水疱性角膜症? スペキュラーマイクロスコープ

連休前ですが今日も少し急ぐ症例があり、夕方は手術に。
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
 (最強度近視・網膜多発裂孔による胞状剥離1例、増殖糖尿病網膜症・虹彩新生血管1例)
両名とも30代の患者様で、硝子体手術を受けるのにはリスクが高いのですが(若い人の手術は難しい)、重症度が高く、仕方なく・・・。といった具合です。
手術はキレイに出来たと満足していますが、合併症含めて、術後の観察はしっかりやらねば。

剥離は穴だらけ・・・。黄斑が剥がれていないのはラッキーです。反対目も穴だらけ・・・。

糖尿も両眼・・・。もとの眼科様でレーザー治療をしっかり受けていますが、それでも出血を繰り返し、カサブタや茶目の新生血管が出来はじめてしまったようです・・・。重症なのでアバスチンを入れて。今日は一応片目だけにしました。

水疱性角膜症? 
スペキュラーマイクロスコープ

先日、角膜内皮細胞が、角膜を透明に維持する役割を担っていることを記載しました。
内皮細胞は数が多いほどよく働き数が少ないと角膜を透明に維持する力がなくなってしまい、白くむくんで濁ってしまう性質があります。
通常、正常な人の角膜では、1mmx1mmの四角の中に3000個程度の内皮細胞があります。(個人差があります。)
これが、加齢や疾病、手術などによって減少し、1mmx1mmの中に500個程度になると、角膜に濁りが現れるようになります(水疱性角膜症)。
そうはいっても、1mmの四角の中の3000個とか500個とかの細胞を、肉眼で判別することはできません。眼科医が診察で目を除く、スリットランプでは、よーく頑張るとある程度、細胞のツブツブが分かるのですが、実際の診療ではもっと簡単に角膜内皮細胞の数を測定することができます。

スペキュラーマイクロスコープ
角膜に光を当てると、反射光が返ってきますが、角膜内皮と前房の房水との境界で作られる反射光にピントを合わせ、内皮細胞の拡大写真を撮影することができる機械です。

実際にはこんな機械に顔ののせて、中心部の光をじっと見ていると、機械によりますが黄色や緑の光が出てきて・・・・。ほんの数秒で撮影終了です。


?一番左が、先ほど取ってもらった僕の右目です。
1mmの四角の中に2942個の細胞があると計算されました。久しぶりに取りましたが、よかった。正常のようです。数として、3000個近くあるのが正常ですが、細胞の数以外にも、「一つ一つの細胞が6角形の形だと元気。」などと、いろいろな評価をします。
?中央は、一つ一つの細胞が大きめになって、1mmの四角の中に1162個の細胞があると計算されました。ある角膜内皮細胞が死んでしまうと、その隣の細胞が隙間を埋めるように大きくなります。なので、写真では一つ一つの細胞が大きくなったり、6角形の形がいびつになるなどの変化が起こります。
?右側の写真は角膜移植後の患者様の検査結果です。残念ですが、1mmの四角の中には、422個の内皮細胞しかないようです。一昨年は650個、昨年は550個あったので、もう少し時間がたつと、水疱性角膜症が再発し角膜が濁ってしまう可能性が推測されます。

スペキュラーマイクロスコープは、角膜が濁ってしまってからは、撮影することができない検査で、完全な水疱性角膜症に陥って、内皮細胞数が200とか300個とかの症例では検査を行う事ができません。上記の422個は、キレイに検査を出来るギリギリの結果です。

眼窩脂肪ヘルニア(脂肪脱)?

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 7件
・眼瞼下垂症手術 6件(CO2レーザー)
・緑内障手術 2件(エクスプレスシャント1件、隅角解離1件)
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
(黄斑前膜1件、糖尿病網膜症による硝子体出血1件)
みなさん無事に終わりました。
眼瞼下垂を行った方のうち、2名は今夜の時点で喜んで頂けました。電話でですが「嬉しかったので顔の写真を撮ったよ。」というお答えを頂きました。僕も嬉しいです。CO2レーザーは本当にいい機械です。

さて、先週書いた、脂肪脱の続きでも。
眼窩脂肪ヘルニア(脂肪脱)?

