ドライアイ? 検査

今日はドライアイの検査や診断について記載します。
ドライアイの診断基準は、
?自覚症状があること
?涙の異常があること(涙の量や質に関する検査を行います)
?角膜や結膜に傷があること(診察で分かります。)
になっています。

?自覚症状は、患者様とのお話や、問診票から判断します。

?涙の異常に関しては、少し特殊な検査をします。
・シルマーテスト
下まぶたに専用の細い短冊状の濾紙を入れ、5分間でどれくらいの涙が出るかを測定します。ドライアイの人は、涙が少ないために、濾紙の濡れる面積・長さが小さくなります。
(濾紙の代わりに糸を使う方法や、涙に色素を混ぜて、どれくらいで涙が透明に戻るかを調べる検査など、患者様の状態によって、様々な方法を行うことがあります)
・BUT:(tear film breakup time)涙液層破壊時間の測定
涙液の量がたくさんあっても、油層やムチン層などに異常があると、目を開けている時の涙の蒸発が早くなり、乾燥してしまいます。
これも様々な方法がありますが、一般的には、涙を観察しやすくするために、黄色の色素を涙に溶かして行います。通常の人は、目を閉じた後に、目を開けっぱなしに保った場合に、角膜表面は10秒程度は乾いた部分が出来ずに、黄色の涙で覆われたままとなります。ドライアイの患者様では乾燥が早く、5秒以内に乾いた部分が観察されます。

?角膜や結膜に傷は、スリットランプと言われる、目の表面を拡大してみる器械で観察します。傷の程度を詳細に把握するために、やはり色素を使用して、傷を染めるなどの検査を行います。ドライアイの原因の種類によって、角膜のどの部位に傷ができやすいという特徴があり、傷の場所や程度を詳細に観察します。
最近は、医師が観察している目の状態をテレビのモニターなどに映し出して、説明に使用する病院が増えているかと思いますので、そのような場合には、患者様ご本人も傷を確認することができるかと思います。

上記の???を満たす場合に、ドライアイと診断されますが、
実際には、他にも以下のようなものを調べながら総合的に判断し、治療法を考えています。
・生活環境や空調機の有無、職業、コンタクトレンズの使用などの情報。
・リウマチや、シェ―グレン症候群、骨髄移植などの既往
・診察中のまばたきの間隔や数
・眼瞼のけいれんなどがないか
・まぶたの変形がないか、きちんと目を閉じることができるか
・まぶたや結膜の炎症がないか
・油層を形成するマイボーム腺の異常はないか
・結膜弛緩症がないか
・異物や、逆さまつげなど、他に傷の原因となるものがないか

毎日やっていることなので、それほど長い時間はかからずに診察をしているつもりですが、僕たちは結構いろいろなことを考えて観察をしています。
光をあてられて診察を受けると、確かに眩しくて、ツライと思う患者様もいらっしゃると思いますが、正確な診断をつけるためですので、ご協力頂ければと思います。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

ドライアイ? 原因

ドライアイは目の表面が乾いてしまう病気ですが、目が乾く原因はとてもたくさんあります。

?涙が少ない
涙液は涙腺という組織で作られます。涙腺は小児期より発達し、報告にもよりますが、10代が最も産生量が多いピークになるようです。以後は涙腺の機能が徐々に低下していき、加齢と共に涙の量が減っていきますので、高齢の方ほど涙が乾くなどのトラブルが多くなります。
また、明確な原因は不明ですが、現代人の涙の量は減っているとの報告が多数あり、例えば20年前の人間に比べると、全体として涙の量が少なく、ドライアイの患者数が増えている傾向があります。(環境ホルモンなど、様々な原因が推測されていますが、はっきりとは分かっていません。)
他にはシェ―グレン症候群という、涙や唾液が少なくなってしまう特殊な病気などが原因となることもあります。

