先ほど、今年度の一般診療を終了致しました!
長い1年でした。
眼科の先生から眼瞼下垂の手術に関して質問のコメントを頂きました。
せっかくなのでお返事を含めて、ブログで。
眼瞼下垂症 手術?
経結膜アプローチ眼瞼挙筋手術
先日は、やや高齢の方の手術で、たるんでしまった皮膚を切除し、筋肉を縫い縮める方法を紹介しました。
上まぶたの中には、眼瞼挙筋やミュラー筋と呼ばれる、まぶたを持ち上げる筋肉が存在します。手術では、これらの筋肉を縫い縮めるなどして、まぶたを開けやすくすることが目的です。
先日のように、皮膚がたるんでしまっている場合は、筋肉だけでなく、皮膚も一緒に処置することで、より高い手術の効果が得られますが、皮膚を切ってしまうため、二重の状態や、見た目などに変化が大きくなります。
皮膚がたるんでいない、ハードコンタクトレンズが原因となるような、比較的若い方の眼瞼下垂では、なるべく皮膚や二重に変化がないように手術をしたいという場合も多いようです。
まぶたの中にある眼瞼挙筋は、皮膚側を切開していっても見つける事が出来ますが、まぶたの内側(結膜側)を切開していっても見つけることができます。
すみませんが、手技の説明は専門的な内容になります。
ちょっと、映像が途切れており、最初のシーンがなくてすみません。
上眼瞼をホンテンして、瞼板の上縁(頭側)を2か所でモスキートなどで少し挟みます。さらに、もう一度ホンテンさせると(二重ホンテン)、この画像になります。結膜にキシロカインで麻酔をしていますが、麻酔時に出血してしまいました。
矢印の部位、瞼板上縁近くで、結膜を水平方向に切開し、剥離します。
緑が剥離した結膜、青が眼瞼挙筋です。皮膚アプローチと違い、結膜をはいだらいきなり挙筋なので、オリエンテーションとしては、経結膜は簡単です。
結膜に6-0シルクをつけて、制御糸というか、結膜のオリエンテーションを明確にしておきます。
挙筋の下方に剪刀をいれ、挙筋を剥離します。
剥離できたら、モスキートペアンなどで挙筋をガッチリつかみます。
挙筋を瞼板の上縁から切り離します。
挙筋の上面・下面の結膜や結合織の剥離を進めます。
矢印が挙筋になります。
挙筋に8-0バイクリルで糸をかけ、そのまま瞼板の挙筋切断部位に再度糸を書けます。緑の長さが、挙筋の短縮量になります。
中央、右、左と3か所で、同じように8-0糸をかけ、
しっかりと短縮・縫いつけを行います。
結膜の制御糸を外して、もとに縫いつけて終了。
終了時ですが、皮膚側には、キズも腫れも内出血も全くありません。
術後数日は多少腫れますが、皮膚を切開するのに比べると、直後からの見た目がとてもキレイな手術です。
ハードコンタクトレンズが原因の女性などで、二重の印象などを変えたくない場合に行う術式です。二重をはっきりしたい場合などは、最近は皮膚の小切開のミュラー筋短縮がいいかなと思っています。(美容的目的の手術はお引き受けしておりません。)
そうはいっても、当院は現在、あまりお若い患者様の来院が少ないクリニックでして、皮膚が余ってしまっている人が多いので、先日の術式の方がよほど多くなります。
質問を頂いた先生へ。
眼瞼下垂は眼科ではなく、形成外科や美容の教科書に、かなり詳しいものがあります。
43歳 女性です 左眼だけ 眼瞼下垂で 悩んでます
ハードコンタクト装用歴15年です
軽度なのかもしれませんが 写真で確認すると一目瞭然です
自分としては 美容目的ではないのです
(右目と同じように戻って欲しい それだけです
どこからが 美容目的 どこからが 治療なのか
それを 判断していただくために 受診することは可能ですか?
千葉県に住んでます
こんにちは。
いろいろな科がありますが、医療でトラブルがダントツに多いのが美容外科です。
美容的な価値観は人それぞれで、入念に打ち合わせをしても「思ったのと違う。」ということが、どうしても生じてしまうためです。
ある程度の下垂があって、疲れやすい、視野が狭い。ということであれば、それは保険適応で眼科や形成外科で対応可能ですが、
保険を使って、医療目的での手術というのは、「こういう二重にしてほしい。」「右と左を合わせてほしい。」という希望をお聞きすることはありません。
下垂を治して、目を開きやすくすることが医療としての手術の目的です。
保険が使えるかどうか?で選択をするのではなく、見栄えに対するより細かい希望があって、入念に打ち合わせをしたい場合には美容外科なのだと思います。(入念にすりあわせたつもりでも、トラブルが多いので、美容外科の先生方はハイリスク・ハイリターンが必要で、一般的には手技量が高くなくてはやっていけません。)
地域にもよりますが眼科医も少なく、どこの眼科も混んでいると思います。保険診療でかつ見た目の希望を聞いていると、失明するかしないかという患者様の対応の時間が取りにくくなってしまったり、希望を聞いたつもりでも一定の確率でトラブルが生じるために外来が中断となってしまうリスクもあります。
このような理由もあって多くの保険診療機関では、見た目の希望はお聞ききしていません。
当院でも手術をお引き受けするのは、「下垂を治すこと」であって、「右目と同じように。」ということはお引き受けしていません。手術の結果として一般的な価値観で「同じよう」と感じる方は少なくないと思いますが。