今日の午後は以下の手術でした。難しい手術はなかったので、5時頃には無事に終えることができました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 2件
・緑内障手術(トラベクレクトミー)1件
・網膜硝子体手術(茎離断:黄斑前膜・円孔)1件
・角膜形成術 2件(白内障同時:保険請求なし)
ただ、午前の外来ではちょっと頭が痛くなる方も・・・。
無治療の糖尿病網膜症です。眼科は初めて受診とのことですが、目の中がカサブタだらけです。OCTの断面図でも、網膜がヒキツレて大きく剥がれています(青が増殖膜、ピンクが網膜です)。視力はメガネをかけても0.04。ビックリするのは、なんと、こちらは良い方の目です。もう一つの目は、目の中がタンパク質(フレア)で濁っていて、写真が撮れないのですが、OCTでは
やっぱり剥がれまくり・・・。視力は光覚弁(0.01未満)です。
待っていられないので、準緊急で両眼とも今週末に臨時手術です。
糖尿病のかたはきちんと眼科を受診しましょうね。
さて、今日の手術から一つ。
帯状角膜変性症? 治療:薬剤での混濁除去
帯状角膜変性症は角膜(黒目)に、カルシウムなどが沈着し、角膜が濁っていく病気ですが、詳しくは以前のブログを参照下さい。
⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=139356
初期治療として、もっともキレイにできる治療はエキシマレーザーですが、現在のところ、保険診療で受けることはなかなかできません。今日は保険診療で可能な治療法の一つで、薬品を使用する方法を行いました。
ご近所の眼科様から紹介して頂いた80代の女性です。
右目と左目の写真です。
帯状角膜変性と、白内障の影響で、メガネをかけても視力は右目が0.04、左が0.01しかありません。
手術では仰向けに寝て、目薬の麻酔を十分効かせ、目を開いたままにする器械をつけます。
次に角膜の表面に張っている、角膜上皮と呼ばれる膜状の組織を、鑷子でこすって剥がします。
上皮が剥がれて、濁りが露出されました。
綿棒に薬剤をしみこませて、15秒程度軽くこすります。
EDTAという薬品や、塩酸という薬品を使用して、濁りを溶かし出していきます。
濁りをしっかり取るためには、頑張って掃除をしたいのですが、長い時間薬を作用させすぎると、薬の副作用で、逆に角膜が濁ってしまうため、どこまで治療をするかのバランスが腕の見せ所です。角膜の端から端までキレイにしよう、なんて思ってはいけません。視力に重要な中心部を重点的に掃除します。
(当院では、症例によって、1%?2%の塩酸を使用しています。)
キレイに溶けましたら、急いで、水をタップリかけて塩酸を洗い流します。
この方は、白内障手術も引き続き行い、そのまま同じ手術を反対目にも行いました。
角膜の上皮(表面の皮)が再生するまでの2日位は痛みが強いのですが、最後にソフトコンタクトレンズをかぶせることで、痛みをかなり和らげる事が出来ます。
手術から3時間半、20時の診察ですが、かなりキレイになっています。(リング状に白く見えるのは、角膜上皮を剥いたキズあとで、2日くらいたつとキレイになります。)コンタクトレンズのおかげで、両眼ともに眼帯しなくても痛みもないようで、すでに「見える!」と喜んでいただきました。
*本来、最もよい視力を期待したいのであれば、帯状変性の治療が終わって、角膜の状態が落ち着いてから、白内障の手術を行うのがよいでしょう。角膜を削ると、角膜の形が変形してしまい、白内障手術で近視や遠視などのコントロールの精度が落ちてしまうからです。
今回は、年齢や認知症の問題、生活が成り立たないほど視力が悪く、治療を急いだこと、治療費の問題などもあり、同時に行っています。
保険診療で白内障と帯状変性の手術を同時に行った場合は、帯状変性の治療費(片眼26500円)が無料になります。
やっぱり医者は救いの神だね!