?涙の蒸発が早い
以前と同じように涙が出ていても、涙の蒸発が早ければ、表面が乾いてしまいます。
・環境:冬の乾いた風や、夏場でもエアコンなどの湿度の低い風が、直接目に当たれば乾燥が速まります。
・まばたきが少ない:読書やパソコンなどに集中をすると、普段数秒に1回行っているまばたきの回数が少なくなります。目をあいている時間が長く、涙液で潤すためのまばたきが少なくなれば、表面が乾きます。
・コンタクトレンズ:ムチン呼ばれる保水力の高い粘液層によって覆われている角膜に比べると、コンタクトレンズは保水力が弱く涙の蒸発が早くなってしまいます。(最近はよいコンタクトレンズの開発が進んできていますが)
・油層の異常:まつ毛の生え際付近に存在する、マイボーム腺からでる油によって、涙の最も表面側は油層という膜でおおわれています。加齢や、眼瞼炎、まばたきの不全などで、この油の分泌が悪い場合には、涙の液体成分が露出し蒸発が早くなります。
・角膜の傷:ドライアイで傷ができると、角膜の表面にざらざらと凹凸が出来たり、ムチン層が少なくなるために、保水力が低下し蒸発が早くなるなど悪循環に陥ることがあります。
・結膜炎:花粉症や、バイ菌による結膜炎などでも、ムチンの分泌が低下し、保水力が低下するために蒸発が早くなります。

?まぶたや、まばたきの問題
ケガや火傷などによって、まぶたが変形して、きちんと目を閉じられない場合や、一般の方でも寝ているときに薄目があいてしまう方がいらっしゃいますが、目をを閉じたときに、目の表面がきちんと覆われない場合は、露出した部分の角膜(主に下の方)が乾燥し、傷となってしまう場合があります。

?涙が有効に使えない
まばたきによって、角膜の表面に均一な涙の膜ができることが理想ですが、加齢や火傷などでまぶたに変形や凹凸が生まれると、目の表面に潤う場所と、うまく潤わない場所ができ、潤わない場所には傷が出来てしまいます。
また、結膜弛緩症といって、白目の表面の粘膜に加齢によってシワやタルミが出来てしまう病気などでも、涙の流れが悪くなったり、表面の均一な涙液の形成が悪くなるなどして、ドライアイ症状が出ることがあります。

以上が、大まかな原因となりますが、他にも細かい原因はたくさんあります。また、なにか一つが原因となっている症例よりも、たくさんの原因があって、複合的に症状が出ているケースのほうが多数あります。
例えば、涙も少ないが、コンタクトレンズも付けているなど。

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ドライアイ? 症状

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 9件
・網膜硝子体手術 3件
 (内訳:黄斑円孔2件、糖尿病に伴う黄斑前膜・黄斑浮腫1件)

今日白内障手術が難しい症例が多く大変でした。
71歳の女性は角膜混濁といって黒目が濁っているために、
71歳の両眼手術の男性は、IFISといって、手術中に瞳孔が小さくなってしまう状態で、それぞれ10分弱かかってしまいました。
みなさん大丈夫と言ってくれるのですが、少し痛かったかもしれません。
すみませんでした。手術はキレイに終わっており視力はきちんとでますので。

ドライアイ(乾性角結膜炎)
涙の役割や、どのように涙が流れるかを昨日記載しました。
ドライアイは、目の表面の涙が少ない、つまり乾燥していることによって引き起こされる病態をひっくるめた病名・総称です。
では、目の表面が乾燥すると何がいけないのでしょうか?

?見えにくい
昨日記載しましたが、目の表面は涙の膜が均一に隙間なく覆っていることが正常な状態です。涙が蒸発して乾いた部分(ドライスポット)ができると、その部位を通過する光の進行に影響がでるため、白くかすむなど物が見えにくくなります。

?痛い
本来は乾燥していくのを角膜が感知し、完全に乾いてしまう前にまばたきが起こります。ドライスポットができるなど、乾いてしまってからまばたきをする事になると、角膜の表面と、まぶたがこすれてしまい、角膜に傷ができるなどします。(雨の降っていない時に、車のワイパーを動かすと引っかかりやすいのと一緒です。)
傷ができると、ゴロゴロ痛みを感じたり、また角膜の表面がすりガラスのようにザラザラするため、傷が多い場合はこれも視力低下につながります。

