瞳孔膜遺残

今日は以下の手術を行いました。
・結膜腫瘍切除 1件
・白内障手術 7件
・網膜硝子体手術 1件(硝子体出血)
問題なく終わりました。

今日の手術症例から1例お話を。
瞳孔膜遺残(どうこうまくいざん)
瞳孔とは、茶目の中心部の黒目の部分で、茶色い虹彩によって形作られる、丸い穴の事を言います。明るい場所では瞳孔が小さくなり、目の中に入る光を減らしたり、暗い場所では瞳孔を大きくして、目の中に多くの光を取り入れようとしたりと、瞳孔には目の中に入る光の量をコントロールする役割があります。
赤ちゃんが母親のお腹の中で、眼球を形成していく過程では、実は瞳孔は丸い穴ではんなく、血管の組織に富んだ膜で覆われ、ふさがっています。この血管に富んだ膜のことを瞳孔膜と呼び、瞳孔膜は水晶体に栄養を与えるなどして、眼球の形成に役立っています
瞳孔膜は通常は出生までに、委縮して消失していくのですが、何らかの間違いで、瞳孔膜が残ってしまう異常を瞳孔膜遺残といいます。

本日の症例の写真です。
光が入る道筋に、光をさえぎるものがあるので、なんとなく見にくいだろうな?というように思いますが、実は瞳孔膜遺残のほとんどは症状がありません。瞳孔膜遺残は、世の中でもっとも多い先天異常(生まれつきの異常)の一つですが、弱視等の問題を起こすことはほとんどなく、稀にみる超重症例や、たまたま光の侵入経路の中心部を邪魔するような膜が残った場合のみに、問題となります。

外来ではちょこちょこ目にする異常ですが、生まれたばかりの小児にみつけた場合では、多くの場合に、生後数ヶ月とか、1?2年くらいうすると、勝手に小さくなってしまいます。
まれですが、実際に瞳孔の中心部を瞳孔膜が覆い、視力を阻害してしまう場合があります。この場合には、瞳孔を開く目薬等を使用して、瞳孔膜遺残が瞳孔の中心部を避けるようにする治療を行うことがあります。

今日の症例ですが、左が何もしない時、右が瞳孔を開いた場合です。瞳孔を開くことによって光が通る道筋に変化が出ることが分かりますか?
また、稀ですが、YAGレーザーという特殊な光線で、瞳孔膜の一部を弾き飛ばして、瞳孔膜を除去してしまうという治療を行う場合もあります。

なんて、治療について書いてみましたが、僕の人生で瞳孔膜遺残の症例は数え切れないほどみていますが、点眼薬で治療したのは1例、YAGレーザも1例のみで、ほとんどが無治療で済んでしまうようです。

超重症例では、手術で切除するのでしょうが、小児期に手術を必要とした症例にはまだ出会ったことがありません。

今日の患者様は、白内障の手術目的に、紹介となった患者様です。
瞳孔膜の手術というよりは、白内障のついでに切除してしまったのですが、

こんな感じで、瞳孔を開いた後に、ハサミで瞳孔膜をちょきちょき切ってしまいます。

その後は、通常通りの白内障手術が可能です。

明日は祝日ですが、手術患者様のみは診察があります。きっと今日の患者様も視力が上がって喜んでくれるはず。期待大です!!

“瞳孔膜遺残” への15件の返信

  1. はじめまして
    瞳孔膜遺残の症状のある子どもを持つ母です。
    ブログを拝見しました。
    子どもは生後すぐに先天性白内障と診断され、いざ手術
    を受けてみると水晶体の濁りではなく、瞳孔膜と診断されました。
    切り取り、眼鏡を掛け現在は2歳8ヶ月
    まだ少し取り切れなかったところが残り、瞳孔自体残り開き持つ悪い為
    アトロピンで広げています。
    定期的に受診もしていますが、日々娘の為に目が良くなる方法は無いか
    考えています。
    小児の場合はこのような症例は少ないでしょうか?
    目は左目のみ。視力は悪いです。

  2. 白内障がなく、瞳孔膜遺残のみで切除したのであれば、良好な回復が期待できるケースが多いと思います。
    (他の異常がなければです。小眼球など他の異常が重なっているケースも多々ありますので、主治医の先生ともよくご相談ください)

    年齢的にできる場合と、できない場合がありますが、視力(特に左右差)によっては、今後、眼鏡装用やアイパッチという治療(良い方の目をふさぐ)が予定されると思います。
    眼底の発達異常や、小眼球などの異常がなければ、治療はこれからが本番です。