こんな感じで、目の外側の上の方に、眼球後方の脂肪組織がプリッと出てきてしまう病気です。

症状は、ゴロゴロなどの異物感や、あまりに大きいと外側の視界を遮ぎられる。などがあります。あとは、見た目(整容面)の問題で治療をご希望される場合も多いようです。

手術:脂肪ヘルニア切除
目薬で治ったら楽ですが、残念ながら現在は手術以外の治療法はありません。

まず、仰向けに寝て、目薬の麻酔を行い、消毒を行います。

仰向けに寝ると、重力で、プックリ出ていたヘルニアが小さく見えたりします。
脂肪ヘルニアは、結膜という粘膜やテノン嚢と呼ばれる結合組織で包まれています。まずは、ハサミで結膜やテノン嚢をチョキチョキ切って、摘出する脂肪ヘルニアを露出させます。
(CO2レーザーで行う治療も流行っていますが、当院では水色矢印のように切開部を軽くバイポーラで焼いてから、ハサミで切開しています。もしレーザーが脂肪に直接届いてしまったらと思うと、ちょっと怖くて・・・。)


緑矢印が脂肪ヘルニアです。周りの組織からヘルニア組織のみを丁寧に剥離していきます。


剥離・露出させた脂肪組織の根元を糸で縛り、縛った手前の組織はハサミでチョッキンと切ってしまいます。


縛った糸から向こう側の組織を、眼球の奥へ押し込むと、最初から何もなかったかのようにキレイに。

このまま手術を終えると、再度、脂肪が前に出てきてしまう(再発)ことがあるようで、

テノンと呼ばれる結合組織を、白目(強膜)に縫いつけて、脂肪が前に移動する隙間を閉じてしまいます。そして、最初に開いた結膜のキズを糸で縫ったら終わりです。
(手術方法は教科書や病院によって様々です。再発することがあり、みんな様々な術式を考えているようです。そう再発するものではないのですけどね。)


手術翌日は出血による赤身が目立ちますが、

2週間後にはかなりキレイなります。

目薬による麻酔で、だいたい片目が10分?15分程度の手術です。
両眼に出来ていることが多く、通常当院では日帰りで同時に行っています。
洗顔は翌日から可能です。

費用は少し変なのですが、
手術件数などで施設基準というものを満たすと、表在性眼窩腫瘍切除(価格高い)、基準を満たしていない施設では、結膜嚢形成手術(価格安い)という術式で請求されることが多く、病院によって多少の差が出るようです。
当院では、残念ながら少し高い方・・・。
ただし、70歳以上で日帰りの場合には高額医療費という制度に該当し、両眼で12000円となります。

水疱性角膜症? 角膜内皮細胞

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・老人性眼瞼内反症 1件
・結膜弛緩症手術 2件
・白内障手術 6件
・緑内障手術 1件
みなさん無事に終わりました。
結膜弛緩症などのブログも書いてないなぁ。まだまだ病気はいっぱいあります。

今日は角膜(黒目)の話題を。
水疱性角膜症?(すいほうせいかくまくしょう) 
角膜内皮細胞(かくまくないひさいぼう)
眼球は、黒目(角膜)から光が入って、目の奥のフィルム(網膜)に光が当たると物が見える、カメラのような構造をしています。入ってきた光が、目の中で進行方向を変え(屈折)、ちょうど網膜上で像を結ぶ(ピントを合わせる)ことができれば、物が良く見えるのですが、この、光を曲げる(屈折させる)役割を担っているのが、角膜と水晶体(レンズ)になります。

赤矢印の先が角膜になりますが、角膜は光をよく通す必要があり、出来るだけ透明でなくてはなりません。この、角膜を透明に維持する役割を担っているのが角膜内皮細胞になります。


角膜の拡大図ですが、角膜は1枚の膜でできているわけではなく、緑矢印がわ(眼球の外側)を薄く覆っているのが上皮細胞。黄色矢印がわ(眼球の内側)を薄く覆っているのが内皮細胞になります。上皮と内皮の間の最も暑い部分は角膜実質と呼ばれます。