?多彩な症状
上記の??が中心の症状になりますが、
・乾燥してまばたきが滑らかでないために、「引っかかる」
・まばたきでこすれて炎症がおこり、「充血する」
・炎症により分泌が増えて、「メヤニがでる」
・痛みや、見えにくさから眼精疲労が起こり、「目が疲れる」
・傷やドライスポットを通る光が広がってしまい(散乱)「光が眩しい」
・コンタクトレンズがずれる、はずれる
・人によっては、痛みを「熱い・痒い」と感じることもあり、
とにかく、ドライアイはいろいろな症状の原因となりえます。

ほとんどのドライアイの患者様は、自覚症状が辛いのが問題で、失明などとは程遠い、軽症例です。自覚症状をとるために、希望があれば通院・治療を行いましょうといった程度で、ご本人が辛くなければ、治療が絶対に必要だというものではありません。
ただし、重度のドライアイで角膜の傷がひどい場合などには、感染症などを起こし、失明に至ることもありますので、医師が絶対に点眼が必要という場合にはきちんと通院するようにしましょう。

ドライアイの原因や、分類については明日
治療法については明後日に記載したいと思います。

(ブログでは、一般の皆様が理解しやすいように、少し噛み砕いて記載している部分があります。実際には、涙液中のたんぱく質や、傷の回復、炎症などがいろいろと影響しながら、状態が成り立ちますが、このブログでは省略させて下さい。)

ブログを呼んでくれる方が増えてきたようです。
頑張って続けます☆

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ドライアイ? 涙の役割

今日の午後は出張で手術でした。ときどき、他の病院様に伺うと、なんとなく気分的にリフレッシュできます。手術中に相手方の先生と話をしたりするのも楽しいです。

ドライアイ(乾性角結膜炎)
昨日から引き続き、ドライアイのお話です。
今日は、正常な涙に関して記載します。

?涙は目の表面を守るバリアです。
体は皮膚で覆われ、皮膚によってバイ菌や、乾燥、熱、紫外線などから守られています。物を見るためには、眼球は光を通す構造をしていなくてはなりません。そのため、目の表面を皮膚で覆うわけにはいかないので、涙の膜が覆う事で、乾燥やその他の外敵から目の表面を守る必要があります。
例えば、目に異物やホコリが入った場合には、涙が多く分泌されて異物やホコリを流すようにします。
また、体でバイ菌が繁殖した場合には、血液のなかの白血球という細胞が頑張って菌をやっつけます(免疫・抵抗)が、角膜(黒目)などには、光を多く通す目的があるため、血管や白血球がありません。このため、涙の中には菌をやっつけるような免疫を担当する物質が含まれています。
他にも、体は血管の中の血液によって栄養分や酸素が運ばれますが、同じ理由で角膜には血管がないため、空気中の酸素が涙に溶け込み、目の表面から角膜内に酸素を取り入れるなどの働きにも関与しています。

?レンズ効果
目の表面が涙の膜で均一に覆われた状態が、最もよく見える正常な状態です。お風呂の鏡も、お湯をかけて水の膜が一枚出来ている状態が最もよくうつると思います。時間がたって、鏡の上の水の膜が途切れて水滴になってくると白く曇ってしまいます。
角膜と涙の関係も同様で、角膜の表面の涙に乾いた場所ができると、その場所を通る光が曲がってしまったり、散乱と言って光が広がってしまうため、お風呂の鏡のように白っぽくボヤけてしまいます。
正常の人でも数十秒も目を開けているとボヤけてしまいますよね?(表面が乾くのを感知すると、涙がたくさん出てきて溢れてしまいますが、瞬きをしない限り目の表面が均一に濡れるわけではないので、ボヤけます。)

涙は水だけで出来ているわけではありません。「涙の3層構造
実は、涙は角膜の表面から外界に向かって、三つの層に分けられます。
?最も外側は「油層」といい、上下のまぶたの縁(まつげの根元付近)にあるマイボーム腺という組織から分泌される油からできています。油層があることで、まばたきが滑らかになったり、その下にある水層、涙液の蒸発を防ぐ作用があります。
?中間にあたるのが「水層」で、水を主成分とする液体の層です。涙の大半を占める涙液の層で、涙液は上まぶたの裏側にある涙腺で作られます。涙液は眼球の粘膜を潤すだけでなく、角膜や結膜に栄養を届けたり、細菌の侵入を防いだり、粘膜にできた傷を早く治す働きをしています。
?角膜に一番近い部分が「ムチン層」です。ムチンは結膜や角膜から分泌される粘液です。角膜のみに比べると、保水力のある粘液が間に存在することで、涙液の蒸発がゆっくりになります。また、表面張力などの影響を受けずに、涙がすき間なく、角膜全体に均一に広がることができます。