  3. お返事いただきありがとうございました。
    現在2歳で眼鏡はずっと掛けれているのですがアイパッチを
    嫌がり四苦八苦しております。
    視力自体は回復傾向にありますので、頑張ってこのまま見守る
    しかないですね。
    小眼球については、生後すぐに説明はあったのですが
    あまり今は何も言われていません。(見た目はほんのちょっと開きが
    悪いかな?程度であまり変わりません)視力のことばかりですが
    病院で小眼球のことも質問した方がいいですか?
    私自身あまりそのことを気にしていませんでした。
    小眼球だとどのような不便な点が出てくるのでしょうか?
    眼底、眼圧は異常なしです。

  4. 小眼球の場合、程度によりますが他の異常が見つかったり、視力が出にくいケースも多々あります。
    質問はしてみるといいと思います。
    明らかな混濁などの病変がない場合、今の年齢ではメガネとアイパッチ、定期検診で十分だと思います。
    遅くなってすみませんでした。

  5. お礼が遅くなり、申し訳ありません。
    無知の為、今のところ出来る限りのことをしてあげられていると
    分かっただけホッとしました。
    また何か分からないことありましたら相談させて下さい。
    ありがとうございました。

  6. こんにちは。初めまして。

    娘が瞳孔偏位、瞳孔膜遺残の診断を受けた母親です。
    現在、月に一度県内の小児医療センターに通い、アトロピンを朝夕さすように指示を受けています。
    この1ヶ月ほど、アトロピンが効かず、ミドリンも二時間に10分おきにさすように指示が出ました。
    それでも瞳孔の開きが良くなく、検査入院する事になりました。
    産まれてすぐに目の異変に気付き、生後半月ほどから病院通いをしており今1歳9ヶ月になります。
    眼鏡、アイパッチは自我が出始めた頃から外してしまうので全く出来ておりません。
    目薬さえもこの2週間、嫌がってまともにさせなくなりました。

    検査入院の結果では手術になるかも知れないと主治医から言われていますが、その時は病院が変わるそうです。

    日々、娘の目の為になる事を調べたり聞いたりしている中、先生のブログを拝見しメールさせて頂きました。

    目薬が効かなくなるとはどういった事が起こっているのでしょうか?
    検査すれば分かる事ではありますが、主治医以外の話も知りたいと思い何か出来る事がないか教えて頂けないでしょうか。

    1. 現時点で見えている目なのでしょうか?
      瞳孔が光を通せないくらいになってくると、弱視になります。
      完全に閉じたり、癒着が大きくなってしまうと、緑内障になることもあります。
      癒着が広がっているのであれば、現時点で虹彩炎(眼内の炎症)が起こっているのかもしれません。

      すみませんが、質問が抽象的であり、回答困難です・・・。
      希望があれば診察の予約を取ってください。

      1. お忙しい中、お返事有難うございました。
        このような場のコメントの残し方などを理解出来ておらず、人様の所にコメントしてしまっている事に後々気付きました。
        失礼いたしました。

        今現在、見えてはいます。
        弱視の診断もされております。
        先日検査をした結果、癒着はしているが完全に閉じているわけではないとの事でした。
        初めから手術はリスクが高いという事で勧めないと言われており、今回も完全に閉じているわけではないから、やっぱり手術は勧めないと言われました。

        今回、麻酔で眠っている機会に、試しに目薬がその場で留まっているような?注射を打ってもらいましたが、あまり効果はないようです。
        今後はまた麻酔をかけてまで打つつもりはないようです。

        癒着が広がっていけば緑内障になる可能性があるのは主治医からは聞かされていなかったので少し驚いています。

        先生なら今後どのような治療になるのか、聞きたかったのですが、言葉がうまく出せずわかりにくい質問になり申し訳のございません。
        主人と相談し、先生の診察をうけたいと思います。
        しかし関西在住なもので少し時間が掛かるかも知れませんが、その時は宜しくお願いします。

  7. 初めまして、ブログ拝見しました。私は札幌に住む40代の、パート勤務の、主婦です。私も瞳孔膜遺残と、以前診断されました。初めて異常に気がついたのは、幼少のころ。私の瞳孔の形がおかしい、右は月が欠けたようになってて、左は、丸の形すらなく、飛び散ったような形で、姉と違うと、母が気づき、その時は、ちゃんと見えてるからと病院にも行きませんでした。20歳すぎ、運転免許のため眼科にいき、瞳孔膜遺残と、診断され、泣く泣く免許取得をあきらめました。
    弱視なのですが、生活に支障がないなら、現状維持した方が良いと言われ、手術は、リスクが高く、難しいと言われこれまで、治療も何もしてきませんでした。確かに普通の生活には支障ないのですが仕事で、落ちている髪の毛が見えず度々注意をうけています。元々目が悪く、瞳孔膜遺残のため、メガネもコンタクトをしても、視力が上がらないので、今後もっと視力が落ちた時のことを考えると、不安です。私の瞳孔膜遺残は、特に左は稀なタイプに入ると思います。発覚したときに、ネット検索した時には、動物の例ばかり、でていて、治療や、手術などの記事は一切ありませんでした。
    私の周りの眼科では、瞳孔膜遺残の症例すら経験がないところばかりで、相談もできません。
    たまたまブログを拝見して、嬉しくてコメントしてしまいました。

