチンと見えるか、チェックして頂くと早期発見につながります。

黄斑の病気では、ゆがみを自覚するものが多いのですが、アムスラーチャートといって、以下のような方眼紙を、片目のみで見る検査が有用です。

病気の場合には、下のように歪んで見えたり、部分的に見えない場所を自覚しやすくなります。何か異常を感じたら明日必ず受診しましょう!!(黄斑の病気は早期発見・早期治療が重要です。)

H24年5月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

5月の治療実績を集計しました。
ゴールデンウィークがあったのですが、重症・緊急性の高い硝子体手術の紹介が多かったせいか、かなりの件数になってしまいました。忙しかった。
スタッフのみんなも、忙しかったり、ちょっと疲れているかと思いますが、いつも協力してくれてありがとう。

H24年5月の手術実績
手術合計 142件
内訳

・白内障手術 88件

・網膜硝子体手術 21件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 4件
・涙器の手術 9件(NSチューブ・涙点閉鎖など)
・眼瞼(まぶた)の手術 12件(眼瞼下垂・さかさまつげ・霰粒腫)
・結膜の手術 6件(翼状片・結膜弛緩症)
・その他の手術 2件

レーザー手術合計 14眼
内訳
・網膜光凝固 9件(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 2件(後発白内障に対するレーザー)
・SLTレーザー 3件(緑内障に対するレーザー)

*手術数は、分院である小美玉市医療センターとの合計数です。手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。 白内障の手術時に、逆さまつ毛や眼瞼下垂の手術を追加で行っておりますが、それらはカウントしておりません。また、病気が古くてNSチューブが挿入できなかった症例などもカウントしていません。

抗VEGF薬 硝子体注射 38件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・マクジェン・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 19件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。トリアムシノロン)

白内障などの緊急性のない手術の待ち時間は、約3ヶ月待ち、9月前半からの予約となっています。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)