涙の流れ、まばたき
目を潤すための瞬〈まばた〉きの役割
涙の主成分である涙液は、涙腺という組織で作られ、角膜の刺激や、まばたきによるポンプ作用によって、目の表面に出てきます。目の表面を潤したり、栄養を与えた後は、一部は表面からも蒸発しますが、多くは涙点と呼ばれる目がしら付近の排泄口から鼻の奥の方に流れていきます。(流れが良い人は、目薬を付けた後に苦みを感じたりするのはこのためです。)

表面に出てきた涙液を角膜の全面に均一に広げる役割を持つのが、まばたきになります。涙の膜はなにもせずに10秒ほど過ぎると、所々にすき間ができて角膜が露出した部分が生じてしまいますが、瞬きをすることで涙が目の表面全体に均一に押し広げられ、すき間ができるのを防いでいます。さらに、汚れた涙を涙点(目頭にある涙の排出口)へ運ぶのも、瞬きの働きです。

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ドライアイ?

今日は5名の患者様に以下の手術を行いました。
・白内障手術 8件
問題なく終了致しました。

今週は、ドライアイに関して記載していこうと思います。
ドライアイ(乾性角結膜炎)
ドライアイ(dry eye)は、目の表面の涙が少ない、つまり乾燥していることによって引き起こされる病態の総称です。
様々な原因があり、治療法も様々です。
ドライアイと診断される患者数は増加傾向であると言われています。どの程度の症状から診断するのかなど、統計の仕方によって差がありますが、日本人の2000万人以上に何らかのドライアイに関した異常があるとする報告もあります。

ドライアイの自覚症状は、病態や感じ方によって非常に多彩です。
「目が疲れやすい」
「目がゴロゴロする」
「目が乾いた感じがする」
「目が重たい感じがする」
「目が痛い」「目やにが出る」
「物がかすんで見える」
「目が赤くなりやすい」
「何となく目に不快感がある」
「光をまぶしく感じる」
「悲しくても涙が出ない」などです。

以上の項目をみて、ピンとくる方がいらっしゃれば、眼科で検査を受けてみるのもいいかもしれません。他には、10秒間目をあけっぱなしで、文字を見ていられるか?などもドライアイのスクリーニングに使用されます。

ドライアイの診断基準は、
?自覚症状があること(上記のようなものになります。)
?涙の異常があること(涙の量や質に関する検査を行います)
?角膜や結膜に傷があること(眼科の診察で分かります。)

以上を全て満たすと、ドライアイ確定例となります。

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恐竜

今日も午前中は暑かったですね!
石岡市は水戸や、つくば、土浦などの真ん中くらいで、どこに行くにもだいたい30分くらいです。

半年くらい前から、我が家で流行っているスポットがあります。
水戸市森林公園
http://www.mito-shinrinkoen.com/
最近開通した小美玉・石岡スマートICから向かって、30分弱で到着[:車:]
なんと、恐竜が十数体います。トイストーリーのDVDを見たばかりなので、人形は夜になったら動き出すと信じている娘には迫力があります[:びっくり:]

それ以外にも、アスレチックや遊具がたくさんあり、もう5回くらい行っていますが、まだまだ楽しめます!

穴場的な感じで、日曜日でもけっこう透いているのが嬉しいです[:OK:]

すぐ近くに、ホロルの湯という看板があるのですが、どんなところなんだろう。アスレチックで汗かいて、帰りに・・・。みたいなのだと最高なのですが、みなさんご存知でしょうか?

すし処 大石家

今日はお休みです。代診の先生の連絡では、水曜日の緑内障手術の患者様の眼圧は7mmHgとのこと。(手術前は目薬を使って21mmHg)経過良好です。週明けに退院ですね。
この1年間は、緑内障手術後の患者様は、全員が点眼薬なしで目標眼圧を達成しています。とても調子いいです[:グッド:]

だいぶ暖かくなってきましたね[:おてんき:]今日は暑いくらいでした。
家の芝生も青々としてきて、もう少ししたら、毎朝の出勤前の水遣りが日課になりそうです!

