心構え

今日は土曜日ですが、午後に少し急いだ方がいい重症例・難症例の手術を行いました。
・白内障手術 5件
・網膜硝子体手術 3件(茎離断1件、増殖2件)
問題なくできました。



白内障手術の写真ですが、この方は、ぶどう膜炎・角膜内皮炎後の患者様で、水泡性角膜症(角膜内皮400弱)の状態です。黒目(角膜)が濁っている状態で、目の中に入れた機械もボヤけて良く見えません。水晶体の濁り(白内障)も殆ど見えない状態です。手探り状態での手術は危険度が高いのですが、心の目?、何度も何度も重ねてきた手術の経験で、「このあたりに濁りがあるはず」というイメージを描きながら手術をします。
10分程度と、少し時間は長めでしたが、無事に通常の手術(PEA+IOL)ができました!
(この患者様は、角膜移植をしないと視力は回復しません。今回は成熟白内障による眼圧上昇が起こってしまい、緊急性の問題から、まず白内障を除去して、安全に角膜移植の待機をすることが手術の目的です。)


これは30代の増殖糖尿病の患者様。既に視力は0.1しかありません。
両手を使って、カサブタをキレイに除去することができました。視力の回復は困難ですが、失明は避けられたかと思います。

なんと、同じ人の反対目。こっちもカサブタだらけ・・・。手術自体は満足いく結果ですが、明日以降の観察が重要です。

上記の患者様たちの手術は、超重症・難症例ですが、昨日から「明日の手術は頑張るぞ!!」とイメージトレーニングをしたり、朝にはゲンを担いでみたり??
難しい手術の前は、なんとなく気持ちが戦闘態勢になります。

ただ、今日は一件、とっても疲れる手術が・・・。
硝子体出血という、目の中が真っ赤に出血し、物が見えなくなる病気があります。以前のブログでも書いたのですが、出血をした原因によって、治療や予後が様々です。
今回は、50代の男性で、総合病院様からの紹介。視力は明るい・暗いが分かる程度に低下しています。実は、以前に左目の糖尿病網膜症で手術をした病歴があるものの、その後の定期健診をサボってしまったようです。今回出血した右目も、同様に糖尿病が原因では?とのことで、紹介となったのですが、
本日、手術で出血を除去していみると、糖尿病網膜症はほとんどなく、網膜剥離という病気が出血の原因であることが判明しました・・・。

矢印の先に網膜の断裂部です。かなり大きな断裂の、重症の網膜剥離です。
糖尿病のちょっとした出血で、簡単に洗浄して終わり?と予想して、手術の時間も30分位を予定していたのですが、途中で網膜剥離が原因であることが判明し、時間も50分ちょっとに延長。術後もうつ伏せが必要になってしまいました。
幸い、視力があまりに悪く、患者様も早期の手術を希望されたので、視野の中心部の網膜は保たれ、視力もまずまず回復するものと思います。

予想外に難しかったり重症であることが、手術中に急に判明すると、こちらの心構えができておらず、少しあたふた、気持ちが揺らぎます。
しかも、今日の手術の中では、一番簡単な症例だと思っていた症例で、手術の順番を1番目としていたため、その後の手術の時間も少し遅れ気味になったり・・・。

いつでも、どんな病態に出会っても、ポーカーフェイスで、涼しく乗り切れるような、強いハートを持てるようになりたいと思った一日でした。頑張るぞ!

眼球破裂:一次縫合

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 13件
・緑内障手術(エクスプレスシャント)1件
・網膜硝子体手術 2件(茎離断1・切除1)
・強角膜縫合 1件(破裂一次縫合)
最後に1件、緊急手術がありましたが、定時に終えられました。

今日の緊急手術からひとつ話題を。
眼球破裂:一次縫合
60代の女性、昨日転んでしまい、左目をぶつけてしまったようです。
水戸市の総合病院様を受診し、午前中に紹介となりました。
視力は光覚弁(-)、とりあえずですが、明るい暗いも分からない、失明の状態です・・・。(手術後に光を取り戻せるといいのですが)

黒目(角膜)の内側が真っ赤で、出血がひどくて、眼内の状態は不明です。
白目(結膜・強膜)も真っ赤で、結膜下出血と呼ばれる状態です。(結膜下出血のブログ
単に目の中で出血しているだけなら、様子をみるだけで勝手に止血されて、キレイになっていく場合もあります。出血が止まらなくても、最終的に手術で洗えばキレイになります。
ところが、よーく診察してみると、反対の目に比べて、少し目が柔らかいようです(眼圧が低い)。
そんな時は、眼球破裂といって、目玉がパンクしてしまって、中身が漏れ出てしまった分、眼球が柔らかく(眼圧が低く)なっている可能性があります。

