黒目が濁っている:Terrien周辺角膜変性症

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 11件
・緑内障手術 1件
・網膜硝子体手術(茎離断) 4件
 (黄斑前膜3件、糖尿病網膜症・硝子体出血1件)
無事に終わりました。

手術の内容ではないのですが、今日手術をした患者様の病態から一つ。
Terrien周辺角膜変性症
角膜(黒目)は眼球に光を入れる窓口としての役割があり、光をよく通すために、正常な角膜は血管もなく透明な臓器です。
角膜が濁ってしまうと、濁った部位は光がとおりにくくなってしまいます。特に角膜の中心部が濁ると、視力が低下して困ってしまうのですが、角膜・黒目の周りに濁りは直接は視力に影響しません。
以前に、特に問題ない角膜のリング状の濁り「老人環:ろうじんかん」に関して記載したことがあるのですが、今日の外来でも、老人環の見た目を心配して来院された女性が1名いらっしゃいました。

ただし、黒目の周りがリング状に濁ってしまう病気は、良性の老人環のみではありません。角膜周辺部潰瘍、Mooren潰瘍など、悪い病気もあるのですが、今日は別の濁りが出てしまった患者様の手術があったので、記載してみます。

70代の女性で、小美玉市医療センターで2,3年前から担当させて頂いています。
はじめてあった時から、下の写真のように、黒目の周りが濁っていたのですが、年単位で振り返ると、徐々に濁りが増えているようです。
病態

写真のように角膜の周辺部がリング状に混濁します。良性の老人環に比べて、不均一で強い混濁を認めます。はじめは黒目の周辺に点状の混濁が始まり、徐々に混濁が強くなります。混濁は脂質が蓄積したり、本来角膜には存在しないはずの血管が侵入したり、正常なコラーゲン組織が破壊されたりして起こります。混濁と同時に角膜の厚みが薄くなって、脆くなっていきます。
重症例では、ちょっとしたケガでも薄くなった場所に穴が開いてしまう事があり、緊急手術が必要になることもあります。

症状
病気自体には強い炎症が起こることはなく、通常の落ち着いた状態では痛みなどはありません。ただし、表面がデコボコするため、キズがつくなどして痛みや炎症が起こることもあります。
余程でないと、角膜の中央までは混濁が進むことはないのですが、混濁部位を中心に角膜にヒキツレ・歪みが生じて、不正乱視とよばれる状態が起こり、視力が低下していきます。

疫学
どの年齢にも、男性にも女性にも発症することがありますが、中高年の女性に発症することが最も多く、多くは両眼性です。

原因
残念ながら正確な原因は不明です。

治療
残念ながら、進行を止めたり混濁を治したりする治療法は、現在の医学では存在しません。

今日の手術は、Terrien周辺角膜変性症の病気自体を治すわけではなく、病気をお持ちの患者様の手術だというだけなのですが、

まず左目の手術を行いました。近年は白内障の手術のキズ口は2mm程度と非常に小さいので、キズ口を縫う必要がないのですが、Terrien周辺角膜変性症ではとにかく角膜が薄いので、多くの場合でキズの縫合が必要になったりと(右写真)、通常の手術に比べて気を使う事が多々あります。続けて、緑内障の手術を行いました。

予想外に?キレイに行う事が出来たので、そのまま続いて右目の手術も。


まず白内障を行いますが、やはりキズ口は縫って補強します。緑矢印の部分は「偽翼状片:ぎよくじょうへん」と呼ばれる病態で、Terrien周辺角膜変性症では時々合併するのですが、偽翼状片が出来ると混濁部が広がり、さらに手術が難しくなります。

こちらの目は、引き続き硝子体手術(黄斑前膜)を行いました。

実は半年ちょっと前から、左目の緑内障も、右目の黄斑前膜も手術をしたほうがいいと思っていたのですが、角膜の混濁と、薄くて弱い所見から、手術で合併症が起こったら嫌だな。とためらっていた患者様です。
結局、視力も視野も悪化傾向であり、「やるしかないだろ。」と決意をして、お勧めしたのですが、終わってみれば、問題なく上手にできました。(もちろん、明日以降の観察が必須ですが。)
これなら、半年前にやってしまった方がよかったのでしょうが、全てが全て、期待通りにはいかないので、難しいのですよね・・・