先週、ご近所さんにもお手伝いただき、敷地内に畑を作ってみました[:植物:]妻がトマトとか、いろいろ植えだしましたが、楽しみです。

今週の石岡市は、
すし処 大石家さん
こちらも、とても近所のお店で、いつも歩いて伺います。
子供たちがうるさくしてしまい、すみません。

仕事が遅くなってしまった時に、一人で行くことも多いのですが、
お寿司を食べに行くというよりも、飲みにいっている感じで[:熱燗:]
イカの肝焼きとか、バクダンというメニューをよく頼み、一人で飲んでいます。

錐体ジストロフィー

金曜日の午後は特殊外来です。視野検査や蛍光造影検査以外に以下のような治療を行いました。

・鼻涙管閉塞症(涙目)に対するNS-チューブ 1件
・網膜光凝固術(レーザー治療)5件
 (糖尿病網膜症4件、網膜中心動脈分枝閉塞症1件) 
・後発白内障手術(YAGレーザー)1件
・トリアムシノロン注射 1件(静脈閉塞の黄斑浮腫)
・アバスチン注射 2件(糖尿病黄斑症)
・ルセンティス注射 2件(加齢黄斑変性症)

錐体ジストロフィー(すいたいじすとろふぃー)
昨日、網膜色素変性症(杆体錐体ジストロフィー)について記載したのですが、本日、さらに稀な錐体ジストロフィーの診断をしました。僕は珍しい疾患や重度な疾患を担当することが比較的多い方だと思いますが、錐体ジストロフィーを診断するのは、年に2?3名程度です。

網膜の視細胞には、明るさや周辺視野を担当する杆体(かんたい)、中心視野や視力、色覚などを担当する錐体(すいたい)があります。
網膜色素変性症では杆体から障害されることが多いのですが、錐体ジストロフィーでは逆に錐体を中心に機能が低下します。中心部の視野・視力・色覚が失われていきますので、自覚症状も非常に強く、日常生活での不自由がとても大きな疾患です。やはり、治療法は確立されておらず、経過観察やロービジョンケアでの対応となります。

本日の患者様は50代男性の患者様です。
中心部の障害が強いため、視力は眼鏡をかけても両眼0.1程度と不良です。
石原式色覚検査(昔、学校の検診で良く使われたやつです。みたことあるでしょうか?)では、全てのページが解読不可能でした。


昨日の写真では、周辺部の網膜に変化が強かったですが、本日は黄斑(写真の中心よりやや右下の部分;物をみる中心の網膜です)付近の網膜に異常があります。まだらで、ざらざらとした印象が分かるでしょうか?


造影検査での写真では、弱くなった部位が白くうつりますが、やはり中心部の網膜に異常を認めます。


視野検査です。中心部の視野が欠損したり見えにくくなっています。網膜色素変性症では、中心視野が最後まで残りやすく、運転免許証更新の問題は末期になるまでないのですが、錐体ジストロフィーでは中心部から見えにくくなり、視力が低下するために、免許証の更新がかなり早期から難しくなります。


網膜電図(ERG)です。bright flashといって杆体の機能を強く表す検査の方法です。網膜色素変性症ではこの検査がまっ平らになるのが特徴です。今回は杆体の機能はそれなりにあります。(波形あり)


同じくERGです。30Hz flickerと言って、錐体の機能を強く表す測定法ですが、今回の錐体ジストロフィーでは波形が平らになってしまっています。

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網膜色素変性症

今日は午前が小美玉、午後がクリニックです。普段は午後の外来は比較的すいているのですが、今日は午後だけで40名以上と、ちょっと疲れました・・・。

網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)
(杆体錐体ジストロフィー)

網膜色素変性症は目の中のカメラでいえばフィルムに相当する網膜という膜に異常をきたす病気です。網膜は目の中に入ってきた光を、電気などの神経の刺激に変換する働きをしています。網膜と言っても、様々な種類の細胞から成り立っているのですが、光を感じ取るに最も重要な視細胞や、色素上皮細胞(視細胞を栄養する働き等があり、眼底写真のオレンジ色は色素上皮細胞によります)を、特に障害します。