眼球破裂を疑って、頭部のCT検査をしてみると、

写真左側が右の眼球ですが、右の眼球はキレイな状態です。赤矢印の先は、白内障術後の眼内レンズです。
写真右側が左目の眼球ですが、右に比べて、内部の色が不均一なのが分かりますか?緑矢印の先の濃い白は、濃厚な出血の塊です。水色矢印の先の真っ黒は、空気になります。⇒残念ながら、眼球破裂が確定です[:悲しい:]
(CT検査では、破裂の有無だけでなく、眼内にガラスや、石の欠片など、異物が見つかることもあります。素手で殴られたとか、明らかに異物がないと言い切れる場合を除き、必須の検査です。)

一次縫合
眼球破裂は、眼科で扱う外傷のうち、最も重篤なものです。
多くの場合で、目の中身が外に出てしまったりします。目の中の何が、どのくらい出てしまったかによって、予後は様々ですが、完全に元通り。なんてことはあり得ません。むしろ、ある程度以上の網膜が破れたり、外に出てしまったりしている場合には、失明することのほうが余程多いのです。

目の中身の殆どがなくなっている場合や、破裂のキズが複雑で、眼球の形状を保てない場合などには、眼球内用除去術という眼球の中身を摘出するような手術をして、義眼の装用を勧める場合もあります。

白内障などの通常の手術では、手術の前に、どういう手術を行って、どんな結果が予想される。という事を説明してから手術を決定します。ただし、眼球破裂では多くの場合で、「手術をやってみて、キズの状態をみてから、良いと思う方法をとりますね。」という説明を行います。(もちろん、最悪の場合は眼球内用除去+義眼とか、一次縫合のみとか、硝子体手術も行うなどの、複数の可能性を説明はしておきます。)


手術室で、消毒を終えた状態です。眼球内は真っ赤ですが、軽く触るとペコペコに柔らかい状態です。どこかにキズ(穴)があって、中身が漏れているようです。


ハサミで結膜を切って、白目(強膜)のどこかに、穴がないか探していきます。
ここにはないようですね。(写真左上の白目はキレイなようです。)


あった!キズがありましたよ。
写真で黒目(角膜)の下方に、緑矢印から緑矢印まで、長ーいキズがありました。5,6年前に白内障手術を受けていたとのことですが、その時のキズがパックリと開いてしまったようです。
(あとあと聞いたら、以前に知り合いの先輩医師に白内障手術をして頂いたようです。先輩すみません。残念ながら、眼内レンズは目の外に飛び出てしまっているようです・・・。)
眼球破裂で、キズ口を探す場合に、昔うけた白内障手術のキズ口が開いて、中身が出てしまうことは、比較的多いようです。(眼球破裂をする人は、非常にまれですので、白内障手術を怖がる必要はありません。)


中の水などが漏れなくなるまで、キズ口を糸でしっかりと縫っていきます。


黒目(角膜)のすぐ裏側にべったりとついた血の塊を除去しています。
出血を洗い流して、網膜剥離などが確認されれば、それも治さなくてはいけません。(出血している状態では、目の中をのぞくことができないため、網膜剥離などが起こっているかを正確に判断することはできません。)

ところが、この患者様、もともと心臓の病気があり、ワーファリンという、血液をサラサラにして、血が固まりにくくなる強いお薬を飲んでいるようです。
少し眼内の洗浄をしてみましたが、血が止まる気配がありません
こんな時は、潔く撤退です[:GO!:]
今日はきっぱりと撤退し、30分ちょっとの手術で終了です。

血みどろの状態で手術をしても、成功率や安全性が低下します
また、眼球後方の硝子体手術は、目の中に水を循環させながら行うのですが、破裂のキズ口を縫ったとは言っても、しっかりとくっついているわけではないので、循環させる水が漏れ出たりして、やはり安全性が低下します。

眼球破裂の緊急手術では、安全性が低いと思ったら、まずはキズ口を縫って止めるだけ。
これを、一次縫合といいます。
(もちろん、安全に手術が出来ると思える場合には、その場で出来る限りの手術を進めていきます。)
数日から2週間程度で、出血やキズの状態が落ち着いたところで、網膜の手術2次手術を行う事を考えていきます。

といっても、この患者様が、今後、どんな手術を行う事なるかは、まだまだ未定です。数日後に血が止まって、詳しく検査が可能になったら、網膜の大部分が失われていた。なんていうことが見つかる場合もあり、そんな場合には、今回の一回の手術で終了で、視力や追加の手術を諦めて頂くこともあります。
逆に、追加の硝子体手術で、シリコンオイルを入れて(2次)、数ヵ月後にシリコンオイルを抜いて(3次)。眼球破裂では、後から水泡性角膜症という病態を伴う事もあり、最終的に角膜移植(4次)をして。少しの視力を残すために、何度も何度も手術を重ねる場合もあります。