角膜内皮細胞の最も重要な仕事は、角膜の水分量を調節することです。
角膜に余分な水が溜まり過ぎると、角膜が厚くなって、白く混濁してしまいます(水疱性角膜症)。角膜内皮細胞は、角膜に溜まった水分をポンプ機能により眼球の内側へと排出し、角膜の水分量は一定に保つことで、角膜の厚みや透明性が維持することに役立ちます。

今日もお読み頂きありがとうございました。

竹馬形成術

今日は日曜日ですが、患者さん(長女)に依頼されて、新しい術式に挑んでみました。幼稚園で流行っているのかな??

竹馬形成術
?近所のホームセンター(カインズホーム)で、細めの丸太を2本、薄い板(10mmx45mmx900mmくらい)1枚、麻のロープ、ボルト・ナットなどを買ってきます。

合計650円。

?丸太は患者さんの身長合わせて、少し切断し、電動ドリルで穴を開けます。

穴にボルトを通して、ナットで止めます。
(足をのせる板がズレにくくなるかと思ってつけてみました。正式に竹を使うと節があって、節の引っかかりでズレにくくするようですが、今の時期に竹を取りに山に行くのは蚊に刺されそうで・・・。)

?薄い板、ラワン材を買ったのですが、それを4等分にのこぎりで切って、丸太に、麻のロープで縛りつけました。


初めての術式でしたが、成功のようです。シックな竹馬ができました。

今晩は知り合いの家族と、家でバーベキューの予定です。
きっと子供たちで取り合いになるほど、大人気の竹馬になるかな?と期待大[:嬉しい:]

パン工房 ぶれっど

今日は土曜日でしたが、1?2週間前から、早めの手術が望ましい患者様が沢山になったので、午後から手術に。午前中に網膜剥離も来たので、そちらも一緒に。

上方の剥離ですが、黄斑が剥がれる前に対応できました[:グッド:]

週末なので、石岡市の紹介を。
パン工房 ぶれっどさん
八郷方面、柿岡にあるパン屋さんです。


緑がいっぱい。テラスやウッドデッキなど、いつも我が家の庭で真似したい(できるものなら)と思う素敵な外観です。

沢山のパンがあるのですが、一番人気という「幻のクリームパン」は、パンの皮だけが売っていて、レジに持っていくと、あとからクリームを入れる方式です。
僕は「イカスミベーグル」が、子供は「トトロのパン」が好みです。
そして、全体的にリーズナブル。6個くらいパンを買っても1000円くらい。

パン屋さんの横にケーキ屋さんが併設してあり、「石岡サンド」も売っています。(また書きたいと思っていますが、石岡サンドは市内の多くのデザート店が参加している、町おこしイベントです。)

一番東側には、レストランもあります。
出来たてのパンとや地区の野菜を使った、ハンバーグやパスタのセットが人気です。

茨城県で人気のあるサザコーヒーも入っています。
今年の夏休みの週末は、八郷のプールで子供と泳いだ後に、ここでランチ。というのが定番でした。

眼窩脂肪ヘルニア(脂肪脱)?

今日の午後は以下の手術を行いました。
・翼状片手術(遊離弁移植)1件
・斜視手術(前後転)1件
・白内障手術 12件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
 (裂孔原生網膜剥離:重症、黄斑前膜)
無事に終わりましたが、網膜剥離の方は古い全剥離で、網膜全周切開+シリコンオイル置換という大変な術式となりました。

さて、新しい話題でも。
眼窩脂肪ヘルニア(脂肪脱)?
ヘルニアとは、体内の臓器が、本来あるべき場所からズレてしまった状態を言います。
・脊椎の椎間板がズレると、椎間板ヘルニア。首なら頸椎ヘルニア、腰なら腰椎ヘルニアとか。僕は頸椎ヘルニアで困っています・・・。
・足の付け根の靭帯が弱って、隙間から腸がプリンっと出てきてしまう、ヘルニアも有名でしょうか?脱腸(だっちょう)とも呼ばれます。