「白内障、硝子体、緑内障」
他院様で手術不可能と言われた、難症例の手術もお引き受けしていますので、そのようなことがありましたら、是非お問い合わせください。

角膜鉄片異物

今日の話題から一つ。
角膜鉄片異物
角膜鉄片異物はその名の通り、角膜(黒目)に、鉄のかけらなどが刺さった状態です。当院には2週に1名か2名程度の患者様がいらっしゃいますが、殆どの患者様が男性で、「仕事中にサンダーで鉄を削っていて痛くなった。」などの理由が多いようです。

先週の患者様です。(緑内障の手術後で、上方の瞳孔が欠けています。)

瞳孔の左下、水色矢印の部分に黒いかけらが刺さっているのが分かりますか?
このままほっておくと、鉄の周りが炎症を起こし、錆が角膜に沈着し、炎症を起こして角膜が白く濁っていきます。キズに感染症が起こると最悪失明に至ることも。

点眼薬の麻酔をして、針やセッシで鉄のかけらを除去します。
刺さってすぐに来てくれたら、錆が残らずに簡単に除去できて楽なのですが・・・、

だいたいの人は、数日我慢して、それでも痛いから。と受診されます。この方も、錆が出てきて、角膜に茶色いリングが残っています。錆を残すと、炎症が長引いたり、角膜に濁りが広がってしまう事が多いので、出来る限り除去します。

まるで歯医者さんのようですが、こんなドリルを当てて角膜を削ると、錆は簡単に1?2秒で除去できます。

多くの方は、目の前で作業をされると怖くて目が動いてしまいます。僕たちはまっすぐ見ていて頂くのが一番やりやすいのですが、動くと危ないので、あまり針などが見えないように、出来る限り、横や上を見ていて頂いて、目が動かないうちに、パパッと作業をします。

まずまずキレイになりました。
削ったところは、感染症に弱いので、抗生物質の目薬キズを早く治すための目薬(ヒアルロン酸など)、痛みが強い場合には軟膏を入れて眼帯をするなどの処置を行って頂き、2?3日後に必ず再診をお願いしています。

この方は、3日後に再診に来て頂いた時点で、キズが治り、濁りの残存もなく、キレイになっていたため終了となりました。

皆さんが、きちんと目薬をつけて再診に来て頂けると助かるのですが、残念ながら、角膜鉄片異物で処置をした人は、半数程度が再診をしてくれません・・・。
鉄片をとって薬をつけ、痛みが消失してしまうと、受診したくなくなるようです。だいたい、仕事を持っている男性に起るので、仕事が忙しかったり、建築関係の人などは点眼薬を持ち歩いて、昼につけたりするのは難しいのかな?
例えば、この方は半年前の患者様ですが、

青矢印の部位に鉄片を認め、除去しました。

2日後の再診では、軽度の混濁を認めるものの、まずまずキレイになってきています。ところが問診で、「忙しくて薬は付けてない。」と・・・。濁りが出そうな患者様にはステロイドという目薬を使うのですが、処方を行い一週間後に予約をとりました。
と、残念ながらその後、音信不通に・・・。
その方が本日、別の目のメヤニで久しぶりに来院されたのですが、

思いっきり濁りが残って拡大しています。角膜がヒキツレて、デコボコになる不正乱視という状態となっており、視力も0.8まで下がってしまいました。もう半年もたっているので、今更目薬を使っても治せません。まだ若いのですが、視力1.0は諦めて頂きます・・・。

痛みが取れても、きちんと治療をしないと、角膜に濁りやヒキツレが発生して、5年や10年など、長時間たってから視力が低下してしまう事もあります。将来、白内障の手術が必要な場合にトーリックレンズなどの高性能レンズが使えなくなってしまうケースもあります。

角膜鉄片異物で受診される方にお願いです。
忙しいと思いますが、
?きちんと目薬をつけましょう。
?きちんと通院をしましょう(ほとんどが2回、たまに3回受診するくらいです)

?サンダーなどを使う時にはゴーグルをつけましょう。

今日も30歳くらいの若い男性の鉄片を除去しました。土曜日に再診の予約をとったのですが、来てくれるかな?