疫学
日本では数千人に1名の有病率とされていますが、大人になってから失明する(中途失明)の3大原因の一つとなっています。

原因・遺伝
遺伝子の異常によって起こされる疾患であり、病気の原因となる数種類の遺伝子が見つかっていますが、まだまだ原因の分かっていない遺伝子・症例の方が大多数であり、原因不明と評されることが多くあります。
両親や祖父祖母などから遺伝する場合が約半数とされ、残りの半数は家族内に同じ病気の人がいない、弧発例といって明らかな遺伝ではない症例とされています。

症状
初期には暗い所で見えずらい。などの症状が有名です。(夜盲、鳥目)
網膜の視細胞には、杆体と錐体と呼ばれる2種類の細胞があります。杆体は視野の周辺部を担当する部位に多く存在し、明るさなどの感覚を主に担当します。錐体は視野の中心部を担当する部位に多く存在し、細かい視力や色覚などを主に担当します。
網膜色素変性症(杆体錐体ジストロフィー)は、杆体・錐体の両方とも侵す疾患ですが、とくに杆体を中心に障害することが多く、暗いところでの見え方が悪くなることで有名です。
一般的には、杆体は周辺部の視野を担当しているために、周辺の視野が狭くなり(求心性視野狭窄)、徐々に中央部に迫って、全ての杆体錐体が侵された場合に失明となります。
(病状や、遺伝の形式も多種多様で、中心から見えなくなる方など、症状にもかなり個人差があります。)

予後
基本的には進行性の病気です。非常に早く進行し数年で失明に至る症例もおりますが、ほとんどの症例はとてもゆっくりと進行します。失明に至るのは病気を発症した人のうち0.5%(200名1人)と報告されていますので、過度に失明を心配する必要はありません。

治療法
残念ながら現在の医学では治療法は見つかっていません。研究段階では遺伝子治療や、人工網膜などによる治療の報告があり、近年は実際に人体への治療を開始したグループもあります。将来的には治療可能な疾患となる日が来るものと信じています。

ロービジョンケア
回復させることは困難ですが、眩しさを軽減するために遮光眼鏡を使用したり、視野が狭くなった場合に残った視野を少しでも有効に使用するための特殊機器を使用することがあります。
2011.05.09のブログ「ロービジョンケア」もご参照ください。
日光などの強い光は、網膜色素変性症を悪化させる原因の一つと言われています。あまり晴れている日の外出時には、つばのある帽子をかぶったり、サングラスを使用することも重要です。(紫外線や青色の光が悪化させるとの認識が多いですが、それ以外の波長の光も悪化の原因になるとの報告もあり、あまりに明るい電球なども見つめない方がよいでしょう。)

特定疾患(難病)・視覚障害
特定疾患とは、国が決めた難病のうち、申請・登録することで医療費の扶助が受けられるなどの疾患です。医師の書いた診断書を保健所に申請することが必要です。病気のデータを集めることで、病気の解明や治療法の開発にも役立ちます。
また、症例によっては視覚障害に該当する場合には、申請することで、等級によってですが、様々な補助が受けられるようになります。


これは、普通の方の眼底写真と、蛍光眼底造影検査になります。



これは、先日当院で診断した40代男性の患者様になります。網膜のオレンジ色が全体として灰色のように薄くなり、ところどころ黒い斑点を認めます。網膜の血管が細くなっているのも特徴的な所見です。中心部の方がオレンジ色がしっかりしているのは、周辺部の杆体に比べて、中心部の錐体と呼ばれる細胞の方がまだ元気だからです。


同じ患者様の視野検査です。中心部(錐体)はまだ侵されていないため、視力は1.0異常と良好です。周辺部の杆体がリング状に侵されており、その部位が見えなくなっているために、リング状に視野が欠けています(青く塗りつぶした部分が見えない)。運転や歩行などには注意する必要があります。


同じ人の網膜電図(ERG)と呼ばれる検査結果です。ERGは簡単にいうと脳波のようなものです。光刺激を与えると元気な網膜には大きな電気が流れ、波形が動きますが、元気のない網膜では電気の発生が弱く、波形が平坦となります。網膜色素変性症では、発症早期からERGの波形が平坦化することが知られており、診断に重要な検査です。(脳波が平坦な場合は脳死になります)