眼窩脂肪ヘルニアは、その名前の通り、眼窩(眼球の後方)にあるべき脂肪が、移動して、目の前の方に出てきてしまう病気です。

ピンク矢印の先に、プックリとした柔らかい膨らみがあります。これが脂肪ヘルニアです。

眼窩脂肪
眼窩(がんか)とは、眼球が入る頭蓋骨のくぼみのことです。
(眼窩底骨折のサンプル)
ドクロって、目が入るところがくぼんでいますよね??
この眼窩の中に、眼球(目玉)や、外眼筋(がいがんきん)と呼ばれる眼球を動かす筋肉、血管や神経などが入っています。他に、眼球の後ろ側のスペースや筋肉の隙間は、脂肪で満たされていますが、この脂肪の事を眼窩脂肪と呼びます。眼窩脂肪は、眼球をぶつけた時にクッションの役割する事などをして役立ちます。

MRIですが、中央左にある白い丸が眼球。その後ろ、写真の右側に筋肉や脂肪が写っています。イメージ図の方がいいかな?

・赤矢印の先が外眼筋。外眼筋は大きなものが、上下右左の4つ、他に斜めに働く小さめのものが2つで、合計6つの筋肉が眼窩の中におさめられています。
・緑矢印の先の黄色い部分が眼窩脂肪です。眼窩脂肪ヘルニアは脂肪が青矢印の方に、眼球の前の方に出てきてします病気です。

原因は、strong>ほとんどが加齢・年齢によるものです。
本来眼窩の中は、眼球や筋肉、筋膜(靭帯)などでギュウギュウに埋められているのですが、筋肉や靭帯が加齢によってやせ細って、眼窩に隙間ができ、その隙間から、本来眼球よりも後ろ側にあるべき眼窩脂肪が、眼球の前の方に出てきてしまうのです。

同じ人の左右の目では、眼窩の形状や眼球の大きさ、外眼筋などに大きな違いがあることは少ないので、両眼性になる場合が多いようです。

治療法などは別の機会に。今日もお読み頂きありがとうございました。

緑内障25 最新手術 バルベルトチューブシャント?

今日は白内障手術を8件、夕方は県内の他院様にて硝子体手術のお手伝いでした。
手術は問題なく無事に終わりましたが、今日は久しぶりに助手なしでの手術になりました。数年前は、助手なしで1人で手術をすることが多かったのですが、現在は井上先生や、その他沢山の先生に代わる代わる来て頂いたり、ナースにも助手をしてもらう事もありますが、みんな気配りのできる人ばかりなので、僕は手術に集中できて助かっています。久しぶりに1人でやってみると、ありがたさを再確認できます。支えて頂き、本当にありがとうございます。

さて、昨日バルベルトチューブシャント?を記載しましたが、さっそくコメント欄で質問を受けたので、そのあたりについて、書いてみようと。
緑内障25 最新手術
バルベルトチューブシャント?

以前も記載しましたが、この春・4月から緑内障手術で、チューブシャントという術式や、手術に使用する物品の費用などが、保険診療内で行う事が出来るようになりました。
バルベルトが4月。エクスプレスが6月に発売され、今までは自費で輸入して頂いかなくては行う事が出来なかった医療が、保険診療で出来るようになったことは喜ばしいことです。

ただし、新しい手術方法には、それなりに不安定な要素もあり、飛びつけばいいというものではありません。
現在のところ、当院で行ったチューブシャントは全例で大きな合併症もなく、眼圧の経過も良好ですが、5年後、10年後にどういう経過となるかは、今後もしっかりとした観察が必要です。

エクスプレスシャントは、基本的に通常のトラベクレクトミーを簡易化・安定化させたようなもので、もしも眼圧が上昇しても、通常の手術に乗り換えることは、難しいことではありません。基本的には、初回の緑内障手術(トラベクレクトミー)に対して、行われることが多くなります。

では、バルベルト チューブシャントはどうかというと、バルベルトは基本的には、他の緑内障手術を複数回行ったうえで、それでもどうにも眼圧の安定を得られない、難症例・超重症例に行うための手術方法と考えられています。