個人的な話題で申し訳ありませんが、錆を取るドリルの写真を見ていたら、歯医者さんを思い出しました。実は、親知らずが生えていて、痛みがあるため、23日の土曜日に口腔外科の先生に抜いてもらい予定です。山王台の口腔外科先生たちは評判がいいので、安心してはいるのですが、僕もなかなか休めないので、一回で4本全部抜いてもらう事に。大丈夫かな?月曜の外来でちゃんとしゃべれるかな?
人の手術は簡単ですが、自分が受けるのはプレッシャーを感じますね[:冷や汗:]

帯状角膜変性症? 治療:薬剤での混濁除去

今日の午後は以下の手術でした。難しい手術はなかったので、5時頃には無事に終えることができました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 2件
・緑内障手術(トラベクレクトミー)1件
・網膜硝子体手術(茎離断:黄斑前膜・円孔)1件
・角膜形成術 2件(白内障同時:保険請求なし)

ただ、午前の外来ではちょっと頭が痛くなる方も・・・。

無治療の糖尿病網膜症です。眼科は初めて受診とのことですが、目の中がカサブタだらけです。OCTの断面図でも、網膜がヒキツレて大きく剥がれています(青が増殖膜、ピンクが網膜です)。視力はメガネをかけても0.04。ビックリするのは、なんと、こちらは良い方の目です。もう一つの目は、目の中がタンパク質(フレア)で濁っていて、写真が撮れないのですが、OCTでは

やっぱり剥がれまくり・・・。視力は光覚弁(0.01未満)です。
待っていられないので、準緊急で両眼とも今週末に臨時手術です。
糖尿病のかたはきちんと眼科を受診しましょうね。

さて、今日の手術から一つ。
帯状角膜変性症? 治療:薬剤での混濁除去
帯状角膜変性症は角膜(黒目)に、カルシウムなどが沈着し、角膜が濁っていく病気ですが、詳しくは以前のブログを参照下さい。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=139356

初期治療として、もっともキレイにできる治療はエキシマレーザーですが、現在のところ、保険診療で受けることはなかなかできません。今日は保険診療で可能な治療法の一つで、薬品を使用する方法を行いました。

ご近所の眼科様から紹介して頂いた80代の女性です。

右目と左目の写真です。
帯状角膜変性と、白内障の影響で、メガネをかけても視力は右目が0.04、左が0.01しかありません。

手術では仰向けに寝て、目薬の麻酔を十分効かせ、目を開いたままにする器械をつけます。
次に角膜の表面に張っている、角膜上皮と呼ばれる膜状の組織を、鑷子でこすって剥がします。

上皮が剥がれて、濁りが露出されました。


綿棒に薬剤をしみこませて、15秒程度軽くこすります。
EDTAという薬品や、塩酸という薬品を使用して、濁りを溶かし出していきます。
濁りをしっかり取るためには、頑張って掃除をしたいのですが、長い時間薬を作用させすぎると、薬の副作用で、逆に角膜が濁ってしまうため、どこまで治療をするかのバランスが腕の見せ所です。角膜の端から端までキレイにしよう、なんて思ってはいけません。視力に重要な中心部を重点的に掃除します。
(当院では、症例によって、1%?2%の塩酸を使用しています。)


キレイに溶けましたら、急いで、水をタップリかけて塩酸を洗い流します。

この方は、白内障手術も引き続き行い、そのまま同じ手術を反対目にも行いました。
角膜の上皮(表面の皮)が再生するまでの2日位は痛みが強いのですが、最後にソフトコンタクトレンズをかぶせることで、痛みをかなり和らげる事が出来ます。


手術から3時間半、20時の診察ですが、かなりキレイになっています。(リング状に白く見えるのは、角膜上皮を剥いたキズあとで、2日くらいたつとキレイになります。)コンタクトレンズのおかげで、両眼ともに眼帯しなくても痛みもないようで、すでに「見える!」と喜んでいただきました。

*本来、最もよい視力を期待したいのであれば、帯状変性の治療が終わって、角膜の状態が落ち着いてから、白内障の手術を行うのがよいでしょう。角膜を削ると、角膜の形が変形してしまい、白内障手術で近視や遠視などのコントロールの精度が落ちてしまうからです。
今回は、年齢や認知症の問題、生活が成り立たないほど視力が悪く、治療を急いだこと、治療費の問題などもあり、同時に行っています。
保険診療で白内障と帯状変性の手術を同時に行った場合は、帯状変性の治療費(片眼26500円)が無料になります。

帯状角膜変性症?