    1. ありがとうございます!
      弱視の部分は難しですが、白内障や瞳孔異常の進行で、現状よりも視力が下がった分に関しては、手術で回復することができます。
      例えば、20才で0.4の視力があった人が、50才で0.1になった場合、手術で0.4に戻ります。
      緑内障など、他の部位の病変は別問題なので、年に1回など、ある程度は定期検診を受けて頂く必要があります。

  8. こんにちは。35歳の主婦です。
    自分が瞳孔膜遺残です。
    左目を生後半年で、角膜を剥がす手術をしたと聞いております。
    視力が回復することはなく、左目弱視0.06(矯正不能)、右目1.5(n.c)で、右目だけで生活して来ました。
    20代の頃に一度、しっかり検査をしていただいたら、左目に瞳孔膜遺残の手術の痕跡はあるが、それよりも右目の方が、変わった目をしている、と言われました。
    両目とも、虹彩後癒着があると。特に見えている右目。
    しっかり塞がってしまっていて、右目が見えているのが不思議と。
    両目とも視神経が弱く、眼圧も上がりやすい、と言われました。
    両目とも、機械を通しても瞳の中が見れない目をしているそうです。
    その当時、事務仕事でパソコンをし、子供もいたのですが、
    先生から
    パソコン?ありえない!
    出産?命取りな!
    あなたの目は、体にストレスを受けることで、一瞬で失明する恐れがある、あまりにも変わった目をしている!
    と診察室で、1時間ほど怒られたものです…。
    自分はこの先どんな生活を送ればいいのか、右目の視力が落ちて来たら、自分は失明してしまうのか、不安に悩まされ、
    自分なりに色々調べてみても、瞳孔膜遺残については動物についてばかりで、調べようがなかったのですが、久しぶりに検索しましたらこちらのサイトを見つけて、とてもうれしくなってコメントしました。
    また覗きに来たいと思います。

    1. パソコン?ありえない!
      出産?命取りな!
      あなたの目は、体にストレスを受けることで、一瞬で失明する恐れがある、あまりにも変わった目をしている!
      と診察室で、1時間ほど怒られたものです…。

      そんな先生がいるとは思えませんが・・・。
      一度、診察をさせて頂けるとよいかとも思います。

  9. 現在生後4ヶ月の男児がいるものです。その息子は33週早産でしたが、未熟児網膜症はありませんでした。しかし生後1ヶ月半ほどして瞳孔に小さい白い点が見えたので診察を受けたところ、大学病院で白内障と瞳孔膜遺残、と診断されました。そこの紹介でクリニックへ行き診察を受けましたが、瞳孔膜遺残のみと言われました。現在それも小さく追視もあるので、様子を見ていきましょうとなりました。
    しかし、大学病院で一度白内障と言われたのが引っかかっており、瞳孔膜遺残が白い点として瞳孔に映る〔わたしからは肉眼で見えます〕ことはあるのでしょうか。
    白内障であれば早めに治療しないといけないのではと思っています。
    コメント欄を見ると、皆さん手術したり弱視を矯正するために眼鏡やアイパッチをなさっているようですが、それも遺残の大きさによって行われるのでしょうか。

    1. 体調不良が続き、どうにかを診療していた状態でお返事が大変遅くなってしまいました。申し訳ありません。
      瞳孔膜遺残で程度が強い場合、水晶体と接着した部位に白内障を認めることがあります。
      白内障の範囲や程度によっては手術の検討が必要ですが、真っ白で眼底がのぞけない。みたいなケースでなければ、現時点での手術は一般的ではありません。
      局所に限局した濁りなどでは、視力は大きな問題なく成長することが多いです。
      まずはしっかりと定期検診を受けることが重要です。

      1. ご返信をいただき大変感謝致します。
        ご体調悪い中、本当にありがとうございます。
        文面読ませていただきました。
        現在通っているクリニックは、白内障という言葉を使わないだけで、水晶体と接触している部分は小さな白内障なのだと、腑に落ちました。大学病院で何人もの先生に診てもらい白内障と診断されていたので、もやもやしておりました。先生のブログの文面に、小さい月齢の赤ちゃんは、遺残もしばらくすると消滅してくるケースもあるということでしたが、その際に白内障も消えてくれればと願っているのですがそれは難しいのでしょうか。

        お返事は気長に待ちます。可能ならばで結構です。お体ご自愛ください。

        田中

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