トラベクレクトミーを繰り返して行った人は、黒目・角膜の近くの結膜で、ブレブ(房水の貯留池)を作ることが困難になります。そんな時に、バルベルトチューブの中を通して、眼球の後方に水を排出させるという方法ですが、大きく切ったり縫ったりすることが必要になり、一度バルベルトを縫いつけた場所は癒着がひどく、追加の手術を行う事が困難になります。

また、通常のトラベクレクトミーでつくられるブレブは、黒目・角膜のすぐ上などにプックリと出来るため、水がきちんと排出されているかなどを、診察で簡単に確認することができます。もしも、ブレブに癒着が起こっても、ニードリングという処置で癒着を剥がすことも出来ます。

通常のトラベクレクトミーでつくられる、ブレブのイメージと写真です。

一方、バルベルト手術を受けた人の診察の写真です。、

左の青矢印の部分を拡大したのが、右の写真ですが、ピンク矢印の先に眼内に差し込まれたチューブの一部は見えるものの、

イメージのように、水が目の奥の方に流れて溜まっていく様子は、診察では調べることができないのです。なので、どの程度、水の貯留池ができているのか、癒着が進んでいるのかどうかなど、詳細を把握することが困難なのです。

少し難しい内容となってしまいましたが、まとめとしては、バルベルトチューブシャントの術式は、他の緑内障手術を行っても上手くいかない場合に、他の方法がないので、仕方なく行う最終手段。といった意味合いの強い手術になります。
(現時点では、バルベルト手術を行った場合、全例で定期的な経過観察を行い、経過報告を厚生省に提出することが義務付けられています。)

医学の進歩とともに、新しい手術方法がどんどん増えています。緑内障の手術と言っても、何種類もあるのですが、個々の症例に対して最適と思われる手術方法を提案・実施することが、僕たちの責務です。

緑内障24 最新手術 バルベルトチューブシャント?

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 8件
・眼窩脂肪ヘルニア(脂肪脱)切除  2件
みなさん無事に終わりました。
今日はいつも助手に来ていただく先生がお休みで、大先輩の先生に助手に来て頂きました。緊張しましたが「上手」と褒めて頂き、とても嬉しかったです。今後も「人に見て頂いて恥ずかしくない手術」ができるよう、もっともっと精進します。

緑内障24 最新手術 バルベルトチューブシャント?

緑内障の再手術が必要になった場合、ブレブという房水の貯留池を作るための結膜などに癒着や萎縮が起こっているため、同じ場所での手術ではキレイなブレブが作りにくく、難しい。といったことを、先日のブログで記載しました。
なので、2回目の手術などでは、場所を少しずらして手術をします。例えば1回目の手術が黒目(角膜)の右上の方であれば、2回目の手術は黒目の左上の方にブレブを作ったりします。しかし、何度も手術を繰り返して、癒着をしてしまう人では、黒目の周りが癒着だらけになってしまって、ブレブの作り場所に困ってしまいます。

黒目・角膜のすぐ近くの結膜に癒着や萎縮があると、上のイメージ図ような場所にブレブを作成することができなくなってしまうのです。

そんな時に、水の貯留池・ブレブを黒目・角膜の周りではなく、もっと目の奥の方に作ることがあります。そんな時に使用するのが、バルベルトチューブシャントになります。人工のチューブを目に縫いつけて、離れた場所に水を流す術式です。

イメージではこんな感じ。黒目から後ろ側に離れた場所にブレブ・水の貯留池を作ります。

では、実際の手術の例で。
2ヶ月くらい前の手術ですが、患者様はサルコイドーシスというぶどう膜炎が原因で緑内障となり、10年くらい前から眼科で治療をしています。これまで大学病院での手術歴もあり、両眼で7回程度の手術を繰り返し受けていますが、眼圧が上昇してしまいます。