今日の午後は小美玉で井上先生と手術、夕方は県内の医院様で硝子体手術のお手伝いをさせて頂きました。
無事に終わっています。

午前の外来では、以前に一緒に仕事をした事がある、メガネ屋さんの紹介で患者様がいらっしゃいました。また、コンタクトレンズ関係の仕事の方の紹介でいらした方も。どちらも遠方からの紹介で、近くにも眼科があるかと思いますが、わざわざ当院を紹介してくれたようです。紹介の方の名刺を持参したりして。
眼科関係のかたに紹介を頂くのって、信頼関係と言うか、とても嬉しいです。
もう数年、顔をあわせておらず、連絡も怠ってしまっていたのですが、ありがたいなと思います。懐かしいというか、機会があればまたお会いしたい方って沢山います。

さて、ちょっとサボっていましたが、今日は病気の事を。
帯状角膜変性症(たいじょうかくまくへんせいしょう)
角膜(黒目)に、カルシウムなどが沈着し、角膜が濁っていく病気です。まぶたが開く隙間の部分(瞼裂:けんれつ)を中心に濁るのですが、角膜の中心部からやや下方に、横に濁りが広がります。

原因
腎臓病や副甲状腺の病気、リウマチなどの全身疾患をお持ちの方や、ぶどう膜炎、緑内障などの目の病気をお持ちの方に出やすい傾向がありますが、何の病気もない人にも出ることがあります。一部は遺伝性のものもあります。また、手術でシリコンオイルが入っている方や、一部のステロイド点眼剤の副作用などでも起こりえます。
房水の代謝異常や、涙の異常(ドライアイや、酸アルカリなどのpHの異常)などが関連しているようですが、また明確な原因・病態はまだ分かっていません。

症状
進行のスピードは人それぞれですが、進行ともに濁りが強くなり視力が低下します。また、表面がざらつくために、傷がついたりして、痛みや充血、メヤニの原因になることもあります。

腎臓が悪く透析をされている患者様の写真です。角膜の中心部より少し下方に、左右に広がる白い混濁が見えるでしょうか?右の写真は、光の当て方を工夫して、濁りが目立つように撮影しています。




今月当院にいらした患者様たちですが、上はぶどう膜炎後の患者様、中央は緑内障で手術後の患者様、下は生まれつき見えない(先天盲)の患者様です。やはり、目の病気をお持ちの方に多くみられます。

治療
ぶどう膜炎があれば、その治療を。ドライアイがあれば、その治療を。行っていきますが、明確に進行を予防する方法はまだありません。
濁りが強くなって、視力が下がってしまった場合や、痛みが強い場合には、以下の治療を行います。

?PTK(レーザー治療的角膜切除術)
角膜ジストロフィーで書いたものと、全く一緒です。以下参照。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=138832
濁った角膜をレーザーで削り取ってしまう術式です。安全で、よい成績が期待できますが、残念ながら、様々な理由で保険適応が得られず、自由診療だと費用が高めになります。また、治療後にはメガネなどの屈折が遠視となります。

?濁りを溶かしちゃう。
まるで化学の実験のようですが、酸でカルシウムの結晶を溶かしてしまおう(キレート)。といった治療です。塩酸EDTAと呼ばれる薬品を使用します。結構簡単に溶けだしてしまうのですが、あまり溶かしすぎると、角膜が濁ってしまうなどの副作用が出ることがあり、注意が必要です。点眼麻酔で数分の治療です。

?ゴリゴリ削り取る。
レーザーや薬を使わずに、鑷子などでゴリゴリ削り取る。という、かなり古典的な治療法です。視力の回復という意味では、上記の??にはかなり劣ります。他の病気などの状態で視力があまり期待できない場合や、カルシウムがガッチリと硬く付いている場合などに、仕方なく行ったりします。これも点眼麻酔で数分の治療です。

?や?は保険診療で、1割負担で2650円の手術になります。

どの治療法も、一度濁りをとっても、再発する可能性があります。
また、何度も何度も削ったり、溶かしたり出来るものではありません。
治療によって、角膜の表面にキズが出来るため、キズが治るまでの数日間は、けっこう痛みがあります。このため、痛みがなくなるまでの間は、ソフトコンタクトレンズで表面を覆うなどして経過観察を行います。