まずは数日間、入院して頂いて、経過を見守りたいと思います。
少しでも明るさが残るといいのですが。

予習

今日の外来は午前中だけで78名と、かなり混雑しました。
13時から小美玉で白内障10件、夕方から他院様で硝子体手術3件のお手伝い。
遅刻をしないように。と頑張りますが、移動の車で事故を起こさないように気をつけなくては[:車:]

予習
一昨年の開院以来、ずっと続けていることがあります。
それは、翌日受診予約の患者様のカルテを、前日に予習することです。
「明日はどうしようか?こうなってたら、ああしよう。こうだったらあれにしよう。」なんてことを、カルテにメモしています。

残念ながら僕は天才ではないので、全員の患者様の名前・お顔・視力・病状を暗記することはできません。
なので、予約外の患者様の場合には、「こんにちは。ちょっとお待ちください。」と挨拶をして、「ええっと、この方は何の病気だっけ??」と考えながら、以前のカルテをパラパラ見直します。
予習さえしておけば、僕の頭でも丸1日くらいは、だいたいの内容を覚えておくことができるので、診察室に入った瞬間、「手術後半年経ちましたが、如何ですか?」「この間の目薬はどうでしたか?」なんて言うことが可能になります。カルテを見返す時間が無くてすむので、診療の待ち時間の削減にもつながっているかと。

半日で78名の患者を診察すると、どうしてもお一人お一人との時間が短めになってしまうのですが、少しでも濃度の濃い時間でご満足頂けるように、予習を続けていきたいと思います。
ちょっと自慢ですが、なんと、この2年半、予習をサボった日は一日もないのです!(夜にお酒を飲んで、翌日の早朝に二日酔いで点滴をしながら、予習をしたことは何度かありますが、それでも外来の前に間に合わせました。)
これからも頑張ろう[:グッド:]

今日は、来年から入職してくれるかも?しれない、ORT(視能訓練士)さん2名が見学に来てくれました。時間がなく、挨拶もできませんでしたが、せっかく来てくれたのに本当にごめんなさい[:しょんぼり:]
質問があれば、お電話下さいね。

加齢黄斑変性症? 検査:アムスラーチャート

なかなかブログの時間が取れずに、更新が滞ってしまいました。
少しづつ進めていきます。
今日のお昼は、白内障手術を8件。無事に終わりました。

加齢黄斑変性症?
検査:アムスラーチャート

黄斑変性症では、視野の中心部の見え方が悪くなりますが、
症状としては、中心部の見え方が、
・ゆがんで見える
・中心が暗く見える
・ぼやけて見える
・不鮮明になる
 などが起こります。
ただし、これらの症状は、片方の目だけが病気の場合、両眼で物を見ている時には自覚症状に気がつきにくい。という特徴があります。
ですので、病状を実感したり、悪化していないかを調べたり、自分に病気が無いかを調べたりするのは、片目をつぶって検査をする必要があります。

黄斑変性症では、眼底検査やOCT検査など、病院で行う検査が重要なのはもちろんですが、自宅で自分で病状をチェックする場合に役に立つのが、アムスラーチャートです。

ちょっと専門的な名前ですが、実際にはただの方眼紙です。
通常は各直線がまっすぐに交差して見えますが、黄斑変性症では以下のサンプルのように、ゆがんだり、暗く見えたりします。

みなさんは、問題なく、線がまっすぐ見えますか?
線がゆがんだりする病気は、黄斑前膜や、糖尿病や静脈閉塞症に合併する黄斑浮腫など、黄斑変性症以外の病気もありますが、どれも早めの治療が望ましい病気です。片方の目をつぶって、片目づつチェックをして、もし異常を感じたら、明日すぐに眼科にかかりましょう。

当院でfollowを受ける人には、できるだけアムスラーチャートを渡して、
病状に応じて、「冷蔵庫に貼っておいて、一ヶ月に1回はチェックして。」「一週間に1回はチェックして。」などとお願いしていますが、もしも、見えかたに悪化が起こった場合には、再診の予約日の前でも、出来るだけ早く受診するようにお願い致します。
(僕は患者様についつい、冷蔵庫に貼って。と説明してしまうのですが、冷蔵庫にプリントとかを貼るのって、一般的ですかね?僕の実家では、いろいろな物が冷蔵庫に貼ってあったのですが・・・。)