今日から9月ですが、重症例の紹介もなくのんびりとした月初めでした。
先月は網膜剥離や眼内レンズ落下(脱臼)などの準緊急手術が多かったので、9月は少しのんびり出来るのでしょうか?
昨日数えたところ、8月だけで5件の眼内レンズ縫着を行っていました。(山王台3件、他院2件)眼内レンズ落下はそうそうあるものではないのですが、本日退院の患者様がビデオの公開に賛同頂けたので、お言葉に甘えさせて頂きます。
先日、CTRのブログ(CTR?、CTR?、CTR?)でも書いてみたのですが、眼内レンズを支える眼球内の構造が弱いと、手術後に眼内レンズがずれたり、目の奥に落下(脱臼)することがあります。
眼内レンズの落下は、レンズがなくなってしまうために、極度の遠視となり分厚いメガネが必要になるだけではなく、目の奥の組織を傷つけて網膜剥離をきたし失明に至るリスクを生じます。
以前に、眼内レンズの亜脱臼(少しズレた)に関するブログを書いたことがあったのですが、8月は亜脱臼ではなく、落下(脱臼)ばかり4名の手術を担当しました。(全員、僕が白内障手術をしたわけではありません。)
今回、ビデオの公開を許可頂けた患者様は、60代の男性です。1年前に眼球穿孔というケガで白内障手術が必要になり、県南の開業医様で手術を受けましたが、外傷後の白内障は難しいもので、少し不安定な形でのレンズ挿入となり、その後に落下のリスクのある症例として当院を紹介となりました。
(決して開業の先生の手術に問題があったわけではありません。外傷後の白内障はもともと難しく、少し不安定でも眼内レンズをいれることができたのは、先生が非常に優秀で上手だったからです。もしも技術のない先生であれば、レンズの挿入どころか、合併症で大変なことになっていた可能性もあります。)
1年前の写真です。分かりにくいですがレンズが左側にずれています。患者さんは、これでもきちんと見えています。
残念ながら、自覚症状が乏しく定期検診にいらっしゃらなくなってしまったのですが、今回、急に見えなくなったと来院されました。
診察すると、レンズが眼底(目の奥の方)に落ちています。
眼内レンズが落下した場合の手術としては大きく2つの種類があります。
A.落下した眼内レンズを再利用し、目の中に縫い付ける。
B. 落下したレンズは取り出し、新しい別のレンズを縫い付ける。
Aの利点は、傷が小さく済むことです。
Bは、落下したもとのレンズが濁っていたり、近視や遠視などの屈折度数が合わない場合に、新しいレンズでよりより視力を期待できることが利点ですが、通常はAに比べて傷が大きめになります。近年多用される1ピースレンズは、Bの手術に向かないなど、眼内レンズの性状によっても向き不向きがあります。
今回は、レンズの特性などからAの手術となりました。
今回は、外傷後なので仕方のない症例ですが、手術後の高齢化や、CTRやその他の手技により、無理にでも眼内レンズを縫わずに終わる先生が増えていますので、今後はどんどんレンズが落下する症例が増えてくるのだと考えています。そのような患者さんたちに少しでも参考になればと思います。
(CTRなどを使用する条件・適応がきちんとしていればいいのですが、残念に思う症例も多々あります)
(眼科医の先生には、縫着刺入部が角膜より過ぎるという意見を頂きそうな動画ですが、術前のレフ値から、わざとやや角膜よりにしています。正視に近づけて、術後2日の時点で裸眼で視力0.7とすることができました。)
追記:術後1週で視力1.2と回復しました。よかったです。
私は75才、白内障の手術を20年前に実施し、現在、後発白内障で眼内レンズが動揺し、落下の恐れがあると言われています(20年前手術)
眼内レンズが落下する前に、手術で落ちないよう固定する手術をしたいのですが、先生のところでやっていただけるのでしょうか。
今までこのような手術の成功事例はいくつか
あるのでしょうか? お忙しいところ、恐縮ですがよろしくお願いします。
レンズに動揺があっても、10年以上問題なく経過する人もいます。
経過観察で進行傾向(レンズの位置が時間と共にずれてきている・動揺が大きくなってきている)の場合は、落下前に手術をすることもあります。
また、動画の手術は今は行っておらず、多くが強膜内固定というより短時間で終わる手術の対象になります。
成功事例というか、成功できないということはない手術で、硝子体手術が可能な多くの病院で当たり前のように行われています。
当院近隣であれば喜んでお引き受けします。遠方からの手術は来院の価値が乏しいと思います。