電気性眼炎・雪眼炎

もう一日ゆっくりさせて頂いて、雪山トレッキング?子供をソリにのせて、お散歩です。

今日はちょっと関連のある話で。
電気性眼炎・雪眼炎
光は、その波長が長いか短いかで色が変わるのですが、
紫外線⇒⇒赤外線
左が短く、右が波長の長い光です。
色を変えた部分は可視光線と呼ばれる光で、人間の目で感じる事が出来る光の範囲です。虹の7色ですね。
紫よりも波長が短いのが紫外線、赤よりも長いのが赤外線になります。
紫外線が皮膚に悪影響(日焼け、ヤケド)を起こすのは、よく知られていますが、紫外線は目にとってもあまりいいものではありません
紫外線の影響により、白内障の進行が早くなったり、加齢黄斑変性症などの重大な病気の発症率が上がることも報告されています。
特に紫外線は、眼球には角膜(黒目)から入ってくるのですが、溶接作業や雪の照り返しなどで、短時間に強度の紫外線が角膜にあたると、日焼けで皮膚の表面が剥けてしまうのと一緒で、角膜の表面の細胞に障害がおこり、角膜の表面の細胞(上皮)が剥がれ落ちてしまう病態が起こります。これを溶接が原因であれば電気性眼炎スキー場などで雪が原因であれば雪眼炎と呼びます。

紫外線を浴びてから、すぐに発症するわけではなく、半日程度たって忘れたころに、両眼に強い痛みを感じ、目が開かない、充血、涙が止まらない。などの症状が起こります。ビックリして、初めてなった場合には救急車を呼んで病院にくることも多々あります。眼科医にとっては、昼間に作業を行っているのに、夜に救急外来に受診となり、夜に病院に呼びもどされるという、やや厄介な病気です(笑い)。

ご本人にはとても痛くて、目が開けられない、救急車を呼ぶほどの辛い病気なのですが、実は病気としてはあまり重大な物ではありません。もともと角膜の他の病気がある人などを除き、ほとんどの人が1日、長くても2日程度で勝手に治ってしまいます
ただし、角膜の表面の細胞が脱落して、表面のバリアがない状態なので、バイ菌がつかないようにはするべきです。溶接作業で何回も繰り返している人などは、そのうち病院には来ないで、自分で治るのをまつ。なんている人もいるのですが、眼科に来て頂いた場合には、感染予防に抗生物質、キズを治しやすくしたり痛みを撮るのに、ヒアルロン酸の点眼薬や、眼軟膏を処方したりします。特に眼軟膏は角膜の表面を油の膜で覆ってくれるので、痛みもかなり和らぎます。眼軟膏をいれて、まばたきで角膜がこすれないように眼帯をする。というのが、一番よい治療かもしれません。

あまり重大な病気ではないとはいっても、電気性眼炎を繰り返していると、角膜が濁ってしまったり、乱視が強くなってしまったり、翼状片という病気の原因になってしまう事もありえます。

溶接作業には本来は資格が必要で、防御マスクをしなくてはいけない事になっているのですが、「短時間だから。面倒だから。」と、マスクをしないで作業をしてしまい、発症してしまった。という人が一番多いです。きちんとマスクをつけましょう。
他には、日焼けサロンでなってしまった人も数名いらっしゃいました。
昨日今日は曇りだったので、我が家もサングラスをサボってしまったのですが、本来は、雪山ではサングラスが望ましいでしょう。(反省)

角膜ヘルペス

毎日暑いですね[:晴れ:]
病院もエアコンを入れているのですが、節電のこともあって、過度な設定は控えています。
これまで、Yシャツ+白衣で頑張ってきたのですが、診察する医者が汗だらだらでは患者様も不快になられるかと思い、本日よりクールビズにさせて頂くことにしました。
微生物学的には、白衣で汗をかくよりも、簡単に洗濯できるシャツで、こまめに着替える方が清潔かと思いますし。
ネクタイは細菌・感染の温床として、欧米では不潔と考えられ、医師がする事がほとんどなくなっているようです。日本では、まだまだ、白衣やネクタイをした方が清潔感があるように思われる人が多いので、価値観というのは国によって違うものだなと。

角膜ヘルペス(かくまくへるぺす)