まず、仰向けに寝て、消毒と麻酔の注射をします。
次に、結膜を一度剥がして、バルベルトチューブを入れるポケットを作ります。


縫いつけるバルベルトチューブはとても大きいので、かなり大きなキズを作る必要があります。


これがバルベルトチューブですが、左側のチューブの先端を前房とよばれる角膜の後ろ側に挿入します。チューブの中を矢印のように水が流れて、目の奥の方に縫いつけた、右側のプレートから水が奥の方に広がる構造です。



結膜を剥がしてできたポケットにバルベルトを挿入します。大きいですよね?実はバルベルトにも3種類の形があるのですが、これよりももっと大きなものもあるのですよね。
右の写真はポケットにいれて、動かないように白目・強膜に縫いつけているところです。水色矢印のさきが水が漏れ出すプレート部。黄緑の矢印の先が水が流れるチューブになります(中に血液があり赤く見えます)。
このチューブがむき出しだと、チューブがズレたり、感染したりしやすいので・・・、


白目・強膜の一部にナイフで切り込みを入れて、めくりあげ、チューブを包み込みように縫いつけて固定します。チューブの先端は、黒目・角膜と白目・強膜の間くらいから、眼球の内部に差し込まれます。
イメージではこんな感じに。

最後にはじめに剥がした結膜を、元通りに縫いつけて手術終了です。

最終的には、チューブの中を水が流れて、通常の緑内障手術・トラベクレクトミーよりも、水の貯留池・ブレブが眼球後方にできます。水が目の外に流れる分、内圧が低下し、眼圧が下がる仕組みです。

局所麻酔で40分程度の手術ですが、バルベルトには3つのタイプがあり、手術方式も若干の違いがあります。どちらかというと、眼科の中では大きな範囲を切ったり縫ったりする手術ですので、手術自体は多少の痛みがあります。痛みに弱い方は、セデーション(少し眠くなる処置)がいいかもしれません。

今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

H24年8月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

今日の午後は知り合いの先生の医院へ、硝子体手術のお手伝いに行きました。
初めてお会いする先生も見学に来ており、夜に食事をしながらお話をさせて頂きました。出身大学の異なる先生方とのお話は、とても勉強になります。また機会があればお会いできればと思います。

さて、8月の治療実績を集計しました。
重症例や緊急手術の紹介が多く、祭日がなくて手術日も多かったので、集計してみるとやはり過去最高の手術数となったようです。忙しかった実感はありましたが150件を超えるとは・・・。
H24年8月の手術実績
手術合計 151件
内訳

・白内障手術 102件

・網膜硝子体手術 22件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 9件
・涙器の手術 2件(NSチューブ・涙嚢切開など)
・眼瞼(まぶた)の手術 5件(眼瞼下垂・さかさまつげ・霰粒腫)
・結膜の手術 8件(翼状片・結膜縫合)
・その他の手術 3件(斜視・瞳孔形成・角膜形成など)

レーザー手術合計 6眼
内訳
・網膜光凝固 7件(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 6件(後発白内障に対するレーザー)
・SLTレーザー 1件(緑内障に対するレーザー)

*手術数は、分院である小美玉市医療センターとの合計数です。手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。 白内障の手術時に、逆さまつ毛や眼瞼下垂の手術を追加で行っておりますが、それらはカウントしておりません。

抗VEGF薬 硝子体注射 36件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・マクジェン・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 21件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。トリアムシノロン)

白内障などの緊急性のない手術の待ち時間は、4ヶ月待ち、年明けからの予約となっています。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)

楽しかったです。

今日も網膜剥離の紹介があり、午後の外来の途中でやっつけました!
明日も知り合いの医院様で硝子体手術があり、今週は月?土曜まで、初の平日一週間の硝子体完投です。
夕方は、口腔外科の先生と眼窩底骨折の手術でしたが、他の科の先生の手術はとても刺激的で、ワクワクします。いっぱい技術を盗まなくては。

眼窩底骨折についても、検査や治療など、今後ブログで書いて行きます!

夜は、そのまま口腔外科の先生と復習会?飲み会?に。
いつの間にか外科の先生とも合流して、夜中まで思いっきりストレス発散です。
結構な時間になってしまいましたが、僕は明日の手術は午後からなのでいいですが、他の先生は朝から仕事かな?山王台のDr.みんな若い!!