こういう治療法が見つかっていない病気であることを、患者様に伝えるのはちょっと厳しいです。遺伝子の問題はご本人には何の責任もありません。早く治療が可能な時代が来るといいのですが。

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学校健診 弱視

今日の午前の外来はちょうど50名で、もう終わってしまいました。
午後からは手術が9件で以下の予定です。
・白内障手術 6件(上方切開2,耳側2,斜方2,乱視レンズ2)
・緑内障手術(トラベクレクトミー)1件
・翼状片手術 2件

条例などで、春になると学校健診で視力検査が行われます。
当院は、手術目的の方が多く、やや高齢の患者様が多い病院なのですが、今週は子供さんに沢山受診して頂いています。月曜日は80名の外来のうち、10名以上がお子様の視力検査でした。

屈折性弱視(くっせつせいじゃくし)
弱視とは視力が上手に発達しなかったために、大人になって、眼鏡をかけても視力が出ない状態を言います。先天性の白内障や網膜の病気など、重篤な病気が原因のことも稀にはありますが、斜視や、屈折性弱視と呼ばれるものが大多数の原因を占めています。

近視や遠視、乱視などを屈折異常と呼びます。大人になって屈折異常があっても、眼鏡やコンタクトレンズを使用することで、ほとんどの方は問題ない視力が得られます。そのような方は、小さい頃には屈折異常がなかったか、あっても軽いものであったと推測できます。

実は、生まれたばかりの赤ちゃんは、明るいか暗いかぐらいしか分かりません。その後、きちんと物が見える状態を保つことで、0.01から1.0以上に向かって視力がどんどん伸びていきます。4?5歳くらいになるとほとんどの子が1.0以上の視力を獲得します。
このように視力が発達するためには、網膜に鮮明な映像をあわせることが必要です。
多くのお子さんは、屈折異常がない、またはあっても軽度なものなので、何もしなくても視力が勝手に発達しますが、子供の時から、強い遠視や乱視などの屈折異常がある場合には、ぼやけた映像したしか目の奥に届かないため、網膜や視神経、その後の脳神経なども、ぼやけた映像を理解・処理できる程度までにしか発達しません。このような場合を屈折性弱視と呼びます。

視力が伸びる・発達するのは6?7歳程度までと言われており、その時点で眼鏡をかけても1.0が見えない場合は、一生涯眼鏡をかけても1.0見えないということになります。つまり弱視です。

もし、強い屈折異常がみつかれば、子供のころに網膜にピントを合わせるような眼鏡をかけることで弱視を回避、視力を育てることができます。
重度の弱視は3歳児検診で引っかかることが多く、その場合、6?7歳までの3?4年という長い治療期間が確保できます。軽度や中程度の弱視は入学前検診で引っかかることが多いですが、やはり1?2年の治療期間が持てるため、この2つの検診で引っかかった場合、現在の医学ではほとんどの屈折性弱視を治療することが可能になっています。

実はこの1週間以内で、学校健診で視力低下を指摘され初診となったうち、7?9歳のお子様3名が屈折性弱視でした。もちろん治療は行ってはみますが、すでに視力が発達する限界の時期(臨界期)を超えているのであれば、残念ながら視力の改善は期待できません。
良く勘違いされてしまうのですが、弱視は眼鏡をかけても見えないのです
例えば、眼鏡をかけても0.7が見えないのであれば、一生涯運転免許は取れないということです。
その3名は、みさなん、3歳児検診や入学前検診で異常を指摘されたのに、それぞれ理由はあるのでしょうが、眼科にはかかって頂けなかったようです。

お子さんに、「君は運転はできない可能性が高い。こういう職業はあきらめましょう」と伝えるのはとても辛いです。屈折性弱視は治せる病気です。検診で異常を指摘されたら必ず受診するようにしましょう。

学校健診の紙なども、「視力が不良です。眼科の専門医の診察をお勧めします。」などとしか書かれていないものが多いですが、「将来、運転免許証が取得できない可能性があります。診察をお勧めします。」とかに変えた方が、リアリティーがあって受診してくれる親御さんが増えそうですが、どうだろう。

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