ヘルペスというウィルスをご存知でしょうか?
子供のころにかかるミズボウソウや、帯状疱疹と言って、少し元気のない人の顔や頭、わき腹などに強い痛みの伴う湿疹を起こしたりするウィルスです。
角膜ヘルペスは、そのウィルスが黒目に感染した疾患です。
感染というと、誰からうつったんだろう?と思いますが、実はほとんどの人が子供の時にウィルスに感染します。その後も、ウィルスが体の神経節という部分に住み着いてしまうのですが、この状態を潜伏感染といい、僕たちが通常の生活をしている間は、この潜伏感染の状態のままなのです。
子供の時にかかった時には、ほとんどがちょっとした風邪の症状のみだったり、人によっては何の症状もない場合もあるようです。
ストレスや、風邪をひいたのあと、癌患者など、何らかのきっかけで、体が弱っていると、ウィルスの活動性が上昇し、神経を伝って病気を引き起こします。皮膚を中心に起こると帯状疱疹、角膜に感染すると、角膜ヘルペスとなります。(厳密には、ヘルペスウィルスにもいろいろな型・種類があり、病態が異なりますが)
目の場合も、ケガをしたり、キズがある場合や、いろいろな点眼薬を使用している場合など、やはり弱っている目に起こりやすい病気です。

今日きた50代女性の患者様です。
もともとコントロール不良のドライアイ・角膜炎の患者様で1年前に他院から転院となった患者様です。しばらくは点眼薬の調整などにより調子が良かったのですが、やはり、薬をたくさん使っても、キズが出来てしまう事があり、弱った目という状況で、今回はヘルペスを発症してしまったようです。

角膜(黒目)の下の方に少し白っぽい病変があります。
見えにくいので、キズを染める薬を使用して、青い光をあてると、

こんなふうに黄緑に光って見えます。特にキズの左の方が、木の枝わかれのよう見えますが、樹枝状病変(じゅしじょうびょうへん)といって、角膜ヘルペスでは、かなり特徴的な病変です。
症状としては痛みや、キズの部分が濁りますので、中心部まで病変が広がると視力が低下します。
検査では、診察所見や病歴の他に、角膜の知覚が低下することなどを調べます(触ってもあまり痛くない)。精密な確定診断をするときには、ウィルスの遺伝子を調べたりするのですが、保険診療では行えないため、非常に重篤な場合などに限られます。

治療法は抗ウィルス薬の軟膏や、飲み薬、他の目薬などを病変の状態や、ウィルスの活動性により使い分けて治療します。
多くの場合は、治療への反応がよく、治っていくことが多いのですが、もともと弱い目に起こる病気で、ドライアイなど慢性の病気が原因ですので、再発を繰り返してしまうことが多いのも特徴です。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)

角膜潰瘍

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 7件
・結膜弛緩症 3件
・緑内障 3件
無事に終わっています。

緑内障は3名ともに、眼科ではラストアイと呼ぶのですが、手術をする反対側の目が失明やほぼ失明に近い状態の患者様で、一晩眼帯をするのがかわいそうです。頑張ってほしいと思います。
結膜弛緩症は、最近テレビで取り上げられたらしく、患者様から良く質問をされます。今日はちょっと忙しいのと、来週の診察で経過の写真も載せた方がいいかと思うので、詳しい話はまた来週に。

角膜潰瘍(かくまくかいよう)
病気については4月28日のブログもご覧ください。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4929
黒目の部分(角膜)にキズができて、バイキンが繁殖した状態です。
5月28日に緊急入院して頂いた、66歳女性の患者様がいらしたので経過をupします。

左の写真が入院当日、黒目の右の方の白い部分が潰瘍、バイキンが感染しています。
右の写真が本日です。とてもキレイになっていると思います。。

実はこれくらいの角膜潰瘍では、普段はまずは外来で点眼薬による治療を行います。
この患者様に緊急入院して頂いたのは、
?土曜朝に受診し、その後2日弱、診察が出来なくなってしまうことと
?写真では分かりにくいのですが、前房蓄膿といって目の中にも膿が出てきていたこと
?病変が瞳孔に近く、ちょっと進行してしまうと、視力障害が残る可能性があったこと
などの理由がありましたが、
それ以外に、一番の理由は既に点眼薬を使用していたことにあります。

実は数日前から痛みがあったのに病院に受診せず、お孫さんが結膜炎でかかった時にもらった、古い抗生剤の目薬をつけていたというのです。

以前にも書きましたが、点眼薬の貸し借りは絶対にいけません。

感染症を起こすバイキンには細菌、ウィルス、真菌(カビ)、原虫(アメーバ)などたくさんの種類があります。
勝手に薬を使ってしまうと、バイキンの種類が特定できなくなってしまったり、その後の治療法の選択ができなくなってしまう事があります。

今回は角膜潰瘍の感染部位をしっかりと削りとり、顕微鏡でみると細菌が犯人であると分かったため、抗生剤や薄めた消毒剤の点眼薬を2時間毎に付けたりすることで治すことができました。(もともと細菌用の目薬を勝手に付けてしまっていましたが、そちらは相性が悪く効きにくかったようです;耐性菌)
日曜日の夜には、薬が効いている事が確認できたので、感染部位の濁りができるだけ薄くなるように、ステロイドの点眼薬や内服薬を使用しました。
結果としては、写真のようにかなりキレイで、よい経過となり良かったです。

感染症により黒目が濁っているときには、ステロイドという薬を使う事で、濁りを薄くすることができます。濁りが残ってしまうと、視力が回復しなくなってしまうので、ステロイドを早く使用するほうがいいのですが、ステロイドには免疫力・抵抗力を抑える副作用があり、菌をやっつける前に使ってしまうと感染症が悪化してしまうリスクがあります。菌の同定が遅れれば、治療が遅れて、結果として濁りが残ってしまいます。

今回は入院のおかげで翌日の日曜日からステロイドを使えたのがよかったのかと思います。
(後日の報告で、細菌はMoraxella spと判明いたしました。)

人の目薬は使わないように!!
あまり古い目薬も使わないように!!

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

緊急入院:角膜潰瘍

今日は外来が大変でした。
午前が小美玉市医療センターで50名ちょっと、
午後がクリニックで40名程度いらっしゃいました。
予約外の患者様やお子様の患者様がかなり多く、診療に時間がかかり、1時間半程度お待ちいただく患者様もおり、お待たせしてすみませんでした。

また、さきほど、軽度ですが裂孔原性網膜剥離の患者様がいらっしゃり、処置を行いました。発症時に目の中に出血をしたため自覚症状が強く、非常に初期で来院して頂けました。網膜剥離となっている部分は非常に小さく、外来でのレーザー治療のみで治療可能でした。おそらく手術にならなくて済むかと思いますが、早期治療ができると思えば夜間に診療することも苦になりません[:グッド:]

角膜潰瘍(かくまくかいよう)今日は角膜潰瘍の患者様を紹介して頂きました。
角膜とは黒目の部分ですが、本来は透明な膜です。茶目や黒目というように色がついて見えるのは眼球内の構造が透けて見えるためです。角膜は光を通す必要があるため、透明な組織でなくてはなりません。そのために、血管がありません。角膜への栄養は血管・血液から行われるのではなく、目の中の房水と呼ばれる水や、涙、空気中の酸素などが栄養とされます。
角膜潰瘍は、この角膜にバイ菌がついて膿んできてしまっている病気です。
本来、体のどこかにバイ菌がついた場合には血液の中の白血球という細胞が中心となって菌の退治を行ってくれます。ですが、角膜には血管がないために、バイ菌がついても退治することが困難で、感染症を起こした場合には重症化しやすいのが特徴です。

枝が刺さったなどの外傷や、若い方ではコンタクトレンズに関連した傷が原因となることが多いですが、本日の患者様は高齢の男性で、さかさまつげによる傷にバイ菌がついて繁殖してしまったようです。

白血球による治癒がなかなか期待できない組織であるために、抗生物質を使
用した治療が行われます。

今日はカメラの調子が悪く、角膜の撮影ができなかったため、以前に撮影した、同じような症例の写真をupします。

中心部の白いところが、感染部位になります。白く濁っているため光を通すことができず、視力は殆どありません。白目の充血が強いのは、少しでも角膜に白血球を届けようと白目の血管が頑張っているためです。角膜の下のほうが水平に白いのは、目の中に膿み(白血球)がたまっている所見です。

この患者様は数日間、一般的な細菌に対する点眼薬や内服薬の抗生剤を使用していたのに悪化してしまったようです。角膜潰瘍の多くの場合、バイ菌のなかでも細菌という種類が感染しておこります。
薬を使っていたのに悪化してしまう場合は、他の菌による感染症を考えなくてはいけません。
一言にバイ菌といっても、細菌、ウィルス、真菌(カビ)、原虫(アメーバ
)などたくさんの種類があります。
今回は真菌(カビ)や、耐性菌といって、抗生物質が効きにくくなっている細菌である可能性が高いようです。本日より、特殊な消毒薬による治療を開始し、原因となる菌の検索を急いで行っています。

毎日の通院ができれば外来でも治療が可能な疾患ですが、重症例で、高齢の男性であり、また連休に入ってしまうため、安全を第一に考えて入院していただきました。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)